伊集院忍を完璧に演じた柚香光、楽しく華やかな宝塚花組『はいからさんが通る』

宝塚花組公演『はいからさんが通る』より=撮影:アイデアニュース・橋本正人

宝塚歌劇花組公演、ミュージカル浪漫 『はいからさんが通る』 が、2017年10月7日に梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで開幕し、10月24日からは日本青年館ホールで上演されます。伊集院忍・ミハイロフ侯爵役は、ビュジュアルのはまり具合に驚かされる、柚香光(ゆずか・れい)さん。最後の幕が下りきるまで、楽しく華やかな展開に目が離せず、1人1人のキャラクターの個性が光ったこの舞台。宝塚歌劇で繰り返し上演される人気演目になればいいなと思う作品でした。

宝塚花組公演『はいからさんが通る』より=撮影:アイデアニュース・橋本正人

宝塚花組公演『はいからさんが通る』より=撮影:アイデアニュース・橋本正人

大正ロマン華やかなりし東京を舞台に、眉目秀麗で笑い上戸な陸軍少尉・伊集院忍と、「はいからさん」こと跳ねっ返りのじゃじゃ馬娘の女学生・花村紅緒が繰り広げる波乱万丈の恋物語。紅緒が起こした騒動がきっかけで、忍は九州に転属。そして戦地シベリアへ。過酷な運命に翻弄されながらも一途に愛を貫く様子を、個性豊かな登場人物を絡めて描きあげるロマンティックコメディです。

柚香さんは、多くの女性が素敵だと考えるであろう男性像そのものの伊集院忍を、完璧に演じていました。柚香さん演じる忍の温かい眼差しが、おてんばな紅緒を、どんな時でも優しく強く見守ります。踊りのシーンでも、長い手足でキレのある柚香さんのダンスは、際立っていました。

花村紅緒役は100期生の華優希(はな・ゆうき)さん。唇とほっぺたが特に可愛らしく、芯がしっかりあって度胸が良さそうな所が、花村紅緒役にピッタリでした。伊集院忍が戦死したという知らせを受けて、実家の父に持たされた母の形見の白い喪服を着て、長い髪をバッサリと切り、凛として現れた名シーンも再現されていました。また「はいからさんが通る」の自転車のハンドル、サンドイッチ、お皿を割る場面など、ほぼ前半の名シーンは再現されていて漫画ファンも見応えたっぷりだと思います。

宝塚花組公演『はいからさんが通る』より=撮影:アイデアニュース・橋本正人

宝塚花組公演『はいからさんが通る』より=撮影:アイデアニュース・橋本正人

忍の祖父、伊集院伯爵役は、専科の英真なおき(えま・なおき)さんで、伯爵の夫人役は、芽吹幸奈(めぶき・ゆきな)さん。伊集院伯爵は、旗本の末裔である紅緒を、最初は目の敵にしますが、伯爵と夫人の間にあった誤解が解けたことで、紅緒を許します。原作の「はいからさんが通る」の漫画の複数の場面を、伯爵と夫人が作るハートマークで一瞬にして端的に表現した、鮮やかな演出でした。

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■100期生の男役、聖乃あすか。低い声に上品な佇まいで、色っぽく美しい藤枝蘭丸に

宝塚花組公演『はいからさんが通る』より=撮影:アイデアニュース・橋本正人

宝塚花組公演『はいからさんが通る』より=撮影:アイデアニュース・橋本正人

■鳳月杏にドキッ、水美舞斗はワイルド、城妃美伶は凛として、天真みちるに笑わされ

宝塚花組公演『はいからさんが通る』より=撮影:アイデアニュース・橋本正人

宝塚花組公演『はいからさんが通る』より=撮影:アイデアニュース・橋本正人

■宝塚にピッタリ。「すみれ組」の峰果とわ、和礼彩、翼杏寿は「泣く子も笑う」愉快な3人

宝塚花組公演『はいからさんが通る』より=撮影:アイデアニュース・橋本正人

宝塚花組公演『はいからさんが通る』より=撮影:アイデアニュース・橋本正人

<ミュージカル浪漫 『はいからさんが通る』 >
【大阪公演】2017年10月7日(土)~ 10月15日(日)梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
【東京公演】2017年10月24日(火)~ 10月30日(月)日本青年館ホール

<関連ページ>
宝塚歌劇団のページ
http://kageki.hankyu.co.jp/revue/2017/haikarasan/index.html
梅田芸術劇場のページ
http://www.umegei.com/schedule/655/

<関連サイト>
2017年9月29日(金)~12月24日(日) 弥生美術館「『はいからさんが通る』展 ~大正♡乙女らいふ×大和和紀ワールド!~」
http://www.yayoi-yumeji-museum.jp/yayoi/exhibition/now.html
2017年11月11日(土)公開 映画「劇場版 はいからさんが通る 前編 ~紅緒、花の17歳~」
http://haikarasan.net/

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1975年から77年に「週刊少女フレンド」で連載された大和和紀さん原作の少女漫画「はいからさんが通る」は、テレビアニメ、実写映画やドラマとなり、今回、満を持しての宝塚歌劇登場となりました。東京・弥生美術館では、2017年9月29日から12月24日まで、原画などを展示する「『はいからさんが通る』展  ~大正♡乙女らいふ×大和和紀ワールド!~」が開催されており、2017年11月11日には映画「劇場版 はいからさんが通る 前編 〜紅緒、花の17歳〜」も公開される予定です。

■100期生の男役、聖乃あすか。低い声に上品な佇まいで、色っぽく美しい藤枝蘭丸に

宝塚花組公演『はいからさんが通る』より=撮影:アイデアニュース・橋本正人

宝塚花組公演『はいからさんが通る』より=撮影:アイデアニュース・橋本正人

紅緒の幼馴染で、歌舞伎の女形役者の藤枝蘭丸役は、100期生の男役、聖乃あすか(せいの・あすか)さん。紅緒と駆け落ちしたり、伊集院家で住み込みでメイドとして働いて紅緒を助けたり、大好きな紅緒のためなら何でもする健気な男の子です。大和撫子な見た目ですが、男の子なのでさすがに低い声。聖乃さんの正統派の美しい顔立ちに黒髪が似合い、上品な佇まいがとても色っぽく美しかったです。

また、立ち居振る舞いが一際魅力的だったのが、花乃屋吉次役の桜咲彩花(おうさき・あやか)さん。柳橋の美しい芸者さんで、伊集院忍に秘かに思いを寄せていたこともありました。しかし紅緒が婚約者だと知って諦め、以降何かと花村紅緒を助けてくれる役どころです。漫画のイメージ通りの東京のチャキチャキした芸者さん役ですが、桜咲さんの立ち居振る舞いが大変美しく、艶のある声と着物の裾さばきに見惚れてしまいました。

■鳳月杏にドキッ、水美舞斗はワイルド、城妃美伶は凛として、天真みちるに笑わされ

宝塚花組公演『はいからさんが通る』より=撮影:アイデアニュース・橋本正人

宝塚花組公演『はいからさんが通る』より=撮影:アイデアニュース・橋本正人

出版社「冗談社」の社長兼編集長、青江冬星は、家庭の事情で徹底した女性アレルギーがあり、母譲りの美しい顔立ちで、実家は銀行。漫画「はいからさんが通る」の中でもファンの多いキャラクターです。青江冬星役の鳳月杏(ほうづき・あん)さんは足が長く、ふわふわした長髪も似合い、クールで男らしいところがピッタリでした。今回の舞台は、登場人物を時系列でしっかり描いていることもあり、青江冬星はなかなか登場しないのが、少し残念なところ。もっともっと見たかったですが、左手をポケットに入れた美しい立ち姿、鳳月さんの切れ長の目元には十分、ドキッとさせていただきました。

忍の部下、鬼島森吾役の水美舞斗(みなみ・まいと)さんは、精悍で男らしくワイルド。ぶっきらぼうで口は良くないけれど、命の恩人の忍に最後まで忠誠を誓い、要所要所で必ず助けに入る役です。漫画によると、片目なのは、少年時代に大人の女性に淡い恋心を抱き、事故があったからで、本当は心優しい人物。水美さんの顎のシャープさと、目つき、立ち姿がとっても男らしくワイルドで、特に2幕で鳳月さんのソロの前に、水美さんのソロがありましたが、歌もとても男らしくて良かったです。

紅緒の友人で華族のお嬢様の北小路環役は、城妃美伶(しろき・みれい)さん。2幕のプロローグでモダンガールのダンスを見せてくれますが、環の言葉「私は誰かに選ばれるのではなく、私が誰かを選ぶのよ」をダンスで表現されているように思いました。結婚が決まっていた環ですが、密かに慕っていた鬼島が満洲へ帰ったと聞くと、「家出しちゃえば向こうだって諦めるわ。私、鬼島さんが好きよ」と、満洲へ帰った鬼島さんを追いかけていくシーンも、かっこよく決まってました。「はいからさんが通る」の登場人物は、どの女性も凛として「自分」というものがしっかりあって、とても素敵に表現されています。

車引きの牛五郎役は、天真みちる(てんま・みちる)さん。天真さんが牛五郎役なんて面白くないはずがありません。駆落ち中の蘭丸と紅緒に絡み、ケンカして紅緒に大負けし、紅緒の子分になります。伊集院家にも出入りし、紅緒を「親分」と呼び、いつも近くで支えます。舞台の奥の方にいても、天真さん演じる牛五郎の行動やしぐさ、表情がとても気になり、細かい演技に何度も笑わされました。

■宝塚にピッタリ。「すみれ組」の峰果とわ、和礼彩、翼杏寿は「泣く子も笑う」愉快な3人

宝塚花組公演『はいからさんが通る』より=撮影:アイデアニュース・橋本正人

宝塚花組公演『はいからさんが通る』より=撮影:アイデアニュース・橋本正人

「泣く子も黙る、関東すみれ組」の有明、野路、丸葉の役で登場するのは、峰果とわ(みねか・とわ)さん、和礼彩(かず・れいさ)さん、翼杏寿(つばさ・あんじゅ)さん。原作でも「すみれ組」だったのかなと確認したら、バッチリ「すみれ組」で、宝塚歌劇にピッタリ。3人のコミカルな仕草は「泣く子も笑う、仲良し3人組」のようで、愉快でした。3人は、第2幕のプロローグではモダンボーイ役、狸小路伯爵邸の場面では記者、反政府運動の場面では反政府主義者(峰果さんはリーダー)と、同じような役の中で登場する場面も多く、目を引きました。

紅緒の父、花村政次郎役は冴月瑠那(さえづき・るな)さん、伊集院家の奥女中の如月役は、鞠花ゆめ(まりか・ゆめ)さん。そして、狸小路伯爵役の舞月なぎさ(まいづき・なぎさ)さんら、漫画の特徴ある登場人物の髪型や顔つきなどが見事に再現されており、キャラクターの誰もが生き生きと演じられていて、生命力あふれる舞台になっていました。

楽曲も「はいからさんが通る」にピッタリの印象に残るメロディーで、観劇後の私の心の中には「はいからさんが と・お・る」というメロディーが流れていました。宝塚歌劇で繰り返し上演される人気演目になればいいなと思いました。

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