五重人格のヒロイン、サリー・ポーターが主人公のダニエル・キイスの同名小説が原作の舞台『五番目のサリー』〜The Fifth Sally〜 が、2021年10月21日(木)から10月30日(土)まで、よみうり大手町ホールで上演されます。この作品でサリー役を演じる彩吹真央さんにインタビューしました。脚本・演出を担当するのは、同じくダニエル・キイス原作の『アルジャーノンに花束を』をミュージカル化した荻田浩一さんです。インタビュー「上」では、原作を読んだ印象、五重人格の役を演じること、荻田さんが演出する作品の特徴、ストレートプレイの魅力などについて伺ったインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。10月12日(火)午前11時0分掲載予定のインタビュー「下」では、共演者の印象、コロナ禍で感じるエンタテーンメントの存在価値、新規感染者数が増えていくなかで舞台に立っていた時に感じたこと、舞台に立ち続ける想いなどについて伺ったインタビューの後半の全文と写真を掲載します。
――原作を読んだ感想や印象はいかがですか?
多重人格に対して、(ダニエル・)キイスの『24人のビリー・ミリガン』の怖いイメージがどうしてもあったり、『ジキルとハイド』など、ちょっとサスペンスチックな印象がありました。意外とホラーとかサスペンス物に弱いタイプなので、あまりそういう本は読まないのですが、読み進めたら、単純に物語として面白かったんです。何が面白いかといえば、もちろん乖離性同一障害の、多重人格の人を主軸にした物語ではありますが、心理学的要素というか、人間ってもしかしてみんなそうなんじゃないかなと思うようなことを感じながら読み進めていきました。結果、多重人格の他の人格の人たちも出てきますが、やはり軸となる主人格のサリーが、どんどん変わっていく様子が面白いなと思いました。舞台や物語の面白味は、主人公や登場人物などが、精神的に成長していくとか、強くなっていくとか、改心していくとか、そういう変化が面白いじゃないですか。でも、人格自体がどんどん変わっていくことが、物語として一番のめりこんだ、面白いところだなと思いましたね。
――サリーを演じるという視点でご覧になりましたか。それとも物語として?
今回に限らずですが、原作物などは、そこが悩みどころなんですね。「この作品の、この役をやっていただきます」というオファーを頂いて原作を読む時は、役者のさがというか、いち読者ではない感覚は隠せません。今回は、作品の存在は知っていましたが、読んだことはなく、想像がつきませんでした。だから、最初に読んだインスピレーションなどを大事にしたいと思い、シンプルな気持ちで読もうと思って読みました。先程言ったように、サリーがどんどん変わっていくところが面白かったので、これは面白い役をさせてもらえるなと思い、後半はわくわくしながら読み進めていきました。
――舞台上では、5人の人格を全部彩吹さんが演じるんですか? それとも共演者が分けて演じていくのでしょうか?
私はサリーとして存在しますが、それ以外の4人の人格を、私以外の人も担う状況であり、かつ、私がサリーの主人格だけではない、他の人格も共有するという雰囲気になるんじゃないでしょうか。別人格もサリーなので、そこも表現するのに、別人格の役名の人もいます。その人に全部任せるのではなく、私も担いつつ、後半になればなるほど、サリーと別人格との関係性が変化していき、それぞれの人格の葛藤が対比的に表現されていきます。そういう意味では、主人格と別人格を違う役者が演じるというのは自然な形なのかなと思いました。
※アイデアニュース有料会員限定部分には、五重人格の役と“彩吹真央”や本名のご自身との関係、荻田さんが演出する作品の特徴、ストレートプレイの魅力などについて伺ったインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。10月12日(火)午前11時0分掲載予定のインタビュー「下」では、共演者の印象、コロナ禍で感じるエンタテーンメントの存在価値、新規感染者数が増えていくなかで舞台に立っていた時に感じたこと、舞台に立ち続ける想いなどについて伺ったインタビューの後半の全文と写真を掲載します。
<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)
■今までに知らない私が出ないとおかしいと思うので、私自身、そこが楽しみ
■摩訶不思議だけど温かくて辛辣な「荻田ワールド」を存分に発揮してくれるだろうと
■作り込みすぎず、「今、この人格で、こう存在している」と確立させて、嘘がないように
■やったことがない役をやりたいと思っちゃう。役者としてそそられるというか
<舞台『五番目のサリー』〜The Fifth Sally〜>
【東京公演】2021年10月21日(木)~10月30日(土) よみうり大手町ホール
公式サイト:
https://www.cubeinc.co.jp/archives/theater/the-fifth-sally
<キャスト>
彩吹真央
仙名彩世、小野妃香里、藤田奈那
中河内雅貴、大山真志、荒井敦史、井澤勇貴、小寺利光
駒田一
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■今までに知らない私が出ないとおかしいと思うので、私自身、そこが楽しみ
荻田さんに現時点でのお話を伺ったところ、「彩吹さん自身が五重人格の役を演じるわけだから、シンプルに、サリーだけではない要素も担っていただきます」と仰ったので、わくわくしますね。ひとつの作品で複数の役を演じたことは今までに何度もあります。出演者が少ないときに、登場人物が多い時はいろいろな役を担うじゃないですか。そういう時は、「私って多重人格かな」と思うぐらいに忙しいのですが、着替えている間に瞬時に変わって表現していて、本当の私はどこにいるんだろうと思う瞬間がよくあるんです。
――それは、舞台上でいろいろな役を演じているなかで、“彩吹真央”や、本名のご自身はどのへんにいるだろうということですか?
そうです。でも指令を出しているのは必ず私自身ですし、本名の部分でもあれば、彩吹真央という役者の部分でもある。「私ってこんなにコロコロ変わっていいのかな」というか、役者たるものそれが仕事だからやらなくてはいけませんが、1作品のなかで何役もした時に、おかしくなるというか、「私って誰だろう?」と、えも言われぬ感覚になるんです。でも、今回はそれとは別物になると思います。今までは場面やお衣裳や設定でいくらでも演じ分けができましたが、今回は同じ人なので、いつも感じていた感覚とは一緒にならないはずですし、なってはいけないなと思います。今までに知らない私が出ないとおかしいと思うので、私自身、そこが楽しみでもあります。
■摩訶不思議だけど温かくて辛辣な「荻田ワールド」を存分に発揮してくれるだろうと
――荻田さんとお話された時、何か興味深いことはありましたか?
荻田先生の作品をご覧になった方はわかると思いますが、「荻田ワールド」が精密にできていて、摩訶不思議な感じもあれば、すごく温かいけど辛辣な感じがある。それをおそらく今回は存分に発揮してくれるんだろうなと思います。ちらっとお話したのは、衣裳などを変えるのでなく、心象的、心理的な物語をストレートプレイで伝えたいと仰っていました。それは演出家の力量でも、役者の力量でもあるので、すごく挑戦しようとされているんだなと、私も頑張ろうと思いました。
■作り込みすぎず、「今、この人格で、こう存在している」と確立させて、嘘がないように
――ミュージカルならば、これまでの荻田先生の作品らしさが想像しやすいのですが、ストレートプレイだとどうなるんだろうと。
『アルジャーノンに花束を』もミュージカルでしたね。本当に幕が開いてみないとわからないと思いますが、宝塚時代も、退団してからも、荻田先生の作品を観る時も思いますが、特に自分が実際に出る時に思うのは、説明を細かにしないで、お客様に任せるところがあるじゃないですか。私はそこの余白が大好きですが、その分、役者が理解して、咀嚼して、「こうなんだ」という信念をもってそこに存在しないと、お客様が途方に暮れてしまう。役者のハードルが結構高いなと毎回思うんですね。今回はストレートプレイでミュージカルの音楽や踊りで助けてもらうことがない分、作り込みすぎず、「今、サリーはこの人格で、こう思っていて、こう存在している」と確立させて、嘘がないようにその場面、その瞬間に存在しないとダメなんじゃないかと思います。
――ストレートプレイはいかがですか?
最近では、2作品前に『楽屋』というストレートのお芝居をさせていただきました。宝塚を辞めて、ミュージカルにいくつか出させていただいて、初めてストレートプレイをさせていただいた時は、すごく緊張したんですね。音楽などもなく、芝居だけだから、大丈夫かなと。でも、いくつか経験させていただくなかで、構えることなく、作品が持つ力、役が持つ力、台詞が持つ力に任せれば、自分がああだこうだやらなくてもいいんだなと学びました。そこからミュージカルに戻った時に、お芝居の時にこういう感覚でできたから、ミュージカルでもこういう風にすればいいんだなと、次へ次へと繋いでくることが出来ている実感はあるので、芝居、ミュージカル、芝居と、一年にいろいろとやると、刺激的で楽しいですね。宝塚を退団して11年ですが、芝居だけの一年や、ミュージカルだけの一年などいろいろあり、楽しんで舞台に立っていますが、芝居がずっと続くと「ミュージカルに出たいな」と思うし、ミュージカルが続くと「ああ、芝居がやりたいな」と思うくらいになれたことが、良かったかなと思います。
■やったことがない役をやりたいと思っちゃう。役者としてそそられるというか
――今年の初めは『マリー・アントワネット』で、グランドミュージカルでしたし、すごくバラエティに富んでいますよね。
そうですね。大きいミュージカルを経験すればするほど、小さい箱(劇場)やお芝居の時に活かされるものがありますし、小さい所で良い、密な芝居をした時に、大きい芝居に活かされることもあって、だから両方やりたいなと思うんでしょうね。本当にどちらも良い部分があるので。『マリー・アントワネット』のような大きい作品でないと味わえないような、例えば豪華な衣裳の感じや、照明、大道具、世界観、お客様の大きな拍手は味わえないですし、小さい所なりの、小宇宙のような、小さいですが大きなメッセージ性とか、それが伝わった時の大きな拍手とか、両方やめられないですね。
――観る方としてもそうですか? いろいろ観劇されていますよね。
できれば観劇するようにしています。コロナになってから、それ以前よりは少し減ってしまって、オンラインで観るようにしたりしていますが、やはり久々に劇場で客席に座って、ああ、この空間は良いなと感じます。ライブで観るのがやはり一番良いですよね。ストレートプレイを観に行くと、すごく揺さぶられるお芝居をされる役者の方がいらしたら、私もああなりたいと思いますし、すごく格好良く大舞台でミュージカルを観ると、華やかに歌いたい!と思いますし、欲求は尽きないですね(笑)。
――欲求が尽きないことは大事ですよね。
今までにやったことがないような役をやりたいなと思っちゃうんですね。例えば今回ですと、五重人格なんてなかなか巡ってこない作品ですよね。それはもう、役者としてそそられるというか。あとはもちろんミュージカルもそうですし、先日は海に住む魔女をやっていたのですが、人間じゃない役もやりました。
――お衣裳がすごかったですよね。大きなチューブが付いていたり!
そうなんですよ。ゴミまみれのおばちゃんの役でしたが、今までにやったことがない役だから楽しくて。すごく単純な言い方ですが、引き出しが増えることが、私にとってはありがたいことだなと思います。
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ゆみこさんの声が大好きで、たくさんの人格を演じられる際の声にも注目しています。
劇場の座席で、緊張感に包まれてお芝居を観るのが楽しみです!