蝦夷の戦いと人間ドラマを色鮮やかに描く 宝塚星組『阿弖流為 –ATERUI–』

宝塚歌劇星組公演 『阿弖流為 -ATERUI-』より=撮影:アイデアニュース・橋本正人

宝塚歌劇星組公演『阿弖流為 –ATERUI–』が、2017年7月15日、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで開幕しました(東京公演は7月31日から)。大和朝廷が東北へ支配領域を拡大しようとしていた8世紀。権益を求める貴族たちと、蝦夷を守ろうとした者たちの戦いと人間ドラマを、美しい衣裳と、迫力ある立ち回り、豊かな光量の映像を駆使して、色鮮やかに描いた舞台です。

宝塚歌劇星組公演 『阿弖流為 -ATERUI-』より=撮影:アイデアニュース・橋本正人

宝塚歌劇星組公演 『阿弖流為 -ATERUI-』より=撮影:アイデアニュース・橋本正人

原作は、2000年に吉川英治文学賞を受賞した高橋克彦氏の小説「火怨 北の燿星アテルイ」(講談社文庫)。蝦夷の諸勢力を結集し、朝廷に立ち向かった阿弖流為(あてるい)役は礼真琴(れい・まこと)さん。礼さんの歌声は低音まで良く響き、民族調の衣装をスマートに着こなしていました。最後のシーンで、「わが名は阿弖流為、蝦夷の心だ」と叫ぶところでは、胸が震えました。

阿弖流為に心を寄せる女性、佳奈(かな)役は、有沙瞳(ありさ・ひとみ)さん。有沙さんは2016年に雪組から異動になったばかりですが、阿弖流為が佳奈を高く持ち上げるシーンやリフト、見つめ合うシーンでの礼さんとの息はピッタリ。その佳奈をずっと守ってくれるかわいい義弟の菟穂名(うほな)役は、天彩峰里(あまいろ・みねり)さんで、かわいらしく芯のある少年を熱演され、印象に残りました。

大和朝廷側が「蝦夷は人ではない」とする当時の状況下で、唯一、朝廷側で蝦夷を「人」として扱う人物として描かれたのは、武人、坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)。坂上田村麻呂を演じた瀬央ゆりあ(せお・ゆりあ)さんの細い体から、聡明な坂上田村麻呂の思いが伝わってきました。物語が終了したあとは一転、バチを持って躍動的に踊る瀬央さんの姿も魅力的でした。

宝塚歌劇星組公演 『阿弖流為 -ATERUI-』より=撮影:アイデアニュース・橋本正人

宝塚歌劇星組公演 『阿弖流為 -ATERUI-』より=撮影:アイデアニュース・橋本正人

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■壱城あずささんは、我が身を呈して蝦夷を守る重要な人物を、迫真の芝居で

宝塚歌劇星組公演 『阿弖流為 -ATERUI-』より=撮影:アイデアニュース・橋本正人

宝塚歌劇星組公演 『阿弖流為 -ATERUI-』より=撮影:アイデアニュース・橋本正人

■大きな目が特徴的な夏樹れいさんは、朝廷側のしぶとい人物を、コミカルに

宝塚歌劇星組公演 『阿弖流為 -ATERUI-』より=撮影:アイデアニュース・橋本正人

宝塚歌劇星組公演 『阿弖流為 -ATERUI-』より=撮影:アイデアニュース・橋本正人

■阿弖流為と最後まで行動を共にする親友の母礼をさわやかに演じた綾凰華さん

宝塚歌劇星組公演 『阿弖流為 -ATERUI-』より=撮影:アイデアニュース・橋本正人

宝塚歌劇星組公演 『阿弖流為 -ATERUI-』より=撮影:アイデアニュース・橋本正人

<宝塚歌劇星組『阿弖流為 –ATERUI–』>
【大阪公演】2017年7月15日(土)~7月23日(日) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
【東京公演】2017年7月31日(月)~8月6日(日) 日本青年館ホール

<関連サイト>
宝塚歌劇『阿弖流為 –ATERUI–』
https://kageki.hankyu.co.jp/revue/2017/aterui/index.html
梅田芸術劇場『阿弖流為 –ATERUI–』
http://www.umegei.com/schedule/637/

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■壱城あずささんは、我が身を呈して蝦夷を守る重要な人物を、迫真の芝居で

蝦夷の長の1人、伊治公鮮麻呂(これはるのきみあざまろ)=壱城あずさ(いちじょう・あずさ)さん=は反乱を決意し、阿弖流為らと立ち上がります。

蝦夷の長たちの跡継ぎ、伊佐西古(いさしこ)=ひろ香祐(ひろ・かゆう)さん=、諸絞(もろしま)=音咲いつき(おとさき・いつき)さん=、阿奴志己(あぬしこ)=天飛華音(あまと・かのん)さん=や、朝廷に内通しようとしたところを阿弖流為に説得されて回心し阿弖流為の側近となった飛良手(ひらて)=天華えま(あまはな・えま)さん=らは、蝦夷征伐を任ぜられた参議・紀広純(きのひろずみ)=輝咲玲央(きざき・れお)さん=らの軍勢を打ち破ります。

しかし、その後、商いをしている物部天鈴(もののべのてんれい)=颯香凜(さやか・りん)さん=と都をこっそり訪れた阿弖流為たちは、朝廷側に捕らえられた伊治公鮮麻呂を見つけます。阿弖流為たちは、伊治公鮮麻呂を助け出そうとしますが……。伊治公鮮麻呂役の壱城さんは、我が身を呈して蝦夷を守る重要な人物を、迫真の芝居で演じていました。

宝塚歌劇星組公演 『阿弖流為 -ATERUI-』より=撮影:アイデアニュース・橋本正人

宝塚歌劇星組公演 『阿弖流為 -ATERUI-』より=撮影:アイデアニュース・橋本正人

■大きな目が特徴的な夏樹れいさんは、朝廷側のしぶとい人物を、コミカルに

続いて蝦夷征伐を命じられた朝廷の参議、紀古佐美(きのこさみ)=夏樹れい(なつき・れい)さん=は、大軍を率いて行きながら大敗します。大きな目が特徴的な夏樹さんは、大敗しても朝廷にいすわり続けるしぶとい人物を、コミカルに演じていました。

宝塚歌劇星組公演 『阿弖流為 -ATERUI-』より=撮影:アイデアニュース・橋本正人

宝塚歌劇星組公演 『阿弖流為 -ATERUI-』より=撮影:アイデアニュース・橋本正人

■阿弖流為と最後まで行動を共にする親友の母礼をさわやかに演じた綾凰華さん

そして朝廷はついに、切り札の武人、坂上田村麻呂に蝦夷征伐を命じます。坂上田村麻呂の力を知り尽した阿弖流為は、ある大きな決意をします。仲間たちは驚きますが、阿弖流為の軍師的存在の母礼(もれ)=綾凰華(あや・おうか)さん=は、最後まで阿弖流為と行動を共にする道を選びます。ヒロインの佳奈の兄でもある母礼役の綾さんは、阿弖流為の一番の親友の姿を、さわやかに演じていました。綾さんは、2017年8月7日付で雪組へ組替えとなりますが、雪組でも一層活躍されることが楽しみな男役さんです。

宝塚歌劇星組公演 『阿弖流為 -ATERUI-』より=撮影:アイデアニュース・橋本正人

宝塚歌劇星組公演 『阿弖流為 -ATERUI-』より=撮影:アイデアニュース・橋本正人

今回の作品、『阿弖流為 –ATERUI–』の舞台上には、可動式の大きなスクリーン型ディスプレイがいくつも設置され、馬が駆けるシーンや森や戦いのシーンなどが、豊かな光量で色鮮やかに写し出されていました。また、蝦夷の地名や地図などもこのディスプレイに表示され、わかりやすく、美しく、躍動的な舞台を作り出していました。

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