ミュージカル『SMOKE』が7月25日(木)から8月18日(日)まで、浅草九劇で上演されます。『SMOKE』は、天才詩人と言われながら、27歳の若さで、異国の魔都・東京で亡くなった、韓国人詩人、李箱(イ・サン)の作品にインスパイアされクリエイトされた韓国ミュージカル。超(チョ)、海(ヘ)、紅(ホン)の3人のキャストのみで演じられます。昨年10月に同劇場にて、日野真一郎さん、木暮真一郎さん、大山真志さん、高垣彩陽さん、池田有希子さんによって日本初演され、今年6月には東京芸術劇場シアターウエストにて、石井一孝さん、藤岡正明さん、彩吹真央さんのキャストで芸劇バージョンとして上演されました。今年は昨年のキャストに、木内健人さんと元榮菜摘さんが加わり、さまざまな組み合わせによるキャストで上演されます。木内さんに6月末にお話を伺いました。
――稽古はどんな感じで進んでいますか?
今回は再演なので、日野さんや大山君は違う役も演じるとはいっても3人しかいないので、以前やっていなかった役の動きなども、皆さん覚えていらっしゃるんですよ。空間が狭い分、3人しかいない分、照明や映像の関係で、ここの時にはここにいないとみたいな決まり事も多いんです。稽古の進むスピードは、僕にとっては結構速くて、今ついていくのに必死です。(演出の菅野)こうめいさんと、この「海」という役の話し合いをしながら、動きと自分の感情と、そのシーンの自分の役割や目的を少しずつ重ねて、咀嚼しながらやっている段階です。
――出演のお話が来た時はどう思いましたか? その時は作品を見ていましたか?
初演は拝見していて、木暮君と大山君と池田さんの回を観せていただいていました。出演のお話を聞いた時は、正直、すごく嬉しかったです。その時は自分が「海」なのか「超」なのかということはわかってはいませんでしたが、「超」をやるんじゃないかと勝手に自分のなかでは思っていて、特になぜかといわれると理由はないのですが(笑)。最初の感想としては嬉しかったのですが、その後に、自分が浅草九劇のあの嘘がつけない空間で、あれだけの膨大な台詞と歌とをちゃんとコントロールして、お客様の前でやれるのか?と。
――しかもお客さんに360℃囲まれていますもんね。
やはり360℃って、結構身が引き締まるというか……。
――これまで360℃観られている劇場の出演経験はありますか?
ないです。帝国劇場の『エニシング・ゴーズ』に出た時に、オケピ(オーケストラピット)が舞台になっていたので、その時はお客様に囲まれている感じが若干はあったんですが、それとは比にならないぐらい囲まれているので(苦笑)。
――さらに舞台と客席が近いですね。
今は、お客様はいませんし、どうしても、こうめいさんやスタッフさんたちもひと方向からしか、まずは見られないじゃないですか。なので、どうしても、気を抜くとそこが正面なんじゃないかという錯覚に陥るんです。でも、「あ、いかん、あっちにも後ろにもお客様がいらっしゃるんだぞ」と時折自分で思い返しながら、ちゃんと、見られているというよりは、全部壁だと思って、リアルに、お部屋の中で生活をしている、生きているということを考えながらやっています。
※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、作品が持っているメッセージについて、キャストや楽曲について伺ったインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。7月23日(火)掲載予定のインタビュー「下」では、木内さんの子供の頃から、今に到るまでのお話や、今後目指す役者像などについて語ってくださったインタビュー後半の全文と写真を掲載します。
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■どうしても斜(はす)に構える、360℃観られることの難しさ
■愛してほしいという、人間の根本の欲望は誰しもある
■相手が違うと、方向性は同じでも、その時に動く自分の心が本当に変わってくる
■喉を酷使しないといけないナンバー、 いろいろトライをして、自分の喉の筋肉を筋トレ
<ミュージカル『SMOKE』>
【東京公演】7月25日(木)~8月18日(日) 浅草九劇
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■どうしても斜(はす)に構える、360℃観られることの難しさ
――前回からのキャストの皆さんと、前回を経たからこその話、360℃囲まれていることや密な空間で、という話はしていますか?
前回出演してらっしゃった方たちも、結構苦戦していた話としては、やはりどうしても舞台って斜(はす)に構えるんですよね。ミュージカルや大きい劇場だと特に。お芝居をしている時は大丈夫なんですが、歌になった瞬間に、ちょっと斜に構えそうになる自分がいたりします。これが360℃観られることの難しさだなと思いますし、逆にこれから自分がいろいろなことを経験するためにも、使い分けるじゃないですが、ちゃんと空間に応じた自分の立ち姿、立ち居振る舞いを、コントロールしなければいけないという良い経験にもなっているんじゃないかと思います。
――新しい経験なんですね。
ありがたいです。
――「海」役に取り組んでいて、最初に見た時と、台本を読んだ時と、いろいろと変わっているんじゃないかと思いますが。
そうですね。芸術劇場で藤岡さん、石井さん、彩吹さんがやってらっしゃったお稽古場にも少しお邪魔させていただいたんですが、やはり、見ていたものと実際やるのとではだいぶ違うなとは思いましたし、あの方たちは、僕とは違って百戦錬磨じゃないですか。
――ベテランの方々ですもんね。
役の捉え方や、台詞ひとつの捉え方も僕とは全然違う解釈をされていて、ものすごく勉強になりました。ただ、いざ自分がやる時に、自分がその解釈でやってしまうと、多分ちょっと違うものになってしまう。それを踏まえつつ、自分はどうするのか、どう「海」と向き合っていかなきゃいけないのかを今すごく考えています。3人でイ・サンという人物を表している形になりますが、そのなかで「海」という人が一番、前半は14歳の純真無垢な心をもった男の子の役から、李箱という人になっていくという役割があるので、その変化をもたらすという、言い方が合っているかわかりませんが、“計算”もしなくてはいけないですし、いろんなことをコントロールしながらやっていかなければいけないんだなと思いながらやっています。
■愛してほしいという、人間の根本の欲望は誰しもある
あとはやはり、李箱という人は本当に愛されたことがなくて、小さい時に親に捨てられたというバックグラウンドがあるんですが、そこからいろいろな段階を経て、誰かに、何かに愛されるためには、自分が何かを愛さなきゃいけないということに気づく。僕はそこが一番大きいと思うんです。愛してほしいという、人間の根本の欲望は誰しもあるじゃないですか。愛さずに生きられる人は多分いないと思うんです。愛されるためには、認められるためには、相手を尊敬して愛さなければいけないし、自分を愛してあげないと、誰も自分を愛してくれない。前半から後半に向かって、自分の役割についての計算はもちろんしますが、やはり、そこのメッセージ、人間の根本の芯みたいなものと常に向き合っていかなければ出来ないなと思いますね。
――芸術劇場での公演を観ていて、とても演じがいがありそうな役だなと思いました。初めて観る方も一番衝撃を受けそうな役だなと。
良い意味で、お客様を一番裏切れる役だと思います。そのあたりは、作品の役割として大事にやっていきたいです。
■相手が違うと、方向性は同じでも、その時に動く自分の心が本当に変わってくる
――キャストの組み合わせが変わるのはいかがですか?
今もう、その“洗礼”を受けています。例えば「紅」という女性の役は、池田さん、高垣さん、元榮さんのお三方が本当に三者三様で全然違います。「紅」はものすごく素敵な女性像で、「海」にとって恋人でありお母さんでありという、両極端な部分を出して「海」を導き出そうとしてくれる、そういう女性の役という決まりはあるんですが、そこへのプロセスが皆さん全然違っているんです。相手が違うと、方向性は同じでも、台詞の言い方や、その時に動く自分の心が本当に変わってくるので、そういう意味では、稽古はものすごく気が抜けない感じで進んでいます。
――お客様も、キャストの組み合わせによって印象が変わるでしょうね。
だいぶ変わると思います。僕が今こんなに右往左往しているくらいなので、お客様にはもっとそこの部分を楽しんでいただけるんじゃないかなと思っています。
■喉を酷使しないといけないナンバー、 いろいろトライをして、自分の喉の筋肉を筋トレ
――『SMOKE』の楽曲はいかがですか?
初めに聴いた時は、すごく難しいんじゃないかと思いましたが、聴きこんでいくうちに耳心地が良くなってきて、あとはやはり、韓国の方が書いていらっしゃるからか、すごくドラマチックです。なので、稽古でもよくそういう話になりますが、完全に音楽に身を任せてしまうと、すごくウェットな感じや、重たい感じが出てしまうようなところを、俳優はちゃんと音楽と自分の役の心理を分けて考えて、乗るところは音楽に乗る、そうじゃないところはしっかりそこに立っていなければいけないと、今戦っています。音楽が持つ力を、今までで一番感じているかもしれませんね。
――これまで様々な作品に出ているなかで、韓国の音楽作品は初めてですか?
出演するのは初めてだと思います。
――メロディラインなど音楽的なところや、歌ううえでの技術的なところではどうですか?
よく言われることではありますが、海外ミュージカルの楽曲に日本語をはめると、どうしても難しいというのはやはり韓国語でもあります。なぜこんなところに休符があるんだ、とか。こうめいさんや音楽スタッフの方たちが、僕らが納得できるような見解を説明してくださいます。「これは多分韓国語だからそうなっている」ではなく、「折角ここに休符があるんだからこういう風に使いましょうよ」とか「こういう解釈はどう?」などと言ってくださるので、すごく助けになっています。あと今回はお水を飲む時間がないんですよね。特に「海」は、ほぼ舞台からハケないので。すごく良い、喉を酷使しないといけないナンバーの前にお水を飲む時間がなく、結構膨大な量の台詞を喋ってから、たくさん咳をした後にその歌がやってきたりするんです(苦笑)。だから、歌稽古の時から、お水を飲みたいけど飲まずに歌ってみようというチャレンジを勝手にやってみたり(笑)。いろいろトライをして、自分の喉の筋肉を筋トレしています。今はシーンごとにやっているので、水は飲めちゃうんですが、そこを敢えて我慢して(笑)。
――今から本番の想定をしているんですね。
自分なりにいろいろと、トレーニングだと思ってやっています。
※木内健人さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。この下の応募フォームからご応募ください。応募締め切りは8月22日(木)です。(このプレゼントの募集は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。
SMOKEのは初観劇でした。
開幕して改めて記事を読むとなる程と思うこともありまた観劇するのが楽しみになります。
聞いてみたかった事が記事であったりして嬉しく読ませて頂きました。
素敵なお写真もいっぱいありがとうございました。
初日が開きましたが、私が観るのはだいぶ先なので楽しみでしょうが無いです。記事を読んでワクワク感が止まりません。早く感想が言いたいです。
木内さんのインタビュー記事、たいへん読み応えがあって写真もナチュラルで素敵です!
ますます木内さんが好きになるような文章でした。ありがとうございました。
SMOKE、元々楽しみにしていましたが、きっととても見応えのある作品なのだろうなとこの記事を読んでより興味が湧きました。木内さんだからこそ表現出来る海を楽しみにしています!
昨年浅草九劇での上演も、今年藤岡さんたちの公演も観劇しました。
異なるキャストの心身が組み絡み合って形になっていくひとつの“心理”(真理)がとても興味深い作品ですよね。
出演される役者さんの負担もかなり大きそう、梅雨明けも間近ですがお身体気をつけてください。
今日のプレビューを拝見するのが楽しみです!
とても興味深いインタビュー記事と素敵な沢山のお写真に大満足です!SMOKEを見るのがとても楽しみになりました
初演、芸術劇場と観ましたが、演じる方が違うと印象も大分違いました。木内さんはどんな海になるのか、とても楽しみにしています。
とても興味深いインタビューと素敵なお写真をありがとうございます。
木内さんの海に対する役作りの大変さがよく伝わってきました。明日、配信の記事も楽しみです。観劇前に記事を読んだ感じ方と観劇後に改めて読んだ感じ方がまた違うので、早くSMOKEが観たくなります!