小劇場を使い倒した舞台芸術の見本! 劇団鹿殺し「キルキン」大阪公演12月8日開幕

「image ─ KILL THE KING ─」公演より=写真:和田咲子

客席数180の下北沢駅前劇場に、今夏一万人を動員した、あの劇団「鹿殺し」が帰ってきた! 妄想系SFカルト劇の名を冠す、伝説的初期作品「image ─ KILL THE KING ─」通称「キルキン」を引っさげて! 先日インタビューさせていただいた、オレノグラフィティさんの「衝撃を受けた作品」というコメントも記憶に新しく、一体全体どんな世界が待ち受けているのか?!ということでドッキドキ(笑)で、拝見して参りました!

「image ─ KILL THE KING ─」公演より=写真:和田咲子

「image ─ KILL THE KING ─」公演より=写真:和田咲子

<ストーリー( 「image」公式ぺージより>
鰤富子(ブリトミコ)は、キレていた。「私の人生は、クダラナイ……」 後輩のホステス・環(タマキ)は売れない映画監督(サブ)と同棲しながら、女優を目指して舞台に立つ日々。ある日、環の出演する劇場を襲撃したのは「ノアの箱船化計画実行委員会」を名乗る宇宙人たち。王(キング)を筆頭に、地球上の生命体を全滅させること、選別した地球人を、火星で厚生させること、次々と明らかになる彼らの「ノアの箱船化計画」。富子と環に危機が迫る時、救世主が現れる。黄金の男(ロキ夫)であった。元世界チャンプのボクサーの体を持つ、人造人間ロキ夫に鰤富子の胸の炎が燃え上がる。冷めていく環の恋!逃げる人造人間!嘆く宇宙人!回り続ける8mmフィルム!ロキ夫とキングの抱えた秘密の物語とは!人間、宇宙人、人造人間、なんでも来い!縦横無尽の逃避行の果て、彼らは「輝かしい日々」を手に入れることが出来るのか?!

■チラシを配り始める奇抜な衣装の「劇団大家族計画」なる一団が乱入し…

あらすじからして盛り沢山の予想ビンビン。当日開演前には、おもむろに劇中使用のウェラブル端末仕様アイテムの紹介が始まり、客席を巻き込み、使用方法と機能を実践レクチャー。会場が笑いになごみ、しばらくすると今度はチラシを配り始める奇抜な衣装の「劇団大家族計画」なる一団が乱入。

ご近所の劇団の営業?それとも???と、暫し困惑(笑)していると、そうこうするうちに客電が落ち、開演かな?と思った矢先、遅れて来た観劇慣れしているとは言えない様子の女性客の大声が響き…。と、ここに来て実はとっくに芝居は始まっており、現実世界から「キルキン」世界へ既に巻き込まれていたことに気付いたのでした。

「image ─ KILL THE KING ─」公演より=写真:和田咲子

「image ─ KILL THE KING ─」公演より=写真:和田咲子

■縦糸横糸無秩序きらびやかながらも、地に足ついた等身大の物語も展開

作品では女優を目指す環(有田杏子さん)と映画監督サブ(橘輝さん)の、互いにそれぞれの夢を追い、ままならない現実にもがき続ける恋人同士の葛藤の物語を、生成りの木綿で縦糸に。

そこに富子(鷺沼恵美子さん)と人造人間ロキ夫(オレノグラフィティさん)の、降って湧いた突然の恋と、その恋故の宇宙人からの逃避行の顛末とその間に見え隠れする富子のこれまでの人生の物語を、発色鮮やかな化繊で横糸に。

そして地球に降り立ち2万年、はるか悠久の時間を地球人に擬態し、人間社会に溶け込み生き続けて来た宇宙人たちが、地球規模(?!)で巻き起こす、火星への移住プロジェクト「ノアの箱船化計画」にまつわるドタバタ、という超カラフルなラメの糸を、縦糸横糸で織り上げた布に縦横無尽無秩序に織り込み、なんともきらびやかな印象を与えるけれども、地に足ついた等身大の物語も展開する、一言ではとても表現できない、不思議な世界を全力で織り上げていました。

※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、「image ─ KILL THE KING ─」のさらに詳細なルポを掲載しています。(有料ページだけの追加写真はありません)

<有料会員限定部分の小見出し>

■キング(丸尾さん)の意外に切ない女ゴコロ(?!)の展開に思わず涙

■キングを慕うドッグ山本(小沢さん)の、なかなか届かぬ思いに胸キュン

■ロキ夫(オレノさん)の男前っぷりが眩しく、うっかり惚れそうに(笑)

■高速で繰り出される色とりどりのシーンに、完璧に寄り添い、滑り込む音楽

■小劇場としては異様に多いシーン転換。ダイナミックかつ繊細な構成は圧巻

<劇団鹿殺し「image -KILL THE KING-」> 上演時間:1時間40分
【東京公演】2016年11月23日(水・祝)~12月4日(日) 下北沢駅前劇場(この公演は終了しています)
【大阪公演】2016年12月8日(木)~11日(日) ABCホール 

<キャスト>
鰤富子(鷺沼恵美子)、大阪ロキ夫(オレノグラフィティ)、キング飯島(丸尾丸一郎)、ドッグ山本/スワン橋本(小沢道成)、キャット三ツ谷(椙山さと美)、雷三郎(かみなりさぶろう)(橘輝)、奥環(おくたまき)(有田杏子)、飯田橋博士(浅野康之)、ビックダディ/メンタルマン(メガマスミ)、ブラザーケン(峰ゆとり)、シスターマミ(木村さそり)、小松菜君/上官(近藤茶)、艦長(菜月チョビ)

<関連ページ>
「image -KILL THE KING-」のページ
http://shika564.com/image/index.html
劇団鹿殺し公式サイト
http://shika564.com/
オレノグラフィティ ツイッター
https://twitter.com/oreno_g?lang=ja

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■キング(丸尾さん)の意外に切ない女ゴコロ(?!)の展開に思わず涙

基本ギャグ担当の宇宙人たちを統べるキング(丸尾丸一郎さん)の、フライヤーにも登場している、金色ボンデージ姿はなかなかの破壊力! オネエ口調とその所作には、有無を言わせぬ迫力がありました(笑)。そうかと思うと、ロキ夫誕生にまつわる、キングの意外に切ない女ゴコロ(?!)の展開には思わず涙。

■キングを慕うドッグ山本(小沢さん)の、なかなか届かぬ思いに胸キュン

そしてそんなキングを慕う、ドッグ山本(小沢道成さん)のなかなか届かぬ思いに胸キュン。今回唯一のゲスト小沢さんは、スワン橋本としても登場しますが、こちらも味があって印象深いキャラでした。

そして、超有名な某アニメの車掌さんスタイルで登場の、宇宙人たちの母船「ラブ・シップ」艦長(菜月チョビさん)は、ちょっとハスキー気味の低めの声で例によって聴かせてくれます。

■ロキ夫(オレノさん)の男前っぷりが眩しく、うっかり惚れそうに(笑)

環とサブの物語には青春の酸っぱ苦さをヒリヒリと感じ、富子とロキ夫の物語には、恋の逃避行要素の崖っぷちな甘さ切なさ感が、どこか昭和な場末臭を纏って展開。こちらは富子の盛りを過ぎたオトナの女ならではの心情に涙し、そしてロキ夫の男前っぷりが、その黄金に煌めく身体以上に眩しく見えて、うっかり惚れそうになります(笑)。

作品の中盤では宇宙人たちとロキ夫との戦いに客席も巻き込み、バーチャルゲームさながらの展開で、客席を沸かせていました。

■高速で繰り出される色とりどりのシーンに、完璧に寄り添い、滑り込む音楽

それら高速で多彩に次々と繰り出される色とりどりのシーンに、完璧に寄り添い、気が付くと、滑り込むように聞こえ、感情を増幅してくるオレノグラフィティさんの音楽は、とてもよい心地でした。

■小劇場としては異様に多いシーン転換。ダイナミックかつ繊細な構成は圧巻

また、地球人と宇宙人、この異空間コラボの世界を表現するための舞台のシーン転換も、小劇場作品としては異様に多く、中劇場クラスの作品並みに大胆かつダイナミックで、しかし小劇場ならではの繊細さも併せ持つ構成で、小劇場を最大限に使い倒した、舞台芸術の見本!というような構成で圧巻でした。

小劇場という有限の空間に広がる無限の空間。劇場へ足を運ばなければ分からないこの不思議な感覚を、体験してみてはいかがでしょうか?

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