「感情が、うねっていればうねっているほど良い」、藤岡正明インタビュー(下)

藤岡正明さん=撮影・達花和月

荻田浩一さんが演出する朗読(クローゼット)ミュージカル『不徳の伴侶 infelicity』が2018年5月29日(火)~6月3日(日)まで、東京・赤坂REDシアターで上演されます。ボスウェル伯ジェームズ・ヘップバーンを演じられる、藤岡正明さんに物語についてお話いただいたインタビュー後半です。有料会員限定部分では、『宝塚BOYS』(2010年)出演時のエピソードなども話してくださいました。

藤岡正明さん=撮影・達花和月

藤岡正明さん=撮影・達花和月

――作品はイギリスの1500年代ですね。藤岡さんの役所は、悲劇の女王メアリー・スチュワートの「愛人」と言われていますが。

結果的には結婚してますね、3人目の夫ということになります。

――しかし、タイトルには「不徳」と「infelicity」の文字が…。

そうそう、infelicityね、どういう意味なんだろうって(笑)。

――「不適切」になるんでしょうか? こちらも「不徳」に近いニュアンスで使われているのかな? と(笑)。結果として結婚しているのに、何故そこまで言われてしまうのか? というところが、大変興味をそそる訳なんですが。

これね、まず大事になるのはプロテスタントとカトリックの対立なんですよ。そして、この宗教観というもの、キリスト教徒である、もっと言うと、カトリック教徒の人にとっての、結婚や離婚、再婚というものは、いかほどなものか? っていうことは、まず大きくあると思うんですよね。例えば貞操を守るであるとか、そういったこともそうですし、でも基本的に宗教ってそういうものであったりもすると思うので、やっぱりそういった、その倫理というか、規律というか、自分自身を律し続けるものだとは思うんですけど。難しいのは、この「不徳の伴侶」っていう言葉が、どうして「不徳の伴侶」なのか? っていうところ。じゃあ、つまり誰にとっての「不徳」なのか? 「不徳の伴侶」って、メアリーのことだと思うんですけど。じゃあ、誰にとっての不徳になっているのか? っていうことだと思うんですけど。それはもう、もちろん観ていただく中で分かることではあると思うんですけど。ただ、やっぱり大きくはプロテスタントとカトリックの対立がそこに根強くあって、なおかつ、メアリーはカトリックであるということですね。で、また面白いのが、歴史を見ていくと、結果としてメアリー・スチュワートという人は、エリザベスⅠ世に処刑されていますね。でも、処刑された後で、実際にグレート・ブリテンの王家の血筋は、メアリーの子孫から出ているっていうのが面白くて。エリザベスⅠ世は子供が居ないので。

※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、『宝塚BOYS』(2010年)出演時のエピソードなどについても話してくださったインタビュー後半の全文と写真を掲載しています。

<有料会員限定部分の小見出し>

■メアリーの側だけじゃなく、エリザベスの側から観たときにも、また面白い話

■『宝塚BOYS』で、「知ろうと必死で努力する事はやんなきゃいけないし、礼儀だよね」って

■ボスウェルは、僕自身が今まで演じたことのない方向性のキャラクター

■荻田浩一船長を信じて、もう、船を思いっきり漕ぐだけなんです

<朗読ミュージカル『不徳の伴侶 infelicity』>
【東京公演】2018年5月29日(火)~6月3日(日)赤坂RED/THEATER
https://www.team-infelicity.com

<関連リンク>
『不徳の伴侶 infelicity』公式サイト
https://www.team-infelicity.com/
『不徳の伴侶 infelicity』公式 Twitter
https://twitter.com/teamInfelicity
藤岡正明公式サイト
https://fujiokamasaaki.officialsite.co/
藤岡正明公式ブログ
https://ameblo.jp/fujioka-masaaki/
藤岡正明 Twitter
https://twitter.com/Tsukune_Toro

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藤岡正明さん=撮影・達花和月

藤岡正明さん=撮影・達花和月

※ここから有料会員限定部分です。

■メアリーの側だけじゃなく、エリザベスの側から観たときにも、また面白い話

――当時の王朝であるテューダー朝が、彼女で絶えてしまいますね。その後を継いだ王がメアリー・スチュワートの息子ですね。

あれはすごくまた面白いなと思って。なんかね、その妙に悲劇な、なんと数奇な巡り合わせというかね。実際、その「不徳の伴侶」の時代っていうのは、そういった権力争いは大いにあって、この作品の中でも、相当にその権力争いの話っていうのが出てくるんですよね。

――やっぱり出てくるんですね。

その中で、そういった「そうか、この争いの先に、こういう歴史が、この未来がある」っていうことも含めて観て頂けると、またまた面白いだろうなと。今、「歴女」って結構多いじゃないですか。歴女絶対好きだと思うなぁと思って、この話(笑)。

――私も「歴女」まではいかないんですが(笑)、やっぱり好きなので、歴史物ということで、この作品に非常に興味が湧きました(笑)。

ねぇ!なんか、例えば『大奥』とか好きな人とか、わかんないですけどね、ちょっと違うんですけどね、全然お話は違うんですけど、あぁいうやっぱ、なんて言うんだろな、メアリーの側だけじゃなくて、エリザベスの側から観たときにも、また面白い話であって。

――そうだと思います。

いや、本当に宗教観も違えば、国も違う、そして選んでいる人生のチョイスが全く違うっていうことも含めて、でもその視点っていうのは、面白いなと思っていて。で、決してこれエリザベスが悪者ではないので。

――作品的にそういう描かれ方はされていないんですね?(笑)。

どうでしょうね?(笑)。 あまり深くは言えないですけど、決して彼女が悪者で、メアリーが良く見えるための配役というためのキャラクターではないということです。

――それはかなり面白そうですね。

またね、演じるのがシルビア・グラブさんですから。それでまた彼女の存在感というのがね、まぁ!飲み込んで来ますからね。

藤岡正明さん=撮影・達花和月

藤岡正明さん=撮影・達花和月

■『宝塚BOYS』で、「知ろうと必死で努力する事はやんなきゃいけないし、礼儀だよね」って

――これまでに歴史上、実在した人物を演じられたご経験は?

今までもいろんな人を演じさせて貰ったことはあります。

――実在の人物を演じられるとき、その方について、事前に調べたりされますか?

調べます。やっぱり、これ、僕が実際に居た方を題材にして創られたストレート・プレイで、『宝塚BOYS』(2010年)という作品に出ていたことがあって、そこで、『宝塚BOYS』っていうのをやるにあたって、みんなで飲みながら話してたんですよね。「我々はこれをやるにあたって、どういう風にやるのかね」って。割と普通に和やかな普通の話で。で、『宝塚BOYS』っていうのは、本当に戦後間もない頃からの話で、登場人物ほとんどというか、全員が戦争を経験している。太平洋戦争を経験している人間であるということで、演出の鈴木裕美さんがおっしゃっていたのは、「あたしたちはさ、戦争のことも知らない。戦後の激動の時代も知らない。けれど役者であるし、舞台人である、演劇人であるってことは、この作品をやるにあたって、知ろうと必死で努力する事はやんなきゃいけないよね。それがその当時、本当に実際に居た人たちを演じている、演じさせてもらうことの使命というか、礼儀だよね」っていう話をしていまして、僕自身も本当にその言葉に共感していて。

やっぱり、実際に脚本に書かれていることって、本当かどうかわからないんですよ。この作品は荻田さんが書いたものですし、僕が演じるボスウェルにしても、メアリー・スチュワートにしても、どういう人だったのか、どういうクセがあったのか、右利きだったのか左利きだったのか、全てにおいてはわからないんですよね。よくありますよね、“実は織田信長が女だった”みたいな(笑)。それも、要はそういった脚色がありながら、それがもしそうだったとしたら、こんな風に展開するかもっていう可能性の話をしていて、だけど、それだけに乗っかっていたとしたら、それは「無礼」であると僕は思っていて。知ろう、知ろうと必死で努力をして、そこに寄り添おうとした結果、この作品としては、自分自身はどうするべきかってことを考える、っていうことだと思うんです。

――実在した人物のひととなり、生き様をふまえた上で、脚色された本の上でどう生きるか。

そうだと思います。

藤岡正明さん=撮影・達花和月

藤岡正明さん=撮影・達花和月

■ボスウェルは、僕自身が今まで演じたことのない方向性のキャラクター

――お稽古でのキャラクターの深堀りはこれからと思いますが、今現在、ボスウェルをどんな人物ととらえていらっしゃいますか?

元々史実で書かれているボスウェルという人は、当時の貴族には、読み書きも覚束ない人間が居て、割と堕落した人間が多い中で、何ヶ国語も言葉をしゃべり、そして兵法や様々な学問に精通していて、実際に貴族でありながら、軍人の顔っていうのがすごく強い人でもあると。で、台本の中で言うと、やっぱりメアリーにすごく寄り添っている人であると。ただし、途中まで意外とボスウェルがどう考えているのかってことは、あまりちょっとわからない部分があって。ある意味で言ったら、それはどうとでもとらえられるし、どうとでも演じられる部分でもあると思っていて、ある意味でしたたかでありながら、ある意味でとてもピュアな役なのではないかなと。ピュアというか、とても自分自身の感情に対して、素直に、まっすぐに受け取っている、自分自身の心ってことに対してですけどね。ま、これはね、もう本当に作品を観て感じて!とは思うんですけど。

――そうですよね(笑)。作品について開幕前に 果たしてどこまでお話して頂けるのか? というのは…(笑)。

ねー、そうですね(笑)。でも、1個だけ言えるとしたら、僕自身が今まで演じたことのない方向性のキャラクターだと思います。ある意味でとてもクレバーであったり、ある種とても紳士的であったり、理性的であったり、ただ、やっぱりボスウェルは「仮面」を脱ぎ捨てますね(笑)。

――ボスウェルは、最初は「仮面」を被っている、と?

仮面を「被っている」という言い方が正しいのか、途中からそういう仮面を被らざるを得なくなった、ということなのかもしれないし。ある意味で言ったら、本人も気付かなかった、その「仮面」に気付いた瞬間に、その仮面をとるのかもしれないし。それはいろんな捉え方がありますけど。何故そのチョイスをするのか? っていうのは、おそらくボスウェルにしかわからない感情だと思います。そういったところ、それをお客さまに共感してもらえるかどうかはわからないし、逆に共感してもらうべきなのかどうかも、まだわからないですけど、ただ、そういったことがありますね。

――ボスウェルの史実といわれている「点」だけを観ると、メアリーの二番目の夫を殺害したとか、メアリーをさらって結婚したとか、いろいろあるようなのですが、確かに一方で語られている彼のひととなりを考えると、少なからず乖離がある気がして、不可解だなという疑問がわく人物ですね。相当ミステリアスな。隠れた部分の多い人物なのかなと。

ボスウェルという人を調べると、かなり頭のいい人で。そういった「事実」だけを見ていくと、どんどん破滅型になっていく感じはありますよね。

――歴史は得てして勝利者側の観点で記録されて残っていくので、ボスウェルは、いわゆる敗者側ですから、そういったところも影響しているのかとも思ったり。

そうですね。あると思います。

――若い頃は、メアリーの母親の信を得て、出世していたりしてますし。そういう、いわば若い頃から頭角を表していた人物だったんだろうなと思うのですが。

お父さんがかなりひどい人で(笑)。なんかこう、そういうのってよくあるじゃないですか。悪い見本があって、絶対自分はそうはならないぞ!っていう(笑)。

――反面教師?

そうなんですよね(笑)。僕も、今は普通なんですけど、昔は親父の酒癖が良ろしくなくて、絶対酒癖だけは親父みたいにならないぞ!って思ったりね(笑)。

――藤岡さん、確かお酒は…?(笑)。

大好きですね(笑)。毎日飲んでるんですけど、でも、記憶とばしたりとか、外で喧嘩したりとか、どっかで寝ちゃったりとか、そういうのはないですね(笑)。

藤岡正明さん=撮影・達花和月

藤岡正明さん=撮影・達花和月

■荻田浩一船長を信じて、もう、船を思いっきり漕ぐだけなんです

――物語の展開についてもう少しお伺いします。メアリーの伴侶ということで、お話の中では彼女との蜜な関係が語られているのでしょうか?

そうですね、そこがまた難しいところで、ある種のすごく大きなターニングポイントになる部分なんですよね、その部分っていうのは。後半にそういったすごく……ありますね。結構どんどんストーリーがめまぐるしく変わっていくようなストーリーで、実際のこの少人数で赤坂REDシアターという空間でやるとなると、ある意味よくぞこの題材を持ってきたなというぐらいで、これ50人のキャストで帝劇で演ってもおかしくないような感じの作品ではあるんですよね。

――題材もそうですし、時代背景もそうですね。ですからメアリーの人生のどこからどこまでが語られるのか? ボスウェル伯が登場するので、多分晩年に近い方に寄るのかな? という想像はしています。

はい、そうですね。基本的にはそうだと思います。やっぱりそこがある種面白いところでもありますし。

――観る側的にも、メアリーの人生の激動の時代に、そこに彼女の最後の夫となる男性とのお話ということで、普通に考えると、まぁ…(笑)。

普通に考えると、おそらくメアリーとボスウェルはしっかりと結ばれて、いった方がおそらく一般的なミュージカルファンは喜ぶと思うんです。「あぁ~良いわ~こういうの!」ってね(笑)。

――おそらくそうだと思います、…けれども?(笑)。

それだったら荻田さんがわざわざ覚悟決めて、自主公演演る必要はなくなってくる訳ですよ!荻田浩一って、そんなにね、真っ直ぐな人じゃないですからね、僕の印象ですけど(笑)。良い意味で割とひん曲がっているところ、あると思いますよ(笑)。それはやっぱり、斜めから見る目線がないといけないし、「本当、どういう感情なんだろう?」って。感情って、すごくシンプルにとらえていくと、でもなんでこうなってしまったのか? そこに、なぜだかわからない、というものが存在するんです。役者でもそういうときはあって、僕も一時期頭でっかちに「このシーンは、こういう風に思っている。こういう感情の線を通って、こうなるから、だからこうなんだ!」って思ってたんですね。もちろんいまでも思っているところはあるんですけど、でも、この所々で、たまにつっかえるんですよ。「いや、でもこれ、辻褄合わない。なんでこの人こんなことやったんだろう? どういうことなんだろう?」って、悩むんですね。そのときに、ある意味「あ、そうか。なんでかわかんないけど、この人こうしたんだ!」と思うときが(笑)、意外とそれで腑に落ちちゃったりするときがあって、でも、逆にだとしたら、なんでかわからない感情というものを利用した方が演劇って面白くなる筈なんですよ。

――その方が、振り幅も出せますし、予測もつかないし、良い意味で裏切られた方が、インパクトは大きくなりますね。

そうなんです!でもそれって、演者が「何でかわからない」じゃなくて、何か全ての辻褄だけを合わせていこうとすると、どうしても、それを見せようとするんですよね。でも、“何でかわかんないけれども、ここでエネルギーがあって、何でかわかんないけど、どうしてもこうしたくて演ってしまった”っていうことがあったとしたら、それを堂々と演者がやっているときに、お客さまも「何でこの人、こうやったのかわかんないけど、スゲー!なんか熱意こもって演ってる!」っていうところが、お客さまにとって、「ヤベ、何なんだろう、これ」って、前のめりになる瞬間だったりとかもあると思うんですよ。

――たしかに!

つまり、どういうことかというと、そこに感情というものが、うねっていればうねっているほど良いと思っていて。そういった意味では、荻田さんも、どこにでもありそうなミュージカル(笑)、創るんだとしたら、まぁ、それは逆に言うと、荻田さんもね、有名な大御所の演出家さんですから、高い金もらって演出すれば良いんですよ、そういう作品を(笑)。

――(笑)。

ま、でも本当に彼が本当に温めてきたっていうのは、そこに必ず意味があるので、そうですね、きっと、このクローゼット・ミュージカルって言われてて、しかも朗読でこういったことを演るって意味でいったら、必ず今まであったものではない、きっと新しい試みを荻田さんが挑戦する、そういった現場に、今これからって瞬間に僕も立ち会わせてもらうんだろうな思っているので、本当にそういったところも期待していただいて、もしつまんなかったら、それは全部荻田さんのせい!(笑)、ってことで、僕らはもう、荻田浩一を信じて、荻田浩一船長を信じて、もう、船を思いっきり漕ぐだけなんです。

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