演出家荻田浩一さんが、10年以上の構想を経て、満を持して送り出す朗読(クローゼット)ミュージカル『不徳の伴侶 infelicity』が2018年5月29日(火)~6月3日(日)まで、東京・赤坂REDシアターで上演されます。女王メアリー・スチュアートの三番目の夫となる、ボスウェル伯ジェームズ・ヘップバーンを演じられる、藤岡正明さんにお話をお伺いしました。
――『不徳の伴侶』は演出の荻田浩一さんが、構想に10年以上をかけたオリジナル作品なのだそうですね。お話は結構早くから?
そうなんです。細かいストーリーは聞いていなくて、ざっくりした「こういう時代でこういう人を取り上げてやるお話です」ってことでお話があって。もともと以前にも荻田さんの現場でオファーをいただいたことがあって、そのときはタイミングが合わなくて出演出来なかったんですけど、荻田さんと「いつかガッツリ芝居したいね」ってことを話していて、その中でのことだったので「是非是非やらしてもらいます」ってことで。
――作品の情報が解禁されて、タイトルと荻田さんの演出、そしてキャストのお名前を拝見したとき「すんごいミュージカルー!」と思って、劇場を見たらREDシアターで、さらによくよく見ると朗読劇で「クローゼット・ミュージカル」。
そうなんですよね(笑)。変わった名前だなと思って。
――音楽劇とも違うんですね。
多分、ミュージカルなんでしょうね。音楽劇とミュージカルって、結構ちょっと違うところがあって。音楽劇って基本的には、たとえば「歌い手」の役がいたりして、その役としてその場で歌を歌うシーンがあるっていうことなんですよね。ミュージカルっていうのは、本来台詞で話すものが音楽になっているっていう。ちょっとそういった違いがあるんだと思うんです。
――最初に「朗読劇」とお聞きになられたときのお気持ちはいかがでしたか?
最初からその相談を含めて話していたので。普通にやるか、朗読でやるか、みたいなことで。逆に言ったら朗読になることで、いつでも変更可能であるっていう。
――いつでも変更可能。
今回オリジナルの作品であるっていうことで言うと、たとえば、直前になって曲が変わるとか、曲の場合はメロディを覚えないといけないですけど、台詞がぐっと変わるにしても、もしその日に「これ、やっぱりこういう台詞にしないか?」って話したとして、さすがにそれは難しいんですよね。覚えられないから、覚える時間がやっぱり必要なので。で、またそれを、自分の中で熟成させる時間も必要だと思うんです。朗読っていうところで言うと、その心理、その感情自体がちゃんと腑に落ちていれば、その日に「やっぱりこっちの方がいいんじゃないか」って、そんな話をしても、そういうことも可能といえば可能ということで。
※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、決まりきった「何か」は存在しないという朗読劇について語ってくださったインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。5月26日掲載予定のインタビュー「下」では、『宝塚BOYS』(2010年)出演時のエピソードなどを伺ったインタビューの後半の全文と写真を掲載します。
<有料会員限定部分の小見出し>
■覚える必要が無いってことは、いつでも、どういう風になっても、まだまだ可能性を模索し続けられる
■(朗読劇には)本当に様々な形があるし、決まりきった「何か」は存在しないと思うんです
■文翁さんの人柄はとっても温厚ですけど、すごい奇才。演出家としてのアイディアがすごく面白い人
■(自主公演は)勇気も要るし、覚悟も必要。それを分かっている荻田さんが、そこに踏み切っている
<朗読ミュージカル『不徳の伴侶 infelicity』>
【東京公演】2018年5月29日(火)~6月3日(日)赤坂RED/THEATER
https://www.team-infelicity.com
<関連リンク>
『不徳の伴侶 infelicity』公式サイト
https://www.team-infelicity.com/
『不徳の伴侶 infelicity』公式 Twitter
https://twitter.com/teamInfelicity
藤岡正明公式サイト
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■覚える必要が無いってことは、いつでも、どういう風になっても、まだまだ可能性を模索し続けられる
――では今回、当日いきなり「やっぱりこっちの方が…」みたいなことが、あるかもしれない?
いや、あるんじゃないですかね。荻田さんも、本当にやりながらガンガン変えていこうって話はしているし、荻田さん自身も「覚える必要が無いってことは、いつでも、どういう風になっても、まだまだ可能性を模索し続けられるっていうことでもある」と。
――ひょっとしたら千穐楽のその日まで、変更があり得るかもしれないですね。
あり得るんじゃないですかね。お芝居でもあるはあるんですけど、どうしてもその日に「これの方が良いんじゃないか」と思っても、その日に変えるってことは、ちょっと難しいんですよね。それをどっかで稽古してみようか、あるいはちょっと台詞としてちゃんと覚えた上で、これをこう差し替えようか、っていうことになるので。でも、ササッと稽古して、「これアリだね!」ってなったら、もう今日からいけるじゃん!みたいなこともあり得るっちゃあり得ますからね。
――ましてや朗読劇では、台詞を覚えないもの、と伺っています。
覚えるんですけどね、結局ね(笑)。
――お稽古などで繰り返すと、どうしてもなんとなく頭に入ってしまいますか?
はい。結局覚えないとね。覚えないとっていうか、その感情が腑に落ちないといけないので、結局はおんなじことなんですよね。
■(朗読劇には)本当に様々な形があるし、決まりきった「何か」は存在しないと思うんです
――台詞の部分というのは、やはり本を持って「朗読」するのだと思いますが、歌の部分はどのようになるのでしょう?
いや、わからないですね。それに関しては、稽古が始まってみないと。
――たとえば、台詞が当日に変わるのと、歌詞が当日に変わるのとではだいぶ違うのかなと。
曲は尺が決まりますし、もちろんメロディがあるので。メロディはね、覚えないと。初見で譜面見ながら歌って、良いパフォーマンスになるほどではないと思うので。
――今回は朗読劇といいつつ、ミュージカルということなので当然音楽があり、そしてキャストに、舘形比呂一さんと吉本真悟さんがいらっしゃるので、どう構成演出されるのかが、かなり楽しみで。
そうなんですよね。どんな演出になるのかはわからないですけど。本当、それも荻田さんがどう考えるかなので。ただ、僕自身はいろんな経験として、朗読劇の中で、朗読しているキャストは全く動かない、けれど後ろで動いている方が居たという経験がありますね。ただ、逆も然りで、我々自身、朗読劇と言っても本を離す瞬間があったり、動いて向き合っている時間があったり、それはもう本当に様々な形がありますし、逆に言ったら決まりきった「何か」は存在しないと思うんですよね。朗読劇って、割と最近のものですからね。ここ10年、15年の話じゃないですか。
■文翁さんの人柄はとっても温厚ですけど、すごい奇才。演出家としてのアイディアがすごく面白い人
――以前拝見した朗読劇が、朗読劇といいつつも、さまざまな演出効果を駆使されていて。
藤沢文翁さんでしょ? 僕も文翁さんの作品(『The ONE』2013年 東京グローブ座)でやりましたね。平田宏明さんと沢城みゆきさんという、本当に力のある声優さんと3人で演って、なんで俺なんだろうなー? みたいな(笑)。
――私が拝見した作品では、背景セットは組まれているし、音楽はあるし、演者は衣裳を身につけているし、さらに香りの演出までありました。
あれは文翁さんのね、もう逆に言ったらすごいところですよ。風も出す、桜吹雪も舞う、匂いもする。
――五感に訴える演出が、観る側の想像力をより助けてくれると感じました。香りを使うのは特に面白いと思って。
そうですね。文翁さんの人柄はとっても温厚なんですけどね。俺はもうある種、この人はすごい奇才だなと。演出家、お芝居の人というよりは、本当に演出家としてのアイディアがすごく面白い人ですよね。
■(自主公演は)勇気も要るし、覚悟も必要。それを分かっている荻田さんが、そこに踏み切っている
――そういう意味でも、朗読劇はいろんな可能性がありますね。
そうですね。まぁ、かたや荻田さんも本当にアイディアマンでいらっしゃいますし、ただ、荻田さんはやっぱり長くこの現場でやってきた第一人者なので、本当に、王道を王道としてちゃんと知っている人なので。ただ、その「荻田浩一」が、もう10年以上温めてきて、満を持して自主公演としてやる!っていうのは、そうとう…やっぱり思いもあると思うんですよね。
――そうですね。
やっぱり言い方は悪いですけど、なんだろ、僕自身の経験として、「お仕事として俳優やったは良いけど、なんで俺この仕事やってんだろうな?」みたいに思った瞬間っていうのはあるんです(笑)。俳優の人生経験として、なんかやっぱり、すごくもどかしい思いをしたことがあるんですよね。でもそういうときに、いつも自分で思うのは、じゃあ、自分で好きなことやったら良いのか? って。でも、やっぱり自分でやるって、相当勇気も要るし、覚悟も必要なことで、僕自身ももちろん自分でやった経験もあるんですけど、やっぱりそこにかかるエネルギーというか、労力って相当なものなんですよね。で、それをやっぱり分かっていて、荻田さんもそこに踏み切っているわけですから、うん。相当な覚悟をかなりお持ちだと思いますしね。逆に言ったら、そういったところに呼んで下さっているということが、本当に有り難いですね。
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