舞台『冬のライオン』が、2022年2月26日(土)から3月15日(火)まで東京芸術劇場 プレイハウスで上演されます。舞台『冬のライオン』は、英国王家の草創期、1183年に、イングランドの国王ヘンリー二世が居城としていたフランス中部のシノン城で、領土と跡目を誰が継ぐのか決着をつけるべく、一同に会した家族の会話劇です。ヘンリー二世を佐々木蔵之介さんが、王妃エレノア役は高畑淳子さんが演じます。演出は、森新太郎さんです。
アイデアニュースでは、ヘンリー二世の長男・リチャード役を演じる加藤和樹さんにインタビューしました。インタビューは、上、下に分けてお届けします。「上」では、稽古を受けながら感じているこの作品の面白さ、「メインビジュアルは一旦忘れて」と演出の森さんがおっしゃっていたこと、本作でのプレイハウスという場の使い方に驚いていること、『ジャック・ザ・リッパー』のときに、白井晃さんと交わした森さんについての会話、森さんの演出を受けてイメージしていたリチャード像がガラリと変わったこと、共演者の佐々木蔵之介さんと高畑淳子さんのこと、この作品は実はコメディだということなどを伺いました。
「下」では、久しぶりのストレートプレイ出演にあたって感じていること、ミュージカルとライブを同時並行でこなしていた昨年末のこと、20代の頃に比べて無駄を削ぎ落とすことができるようになったこと、一人で準備するときにはみんなで合わせた時に現場で出せるストックを貯めるようにしていること、2022年の活動として発表されている『るろうに剣心 京都編』やご自身のアーティスト活動15周年の集大成となる「野音」のこと、コロナ禍が続いている今思うこと・読者の皆さまに伝えたいことなどについて話してくださった内容や、『冬のライオン』で楽しみにしていただきたいこと、お客さまへのメッセージを紹介します。
(※このインタビューは1月末にリモートで実施したものです)
ーー今、お稽古の状況はいかがですか?
今は大枠と、それぞれのキャラクターを作っていて、多分これからいろいろと変わるんだろうなと予感しています。
ーーこの作品の中では、一番どこが面白いと思われていますか?
演出の森さんとは初めてですが、多分、森さんが作ろうとされている世界観が、いわゆる「中世の王室の物語」というよりは、時代は違いますが、お客さんにとっても見やすい「家族のお話」なのだと思っています。その家族内での、「騙し、騙され」の会話劇なんです。コミカルな部分もありつつ、それほど難しく考えずに観ることができる作品を目指しているのかなとすごく感じています。『冬のライオン』には、ヘンリーとエレノアとが話の軸になり、僕が演じるリチャード、弟のジェフリーとジョンの3人の息子たちが登場します。この息子たちが本当に愛すべきバカというか、逐一おもしろいんですよ。父親の跡を誰が継ぐか。でも誰にも継がせたくないヘンリーがいて。そのやりとりが、すごくおもしろいです。決して重い話ではないと思います。言葉が難しいとは思いますが、言葉の面白さを、楽しんでいただきたいと思います。
ーーメインのビジュアルを拝見すると、もう少し深刻な物語なのかと思っていました。
あれは一旦、忘れていただいて(笑)。
ーー忘れていいのですか!?
森さんも、そうおっしゃっていましたから。衣装合わせも、まだこれからなので、実際に舞台上で描かれる世界観がどのようになるかは、観ていただいてからのお楽しみにしてください。僕個人としては、「プレイハウスをこんな使い方するの?」と驚きました。わりと平面的なお芝居というか、森さんはそこに面白さを見出そうとしているのかなと思います。
ーー「平面的な面白さ」とは、どのようなことでしょうか?
プレイハウスには、奥行きもすごくあります。でも、お芝居の中では、ほとんど奥行きを使わないんです。出演者も7人しかいませんし、その7人が一堂に会する場面も少ないので、より劇場空間にとらわれず、行われる芝居や会話を、純粋にお客さんに届けられる空間の使い方をしているのかなと思います。
ーー立体的な演出で、あちこちに目を奪われるというよりは、登場人物たちの会話に集中して、観劇できる感じでしょうか?
そうですね。動きもそれほど多いわけではないので、目の前で繰り広げられる会話劇に、目が釘付けになると思います。本当に無駄がないです。だからこそ、やる側としてはどう立ち回ろうかなと。まだ探り探りではありますし、森さんのオーダーに、「どうやったらそれが成立するかな」と、いろいろトライしている日々です。
ーー森さんからは、どのようなオーダーがありましたか?
キャラクターによって違いますが、僕が演じるリチャードに関していうと、「本心を隠さずにいるのですが、あまり感情的にならないように、まだ感情を出し切らないように、ギリギリのラインでいてほしい」とおっしゃっていました。お芝居としては、感情的にガッといきたくなるところを抑えて、腹で喋るといいますか。動きに関しても、なるべく無駄を削ぎ落としているので、「このあと何が起こるんだろう」と、次にリチャードが、舞台上でどういう行動をするかに目がいく感じがします。稽古が2周目に入ってから、ガラッと変わる可能性もありますが。
※アイデアニュース有料会員限定部分には、『ジャック・ザ・リッパー』のときに、白井晃さんと交わした森さんについての会話、森さんの演出を受けてイメージしていたリチャード像がガラリと変わったこと、共演者の佐々木蔵之介さんと高畑淳子さんのこと、この作品は実はコメディだということなどインタビュー前半の全文を掲載しています。2月24日掲載予定のインタビュー「下」では、久しぶりのストレートプレイ出演にあたって感じていること、ミュージカルとライブを同時並行でこなしていた昨年末のこと、20代の頃に比べて無駄を削ぎ落とすことができるようになったこと、一人で準備するときにはみんなで合わせた時に現場で出せるストックを貯めるようにしていること、2022年の活動として発表されている『るろうに剣心 京都編』やご自身のアーティスト活動15周年の集大成となる「野音」のこと、コロナ禍が続いている今思うこと・読者の皆さまに伝えたいことなどについて話してくださった内容や、『冬のライオン』で楽しみにしていただきたいこと、お客さまへのメッセージなどインタビューの後半の全文を掲載します。
<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)
■「次、森さんとやる」と話したら、あの白井さんが「俺よりしつこいから」と
■森さんの提示を受けて、ガラガラと、音を立てて崩れ落ちていったリチャード像
■声の圧や息遣い一つ一つが魅力的な蔵之介さん。エネルギー量が半端ない高畑さん
■森さんが「これはコメディ」と。最初は「?」だったが、やればやるほど納得
<舞台『冬のライオン』>
【東京公演】2022年2月26日(土)~3月15日(火) 東京芸術劇場 プレイハウス
公式サイト
https://www.thelioninwinter.jp/
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■「次、森さんとやる」と話したら、あの白井さんが「俺よりしつこいから」と
ーー森さんの演出を受けられて、いかがでしたか?また、これまでに森さんの演出をご覧になったことがある場合は、今回、その時と比べて印象が変わったことがあれば教えてください。
僕自身は『パレード』を観劇したことがあり、知り合いには何人か、これまでに森さんとご一緒された方がいます。『ジャック・ザ・リッパー』のときに、白井(晃)さんと「次、森さんとやるんだよね」とお話していたんです。あの白井さんが「俺よりしつこいから」とおっしゃっていたので(笑)。「白井さんよりしつこいとは、どういうことだろう」と思ったのですが、森さんは、ひとつのことに対してクリアできるまで諦めないんです。その部分をスルーできない方なのだなと思いました。一に対して十の答えを持っていらっしゃる方です。「ああやってみて。こうやってみて。そうじゃなくて」と、多分森さんの中には、台詞の言い回しや立ち位置が思い描けていらっしゃるのだと思うんです。そこにぴたりとハマるまで、やる。そういうことが、すごく多いなと思います。
ーー答えは提示されずに、「とにかくやってみて」という流れを続けるということですか?
台詞のトーンは、ハマるまでやります。
ーー「こういう風にやって」と、森さんが具体的に提示されることもありますか?
提示してくださいます。ほぼ、森さんが思い描いていらっしゃるものを、僕たちが体現していく感じです。最初は、僕たちも一度まっさらな状態で動いて、その後で、森さんが「ここはこうしてみよう」と手を加えていかれました。本当にまっさらなパレットに、我々が描いてみて、そこに森さんがいろいろな色を足していくというイメージです。
■森さんの提示を受けて、ガラガラと、音を立てて崩れ落ちていったリチャード像
ーー森さんのオーダーは、加藤さんが描いていたリチャードのイメージとハマりましたか?もしくは、「新しいな」と感じられましたか?
本読みの段階で、自分が思い描いていたリチャード像とは、変わってきている印象はありますね。
ーー台本を読まれて、ご自身で組み立てられたものと、森さんが提示してくださったリチャード像は、意外と違っていたのですね。
ガラガラと、音を立てて崩れ落ちていきましたね。
ーーそんなにですか!
「なるほど、そういう感じか」と。文字面だけで、彼が成し遂げてきた功績を参考に、武人としての振る舞いや、立ち方、歩き方などを、自分なりにイメージして立ち稽古に臨んだのですが、「おやおや?」と(笑)。自分が思っていたよりも、一癖ありそうな人間だなという感覚はありますね。
ーーそれは、他の役に対してもそうですか?
そうですね。皆さん、森さんのオーダーでキャラクターが変化している感じはあります。
ーー「こうくるだろう」と思っていたものと、違うこともあるのですね。
会話のやりとりだけですから。「相手がこういうテンションでくるのなら、自分はこういかなきゃ」というところを、「あえてそういかないんだ」と思ったところもあります。真逆のことをやったりするんです。そうやって面白くなっていくのが、見ていても感じられます。
■声の圧や息遣い一つ一つが魅力的な蔵之介さん。エネルギー量が半端ない高畑さん
ーー共演者の方々とは、ご一緒されていかがですか?結構、濃そうなメンバーかなという印象を受けました。
濃いですね(笑)。蔵之介さんとご一緒して、持っていらっしゃる雰囲気や声が好きだなと思いました。声の圧や息遣いなどの、一つ一つがすごく魅力的で、目を奪われるものがあります。「次にどんな言葉を発するんだろう」「どういうテンションで次の言葉を言うんだろう」と、惹きつけられる存在感や、不思議な魅力がありますね。やはり実際に対面して、一緒に立ってみないと、分からない魅力があるのだなと思います。
ーー他の皆さまはいかがですか?特に気になっている方や、ものすごく面白いと思っている方などいらっしゃいますか?
リチャードとしては、高畑淳子さんが演じるエレノアとの関係が深いのですが、高畑さんのエネルギー量が、半端ないんです。蔵之介さんも高畑さんも、台詞量が特に多いのですが、それを体の中から出されるエネルギー量と、そこにいらっしゃるだけで、すごく圧迫感のある存在感といいますか。毎回「すごいな」と思いながら拝見しています。高畑さんはいつも、稽古前にラジオ体操をされているんですが、それを僕も一緒にやっています。
ーーそこは、コミュニケーションの場でもありますか?
そうですね。高畑さん、とてもストイックな方だなと思います。台詞も「忘れちゃうから」と、ご自分の部屋中に貼っていらっしゃったり。「昔はスラスラ覚えられてたけど、今は忘れていっちゃうから」とおっしゃっていたのですが、台詞の量が半端ないんです。台本の半分くらいは、蔵之助さんと高畑さんお二人で喋っているので。それが、すっと立ってできちゃうところを拝見して、さすがだなと思っています。これまで培ってこられた経験もあるでしょうが、エレノアとしての面白さもありますし、途中から高畑さんなのかエレノアなのかが、分からない瞬間がありました。ご本人の性格も相まって、エレノアというキャラクターが出来上がっているんだと思います。
■森さんが「これはコメディ」と。最初は「?」だったが、やればやるほど納得
ーー「いわゆる中世の王室の物語というよりは、家族のお話の会話劇」とおっしゃっていましたが、だからこそ役者の持っているものが出そうなのかなと思いましたが、いかがですか?
そうですね。結構出ると思います。蔵之介さんと高畑さんのシーンでは、おふたりが、気を遣わない、でも互いに腹の底にそれぞれの思惑を抱えているんです。すごくだまし合っているのですが、客観的に見ると、それが面白おかしいんです。
ーー私も少し台本を読ませていただきましたが、なんだかチャーミングですよね。もっとドロドロした話だと思っていたのですが。
そうなんです。ドロドロは感じないんですよね。本当にクスッと笑ったり、いやいやそんなことは絶対ないだろう、とか。本読みの最初の段階で、森さんが「これはコメディなので」とおっしゃっていましたから。最初はその意味が分からず、「コメディ?」と思っていましたが、やればやるほど、これは確かにコメディだなと感じるようになりました。
ーー「あのビジュアルを忘れてください」とのお話でしたが、あのビジュアルのイメージを持って行ってはいけないんですね?
あんな人たちは出てきません。親しみやすい感じの人たちが出てきます(笑)。本当に難しく考えずに観ていただきたいですね。
ーー気楽なコメディだと思って、楽しんだ方がいいですか?
本当にそのくらいだと思います。
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とても興味深く記事を読ませていただきました。
原作を古い映画から履修していたので、重厚な王室劇を思い浮かべ気合いを入れなくては!とガチガチに構えていました。
が、この記事を読んで私の中のリチャード像が、いや、「冬のライオン」というお芝居のイメージがガラガラと崩れ落ちました。
騙し騙される会話劇。家族の関係を通じて会話のやり取りを楽しむことがメインになるんですね!
とても分かりやすい評をありがとうございました。
ますます舞台が楽しみになりました。
いよいよ開演ですね!
キービジュアルから、どんな重たい話なのかと思っていたのですが、どうやら予想を裏切るストーリーのようで、見に行くのがますます楽しみになりました!リチャード役、楽しみにしています!
読み進めていく内に、わくわくしてきました。
舞台を見に行くのが楽しみです。
稽古場で笑いが起きるとのツイートを見た時は「あのビジュアル」も相まっている頭の中が?????ってなったのですが、インタビューを読んで納得しました。観劇できる日を楽しみにしています。