「お客様も、このあたりの人に」、「狂言このあたり乃会」インタビュー(下)

(左から)飯田豪さん、岡聡史さん、内藤連さん、中村修一さん=撮影・伊藤華織

「万作の会」主宰の狂言師、野村万作さん(人間国宝)門下の若手狂言師、岡聡史さん、中村修一さん、内藤連さん、飯田豪さんの4人による研鑽のための「狂言このあたり乃会」が2018年4月に発足し、2018年7月7日(土)に東京・銕仙会能楽研修所で、第1回公演が開かれます。4人へのインタビュー、後半です。

(左から)飯田豪さん、岡聡史さん、内藤連さん、中村修一さん=撮影・伊藤華織

(左から)飯田豪さん、岡聡史さん、内藤連さん、中村修一さん=撮影・伊藤華織

――みなさんそれぞれに、狂言の世界に入られたきっかけはなんだったのでしょう?

飯田:私は中学のクラブで演劇をはじめまして、それからずっと演劇やったり、ダンスやったり、歌やったり。大学は日大の芸術学部にいき、そこでミュージカルだったりとか、後は、チャンバラを勉強したりだとか。

――殺陣ですか?

飯田:はい。もう、目立つことは大体やりたかったんです。その中で3年生のときに石田幸雄先生(「万作の会」の狂言師の一人)の狂言の授業がございまして。

――学校で?

飯田:そうです。それが必修授業だったんですけど、それを受けたときに、私が今まで学んできたことのすべてがあるなぁと思いまして。で、もうほとんど単位は取っていたのですが、また4年生でも授業を受けて、そのままこれをやりたい、と石田先生をつたって入門して、なんとかここまで来ている状態ですね。

――最初は演劇をやっていらしたんですね。

飯田:もう、ずっと普通の現代劇を演ってました。

――演劇で学んできたことのすべてが狂言にある、というのは興味深いです。

飯田:ただ、実際に狂言をやっていると、邪魔なものばかりです。私が学んできた声の出し方とか、殺陣の動きだとか、ダンスの感覚だとか、そういうのは全部邪魔です。

――そうなんですね。

岡:僕も学生時代です。専門学校時代に僕も演劇をやっていまして、授業で狂言がありました。その主任講師が万作先生で、教えに来ていたのは、石田幸雄先生と高野和憲さんだったんです。それで、授業にはあんまり出ていなかったんですけど(笑)、卒業してから、ちょっと高野さんのところにフラッと遊びに行って。「ちょっと教えてください」みたいな感じで行っていたんです。それが万作先生のお耳にも入って、高野さんからも「きちんとやってみないか?」と。それで、万作先生の家の門をたたいて、そこで面接と、あとはちょっとした試験っていうか。

――試験ですか?

岡:「何か知っている謡とセリフを言ってみて」みたいな。

※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、岡さん、中村さん、内藤さん、飯田さん、それぞれが狂言の世界に入られたきっかけや、「このあたり乃会」という名前に込められた意味や目指すものなどについて伺ったインタビューの後半の全文と写真(計10カット)を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>

■演劇をやっていて、ちょっと勉強してみようかなって。最初は軽い気持ちだった

■習った人に興味があって、その延長線上に狂言があって、能楽があって

■海外公演で、先生方の舞台がものすごい反響があって、すごく幸せな気分に

■初めての方、若い人にも、すそ野を広げたい。最後に座談会のようなものも

<狂言このあたり乃会>
【東京公演】2018年7月7日(土)14:00 銕仙会能楽研修所
東京都港区南青山4-21-29(03-3401-2285)
http://www.tessen.org/map
問い合わせ:万作の会(TEL:03-5981-9778)
料金:全席自由 2,000円
お求め先:Confetti(カンフェティ)
(TEL:0120-240-540 ※携帯・PHSからはTEL:03-6228-1630)

<公式サイト>
「万作の会」公演のご案内 2018年7月
http://www.mansaku.co.jp/performance/all.html#201807

<関連リンク>
万作の会
http://www.mansaku.co.jp/index.html
中村修一 Facebook
https://www.facebook.com/%E4%B8%AD%E6%9D%91%E4%BF%AE%E4%B8%80-1909427009280281/

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(左から)飯田豪さん、岡聡史さん、内藤連さん、中村修一さん=撮影・伊藤華織

(左から)飯田豪さん、岡聡史さん、内藤連さん、中村修一さん=撮影・伊藤華織

※ここから有料会員限定部分です。

■演劇をやっていて、ちょっと勉強してみようかなって。最初は軽い気持ちだった

――いきなり実技な感じなんですね。

岡:そうですね。ですけど、僕もあんまり(謡やセリフを)知らなかったので、「とりあえず大きい声は出せるみたいですね」という感じで(笑)。そうして、「とりあえず鞄持ちから始めてみなさい」と、そういうきっかけで、この世界に入りました。

――高野さんのお家を訪ねられたんですか?

岡:高野さんはカルチャーセンターで狂言を教えていたり、自分の素人のお弟子さんを持っているんです。そこに僕も学生時代によく遊びに行っていたので、そういう流れで「ちょっと、お邪魔します」的な感じで行っていたんですね(笑)。

――授業には出てなかったとおっしゃいましたが(笑)、やっぱり狂言に興味があったからこその、お宅訪問なんですよね?

岡:そうですね。興味というか、ちょっと勉強してみようかなって。軽い気持ちだったんですね、最初は。

――そうだったんですね。

飯田豪さん=撮影・伊藤華織

飯田豪さん=撮影・伊藤華織

内藤連さん=撮影・伊藤華織

内藤連さん=撮影・伊藤華織

■習った人に興味があって、その延長線上に狂言があって、能楽があって

内藤:私も、ちょっと似たような話になってしまって、あれなんですけど(笑)。大学生の時に、ちょっと人と違うことをやってみたいなと思って、そのときに大学のサークルで狂言があったんですね。で、そこに入りました。4年間過ごして、やっぱり面白いなと思って、何か続ける道がないかなと探したら、国立能楽堂に養成科というのがあり、そこで学んでプロになるという道があるということを知りまして。毎年募集している訳ではないのですが、たまたまちょうど卒業してすぐ次の年から通えるタイミングだったので、ブランクなしで入って、5年間そこで修行しました。

――5年間!

内藤:そうなんです。平日の朝から夕方まで、ずーっと。養成科では狂言だけじゃなくて、お能のことも。我々狂言師もお能を知らないと間狂言(あいきょうげん:能のなかで狂言方が担当する役)が出来ませんので。それから四拍子(しびょうし:笛 、小鼓、大鼓、太鼓の4種の楽器の総称)、あと座学もありました(笑)。まぁ、いろいろ能楽師として必要な知識を身に付けて、そこを5年で卒業して、現在に至るわけです。

――きっかけはちょっと人と違うことを、っていう。

内藤:そうですね。そこで出会ったのが、岡さんと同じ高野さんなんです。私が大学のサークルで習っていたのが高野さんでして、その人柄といいますか(笑)。

岡:(笑)。

内藤:それも大事だと僕は思っています。その人に興味があって、その先の、延長線上に狂言があって、能楽があってって感じですね。

――そうなんですね。高野さんが新人ハンターでいらっしゃることがわかりました!(笑)。

岡:偉大な方です(笑)。

内藤:偉大です。

中村修一さん=撮影・伊藤華織

中村修一さん=撮影・伊藤華織

岡聡史さん=撮影・伊藤華織

岡聡史さん=撮影・伊藤華織

■海外公演で、先生方の舞台がものすごい反響があって、すごく幸せな気分に

中村:この中では、僕が一番若い頃からやっているんですが、僕の場合は、子供の時から素人弟子として、習い事みたいな感じで万作先生に教わっていました。ちょうど子方(こかた:子役)があんまりいない時期だったので、子方としても少し舞台に立っていたんです。成長していろいろ興味を持っていく中で、大学にはそのまま普通に進んだんですが、大学生のときに海外公演に参加させていただいたことがあったんです。そのときは、まだ役がつくような段階ではなかったので、舞台の後ろに座って後見(こうけん:舞台上で道具の出し入れや役者の装束を整える)をやっていたんです。そのときに、先生方の舞台が海外でも、そのときはイタリアだったんですけど、イタリアのお客様にものすごい反響があって、後見に座っているだけでも、なんかすごく幸せな気分になって、「あぁ、これはすごいな。海外でもこれだけ反応があるすごいものだったら、僕もやってみたいな」と大学2年生ぐらいの時に決心しました。それから稽古をしっかりつけていただくようになって、大学卒業して内弟子に入って、という感じですね。

――お小さい頃からされていらっしゃったということは、親御さんのご意向も?

中村:多少はあったと思いますが…。

――ご自身が「僕やりたい!」ってことで?

中村:どうなんでしょうね。僕もよく覚えていないですけど、多分、小学4年生ぐらいの時に観に行って。学芸会みたいな、そういうものはすごく好きだったので、大きな声出して、舞台上で元気にやってるなぁ、僕もこんなのやってみたいなぁと、自分なりに思ったんだと思います。

――皆さん、有り難うございました。後見のお話がありましたが、後見は舞台上にずっと居るので、シテの方と同じ視界を感じられるのかなと思いますが、お客様の反応とかわかりますか?

飯田:そうですね、…わかりますね。

内藤:わかりますね。

岡:わかります。

内藤:宝生能楽堂とかは、特に見所(けんじょ:客席)の灯りが明るいので。他のところに比べると、あそこは明るいと思いますよ。

中村:全般的にどこの能楽堂でも、顔は一応見えるくらいの明るさにはしてあるんですよ。

――上演中は、劇場は客電を落とすので客席は真っ暗が常ですが、能楽堂は暗くならないんだなぁと思いながらいつも拝見していました。

岡:お芝居と違って、そうですね。

中村:銕仙会(銕仙会能楽研修所)は割と暗いかもしれないです。

飯田:あ、そうですね。

岡:僕らも客席見えてます。寝てる方も…(笑)。

――やっぱりわかりますか(笑)。

飯田:どちらかというと、演者よりも後見をしている時の方が見えていることの方が多いかもしれない。演者は舞台の途中に立っていますので、脇正面(わきしょうめん:舞台に向かって左側にある客席)は右を向かないと見えませんけど、後見は一番後ろに座ってるので。

――なるほど! 全部見渡せる場所になるんですね。寝てるといえば、お能の場合は…なんでしょう、α波が出てるんじゃ?と思われる、あの雰囲気とお声の心地良さについ…(笑)。

飯田:出てます、出てます。あれホントに出てます。

岡:それで寝るのは、贅沢な楽しみ方だということで。シテ方(してかた:能でシテを務める能楽師)の方も、それはそれで良いという認識の方もいるみたいです。

――そうなんですね(笑)。

飯田豪さん=撮影・伊藤華織

飯田豪さん=撮影・伊藤華織

内藤連さん=撮影・伊藤華織

内藤連さん=撮影・伊藤華織

初めての方、若い人にも、すそ野を広げたい。会の最後には座談会のようなものも

内藤:とにかく、今回はわかりやすい演目が2つ並びました。解説ももちろんありますけど、解説が無くても、例えばあらすじを読んだだけで、いきなり観ていただいてもわかる演目です。それでわからなければ、もう、我々の力がないということになるんですけど。

飯田:そうですね。

内藤:まぁ、それだけわかりやすい演目を2つ、おめでたい曲と、そして和泉流専有曲を選ばせていただいたので、第1回に相応しい演目が並んだと思います。どうか固く考えずに観に来ていただければと思います。場所も表参道ですしね(笑)。

――銕仙会能楽研修所は表参道にあるんですよね。

飯田:多分、何度か狂言をご覧になった方でしたら、二曲とも一度は観たことがある可能性が十分にありますが、ただ、こんなに若いのだけでやってるということはまずないと思いますので、それもひとつお楽しみいただきたいですね。ご覧いただくんですから、批判していただく分にはまったく構いませんので(笑)。もちろん、頑張りますけど。

岡:そうですね、本当にいろいろな方、特に初めての方とか、若い人とかにすそ野を広げたい気持ちはあります。この会は、ホント堅苦しくなく観に来ていただきたいです。最後に座談会みたいなものがありますが、これはなかなか他の会ではないので、そこで、いろいろ裏話であったりとか(笑)よく観に来ていらっしゃる方は裏話を楽しんでいただけるかもしれませんし、初めて観る方でしたら、演者の思いとか曲の背景とかを、「そういうことなのか」とさらにわかっていただけると思います。

内藤:ここ(稽古場)でやっていた時は、質疑も最後にやっていました。今回やるかは…わからないですけど(笑)。(中村さん、岡さん、飯田さんを見回して)やる? やりましょうかね。

岡:ね。

――質疑応答決定でよろしいですか?(笑)。

内藤:その場で、疑問点とかありましたら。答えられれば。

岡:そういうコミュニケーションもしたいですね。やっぱり、お客様と演者ってなかなかそういう機会がないので、この会ではそういう敷居も低くしてですね、より距離感を近く。

内藤:距離感を近づけてやっていきたいですね。

中村:「このあたり乃会」という名前は、狂言の第一声に「このあたりの者でござる」というセリフがあって、そこからとっています。「この辺に住んでる人ですよ」という意味なんですが、萬斎先生がおっしゃるのは、「主語が明確になっていないから、その本人がこのあたりに住んでいるということだけではなくて、実は“We are”である」と。「“I am”ではなくて、みんな含めて“このあたりの者”ですよ、みたいな意味合いもあるぞ」とおっしゃっているので、観に来ていただいている方たちも一緒に、「このあたりの人」になったつもりで観ていただけるといいなと。(内藤さん、岡さん、飯田さんに視線を向けて)…違いますか?

一同:いやいや(笑)。

内藤:良いんじゃないですか! 上手くまとめたんじゃないですか。

一同:(笑)

――みなさん、お話ありがとうございました!

中村修一さん=撮影・伊藤華織

中村修一さん=撮影・伊藤華織

岡聡史さん=撮影・伊藤華織

岡聡史さん=撮影・伊藤華織

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“「お客様も、このあたりの人に」、「狂言このあたり乃会」インタビュー(下)” への 1 件のフィードバック

  1. あや より:

    「このあたり乃会」の方々の色紙が当たりました。届いた時は、とっても嬉しかったです。大事に保管しています。
    今日、公演日ですよね。観に行けないのが残念です。
    インタビューを読んで、皆さま幼い頃からされていたのとばっかり思っていました。学生時代からなんですね。狂言への魅力を感じられたわけでしょうか?色々な道がある中、そちらの方へ進まれたということは…?
    先日、中村さんの舟渡婿を拝見しました。
    万作さんと中村さんの船に乗っている時の様子が、ほんとに水の中揺れている感じでコミカルかつ息ぴったり合った動きが印象に残っています。
    次回、公演を拝見できるのを楽しみにしています。

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