「好きなのぉー!!と、青春です」、『フェードル』大竹しのぶインタビュー(上)

大竹しのぶさん

2021年1月8日(金)に東京のBunkamuraシアターコクーンで開幕する舞台『フェードル』に、フェードル役で出演する大竹しのぶさんの合同インタビューに参加しました(石川・愛知・兵庫・静岡公演あり)。『フェードル』は、17世紀フランスを代表する劇作家のラシーヌが、ギリシア悲劇『ヒッポリュトス』をベースに創作した作品。「古典作品と聞くと難しそうですが、物語は単純なんです。青春!(笑)」と語ってくださった大竹さん。重要なセリフ「好きなの!」を発する時の気持ちなどをお話くださいました。

大竹しのぶさん
大竹しのぶさん

ーー再演が決まった時のお気持ちは?

嬉しかったです、すごく。実は『フェードル』初演の幕が開いてまだ間もないのに、演出の栗山さんが「これは絶対再演する」っておっしゃって。無事に初演を終えられるかどうかもわからないのに、もう再演!?ってその時に思ったんです。栗山さんは、既にものすごく手応えを感じてらしたのかもしれません。ただ、それはとても嬉しかったですね。私は本当にフェードルを演じるのが楽しかったんです。

ーー再びのフェードルに、どう向き合われていますか?

「初演の時にはまだまだわかっていなかったんだな」と思うこともあります。『フェードル』に限らないですけど、もっとこうしておけばよかったんだって、終わってからも思います。その時は、その時で一生懸命やっている訳ですけど「あ、この感情は足りなかったかな」とか、「もっとこんな表現があったかもしれない」とか反省ばかりです。

ーーそうなんですね。

「うわあ、下手だなあ」とか、映像を見たりすると、見たくない!ってなります(顔を隠す動作)。この前『徹子の部屋』に出させていただいた時に、初演の『フェードル』の映像を少し見せてもらったんですね。なんか、自分の一生懸命さだけが見えてしまって…。ああ、一生懸命やっているなあ、熱演しているなあって(笑)。

ーー一生懸命、熱演…。

前回の映像を見てそう思っても、また今回もきっと熱演するんですけどね。初演から再演までのこの4年の間に成長し、ちょっとは理解力が深まったとは思うので。前回からは、もう少し成長した姿を見せられたらいいなと思います。

※アイデアニュース有料会員限定部分には、「再演で気をつけていること」「感情の昂りのプロセス」など、インタビュー前半で伺った内容の全文を掲載しています。1月2日(土)掲載予定のインタビュー「下」では、稽古場の様子、林さんへのアドバイス、言葉のエネルギー、古典劇と近代劇における感情の発露の違い、演劇やお客様への思いなどについて話してくださったインタビューの後半の全文を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>

■イッポリットがより若くなって、若いアリシーを選ぶだろうなって説得力が(笑)

■「どうしてわからないの、好きなのに…」「好きなのぉー!!」と、青春です

■感情に「曖昧」とか「こんな感じ」というものがない。わかりやすいんです

■何の装置もなく、声と肉体のみで世界を作り出すギリシア悲劇は、演劇の原点

<舞台『フェードル』>
【東京公演】2021年1月8日(金)~1月26日(火) Bunkamuraシアターコクーン
【石川公演】2021年1月30日(土)~1月31日(日) 金沢市文化ホール
【愛知公演】2021年2月6日(土)~2月7日(日) 刈谷市総合文化センター
【兵庫公演】2021年2月11日(木・祝)~2月14日(日) 兵庫県立芸術文化センター
【静岡公演】2021年2月20日(土)~2月21日(日) 三島市民文化会館
作:ジャン・ラシーヌ
翻訳:岩切正一郎
演出:栗山民也
出演:大竹しのぶ、林遣都、瀬戸さおり、谷田歩、酒向芳、西岡未央、岡崎さつき、キムラ緑子
主催・製作:テレビ朝日、産経新聞社、サンライズプロモーション東京
公式サイト:
https://www.phedre.jp/

<関連リンク>
フェードル 公式 Twitter
https://twitter.com/phedrejp
大竹しのぶ オフィシャルサイト
http://www.otake-shinobu.com/
大竹しのぶ Instagram
https://www.instagram.com/shinobu717_official/

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『フェードル』ビジュアル
『フェードル』ビジュアル

※ここから有料会員限定部分です。

■イッポリットがより若くなって、若いアリシーを選ぶだろうなって説得力が(笑)

ーー今回「ここが変わった」「変わりそうだ」というところはありますか?

まだお稽古の途中なので、最終的にどうなるかはわからないですけれども、イッポリット役も、遣都くん(林遣都さん)に変わっていますし、芝居の相手が変われば、自然に変わります。意図的に「この場面は、こう変えよう」とか、そういう風にはしませんね。でも、再演だからこそ、気をつけなくちゃいけないと思っていることはあります。

ーー気をつけるといいますと?

初演の時に、一度完成した感情とか声の高さまでも覚えているんです。だから、そこをなぞらないようにしようとか、そこに向かわないようにしよう、っていう気持ちはありますね。結果的に、同じようになるのはいいんです。でもやっぱり、「その場で感じたことを素直に出す」ようにしようと思って稽古しています。

ーーイッポリットとのシーンでは、どのような変化を感じられていますか?

今回、遣都くんになってイッポリットがより若くなっているんですよ。これは結構大きい変化かもしれないですね。だって、そりゃあ、若いアリシーを選ぶだろうなっていう説得力が(笑)。だからこそ、フェードルがイッポリットのことを好きでたまらないっていうのが、より悲しい感じがするんですね。若い二人がいて。でも、ヴィーナスに矢を放たれてフェードルはイッポリットを好きになっちゃうっていうのが…。「もう、オバサン、やめときなさい!」みたいな(笑)。ちょっと狂っちゃってるなあ、あーあ、なんていう感じ。もちろん、そう思いながら演じはしないですけれども。

■「どうしてわからないの、好きなのに…」「好きなのぉー!!」と、青春です

ーーイッポリットへの告白のシーンの言葉は、特別な感情の昂りと共に出てくるものなのでしょうか?

好きになってはいけない相手を、ヴィーナスの矢を放たれ好きになってしまう訳です。女神の力が作用するので激しいです。「あー、どうしてわからないの、この気持ち。好きなのに…」。えー、とビックリしている相手に向かって更に激しく、「好きなのぉー!! さぁ、知るがいいフェードルを」と叫ぶのですから、どストレートで青春です。

■感情に「曖昧」とか「こんな感じ」というものがない。わかりやすいんです

ーー青春!

こういう戯曲ってあまりないと思うんですよ。感情に「曖昧」とか「こんな感じ」というものがないので、わかりやすいんです。演じてる役者としては、それが面白いんですよね。昨日、稽古をしていたシーンでも面白いところがあって。私は出ていないシーンなのですが、イッポリットがお父さんのテゼに「僕は、こうやって純粋に生きてきたんです」って言うんです。で、テゼに「それがお前の欠点だ」って言われちゃう。ここも、イッポリットが「僕は、こんなにもいい子なんで!」って、熱演すればするほど余計に滑稽なんです。人間の傲慢さや、愚かさや、美しさ。美しさや若さには、ある種のわがままなものも含まれているでしょう。話が単純だからこそ、いろいろな角度から人間が見えてくるのが『フェードル』という作品の面白さだなあと思いますね。

ーー古典と聞くと難しそうですが、物語は単純なんですね。

そうなんです。『フェードル』という物語自体は、『ロミオとジュリエット』や『ハムレット』のように、タイトルを聞いたら何となくみんながイメージできるというわけではないでしょうが、再演をすることで浸透していけばいいなと思っています。フェードルといえば「好きなの!」みたいな(笑)。あの熱情的な女だと。

■何の装置もなく、声と肉体のみで世界を作り出すギリシア悲劇は、演劇の原点

ーー初演の時、「フェードルを演じるのが楽しかった」と冒頭でおっしゃっていました。楽しさの要因としては、今おっしゃった「ストレートな感情表現」も大きいでしょうか?

そうですね。あとは、『フェードル』はギリシア悲劇をモチーフに作られている作品なので、演劇の原点に触れているという感覚もあります。私が初めてギリシア悲劇に出演したのは、『エレクトラ』でした。15年以上前ですね。その時に、「あ、これが演劇なんだ」って思ったんです。神と対話したり、何の装置もなく、ただその場に立って、役者の肉体と感情だけで観客を引っ張っていくというところが、とてつもなく面白かったですね。もちろん、映像を使ったり音楽を使ったりする方法も魅力的ですが、この面白さは、ギリシア悲劇ならではのものだと思いました。役者の声と肉体のみで、世界を作り出していくのですから。

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