吉原光夫さんインタビュー後半です。『レ・ミゼラブル』を卒業すると思うときが来るとしたらどんな思いになったときか伺いました。さらに、昨年に出演された『グランドホテル』『ジャージー・ボーイズ』などのお話や、演劇に対する熱い思いなどについて伺いました。
■『レ・ミゼラブル』が生活のルーティンになったら、やめた方がいいんじゃないかと
――お話を伺っていると、ジャン・バルジャンとジャベールはやはり特異な役なんだと思いました。いつか卒業したいと思いますか?
毎回思いますよ。
――どういうことを感じたら「卒業しよう」と決めるんでしょうか。
ボクシングの亀田兄弟がインタビューで「どこかで自分がやめようと言わないといつまででも出来るといえば出来る」と話していたんですよ。似てるなと思いました。良い時にやめたいというのは、何となく分かるような気がしています。製作発表でも少し言いましたが、『レ・ミゼラブル』が生活のルーティンになったら、やめた方がいいんじゃないかと思っています。攻め続けられないとダメだなと思うと、2役やる方が自分にはいいのかなと思います。
――自分をこう追い込むような感じですか? 逃げ場をなくすというか。
その質問にNOとは言えないですね。近いものはあります。
――吉原さん、火中の栗を拾いそうですよね。
なるほど。そうですかね。でも、演劇だけは裏切らないようにしてるんです。俺が演劇に助けられたというか、救われた人間なので。その演劇に対して誠実にいようと思うだけなんです。そういう意味で、『レ・ミゼラブル』というものに、実直に、誠実に出来なくなったらやめる時かな。もしくは満足するか。満足することがあるのか分かりませんが。ただ、演劇は『レ・ミゼラブル』だけじゃないと思いますからね。みんな『レ・ミゼラブル』病だと思うんです。『レ・ミゼラブル』に出なくちゃいけないみたいな。もっと素晴らしい作品や、もっと素晴らしい世界が外にあるのであれば、その世界を見た方がいいと自分が強く思うようになったらやめるかもしれません。その時が来たら、きっと理由はたくさんありますね。
――ファンの方々も含めて『レ・ミゼラブル』は独特の世界観がありますよね。外から見ると、気軽に足を踏み入れられないというか。
そうですね。今日の製作発表も本当にそうでした。お客さんもスタッフもキャストたちも、普段の作品とは全然違う思いでやっているんだろうと感じています。
――そのなかで吉原さんは渦中に入り込まずに、何かこう、ちょっと引いている感じがします。
そうですね(笑)。
※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分では、『グランドホテル』『ジャージー・ボーイズ』での共演者についての印象や、演劇への思いなど、インタビュー後半の全文を掲載しています。
<有料会員限定部分の小見出し>
■伊礼はすごく誠実にやろうとしてる。藤岡は俳優という職業へのリスペクトが彼を動かしている
■人間が好きだから演劇をやってるので、興味ないフリしていますが、実は「超」見てます
■「俺、バカなんじゃないの」って思ってイライラしたり。器の大きい人間になりたいですよ
■この生きづらい世の中で、演劇とかいうバカ真っすぐなものを一緒の空間で見てほしい
<ミュージカル『レ・ミゼラブル』日本初演30周年記念公演>
【東京公演】2017年5月21日(日)~7月17日(月・祝) 帝国劇場
【福岡公演】2017年8月1日(火)~8月26日(土) 博多座
【大阪公演】2017年9月2日(土)~9月15日(金) フェスティバルホール
【愛知公演】2017年9月25日(月)~10月16日(月) 中日劇場
http://www.tohostage.com/lesmiserables/index.html
<関連サイト>
吉原光夫-カムトゥルー
http://c-true.net/artist/yoshihara-mitsuo/
吉原光夫オフィシャルtwitter
https://twitter.com/mitsuoyoshihara
- 「真っすぐなものをなくしたくなくて演劇をやっている」、吉原光夫インタビュー(下) 2017年4月14日
- 「ジャベールは舞台の袖で救われる」、『レ・ミゼラブル』吉原光夫インタビュー(上) 2017年4月13日
- 「新しい風を巻き起こせるアンジョルラスに」 相葉裕樹インタビュー(下) 2017年3月24日
- 30周年『レ・ミゼラブル』にアンジョルラス役で出演、相葉裕樹インタビュー(上) 2017年3月23日
- 「ワクワクと怖さを胸に」、日本初演から30周年『レ・ミゼラブル』製作発表 2017年3月1日
※吉原光夫さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。有料会員の方がログインするとこの記事の末尾に応募フォームが出てきますので、そちらからご応募ください。応募締め切りは4月28日(金)です。(このプレゼント募集は終了しました)
※ここから有料会員限定部分です。
■伊礼はすごく誠実にやろうとしてる。藤岡は俳優という職業へのリスペクトが彼を動かしている
――昨年から今年にかけて、『グランドホテル』『ジャージー・ボーイズ』『扉の向こう側』『手紙』を拝見しました。すべての作品で吉原さんが強烈に印象に残っています。
『グランドホテル』は大きかったです。トム・サザーランドが驚異的な才能を見せましたよね。彼は頭がいい。彼と共に作っていった役です。かなり刺激的というか、お客さんには賛否両論でしたね。実際にいるであろう人間を演じたかったので、人はあそこまで行くんじゃないかと思って演じました。すごく光栄なことに、稽古しているうちにどんどん出番が増えていき、最後の殺すシーンも巻き戻しみたいなことをさせられて。作っていくうちに増えていくなんて、嬉しかったですね。
――『ジャージー・ボーイズ』は読売演劇大賞の最優秀作品賞を受賞、『グランドホテル』も評価が高い話題作品で、『手紙』は初演翌年に再演。注目作品が続いていませんか?
ありがたいことに嬉しいです。「作品に恵まれてる」とよく言われます。自分は作品を選んだりしていないんですよ。オファーが来た順に出演を決めているので、ツイてるのかなと。
――作品を選んでいるのかと思っていました。
選んでいないですね。まあ、ある意味オファーする側に選ばせているところはあると思うんです。「光夫さんはやらないだろうな」というものは来ないですよ。
――なるほど。吉原光夫の癖を出していくみたいな。
例えばコンサートやライブはやらない人間なので、ミュージカルコレクション的な作品のオファーは来ないですね。
――吉原さんは、例えば、伊礼(彼方)さんとか藤岡(正明)さんと同じ匂いを感じます。とてもこだわりが強くて、追求していく、突き詰めていくようなイメージがあります。
伊礼はチャラいですが(笑)、何か彼なりに、すごく誠実にやろうとしてるんですよね。テニミュ(ミュージカル『テニスの王子様』)で舞台デビューして、そこから這い上がってきたひとりでもあり、自分が役者としてどうあるべきか、いつもデリケートに考えている人だなと思います。藤岡はアーティストでありながら、そこをドロップアウトして俳優をやっている。そういう意味では、俳優という職業に対してのリスペクトが、彼を動かしていると思うんです。こんなこと言うと、「は? 何言ってるの光夫さん!」ってなりますけど(笑)。僕の分析としてはそうなんじゃないかなと思います。
■人間が好きだから演劇をやってるので、興味ないフリしていますが、実は「超」見てます
――おふたりの分析をお聞かせ頂けるとは思っていなかったですが、よく分析されるんですか?
元々劇団や、ものづくり、創造することをやっていたりするからか、人のそういうところを見るのが好きなんですよ。人間が好きだから演劇をやってるので、めちゃくちゃ興味がありますよね。興味ないフリとかしていますが、実は「超」見てますからね。
――割りと、どんと構えていらっしゃる気がしていました。
ものすごく見てますよ。だから、電車の中なんて色々見てる(笑)。「電車で通うの嫌だ」とか周りの方はよく言いますが、電車大好きです。もう、幸せですね。
――幸せ?
「こんな奴いんのかよ!」「出た、すげーのいた」って(笑)。そういう人間観察が大好きですね。演劇する。
――演劇なんですか?
演劇ですよ。ストーリーを感じる。
――「ストーリーを感じるもの」が、演劇の定義?
そうですね。
――舞台の板の上だけじゃないんですね。
はい。もう、その人の人生を感じます。日常生活は演劇だらけです。
――その見たものは、ご自分で演出されたり、芝居するときのための、ストックに入るんですか?
入ります! 演出するときでも、そこから例えを出したりしますね。僕らは人間を演じていますから。現実逃避したり、王子様とか、お客様を夢の世界へ誘うような俳優ではないので、もちろんそういう作品も来ないですね。
■「俺、バカなんじゃないの」って思ってイライラしたり。器の大きい人間になりたいですよ
――人間臭い役はどんと来い?
そうですね。みんな結局人間臭いんですよ。人間臭さを見ないようにするのに何の意味があるんだって思います。それを見た上で、自分みたいだって笑えたり、何かあの人みたいだって笑えたりすることで、人生を生きられるような気がします。自分に蓋をして生きてもしょうがないですよ。暴露していった方がいい。
――吉原さん、生活していてストレスなさそうですね。
ありますよ!
――何に感じますか?
漢字が出てこないとか。
――漢字が出てこない(笑)。
本当に漢字が出てこなさすぎて、イライラする。
――それ、ストレスなんですか?
書き物しなくちゃいけないのに漢字が出てこなくて、超ストレスを感じます。「俺、バカなんじゃないの」って思って超イライラしたり。本当に器の大きい人間になりたいですよ。
――意外なお話がたくさんあって面白かったです。また、ぜひお聞きしたいです。
もちろんです。たくさん喋ってしまいました。
■この生きづらい世の中で、演劇とかいうバカ真っすぐなものを一緒の空間で見てほしい
――最後に、『レ・ミゼラブル』を楽しみにしている皆さんに、メッセージをお願いします。
チケット代は高いですが、高いだけの分は絶対に舞台上で返しますし、おつりがくるぐらいだと思いますので、ぜひ、皆さん1回でいいので劇場に来て、体感してください。今は家から出ないことの方が多い世界になってきていますが、テレビで見られたり、DVDがあればいいのではなくて、わざわざ贅沢に大金を払って、その場所に行って、その瞬間を一緒の空間で体感するということが大切なことだと思うんです。演劇って、日常生活の中で絶対に必要なものではないじゃないですか。
――そうですね。
でも、この生きづらい世の中で、演劇とかいうバカ真っすぐなものを舞台上で見ると、今みんなが臭がって見ない「人との繋がり」や「愛」などが、真っすぐに描かれているんです。俳優もそれをなくしたくなくて演劇をやっていると思います。1回でいいから劇場に来て、一緒にいて欲しいなと思います。
――『レ・ミゼラブル』は、小説や映画などで良く知られた作品で、1度見てみるのにとっかかりやすいですよね。
本当にその通りです。ぜひ、来てください!
――楽しみにしています。ありがとうございました!
※吉原光夫さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。有料会員の方がログインするとこの記事の末尾に応募フォームが出てきますので、そちらからご応募ください。応募締め切りは4月28日(金)です。(このプレゼント募集は終了しました)
吉原さんは、超一流の職人さんのような俳優だと感じています。プリンスではないけれど、舞台に対して強い思い、こだわりがあり、若手俳優を引っ張り、演出家ともとことん議論しながら最高の舞台を作り上げている方かな…と。
レ・ミゼラブルではバルジャン役、特に吉原さんの歌うBring Him Homeは大好きです。今回も楽しみにしています!