「見て見ない振りができない時代に」、濱田めぐみ&伊礼彼方インタビュー(下)

伊礼彼方さん=撮影・岩村美佳

2017年12月2日開幕のミュージカル『メンフィス』に出演する、濱田めぐみさんと伊礼彼方さんにインタビューの後半です。『メンフィス』についてのお話のほか、濱田さんから見た伊礼さん、伊礼さんから見た濱田さんについて、『王家の紋章』初演と再演での共演時の印象などについて語っていただきました。

伊礼彼方さん=撮影・岩村美佳

伊礼彼方さん=撮影・岩村美佳

――楽曲の良さや、それこそ黒人のソウルフルな曲で、楽しめちゃうところもありますよね。

濱田:だからといって楽しいだけでは終わらない、何かが残るのが『メンフィス』なんですよね。「ヒューイはメンフィスを選んだね」とか、「飛んでいってしまったフェリシアは1人白人社会に入ってどうなっちゃうの?」とか色々なことが残ります。結局誰もかれもがハッピーエンドではないですよね。ボビーとエセルがカップルになったぐらいで、あとは結局みんなそれぞれの生活に戻っていきますから。「今回の『メンフィス』は何を提示してくれるんだろう」と強く思っています。

――今はまだ考えている途中という感じですか?

濱田:それをお客さんに考えてもらうに至るまでに、我々がリアリティをもって、それこそ耕史さんが言った世界観の中でどれだけ生き生きと、まさにそこにいるかのように演じられるかというのがキーかなと思います。それをバックアップしてくれるのが音楽や、セット、衣装、照明ですね。

――演出もよりリアルにとおっしゃっていましたね。

伊礼:そうですね。ようやくこういう作品も上演できるようになったということじゃないでしょうか。もっと色々と他の作品もあるだろうと思いますが、例えば日本の中でも戦争の話など色々あるじゃないですか。そういう作品を作る人は忘れて欲しくないんだと思うんです。僕らは戦争を経験していない訳ですし、話を聞くだけで、あとはドキュメンタリーを見たりとかですよね。そういう意味でいえば、お互いがその事実を受け入れて、前進していこうねという証だと思うんです。そういうことも踏まえて、「ただのエンターテイメントではないよ」と。わざわざ言わなくてもいいんじゃないかという内容と、エンターテインメント性とのバランスがいい作品だと思います。

※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、濱田さんから見た伊礼さん、伊礼さんから見た濱田さんについて、『王家の紋章』初演と再演での共演時の印象などについて語ってくださったインタビューの後半の全文と写真を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>

■今の若い子たちには嘘が通用しない。変は変、嫌なものは嫌だと

■伊礼くんは、すごく試すんです。怖いもの知らずで、開拓していける人

■どうしてそんなに音程がいいんですか?って聞いたら、面白いコメントが…

■なぜ素敵なエンターテイメントないのかを考えると、すごく深い『メンフィス』

<ミュージカル『メンフィス』>
【東京公演】2017年12月2日~17日 新国立劇場 中劇場
公式ページ
http://hpot.jp/stage/memphis2017

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濱田めぐみさん=撮影・岩村美佳

濱田めぐみさん=撮影・岩村美佳

※ここから有料会員限定部分です。

■今の若い子たちには嘘が通用しない。変は変、嫌なものは嫌だと

濱田:伊礼くんの話を聞いていて思ったけれど、この作品をやる意味の一つに、見て見ない振りができない時代に入ったのかなと思う。今の若い子たちには嘘が通用しない。変は変、嫌なものは嫌だと。それぞれの主張、フタをしていたのものが噴出しているので、それを見ないようにはできないんだなと。この『メンフィス』は、それもすごく表していると思っていて、嘘はつけないんです。でもそれって、それぞれがやりたいことだから。伊礼くんの話を聞いて、世界情勢とか色々な事がリンクし始めているから、この作品が今投げられたのかなと思いました。

伊礼:それはあるかもしれないですね。

濱田:それこそ芸術やパフォーマンスを通して。

――そういう意味ではミュージカルならば見せやすいということですね。

濱田:オブラートに包まれて。

伊礼:これ、ストレートの芝居だったら重たいですからね(笑)。

濱田:重い。絶対重いと思う。

伊礼彼方さん=撮影・岩村美佳

伊礼彼方さん=撮影・岩村美佳

■伊礼くんは、すごく試すんです。怖いもの知らずで、開拓していける人

――少しお互いの話も伺いたいんですが、『王家の紋章』で初演、再演とご一緒されましたよね。がっつり芝居は一緒にされていませんでしたが、お互いを見る時間は長かったのかなと。ご一緒して意外だったことは何ですか?

濱田:「なんて芝居の引き出しが多いんだろう」と思いました。

伊礼:(笑)。

濱田:嬉々としてやっていて、通しでもすごく試すんですよ。「通します!」と言ったときに、色々なアイデアをばばばっとやって、あとあと演出家が「あの~、伊礼くんあそこさ……」という感じで(笑)。何か怖いもの知らずというか、そうやって開拓していける人がいるから、みんなが安心して、「やってもいいんだ」と思う……。フロンティアスピリッツというのかな。がんがん言ってくれるので、いい意味で立ち止まらずに進むんです。本当に旗を持って、ばばばってやってくれるから。

――「こっちだよ」と(笑)。

濱田:「やってもいいらしいよ、あれくらい」という感じで。上手だから、それがおかしくてまた。本番は何気に……。

伊礼:ちょっとやっていましたね。

濱田:みんなそれを楽しみに袖に見に来てるの。「あ、今ちょっとおもしろかったよね」って。

伊礼:やり続けていましたね。

濱田:袖でたまに一緒になる時間ありましたね。

伊礼:ありましたね。

濱田:スタンバイの時間とか。伊礼くんが出て、私が出るときに少し早めに来て喋ったりしたね。

濱田めぐみさん=撮影・岩村美佳

濱田めぐみさん=撮影・岩村美佳

■どうしてそんなに音程がいいんですか?って聞いたら、面白いコメントが…

――伊礼さんはいかがですか?

伊礼:僕は、みんなご存知だと思うんですが、歌が上手で。

濱田:音程?

伊礼:音程がぴっちりだとずっと思っていたんですが、だからといって人間、稽古中というのはそれなりに失敗を繰り返して本番に向かっていくんですよ。色々な先輩とやらせてもらって、「すんげぇな!」と思っていても、稽古は一緒に作っていくので、同じなんですよ。同じ段階から始まって、くじけて、失敗して、もう1回練り直してやるんですが、めぐさんは最初から歌が上手いんですよ(笑)。

――なるほど!

伊礼:音をはずすということが、あまりないんですよ。あまりというか、俺は見られなかったので、意外というか「なぜ?」という疑問が稽古中にわきました。

濱田:言われたもん。「どうしてそんな音程やってんの?」って。

伊礼:そう。「どうしてそんなにピッチがいいんですか? どういう訓練をしたんですか?」と聞いたら、面白いコメントがあったんです(笑)。

濱田:言っていいですか?

伊礼:ぜひぜひ。

濱田:劇団四季では、浅利さんの前で歌を歌うときに、音をはずせないんですよ。

伊礼:(爆笑)

濱田:だから、みんな必死の思いで、見えないところで吐くほど練習するという話をしたら、「なるほど! やっぱやってるんだ!」って(笑)。

――(笑)。じゃあ、稽古に来る段階で吐くほど練習は終えてからいらっしゃる?

濱田:そう。

伊礼:稽古場で事前に「次の日これをやりますよ」と言われてから、僕は前日に少し見て、何となく、うろ覚えで稽古に行くんですよ。それで、うろ覚えのままやったりして、その音が出てこなかったらたくさん失敗するんですよ。でも、出たらすっとそのまま行く。

濱田:(笑)。

――ちなみにその方法を伺って、伊礼さんも死ぬほど吐くほど練習するようにするんですか?

伊礼:本番にあがるまでにはね。

――稽古場までにはしない?

伊礼:稽古までにはしない。死ぬほど稽古はしない。それは稽古をして、何となく形が見えたら、そこで初めて僕は自分に浸透させ始める。だから、基本的には覚えないで行きます。

――じゃあ、ノウハウは聞いたけど、それを実践は……。

伊礼:しないですね。

――(笑)。

濱田:劇団のやり方を外でやると、元々固まっちゃう部分もあるので、良し悪しはあるんですよね。音程のピッチ感というか、恐怖感が伴っているので。

――一音も落とせない。

濱田:しかも、稽古しなくてもピッチだけは。ピッチ命(笑)。

伊礼:(笑)。

――すごい背水の陣(笑)。

伊礼:すごい! それは強いですよ。ぶれないですよね。

――意外なことというのは、そのままお互いリスペクトにも繋がる感じですね。

伊礼:もちろん! リスペクト! でも、真似はできないですね。

濱田:だから、私も聞くもんね。「その場で考えてくるの? その場でできるの?」と聞くと、「発想して、ぱーんってやっちゃいますね」って。

伊礼:そうなんですよね。意外とある程度は考えるんですよ。でも、1人でやっているときは考える引き出しが少ないの。一緒に誰かとやると……。

濱田:ひらめくのね。

伊礼:そう! ひらめくの。

――なるほど。

伊礼:「こういうこともできる! じゃあ、次やろう。こうしよう」と。

濱田:毎回違うから(笑)。でも結構採用されてたよね。

伊礼:採用してもらいましたね。

濱田めぐみさんと伊礼彼方さん=撮影・岩村美佳

濱田めぐみさんと伊礼彼方さん=撮影・岩村美佳

■なぜ素敵なエンターテイメントないのかを考えると、すごく深い『メンフィス』

――最後に『メンフィス』に向けて、メッセージをお願いします。

濱田:とにかく耕史さんの発想や、考えていることが今の時代の人に合っていますし、見たいものを作ろうとしてくれているので、そこに乗っかって、私達がどれだけリアリティをもってやれるかだよね。

伊礼:四季や宝塚など色々な劇団の組織がある中で、新しいことをしようと思っているカンパニーが非常に少ないとは思うんです。もちろん小劇場ではやっているかもしれないけど、メディアを通して発信できるカンパニーではあまり多くないと思っていて、そういう意味では今回は唯一無二のカンパニーだと思っているんですよ。だから、これは批判じゃないんですよ? 色々なやり方がある中で、今めぐさんがおっしゃったように、今の時代の人たちに合った演出、内容、方向性になっているんじゃないかな。

内容は若い世代だけではなく、この時代を生きた人たちにとっても、現実を見て見ぬ振りをしてきた人たちが、そろそろ受け入れなきゃいけない事実がそこには含まれているので、親子で見に来てくれたらすごくいいですよね。帰りにそういうテーマを話して、なおかつ、そこから派生して自分たちの生活の、自分たちが抱えているトラウマやコンプレックスというところに、話をもっていけたら親子の関係性も、例えば修復したり、より絆が強くなったりするきっかけになる作品だと思うんです。だから、恋人同士でも友達同士でもいいですが、そういったものも、持って帰って頂けたらな。ただ、「楽しかった」で終わるのではなくて。

――意見を交わすきっかけに。

伊礼:交わすきっかけにはなる。ただ、エンターテイメント性が強いし、曲もすごくいいので、ついついそっちに目や耳がいってしまうと思います。なぜそういう楽曲なのか、なぜそういう素敵なエンターテイメントにしなければいけないのかを考えると、すごく深いと思います。

濱田:そうだよね、と思って聞いてた。

伊礼:はい(笑)。

濱田:結局、一言で言うと「きっかけ」。何においても、きっかけになれる作品です。口火を切るのもいいですし、やはり見ないようにしていたものを、見なきゃいけない時代に入ってきているなと思います。

伊礼:それはいい言葉だと思いますね。

濱田:ものすごく自分の中でフィットして、そのためにこの『メンフィス』をみんなで結託してお届けしようとしているんだなと。いわゆるチームだから、チームメンフィスとしては、やはりリアリティですよね。

――山本さんも「リアリティを」とおっしゃっていましたし、そこに終着するような感じですね。

濱田:そうですね。とにかく観て楽しいのは間違いないので、劇場で我々の生の空間を共有して頂けたらなと思います。

濱田めぐみさんと伊礼彼方さん=撮影・岩村美佳

濱田めぐみさんと伊礼彼方さん=撮影・岩村美佳

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“「見て見ない振りができない時代に」、濱田めぐみ&伊礼彼方インタビュー(下)” への 2 件のフィードバック

  1. majo より:

    楽しく拝読致しました、「王家の紋章」に続いて共演なさる伊礼さんと濱田さん、仲の良さが伝わってきました。お二人が感じていらっしゃる事を頭の片隅において「メンフィス」を観劇したいと思います。お話しを伺い楽しみが増えました。季節がらお体に気をつけてお過ごし下さいませ。

  2. megumi より:

    大好きなお二人のインタビューでしたので、とても興味深く読ませていただきました。特に後半のインタビューは楽しくて何度も読み返してしまいました。伊礼さんの「芝居の引き出しの多さ」は、私もよく思っていた事であったので、その話、納得納得と思いました。二人の舞台裏での仲良しさも感じる事ができてよかったです。濱田さんの音程については、きっかけがそこなんだと思えて、そこでの意識が今に繋がっていて、体がもう覚えているのかなと感じました。それに対する伊礼さんの返しが面白くて仕方なかったです。メンフィスは、友人、家族を連れて観劇に行って、意見を交わしたいと思います。観劇するのがとても楽しみになりました。本当に、今回有料会員で読めてよかったなと思える内容ばかりでした。これからも何度も読み返したくなるような素敵なインタビュー記事を期待しています。

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