「どうして死ぬのか。必ず聞かれる」、川口竜也・上原理生・伊礼彼方鼎談(下)

川口竜也さん(中央)、上原理生さん(左)、伊礼彼方さん(右)=撮影・岩村美佳

川口竜也さん、上原理生さん、伊礼彼方さんの『レ・ミゼラブル』ジャベール鼎談、後半です。ジャベール役について、さらに掘り下げて頂きました。ジャベールはなぜ自殺するのか、その心境について伺いました。また、『レ・ミゼラブル』の世界における「神との対話」について、ジャベールの視点から語って頂きました。

川口竜也さん(中央)、上原理生さん(左)、伊礼彼方さん(右)=撮影・岩村美佳

川口竜也さん(中央)、上原理生さん(左)、伊礼彼方さん(右)=撮影・岩村美佳

――ジャベール役について掘り下げて伺いたいですが、ジャベールの惹かれるところや、興味のあるところはいかがでしょうか? 皆さん「かっこいい」と言いますよね。

川口:男は皆やりたいって言いますよね。

――男が惚れる感じはすごく分かるんですが、個人的にはどうしても最後自殺するところが納得できていないんですよ。

川口:そこだと思うんですよね。ジャベールがどうして死ぬのか。必ず色々なところで聞かれますが、そこにちゃんと自分なりの理由を見つけて、それに納得して死んでいけるかどうか。人が死に至るまでに、どういう過程をもって、その人間はどういう生い立ちだから、どういう性格で、だからこそ死を選んでということに、いかに説得力をもたせるジャベールを作るかということが本当に、この役を作るときの大きな問題かもしれません。いつも、そこは悩むところですね。

――毎回ですか?

川口:迷いながらお客様の前に立つわけにはいかないので、自分では納得してやっていますが、毎回色々なことを考えながら、悩みながらやっています。その1回1回はちゃんと死んでいるつもりですが、終わったあとには、「これでよかったかな」と思いますし、深いというところは、そういう意味もありますよね。もちろん死んだことがないですからね(笑)。

――そうですね。お二人はいかがですか?

伊礼:死に対してのイメージは僕もまだ掘り下げられていませんが、『エリザベート』で演じたルドルフは自殺する役でした。あくまでいまの僕のイメージでしかないですが、解放だと思うんです。自分からの解放だと。逃げると言ってしまうと、自殺してしまった人が報われない気がするんです。傍から見ると逃げかもしれませんが、本人たちはそこから解放されたくて飛び放つんだと思うんですよね。

「Stars」を練習していて思ったんですが、決意が込められている感じがしています。ジャン・バルジャンを見つける、探がす、捕まえるという決意なんですが、そこに僕はすでに自決的な決意があるんじゃないかと。捕まえられなかったら自分の人生に意味を見出せないというか、そこに全てを費やしているように感じます。後半の自殺って、許される、受け入れられるわけじゃないですか。受け入れられたら、対象者がいなくなっちゃうんですよね。何に向かって突っ走っていけばいいのかわからなくなるから、自分を解き放つしか選択肢がないのかなと思うんですよ。だから、あの時点で死ぬんじゃないかなと。戦う対象がいなければ、なんのために生きていけばいいのかわからない。これは、あくまでも客観的な、僕はまだ客席から観ている側の意見でしかないのですが。

※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、ジャベールについて、歌と芝居について、そして『レ・ミゼラブル』における「神との対話」という部分について、さらに掘り下げて川口竜也さん、上原理生さん、伊礼彼方さんに伺ったインタビューの後半の全文と写真を掲載しています。

<有料会員限定部分の小見出し>

■上原:「星さえ凍る」って歌いますよね。星が凍ってしまった、崩壊だと思う

■伊礼:逃げてきたわけではありませんが、ちゃんと歌と向き合っていかなければ

■川口:キリストの教えの「許す」ということと、「法を守る」ことの葛藤がある

■川口:精一杯役を生きられるように頑張ります。伊礼:左に同じ! 上原:右に同じ!

<ミュージカル『レ・ミゼラブル』2019年全国五大都市ツアー公演>
【プレビュー公演】2019年4月15日(月)~4月18日(木) 帝国劇場
【東京公演】2019年4月19日(金)~5月28日(火) 帝国劇場
【愛知公演】2019年6月7日(金)~6月25日(火) 御園座
【大阪公演】2019年7月3日(水)~7月20日(土) 梅田芸術劇場メインホール
【福岡公演】2019年7月29日(月)~8月26日(月) 博多座
【北海道公演】2019年9月10日(火)~9月17日(火) 札幌文化芸術劇場hitaru
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<関連リンク>
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川口竜也さん(中央)、上原理生さん(左)、伊礼彼方さん(右)=撮影・岩村美佳

川口竜也さん(中央)、上原理生さん(左)、伊礼彼方さん(右)=撮影・岩村美佳

※ここから有料会員限定部分です。

■上原:「星さえ凍る」って歌いますよね。星が凍ってしまった、崩壊だと思う

伊礼:(上原さんに)オーディションでも色々要求されたよね?

上原:そうですね。

伊礼:僕も色々なことを要求されましたが、やはり、そんなようなことを演出家が言っていたんです。「もっと決意を込めてみて」とか、「自殺のシーンは解放的に」とか、「やっと救われるような思いで」とか。そういうものがヒントになったんですが、なるほどなと。確かに『エリザベート』のルドルフのときも、そんな気分だったなと思い出しました。「やっと解放されるんだ。でも、ごめんね。お母さん」と。お母さんに対してはごめんねの気持ちがあって、僕は勝手にアドリブでマイムで「ママ」と入れていたんです。母親への謝罪はあるんですが、自分はやっと解放される、やっと天国へ行ける、そういう思いがありました。川口さんはすでにジャベールを演じられていますし、その現場にずっといる側の人間はもしかしたら認識は違うかもしれないです。

川口:でも、それぞれのジャベールがあって、いいと思うんだよね。解釈は色々だし、自分の死に対する解釈も違うじゃない?

伊礼:そうですね。

川口:俺は彼方のジャベール像を聞いて、すごく楽しみになった。どういう感じになるのかなって。

伊礼:ただ実際、現場に入ったら変わるかもしれない。あくまで、いまの時点の感覚だから。

川口:それはそうだよね。

伊礼:(上原さんに)どう捉えてる?

上原:先輩方の話を聞いて、なるほどと。質問なんでしたっけ?

伊礼:聞いてないじゃないか!(笑)。

(一同笑)

上原:僕はなにを話せばいいんでしたっけ?

――ジャベール役を掘り下げるなかでの……。

川口:(駒田一さんが通りかかって)駒さん!

駒田:こないだ、ありがとな。

川口:とんでもないです。

駒田:お前がありがとなだろ(笑)。

川口:ありがとうございます。

伊礼:取材中だから!

(一同笑)

駒田:……お前たち、本当にいい奴だな!

――記事に入れておきます(笑)。ではお話を戻しまして、ジャベールという役について、いま惹かれるところや興味があるところをお聞かせください。

上原:一人の男の崩壊です。

――伊礼さんは解放で、上原さんは崩壊なんですね。

上原:多分、両方そうなんですが、自分の信じている世界が崩れていく。崩壊するだけだったらまだしも、身を投げるにいたるって、どういう心境なのかなというところを突きつめていきたいと思います。

――これまで色々な方のジャベールを見てきたわけじゃないですか。そのなかで、考えたことってありましたか?

上原:ジャベールは「星さえ凍る」って歌いますよね。その星は「Stars」。自分と星というものを照らし合わせていて、規律を遵守することが彼のなかでは正しいことだから、ずっと自分で守ってきて、そこからはみ出たものを罰してきた。けれど、それが凍ってしまったというのが崩壊の瞬間だと思うんですよ。そういうカタルシスを構築して、感じていけたらと思います。

上原理生さん=撮影・岩村美佳

上原理生さん=撮影・岩村美佳

■伊礼:逃げてきたわけではありませんが、ちゃんと歌と向き合っていかなければ

――それぞれの方法論で役を突きつめていかれると思いますが、それぞれがジャベールを作っていく過程に対して興味がありますか? それとも、己の道を行くという感じですか?

川口:興味があります。僕はさっき言ったように、彼方のジャベールにも興味が出たし、理生のももちろん見てみたいと思っています。キャストが決まって、この二人になったかと思ったときから、一緒に稽古でどんなジャベールを出してくるのか、すごく楽しみになりました。

上原:自分は役者として、芝居をする人間としてまだまだ学ばなければいけないことがたくさんあります。経験が足りないので、お二人が芝居という面で、この人物をどういう風に作って描いていかれるのか、すごく見たいですね。勉強させて頂きたいと思っています。

伊礼:断る!

(一同笑)

伊礼:僕は、ミュージカルであっても芝居の部分に重きをおいて構築するタイプなので、やはり芝居からアプローチしていこうと思っています。でも、今回はそういうわけにもいかなくて、歌でも表現していかななければいけないというのは、一つ大きなチャレンジですね。逃げてきたわけではありませんが、ここでちゃんと歌と向き合っていかなければいけない時期なのかなと思っています。かなり前から考えていたことですが、そういう時間があって、いまこの役に辿りついていますから。僕も二人のいいところは、とことん盗もうと思っていますが、自分がやって成立するものしか盗めない。どんなによくても、それはあくまでの個々のジャベールで成立するものなので。でも、いいものは取り入れていきたいなと思いますね。

川口:お互いに色々見ていきながらも、結局、三者三様のものが出来上がると思うんです。もう皆、立派な役者なわけだから、そのなかで、皆で刺激しあいながら、それぞれのものが出来ていくんでしょうね。

伊礼彼方さん=撮影・岩村美佳

伊礼彼方さん=撮影・岩村美佳

■川口:キリストの教えの「許す」ということと、「法を守る」ことの葛藤がある

――お三方が三人のバルジャンと対立するのが楽しみです。最後のテーマでお伺いしたいのですが、『レ・ミゼラブル』の世界は、神との対話という部分がすごく大きいですよね。私は最初に観たときに、そこがしっくりこないところもあったんですが、腑に落ちたときにこの世界にハマってしまったんです。ジャベールが神を信じて生きていくところを、どんな風に考えていますか?

川口:クリスチャンであれば、もうちょっと腑に落ちるんであろうし、それこそ西洋であれば観ているお客さんもそう感じるのかもしれません。ただ、ジャベールは原作でも敬虔なクリスチャンですよね。キリストの教えというのは慈悲であり、許すということ。罪を許しなさい。でも、ジャベールは許さないんですよ。そこの葛藤をどういう風に表現していくかということかなと思いますね。許すということと、法を守るということは、あまりにも乖離しているので。彼はクリスチャンでありながら、なぜそういう風になっていったのか。そこをどういう風に考えていこうか、これはいつも考えています。

――なるほど。毎回思うことなんですね。

川口:はい。毎回考えています。

川口竜也さん=撮影・岩村美佳

川口竜也さん=撮影・岩村美佳

■川口:精一杯役を生きられるように頑張ります。伊礼:左に同じ! 上原:右に同じ!

――お二人はいかがでしょうか?

伊礼:宗教的な話も、法律的な話も難しいですよね。結局すべてはフィクションで虚構だ!と、とある本で読んだ事があります。「神様っているの?」と思う人もいると思いますし、神様を信じている何億人というキリスト教徒やイスラム教徒もいる。あくまでも多数の人間を束ねるための手段じゃないかと。法律や戒律も、同じものだと書いてて、国家っておそらくそういうものだろうと。同じ日本人だから、外国で会っても親近感がわいて話せたりする。日本のなかでも、僕が沖縄の人と会うと、「おお!」ってなっちゃうわけじゃないですか。そういった虚構を人間が自ら作り出して、その虚構に自滅していくというか、自らが守り通すことによって自分を見失っている。自分を探しているのかな。まだよく分かりませんが、そういう人物に思えるんです。ずっと自分の背中を追いかけている気がします。それが、ジャン・バルジャンにあまりに似ていたのか。二人が同一人物という謂れもあるじゃないですか。

川口:表裏一体のね。

上原:そうですよね。

伊礼:ずっと追いかけて、その追いかける対象がいなくなってしまうものだから、川口さんが言った「許す」ということ。許されてしまったら、もう身も蓋もないわけですよ。許されちゃいけない人間なんだという解釈を僕はしているんです。そこが深い役だなと思いますし、魅了される部分だと思います。闇を抱えているなと。クリスチャンの人間であるにも関わらず、多分、法や正義のために人を殺しかねない。

――人間がもつ葛藤のせめぎ合いのような。

伊礼:そうですね。

――上原さんはいかがですか?

上原:いま、二人がお話されたことに続くかなと思いますが、バルジャンって神のような人になっていくじゃないですか。バルジャンの神って、慈愛の神様。神様って、もともと、そうなんですよね。世界の宗教が説こうとしている神様の姿って、許すこと。すべて愛に満ちていて、愛をもって接する。それが神という存在。でも、ジャベールが信じた神様って、聖書に描かれている悪いことをしようとした人を罰する神様なんですよね。宗教のことを、とやかく言うことはないですが、その違いだったのかなって。本来の神様像というのは、バルジャンが体現しているような神様の姿で、それに触れてしまって、知ってしまったから、先程の崩壊に繋がるのかなと、いまはそんな風に感じています。

――2017年の上演時に、吉原光夫さんにインタビューさせて頂いたんですが、バルジャンとジャベールの二役をやっているからこその話がおもしろかったんです。ジャベールを演じているときに、バルジャンが最後の神に許されて、天に召されていくシーンを舞台袖から見ていて、自分が許された気になる。これはジャベールだけをやっている方とは、意見が違うかもしれないと。

川口:なるほど。

伊礼:だから、いいと思いますよ。そういう対象がいるというのは羨ましいことですし、それが実在する人でもいいですよね。師弟関係もそうだと思いますし、会社に勤めていて社長についていくでもいいですし、その人のためにというのは生きる力が湧くと思うんですよね。

――お話はつきませんね。ありがとうございました。最後に一言ずつメッセージをお願いします。

川口:いつも通り、精一杯役を生きられるように頑張りますので、よろしくお願いします。

伊礼:左に同じ!

上原:右に同じ!

(一同笑)

川口竜也さん(中央)、上原理生さん(左)、伊礼彼方さん(右)=撮影・岩村美佳

川口竜也さん(中央)、上原理生さん(左)、伊礼彼方さん(右)=撮影・岩村美佳

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“「どうして死ぬのか。必ず聞かれる」、川口竜也・上原理生・伊礼彼方鼎談(下)” への 5 件のフィードバック

  1. みー より:

    舞台上にいる人が何を思ってそこにいるのか
    しっかりと感じたいと思います!
    とても楽しみです。
    いつも通りがんばってください。

  2. よーこ より:

    三者三様のジャベールを観ることができて、2019レミゼはとても楽しみになりました。ジャベールの生き様がどのようになっていくか、5ヶ月の公演中にも変わっていくのか、それも最後まで見届けたいと思っています。

  3. ジャベっ子 より:

    今季初めてのジャベール3人の貴重なインタビュー、ありがとうございます。特に自殺のシーンは、前回も三人で微妙に違っていて、解釈が面白いところだったので、お話、とても興味深いです。ますます楽しみになりました。5ヶ月が待ち遠しいです。

  4. ゆーーーこ より:

    レミゼカンパニーの仲のよさも感じられて、とても楽しいレポートでした!特別ゲストの駒田さんもありがとうございます笑。川口さんの迷い、伊礼さんの解放、上原さんの崩壊、それぞれの解釈がその日のジャン・バルジャンとどんな化学反応を起こすのか、今から観劇の日が待ち遠しいです。体に気をつけてお稽古がんばってください!

  5. まーち より:

    三人三様の解釈がおもしろかったです。お三人共観ます!!

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