「ヴェネツィアへの憧れが」、『紺碧のアルカディア』作者・並木陽インタビュー(上)

聖マルコ広場の鐘楼から撮影したヴェネツィアの海=写真提供・並木陽さん

欧州から「聖地奪回」をめざす十字軍が幾度も送られていた時代を背景に、歴史の渦に巻き込まれながらも、希望を胸に燃やして生きる人々の姿を描いたオーディオドラマ、青春アドベンチャー『紺碧のアルカディア』が、2019年10月21日(月)から11月1日(金)まで全10回、NHK FMで放送されます。放送後にインターネットで聞くことができる「聴き逃し」配信もあります。この作品の作者で、主に西洋史に取材した物語を書いておられる作家、並木陽さんにインタビューしました。2日連続で上下に分けて掲載します。

聖マルコ広場の鐘楼から撮影したヴェネツィアの海=写真提供・並木陽さん

聖マルコ広場の鐘楼から撮影したヴェネツィアの海=写真提供・並木陽さん

並木さんは2017年8月に花總まりさんらが出演してNHK FMで放送された13世紀のグルジア王国を舞台に描いた『斜陽の国のルスダン』の原作者で、2018年8月から9月にかけて海宝直人さんらが出演してNHK FMで放送された、宗教戦争の時代の欧州で天文学と医学を修めた青年の冒険を描いた『暁のハルモニア』ではオリジナル脚本を担当されました。

2019年10月21日(月)から放送が始まる『紺碧のアルカディア』に出演するのは、花總まり、坂本真綾、井上芳雄、霧矢大夢、石川禅、伊礼彼方、栗原英雄、原康義、チョウヨンホ、丸山厚人、鍛冶直人、板垣雄亮、吉田舞香、櫻井優輝、木下祐子、のみなさんです。

――今回の「紺碧のアルカディア」は三作目ということで、十字軍が題材ですね。

そうです。第四回十字軍です。エルサレムに行かないでなぜかコンスタンティノープルに行ってしまったということで有名な十字軍です。

――舞台設定をこれにしようと思ったきっかけは?

辻邦生先生の「背教者ユリアヌス」という名作があるんですけれど、これがまさにコンスタンティヌス一世がコンスタンティノープルに遷都して東ローマ帝国の礎が築かれたばかりの時代の物語で、演出のかたとこの小説について話していたときに、東ローマ帝国を舞台にした話がやりたいなという話になったんです。東ローマ帝国を舞台にするならどこがいちばんドラマチックかなと考えて、ヴェネツィアが主導した第四回十字軍はとても有名な出来事ですし、私自身ヴェネツィアへの憧れがあったので、そこから舞台設定を決めていった感じです。

――脚本はどのくらいから準備しましたか?

前回(「暁のハルモニア」)が二人の若い男性の物語だったので、今度は二人の女性が活躍する物語がいいということになりまして、前回の収録後から話をしはじめて、放送終了直後ぐらいから具体的にどんな物語を作りたいかという話を徐々に進めていったという感じです。

――キャストは、あて書きでしょうか?

こういう登場人物を出したい、こういう話を書きたいというのがぼんやり生まれたら、どんどん(出演交渉を)進めていただいて、それに合わせてキャラクターも寄せていく。この方がやってくださるんだというのを想定して書いています。これはオリジナル脚本ならではだと思いますし、重要な要素な気はしています。

――Twitterでは放送中の反応が見られましたが、並木さんご自身はご覧になりましたか?

ずーっと見てました(笑)。私は自分の作ったものが他の人に受けとられて初めて物語・小説は真に完成すると考えていて、もちろん反応が見えなくてもきっと誰かに届いたはずだと信じているのですが、それがずーっと目の前に見えるんですよ。それもとても自分では想定しきれないような膨大な反応としてあらわれるので、特に一作目のときはもうなにが起こっているのかわからなかったです。こんなに表現者として幸福なことがあっていいのだろうかって思いながら、ずっとみなさんの反応を見ていました。もちろん二作目のときもそうなんですけど。目が冴えて興奮しちゃって、二週間、「聴き逃し」配信が終わるくらいまで毎晩眠れなかったですね。あまりにも幸福で。

NHK FM 青春アドベンチャー『紺碧のアルカディア』台本=写真提供・並木陽さん

NHK FM 青春アドベンチャー『紺碧のアルカディア』台本=写真提供・並木陽さん

※アイデアニュース有料会員(月額450円)限定部分には、並木陽さんの「斜陽の国のルスダン」が初めてNHK FMの番組の原作となることになった経緯と、「推しの聖地巡礼」という感覚で、ルスダン女王がいたジョージアを旅行した時の様子を現地の写真をまじえて紹介していただいた、インタビュー前半の全文と写真を掲載しています。10月18日(金)掲載予定のインタビュー「下」では、小説とオーディオドラマの脚本の違い、小説を書き始めたきっかけ、次回作の構想、本を作ってみたいという方へのアドバイスなどについて伺ったインタビューの後半の全文と写真を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>

■ジョージア旅行の準備中に、オーディオドラマを作っている方からメールが…

■「推しの聖地巡礼」みたい。大好きなルスダン女王様に会えるかもしれないと

■絶対にゲグティに連れていってと、ドライバーさんとガイドさんにお願いして

■朽ちた壁があるだけでしたが、本当にそこにいたという気持ちで、全身ダイブ

<NHK FM 青春アドベンチャー『紺碧のアルカディア』>
待っているがいい、愛しい黄金の都よ……おまえは私のものだ!
【1-5回】2019年10月21日(月)~10月25日(金) 午後9時15分~午後9時30分
【6-10回】2019年10月28日(月)~11月1日(金) 午後9時15分~午後9時30分
「聴き逃し」配信は、放送翌日の正午~1週間限定で配信。

<関連リンク>
並木陽 Twitter
https://twitter.com/namicky24
並木陽 作品一覧
https://privatter.net/p/3491109
『紺碧のアルカディア』のページ
https://www.nhk.or.jp/audio/html_se/se2019017.html

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※並木陽さんのサイン入り書籍「斜陽の国のルスダン」1冊を、有料会員1名さまに抽選でプレゼントします。有料会員の方がログインするとこの記事の末尾に応募フォームが出てきますので、そちらからご応募ください。応募締め切りは11月17日(日)です。(このプレゼントの募集は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。

並木陽さんサイン入り書籍「斜陽の国のルスダン」の表紙(写真左)と裏表紙(同右)=撮影・橋本正人

並木陽さんサイン入り書籍「斜陽の国のルスダン」の表紙(写真左)と裏表紙(同右)=撮影・橋本正人

※こちらは、amazonで販売されている並木陽さんの著書「斜陽の国のルスダン」です。

※ここから有料会員限定部分です。

■ジョージア旅行の準備中に、オーディオドラマを作っている方からメールが…

――一作目「斜陽の国のルスダン」のお話はどういうタイミングで来ましたか?

「斜陽の国のルスダン」が2017年8月の末ぐらいに放送されたんですが、その年のゴールデンウイークに私はジョージアに旅行しようとしていて、準備をしていたある日、一通のメールが飛び込んできたんですよ。

――予告なしで?

予告なしでというか、それが予告だったんですけど、オーディオドラマを作っているという方から「斜陽の国のルスダン」についての感想のメールをいただきまして。そのときは本当にオーディオドラマになるなんて思っていなくて、ただそういう方に読んでいただいたというだけでもすごく嬉しいなと思っていたら、後日改めて実際に(オーディオドラマとして)やらせてほしいという話になって。

――気がついたら本番になっていたという感じですか?

逐一報告をしていただいて、まだ準備稿の段階から脚本を見せていただいたりとか、キャスティングはこういう感じで進めますとか。キャスティングを教えていただいたときは、あまりの衝撃でなにをおっしゃっているのかさっぱりわからなくて、もうソファに突っ伏してしばらく泣きました(笑)。

――すごいですね。

その後、情報リリースがあって、そのときがいちばん緊張した瞬間だったかもしれません。

――そのときの反響ってどうでした?

すごく爆発的なものだったと思います。私のお知らせのツイートが1000RT超えだったと思うんですが、「斜陽の国のルスダン」の表紙を描いてくださった漫画家のトマトスープさんが、お祝いに素敵な宣伝用イラストをサプライズで作成して送ってくれたんですよね。その効果もあったと思います。

■「推しの聖地巡礼」みたい。大好きなルスダン女王様に会えるかもしれないと

――「斜陽の国のルスダン」のお話があったあたりにジョージアに行かれたと思うのですが、Twitterでは答え合わせに、ということを書かれていましたね。

「斜陽の国のルスダン」は現地に行ったことがないまま書いてしまったので、自分の書いたものが合っているかどうか確かめたかったというのはあります。でも本当はそんなことより、とにかくひたすら行きたかったです。ものすごく行きたかったです。

――聖地巡礼的な?

そうです。推しの聖地巡礼みたいな。とにかくルスダン女王様のことが好きなので、ルスダン女王様に会えるかもしれないというか、そこに彼女が生きていて、どこに彼女はいて、どこに暮らして、どんなものを見て、なにを食べて、どうしていたんだみたいな。

ジョージアの首都トビリシの旧市街とナリカラ要塞=写真提供・並木陽さん

ジョージアの首都トビリシの旧市街とナリカラ要塞=写真提供・並木陽さん

■絶対にゲグティに連れていってと、ドライバーさんとガイドさんにお願いして

――どこかの場所を探されていたということをおっしゃっていましたが…。

そうですね、ルスダン女王が実際に暮らしたと思われるゲグティという宮殿の遺跡をものすごい探して。

――探されたというのは、わかりづらいところにあったというか、あまり知られていないところだったのでしょうか?

いちおう知られている場所なんですけど、すごくわかりづらいところにあって、絶対にゲグティに連れていってほしいとドライバーさんとガイドさんにお願いしていて、でも探せど探せど見つからなくて。その日のうちにスヴァネティという、「斜陽の国のルスダン」の冒頭に出てくる場所ですが、山奥の有名な塔が建っている地域まで辿り着かなければいけないということが決まっていたので、ドライバーさんとガイドさんがケンカしながら探してくれました(笑)。

ジョージアの秘境スヴァネティのウシュグリ村:『斜陽の国のルスダン』冒頭の風景=写真提供・並木陽さん

ジョージアの秘境スヴァネティのウシュグリ村:『斜陽の国のルスダン』冒頭の風景=写真提供・並木陽さん

■朽ちた壁があるだけでしたが、本当にそこにいたという気持ちで、全身ダイブ

――どうでした、見たときは。

朽ちた壁があるだけで、あとは花が咲き乱れて、というところだったんですが、本当にルスダン女王がそこにいたんだという気持ちで、石壁に向かって全身ダイブみたいな感じです。「全身でこの石壁を触る、私は」みたいな感じです。

※並木陽さんのサイン入り書籍「斜陽の国のルスダン」1冊を、有料会員1名さまに抽選でプレゼントします。この下の応募フォームからご応募ください。応募締め切りは11月17日(日)です。(このプレゼントの募集は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。

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