ちっちゃな へぇ~(2) 鍼灸や漢方で動物を治療する獣医さん

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私の同級生に獣医さんがいます。彼女は、獣医師資格をとって10年間、宝塚市内と伊丹市内の動物病院に勤めていたのですが、鍼や灸などの東洋医学的な治療をする動物病院を2015年3月に開設しました。「ちっちゃな へぇ~」第2回では、宝塚市内にある彼女の「どうぶつのホリスティック専門病院 おんく堂」を取材してきました。

おんく堂、萩原未央先生とレオくん=撮影・きたあつこ

おんく堂、萩原未央先生とレオくん=撮影・きたあつこ

「おんく堂」を運営しているのは獣医師の萩原未央(はぎはら・みお)さん。萩原さんは小学3~4年の頃、教員だった母の理科授業の勉強研究会に連れられて参加した時に、大小さまざまな動物の骨格標本を作製したことを通して動物の身体に興味を持ったそうです。それが獣医師を目指したきっかけになりました。萩原さんは日本大学 生物資源科学部 動物資源科学科で解剖学を勉強してから、獣医学科を2005年に卒業して獣医師の資格をとりました。

萩原さんは動物病院に勤めながら「あれ?」と思います。おなじ病気の2匹のわんちゃん、血液検査では似たような数値でも状態が異なる場合があるのです。1匹は毛艶も良く食欲もなんとか維持している。もう1匹はぐったり、食欲もいまいち。同じ検査結果なのに全然違う。そして、「毛艶が良いわんちゃんは、飼い主さんにいつも沢山なでてもらっている」ことに気付きました。どうして、沢山なでてもらっているわんちゃんは元気なんでしょう。もちろんほかにも違いが出る理由があるかもしれませんが、とても気になるポイントでした。本格的にマッサージができたら、もっといいのにと、萩原さんは思いました。

現在の医療の主流である西洋医学では、1つの調子の悪い所だけを診て、原因が分からないこともあるけれど、身体の全体を整えるという考えの東洋医学(中獣医学)なら、原因がわかり、しっくりくることも沢山ある。お薬を増やすだけでなく、直接触れる治療として、今後の動物医療の選択肢の大きな一分野としての「中獣医学」の動物病院を開こうと考えました。

温煦堂、萩原未央先生とレオくん=撮影・きたあつこ

おんく堂、萩原未央先生とレオくん=撮影・きたあつこ

おんく堂は「どうぶつのホリスティック専門病院」とされていますが、ホリスティックとは、身体や心の状態を全体的にとらえ、精神・肉体・魂のバランスを整えること。自然治癒力を高め、健康的な生活へと導く治療法です。鍼や漢方薬などの東洋医学も含まれます。これは全身のバランスを整える方法なので、膝や腰の痛みを治療していたら、それまで悩みの種だった外耳炎や目のトラブル、肥満なども同時に改善してきたということも良くあるそうです。最近、「未病」という言葉が使われるようになっていますが、ホリスティックは、異常を発見できない症状に対応できる治療です。動物医療でも過剰な負担なく行える治療法のひとつとして、関心が持たれてきている分野です。おんく堂では、ホリスティック療法の中でも、特に「獣医鍼灸」の手法で治療を行っています。

また、最近ペットの看取りが問題になっていますが、飼い主さんの生活との両立は本当に難しい。飼い主さんと動物とが良いコミュニケーションをとりながら、大切な時間を過ごすというターミナルケアの観点でも、東洋医学を取り入れることでただ辛く悲しい時間という考えから解放されると、萩原さんは考えています。

「おんく堂」は、基本的に往診で診察をしていますが、今回は毎週金曜日12時から、宝塚市清荒神(きよしこうじん)にあるカフェteraco(テラコ)で、ペット健康相談会を開いているとのことで、そちらへお邪魔してきました。

北海道犬の矢吹レオくん(5才)=撮影・きたあつこ

北海道犬の矢吹レオくん(5才)=撮影・きたあつこ

今回の取材に協力してくれたのは、北海道犬の矢吹レオくん(5才)です。レオくんにマッサージをお願いしようと思っていましたが、北海道犬のレオくんは、初診の上、慣れるまで少し時間が必要な警戒心の強いタイプ。萩原先生は無理に始めることはせず、飼い主さんに性格や食べ物の好み、いままでかかった病気などの問診をしたり、お話しながら毛並・体つき・爪・体温・舌などをチェックをしたり、脈をとったりして、徐々に始めてくださいました。現在26Kgある少~しぽっちゃりのレオくんですが、「ベスト体重は20kgかな?」と、痩せるツボやマッサージなども教えながら、自宅でもできるようにマッサージのパンフレットも渡していました。

人間の診断には両手首の脈を診ますが、ワンちゃんネコちゃんは股動脈で診ます=撮影・きたあつこ

人間の診断には両手首の脈を診ますが、ワンちゃんネコちゃんは股動脈で診ます=撮影・きたあつこ

「中獣医学的診断」説明中=撮影・きたあつこ

「中獣医学的診断」説明中=撮影・きたあつこ

中獣医学的診断という五行の相関図を見て、犬種や性格などから木火土金水(モク・カ・ド・ゴン・スイ)のタイプに当てはめてもらうと、「レオくんは木(モク)かな」と、注意した方が良い病気や、他のタイプとの関係や影響などを教えてもらい、あっという間の1時間。1時間後には警戒心の強いレオくんも、そして飼い主の矢吹さんも、すっかり萩原先生と仲良し。今回はできませんでしたが、鍼灸などもされていて、わんちゃんねこちゃんを連れてくることができる場合は、その場での動物鍼灸治療もできるようです。

もうすっかりみんな仲良し=撮影・きたあつこ

もうすっかりみんな仲良し=撮影・きたあつこ

その後、ペット健康相談会の会場となった「カフェteraco」で心月コーヒーを頂きました。普段はコーヒーに少しミルクを入れて飲む私。でも、こちらのコーヒーはブラックで、とっても美味しく頂けました。有機栽培の豆を1つ1つ厳選して選別し、それから焙煎しているこだわりのコーヒーなんですって。その場でゴリゴリとteracoのまみっちさんが、豆をひいてくれる過程を見てるのも素敵な時間でした。

カフェteracoで心月コーヒー(500円)を頂きました。優しい灯のロウソクと=撮影・きたあつこ

「カフェteraco」で心月コーヒー(500円)を頂きました。優しい灯のロウソクと=撮影・きたあつこ

萩原未央先生とお別れのチュ=撮影・きたあつこ

萩原未央先生とお別れのチュ、すっかり仲良し=撮影・きたあつこ

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<萩原未央先生のプロフィール>

獣医師(日本大学卒)。認定獣医師鍼灸師(米フロリダChi Institute)。EJA耳つぼジュエリー協会認定セラピスト。大学卒業後10年間、小動物臨床にたずさわりながら、動物鍼灸やマッサージなどの動物ホリスティック医療と出会う。とくに慢性的な病気や終末期の治療として、動物の体への負担や苦痛の少ない動物ホリスティック医療の可能性にひかれ、2015年3月20日に「どうぶつのホリスティック専門病院おんく堂」を開院。

<萩原未央先生の動物病院について>

基本、兵庫県宝塚市からの往診になります。往診可能地域や往診料金については、メールや電話にてお問い合わせください。

  • おんく堂どうぶつのホリスティック専門病院⇒ http://www.onkudo.com/
    ご予約・お問い合わせ⇒ http://www.onkudo.com/#!contact/c24vq
    おんく堂Facebook⇒ https://www.facebook.com/onkudo
    Email:pokapokaonku★gmail.com ★の部分を@に変更して連絡してください
    電話:090-3860-2211 ※留守番電話の場合には必ずメッセージをお入れください。折り返しお電話いたします。

(診療費について)⇒ 詳細

  • 初診料(カルテ作成料含む)・・・2000円
    往診料(交通費・駐車料金に応じて追加)・・・2000円
    健康相談のみ・・・15分500円、30分1000円
    マッサージ指導・・1500円~
    鍼治療・・・・・・2000円~
    爪切り・耳掃除など・・・500円~

毎週金曜日の12時~は、カフェteracoにて「ペット健康相談会」をしています。連れてくることができる場合は、その場での動物鍼灸治療もできます。おうちで行うマッサージ指導や食事の相談などもできます。予約優先ですので、上記連絡先より予約をお願いします。

  • カフェteraco(テラコ) 〒665-0835 兵庫県 宝塚市宝塚市旭町 1-16-8
    ホームページ⇒ http://teraco-t.jp/cafe/

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<有料会員向け内容>

  • ■ツボっていったいなんなの?
  • ■営血と衛気が正常に流れることで全身の健康が保たれる
  • ■何千年もかけて追求した治療方法
  • ■わんちゃんやねこちゃんは人間よりも鍼治療の反応が敏感

■ツボっていったいなんなの?

鍼の治療を本格的にはじめたときに、実感したことがあります。鍼の治療が効きすぎる! といっても、今まで立てなかったわんちゃんが一瞬で走り回れるというようなミラクルな話ではありませんが。

鍼の治療は、基本的には鍼を身体に刺しますね。この時に、どこをねらって刺しているかというと、よく聞く「ツボ」という部分です。指圧や自己ケアなどでも雑誌なんかで特集されることもありますよね。ではツボっていったいなんなのかわかりますか?ツボは別名で経穴(けいけつ)と呼び、経脈という体をめぐる経脈という道筋にあります。経脈は解剖学的に肉眼で確認できませんが、血管のように全身をめぐっていると考えられています。

■営血と衛気が正常に流れることで全身の健康が保たれる

血管が血液を運搬しているように、経脈は営血(えいけつ)と衛気(えいき)を運ぶ脈です。営血は、経脈の中を通り、食べ物から得たエネルギーのことです。胃の周りを囲む「中焦(ちゅうしょう)」と呼ばれる中医学的な腑臓器からできます。衛気は、経脈の外を通り、身体を温める作用(おんく作用といい、おんく堂の名前の由来です)や外からの病気の原因となるものから身体を守ります。胃の入り口を囲む「上焦(じょうしょう)」でつくられ、これも食べ物のエネルギーからできています。この営血と衛気が正常に流れることで全身の健康が保たれます。食べ物はすべての根源になるので、本当にほんとうにめっちゃ大切です。

■何千年もかけて追求した治療方法

そこで最初の質問に戻りますが、「ツボっていったいなんなのか?」。これは、経脈の流れが悪くなりやすいところです。経脈の流れが順調であれば身体も軽快です。逆に経脈の流れがつまると、どこか痛くなったり、もやもやしたり、重たく感じます。鍼の治療は、そのつまりをとって流れをよくする治療です。そして、どこの経穴を使うと、どのような症状に効果があるか、ということを何千年もかけて追求した治療方法です。ツボの状態は、経脈の流れ方によって様子が変わります。たとえば深さや温かさや広さなどです。それを実際に触って読み取って、治療するのが鍼灸師さんで、動物でも全く同じです。

そのつまりをとる治療ですが、治療を受ける側の状態によっては、効果より疲れがでてしまう場合があります。営血と衛気がほどほどにあれば、流れの改善ができ楽になります。ところが営血と衛気がもうほとんどない状態だと、どうなるでしょうか。川の水に例えると、もう水がちょろちょろとしか流れていないのにどんどんダムの水を開放していくようなイメージでしょうか。営血と衛気の流れが維持できなくなってしまいます。

■わんちゃんやねこちゃんは人間よりも鍼治療の反応が敏感

わんちゃんやねこちゃんは人間よりも鍼治療の反応が敏感に感じます。時には体力そのものはありそうな場合でも、鍼治療後にとてもよく眠ったり、下痢など体調をくずしてしまったり…。効きすぎてしまうというと聞こえが良いですが、丁寧に体の状態を判断しないと逆効果となってしまいます。なので、ちゃんと状態を見極めて、鍼以外の治療をすすめたりする場合もよくあります。鍼治療にとても興味のある飼い主さんは、たくさん鍼の本数を使ってほしそうな、そんな雰囲気を感じる場合もあるのですが、なんでもやりすぎは禁物ですね。

ところで、経穴というのは解剖学的に肉眼では確認できないと書きましたが、特徴がわかっています。

  • 1、 電気抵抗性が低い
    2、 電気伝導率が高い
    3、 神経終末・細動脈・リンパ管・肥満細胞が集まっている

経穴を刺激すると自律神経を介して患部へ刺激が伝わることがわかっています。ちゃんとエビデンス(科学的根拠)もあるんですよ。

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