「至高の芸術は人を幸せにすること」、『バーナム』加藤和樹インタビュー(上)

加藤和樹さん=撮影・岩村美佳

ミュージカル『バーナム』が2021年3月6日(土)から3月23日(火)まで、東京芸術劇場プレイハウスにて上演されます(兵庫公演、神奈川公演あり)。19世紀半ばのアメリカで大きな成功を収めた興行師、P.T.バーナムの半生を描いたブロードウェイ・オリジナルミュージカルで、今回が日本初上演となります。主演の加藤和樹さんにインタビューしました。インタビューは上下に分け、「上」は合同取材会の詳細を、「下」でアイデアニュースの独自インタビュー部分をお届けします。独自部分では『Kazuki Kato 〜Thank you for coming! 2〜』『僕たちの冒険! LOVE SONGS を探して!』についてのほか、2021年が始まって今思っていることについても伺いました。

加藤和樹さん=撮影・岩村美佳
加藤和樹さん=撮影・岩村美佳

――バーナムを演じられるに当たって、朝夏(まなと)さんと木下大サーカスを観に行かれたということですが。

先日観に行かせていただきました。初めてではなく、サーカスは子供の時に観ましたし、シルク・ドゥ・ソレイユは1度ロサンゼルスでみたことはあります。それ以来だったんですが、めちゃめちゃ感動しました。子供の時に観た以来で大人になっていますし、今はいつもお客様に向かって何かを表現しているので、「あれどうなっているんだろう」、「これどうなっているんだろう」と観てしまうんですが、まったく分からなくて。本当に僕と朝夏さんはいいお客さんだったと思います。「いや、そんなことできるわけないじゃん」。「え~!」みたいな。心の底から楽しんで帰ってきました。すぐにもう一回みたいくらいです。

――観ている時に、バーナムを投影して観ていましたか?

正直ちょっと忘れてしまっていましたね。普通にお客さんとして楽しみました。でも、そのサーカスを興業するに当たって、何が必要でどれくらいの規模なのか、それがどれだけ大変なことなのかと、頭をよぎったりはしましたね。あれだけの一座を率いて全国を回るというのは、家族以上の絆がないと無理だよなとも思いました。そこを統率している人物としてどう在るべきかというのは、ものすごく考えましたね。

――バーナムは女性の目から見ると、リーダーシップもあって夢を追いかける、きらきらした男性的な魅力に溢れる分、ちょっと早まっているというか…。

どちらかというと、そちらのほうが多いでしょうね。

――そこが魅力的でもあり、奥さん(チャイリー・バーナム)に共感するとつらいだろうと思う部分もあり、その両方が存在するすごく人間味溢れるスターだと思います。彼の魅力をどう届けたいですか? 加藤さんが思っていらっしゃるバーナムの人としての魅力を、どこに一番フックを置きたいか、お聞かせください。

僕はやはり彼の行動力だったり、思想、考え方だと思いますね。彼自身がそれをちゃんと功績として残すというところ。もちろん、全てが成功してきたわけじゃないですよね。それでも前を向いて諦めない姿勢が、多分チャイリーも「しょうがないな」と思える。結局、彼に惚れた理由も、夢を見て、自分のやりたいことにまっすぐ向かって行く彼の想像力、才能に惚れているわけです。いち男として見たら、だめなんですよ。時代もあると思いますが、今現代で、彼のような人について行くかというと、大半の女性はついて行かないと思います。それでも男って、夢を追いかけ続けたい人が多いですし、やはりそれを成し得た時の姿だったり……言ってしまえば、「一緒に夢を追いかけてくれないか」みたいなことじゃないですか。そこに叶えたい思いがあり、やっぱりそういう瞬間の男って、きらきらしているんじゃないかと。やりたいことに向かって、夢を追いかけている姿。それは決して楽な道じゃないということも、バーナム自身も分かってはいるし、彼は決して楽をしようとしているわけじゃないんですよね。あの手この手を使って努力して、「どうしたら人を楽しませることができるか」と考えている。彼のエンターテイナーとしての根底に、人を幸せにしたい、楽しませたい、喜ばせたい、そういう思いがあるから、人間的に魅力的なんですよね。それがただのいかさま、詐欺師じゃないところだと、僕は思っています。

※アイデアニュース有料会員限定部分には、加藤さんが『ローマの休日』に続いて2作品続けて朝夏まなとさんタッグを組むことについて、日本初演作品の主演を務めることについて、映画『グレイテスト・ショーマン』と舞台『バーナム』などについて伺った合同インタビューの内容と写真を掲載しています。2月26日(金)掲載予定のインタビュー「下」には、加藤さんの『Kazuki Kato 〜Thank you for coming! 2〜』全国ツアー完走について、加藤さんと中川晃教さん・海蔵亮太さんが登場した『僕たちの冒険! LOVE SONGS を探して!』配信についてのほか、2021年が始まって今思っていることについても伺った独自インタビューの内容と写真を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>

■朝夏さんとは年齢も同じで、すごく尊敬していますし、頼りにしています

■実在の人を演じようとすると、上手くいかない。周りが浮き彫りにしてくれる

■木下大サーカスさんにご協力いただいて、映像や今の時代だからこその表現方法で

■アンサンブルの皆さんがジャグリングをやるかも。僕がやるかどうかは分からない

<ミュージカル『BARNUM』>
【東京公演】2021年3月6日(土)〜3月 23日(火) 東京芸術劇場 プレイハウス
【兵庫公演】2021年3月26日(金)〜3月28日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
【神奈川公演】2021年4月2日(金) 相模女子大学グリーンホール
公式サイト
https://musical-barnum.jp/

<関連リンク>
ASSIST | 加藤和樹 Official Web Site
http://www.katokazuki.com/
加藤和樹 オフィシャルブログ
https://ameblo.jp/katokazuki-blog/
加藤和樹 Twitter
https://twitter.com/kazuki_kato1007

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加藤和樹さん=撮影・岩村美佳
加藤和樹さん=撮影・岩村美佳

※ここから有料会員限定部分です。

■朝夏さんとは年齢も同じで、すごく尊敬していますし、頼りにしています

――「しょうがないわね」と言いつつ、ついて行く、そこにすごく大きな愛があるところが、素敵な物語だと思います。

結果、周りの人を幸せにすれば、自分自身の心も豊かになりますし、妻のチャイリーも、もちろん犠牲にするものはあるかもしれませんが、心が豊かになる。何が幸せかは、人それぞれ違うと思います。お金があれば幸せなのかと、そこは永遠のテーマだと思いますが、僕はそうではないと思います。サーカスを観に来る人たちも、いろんな生活がそれぞれにありますが、サーカスに喜びや感動があるからこそ、人は求めるわけですよね。バーナムはそれを体現した人。彼が残した名言の中に、「至高の芸術は人を幸せにすることだ」というものがありますが、それは一表現者として、ものすごく感銘を受ける言葉です。彼の魅力はそのひと言に詰まっているなと思います。

――チャイリー役が朝夏さんで、『ローマの休日』に続いて、稽古からすると半年くらい、2作品続けてタッグを組むのは、なかなかないと思うのですが、今回の作品について、お二人でどんなことを話されていますか?

『ローマの休日』の時から「次も一緒だね」と話しながら、今も一緒に歌稽古をしていますが、これから本格的な立ち稽古がはじまります。すごく信頼できる相手なので、多分お互いに遠慮もないですし、「遠慮なくやろうね」と話しています。彼女自身がすごく強い女性なので、そこに負けないように(笑)。多分、バーナムとチャイリーの関係性というのは、よく描けると思っています。それはやっぱり、今回が初めましてではないということと、彼女と年齢も同じですし、お互いが感じていること、僕は彼女のことをものすごく尊敬していますし、頼りにもしています。今回の二人の役作りをすることにおいて、すごく大事なことですね。というのは、バーナムとチャイリーがお互いを異性として好きというよりは、自分と違うお互いの才能に惚れている。彼女は自分にないものをたくさん持っているし、素晴らしいと思うことも、山ほどあります。そこは今回のお芝居を作っていく上で、とても重要なことで、口に出して言っているわけではありませんが、多分お互いにひしひしと感じている部分だと思います。……分からないな、僕の一方的な片想いかもしれないし(笑)。すごく楽しみですね、不安は一切ないです。

――前回の『ローマの休日』と比べると、どちらかと言うと役の力関係が逆とも思いますが、その面白さみたいなものはありますか?

どうでしょうか、チャイリーは結構強いというか(笑)。現実的な部分ももちろんありますし、それでも夫を支えてくれる。的確なことを言ってくれるんですよね。ぐさっと釘を刺すような。でも、そういう人がいないと、バーナムは燃えないと思うんですよね。これが全面的に「私はあなたをサポートします」という、全部イエスの女性だったら、バーナムは多分彼女に惚れていないし、興業も上手く行っていなかったと思います。でも、要所要所で本音を、ちゃんと道を正してくれるような存在だからこそ、彼女を信頼しているし、愛している。絶妙な関係なんですよ。すごく言い合ってますし、歌の中でも「君とは何もかも正反対だ」という歌があるんですが、「君のその生き方、その考え方を、僕は好きなんだ」と。それって、とても深い愛だなって。本当にただの夫婦ではない、普通の愛情ではないところで結ばれている二人を、感じていただければいいなと思います。そこを感じていただけるように、その関係性を朝夏さんとは作り上げていきたいです。

加藤和樹さん=撮影・岩村美佳
加藤和樹さん=撮影・岩村美佳

■実在の人を演じようとすると、上手くいかない。周りが浮き彫りにしてくれる

――今回が日本初演ですが、日本初演に対する思いはいかがですか。

とても光栄なことですし、だからこそ日本でやる意味を打ち出していきたいです。とはいえ、いつもそうなんですが、こういう作品に取り組む時は、常に新しいものを作る思いでやるので、たとえ再演であろうと、同じものを作るのではなくて。もちろん楽曲はオリジナルの音源を使いますが、日本語で歌うわけですし、より意味や言葉の伝え方を、我々にしかできないものへ作り上げようという思いが強いです。

――演出の荻田(浩一)さんとは、そういったことについて話されましたか?

実はこれからなんです。自分なりに思い描いている絵や、まだ歌稽古の段階ですが、音楽から受ける印象とその絵は見えてきているので、あとはすり合わせと、荻田さんが思い描いているこの『バーナム』という世界観を、皆さんで共有することだと思います。

――本作で主演での出演が決まった時の気持ちはいかがでしたか?

一番最初に、P.T.バーナムという名前を聞いた時は、正直『グレイテスト・ショーマン』を思い描いたんですが、プロデューサーさんとお話しさせていただく中で、描きたいのは彼が歩んできた人生であり、この物語の中にある「成し遂げていくこと」と、今の時代だからこそ、こういう興業を打ったり、サーカスを作り上げるということ、そこがすごく大事なんだなと思ったんです。今までも実在する人物を演じてはきましたが、実在する人物を演じるほど難しいことはないですね。でも、このキャストを見た時に、朝夏さんと一緒で、すごく心強いなと思いました。最初は自分とは違う人間なので、彼が成し遂げたことだったり、「自分にできるかな」と思いましたが、自分がP.T.バーナムという人物の半生を共に生きる、今はそのわくわく感のほうが、すごく強いですね。

――実在の人を演じるのと、架空の人を演じるのは、意識の大きい違いはありますか?

ありますね。『BACKBEAT(バックビート)』という作品でジョン・レノンを演じた時に、ものすごく感じたんですが、彼自身を演じようとすると、上手くいかない。周りがその人物を浮き彫りにしてくれるんです。今回も「自分がバーナムだ」と、もちろんそこは根底には絶対あるんですが、あまり意識し過ぎないように、とは思っています。

加藤和樹さん=撮影・岩村美佳
加藤和樹さん=撮影・岩村美佳

■木下大サーカスさんにご協力いただいて、映像や今の時代だからこその表現方法で

――やはり『バーナム』というと『グレイテスト・ショーマン』というイメージが現時点でありますが、映画とは違うこのミュージカルの魅力は、どのあたりにあるんでしょうか。

これは大きな違いだと思いますが、我々がやるのは、サーカスではないんです。サーカスを作り上げた人物の人生を描く中で、その中で何があったのか。それはもちろん『グレイテスト・ショーマン』でも描かれているところではあるんですが、我々は決して舞台上でサーカスをするわけではないので、そこは大きな違いですね。あとは、木下大サーカスを観に行った時に思いましたが、サイ・コールマンの曲は本当にサーカスで使われるような楽曲が多いんですよ。本当に心が弾むというか、わくわくさせるような楽曲が多くて、歌稽古しているだけで、ものすごく楽しい気持ちになってきます。だから音楽と、その音楽にのる言葉の魅力は、絶対的にあると思います。物語はバーナムとチャイリーのやり取りがメインになってきますが、その中で描かれる夫婦間の愛情や、その中で揺れ動いて行動していくバーナムの行動力、一興行者として、彼がどんな人生を歩んだのかという人間ドラマなので、そこに注目していただきたいです。もちろん、サーカスのシーンは、木下大サーカスさんにご協力いただいて、映像だったり、今の時代だからこそできる表現方法というものを打ち出していくと思います。まだその絵が僕にもちょっと見えてこないんですが、荻田さんがどう演出されるのかが楽しみです。『バーナム』は、サーカス自体をするわけではありませんが、本当に摩訶不思議な魅力の中に皆さんをご招待するということは、言っておきます。

――バーナムは19世紀のアメリカを生きてきた人物です。途中で南北戦争があったり、そういうアメリカの時代に生きたということが、この作品のバーナムの生き方にどう影響を与えていて、この作品でどう演じてみたいと思いますか?

『バーナム』という映画を観ましたが、時代背景を描いている作品でした。今回の舞台では、そこをはっきりと描かれるシーンはありませんが、我々日本人がどこまで掘り下げていくのかというところは、正直観ているお客様にとって有効ではないと、僕は思うんです。荻田さんがどう作るかにもよりますが。でも、僕が読んだ台本を見る限りは、いわゆる人種差別だったり、その辺の事情にまでは踏み入ってはいないです。それでもバーナムが彼らにどう接して、どう扱ったかというところは描かれているので、人を尊敬して、その人たちにちゃんと敬意を払うという、バーナムの人となりでしょうが、単純に商売になるからだけではなくて、その人たちをちゃんと見て、「こういうことを一緒にやろう」という彼のモチベーションの高さなどに重きを置くとは思います。

加藤和樹さん=撮影・岩村美佳
加藤和樹さん=撮影・岩村美佳

■アンサンブルの皆さんがジャグリングをやるかも。僕がやるかどうかは分からない

――バーナムを演じるに当たって、特別にトレーニングをされていることはありますか?

どうなんでしょう(笑)。どこまでやるかは、正直まだ分からないです。多分、音楽的なところでダンスを踊ったりするところはあると思いますので、それに向けての覚悟だけはしています。アンサンブルの皆さんがジャグリングなどをやるかもしれませんが、僕がやるかどうかはまだ分からないですね。でも、やれと言われれば、何でもやりたいですね。あとは、準備というか、彼は話術にすごく長けた人なので、台詞をただ吐き出すのではなく、彼がいろんなことを考えながら、その言葉を頭の中で選びながらしゃべるという、その話術の言葉の巧みさや、言葉の説得力ですよね。そこはちょっと、いつものお芝居をするというものとは変わってくるかなと思います。

――英語だと早口言葉みたいな歌がありますが、日本語でも一緒ですか?

めっちゃ早口です。毎日口ずさんでます。しかも今回のサイ・コールマンの楽曲は音階が「ここに行く」というところに行かないんです。あえて半音ずらしたりとかしていて、ハマるととても心地いいんですよ。そこがバーナムの性格を表している感じになっているんじゃないかとすごく思いますね。それはソロの曲だけじゃなくて、みんなで歌う曲もそうなんですが、「ここ行かないの!?」というところに行ったりするので、それは聞いてても、お客様が「おっ!?」と思う瞬間じゃないでしょうか。

加藤和樹さん=撮影・岩村美佳
加藤和樹さん=撮影・岩村美佳

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“「至高の芸術は人を幸せにすること」、『バーナム』加藤和樹インタビュー(上)” への 6 件のフィードバック

  1. ゆう より:

    いつも加藤和樹さんのインタビューをボリュームたっぷり、素敵なお写真とともに掲載してくださりありがとうございます。
    今回のインタビューも、読んでいると「BARNUM」を早く観たい欲が高まっていく、ワクワクドキドキが増す内容でした。
    和樹さんの巧みな話術、そしてジャグリングなどへの挑戦があるのか、楽しみに初日の幕が上がるのを待ちたいと思います。

  2. ゆの より:

    素敵なお写真と読みごたえたっぷりのインタビュー、ありがとうございます!
    観劇がますます楽しみになりました♪
    和樹さんがバーナムをどう生きるのか、期待しかありません(*^_^*)

  3. ayuz より:

    素敵な文章とお写真、ありがとうございました、さまざまな媒体でBARNUMに関する加藤和樹さんのインタビュー記事を読みましたが、岩村さんの記事&お写真が1番好きでした(^^) 和樹さんのどんなBARNUMで魅せられるのか、期待を膨らませつつ、ワクワクドキドキしながら観劇日を楽しみに待ちたいと思います♪

  4. みるるん より:

    読んでいて、和樹さんのバーナムへの熱意が伝わってきました。サーカスを見るのではなく、至高の芸術、サーカスを作り上げたその実在する人間の深い内面を、どう演じ表現してくれるのか、とても楽しみです。
    ローマの休日に続く朝夏まなとさんとの共演は、観る側としても何だかとても安心感があります。
    素敵なインタビューをありがとうございました!

  5. より:

    いつも素敵なインタビューをありがとうございます。
    お写真も素敵で毎回楽しみに読ませていただいています♪
    劇中での朝夏さんとの夫婦関係がとても楽しみで…インタビューを読んでより期待が高まりました!!
    早くBARNUMの世界に入りたい。
    初日無事に幕が上がることを祈りながら楽しみに待ちます。

  6. non より:

    和樹さんとまなとさんが作り出す世界が楽しみで仕方がありません。
    ローマの休日の時…いえその前のミュージカルコンサートの時から和樹さんのまなとさんへの信頼感は感じていました。きっと、このお二人だからこそ描ける世界が観られるのだろうと、今からとっても楽しみです!
    素敵なインタビューをありがとうございました。

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