「自分たちの次に向かう課題が明瞭に」、『怪人と探偵』中川晃教&加藤和樹対談(上)

中川晃教さん(右)と加藤和樹さん=撮影・岩村美佳

2019年9月14日(土)からKAAT神奈川芸術劇場で上演される、新作ミュージカル『怪人と探偵』の稽古場を8月中旬に訪ね、中川晃教さんと加藤和樹さんの対談インタビューをしました。中川さんは大怪盗・怪人二十面相を、加藤さんは名探偵・明智小五郎を演じます。一からミュージカルを作る現場の様子や、お互いのことについて伺いました。『怪人と探偵』は、江戸川乱歩が生み出した、日本文学史上最も有名なふたり、怪人二十面相と明智小五郎を主人公に、『少年探偵団シリーズ』など乱歩作品に登場するキャラクターたちが、騙し騙される華麗な対決を繰り広げる、新作ミュージカルです。作・作詞・楽曲プロデュースを手がけるのは、日本を代表する作詞家で、ミュージカル界でも活躍されている森雪之丞さん、演出は次々と話題作の演出で注目を集める、KAAT神奈川芸術監督の白井晃さんです。

中川晃教さん(右)と加藤和樹さん=撮影・岩村美佳

中川晃教さん(右)と加藤和樹さん=撮影・岩村美佳

ーー稽古がはじまって今はどのくらい進んでいますか?

加藤:最後のシーン以外はひととおり当たりました。まだひとつひとつが繋がっていないですが、全体の大枠は見えてきた感じですね。

ーーその状況で、手応えはいかがですか?

中川:(加藤さんに)どうですか?

加藤:まだまだです。まだ感情の流れまで行っていないので、ここから本腰をいれて芝居を作っていくところです。

中川:まさに和樹マンが言ったとおり、2週間で枠組みを作った感じです。枠組みとは何ぞやですが、新作であることと、振付や殺陣もひとくくりにすると演出ですが、音楽も平行して作られていて、また振付など、細かく分かれているわけですよね。そういうことが今この現場のなかで同時進行で進んでいて、盛りだくさんな稽古場なんですよ。ただ、そのなかでも、一幕と二幕を2週間で作れたことで、この作品のもつ力みたいなものは感じています。昨日も二幕の最後まであたりましたが、(大原)櫻子ちゃんと和樹マンと3人で、「一幕で、僕たちがこういうところを芝居で作れたらいいよね」と話したんです。逆に大枠が見えたことで、自分たちの次に向かう課題が明瞭になりました。

ーー脚本を読ませて頂きましたが、ものすごく面白いと思いました。

加藤:単純に読み物として面白いですよね。

ーーさらに楽曲がPVとしても公開され、WOWOWの番組やコンサートなど、さまざまなところで披露されていて、おふたりをはじめとするキャスト、スタッフのみなさんを考えると、めちゃくちゃ面白いことになるんじゃないかと。

中川:ありがとうございます。

ーーおふたりがここがすごいんじゃないか、面白いことになるんじゃないかと思うところはいかがですか?

加藤:『怪人と探偵』という、江戸川乱歩さんの『怪人二十面相』を原案とした、雪之丞さんの脚本で、探偵ものによくあるドタバタ感の良さがちゃんと活かされていると思います。それは殺陣師の渥美(博)さんが入ることで、単純なアクションシーンというよりは、芝居のなかでの面白さが組み込まれたうえで、ドタバタのアクションになっているところが、立ち回りがついてはじめてわかったんです。台本には“ここで乱闘”と書いてありますが、それがちゃんと形になったときに、例えば警官と探偵団など、役割があるアクションなので、その見せ方が面白さのひとつだなと思います。正直こんなにアクションがあるとは思っていなかったので(笑)。

<取材協力>
ヘアメイク(中川晃教):松本ミキ

※アイデアニュース有料会員限定部分には、稽古場でのエピソードやこの作品ならではの面白さなどインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。9月10日(火)掲載予定のインタビュー「下」では、お互いの存在について感じていることや、作品への思いなどインタビューの後半の全文を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>

■中川:僕たちが稽古していることが、ひとつひとつこの作品の成形に繋がっていく

■加藤:軸になってくるのは、愛をめぐる、男と男の人間臭い対決のなかで揺れ動くリリカ

■中川:雪之丞さんの言葉がいい当てている、白井さんを演劇界の怪人と言ってもいい

■加藤:白井さんは、一緒に芝居を作っていくなかで、求めてくるものも貪欲に増えていく

<ミュージカル『怪人と探偵』>
【神奈川公演】2019年9月14日(土)~9月29日(日) KAAT神奈川芸術劇場<ホール>
【兵庫公演】2019年10月3日(木)~10月6日 (日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
公式サイト
http://www.parco-play.com/web/play/kaijintotantei/

<関連リンク>
中川晃教 オフィシャルサイト
http://www.akinori.info/
中川晃教 オフィシャル Twitter
https://twitter.com/nakagawa1982aki
ASSIST| 加藤和樹 Official Web Site
http://www.katokazuki.com/
加藤和樹 オフィシャルブログ
https://ameblo.jp/katokazuki-blog/
加藤和樹 Twitter
https://twitter.com/kazuki_kato1007
加藤和樹 IMPERIAL RECORDS
http://www.teichiku.co.jp/artist/kato-kazuki/

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中川晃教さん(右)と加藤和樹さん=撮影・岩村美佳

中川晃教さん(右)と加藤和樹さん=撮影・岩村美佳

※ここから有料会員限定部分です。

■中川:僕たちが稽古していることが、ひとつひとつこの作品の成形に繋がっていく

ーーKAAT神奈川芸術劇場という大きい劇場だからこそ、映えるエンターテインメント感もあるのかなというワクワク感もあります。

加藤:舞台装置、ワゴンを大胆に動かしたりとか、劇場空間のなかでどう見えるのか、白井さんや渥美さんが見せたい動きが面白いものになるだろうなと予感しています。

ーー中川さんはいかがですか?

中川:2019年夏、『怪人と探偵』、この新作ミュージカルからミュージカルがはじまったと、そう思ってもらえる作品にしようとみんなで気持ちを確かめ合った本読み稽古初日が8月1日にあって、そこから約2週間、毎日暑いこの夏を生きているんですが、そのはじまりに僕たちオリジナルキャストが携わっているんだという自負は、きっと初日の幕が開いたときに、お客様に感動、笑い、涙となって届くんだろうなと思える、そういう稽古なんですよね。何がこの作品の魅力なのか、語りつくせないくらいたくさんありますが、大きくいうとそこかなと。今拓哉さん、樹里咲穂さん、高橋由美子さん、六角精児さんらベテラン、水田航生くん、フランク莉奈さんら若手、そして僕らと櫻子ちゃん、アンサンブルメンバー含めてキャスト全員が稽古して、ひとつひとつこの作品の成形に繋がっていくんだという思いが、この作品を作り上げていくんだなと。その現場が今すごく楽しいです。

中川晃教さん=撮影・岩村美佳

中川晃教さん=撮影・岩村美佳

■加藤:軸になってくるのは、愛をめぐる、“男と男の人間臭い対決のなかで揺れ動くリリカ”

ーー脚本を読んで、謎解きや正義とは何かという面白さもありますが、この物語ならでは面白さは、中心に“愛”があることなのかなと。

加藤:トリックやアクションシーンのなかでは謎解きの面白さはあると思いますが、今回軸になってくるのは、二十面相がリリカと出会って、愛という世界で一番綺麗な宝石を見つけて、その愛をめぐる、どちらかというと“男と男の人間臭い対決のなかで揺れ動くリリカ”というところ。『怪人と探偵』というくらいですから、謎解きの面白さが主軸なのかと思われつつも、非常に人間味あふれる感情のやりとりがこの作品ならではの面白さだと思いますね。

中川:まさにそのとおりですね。

ーーその面白さを白井さんがどう演出されるのかが楽しみですが、今の段階で伺えるところをお聞かせいただけたら。

加藤:僕は白井さんと何本もご一緒させていただいていますが、正直なところ、まだ白井ワールド全開というところまでは来ていない気がしています。雪之丞さんが描きたいものとのバランスもあると思うんです。ワンシーン、ワンシーン、疑問に思ったことは、みんなで話し合ってクリアにしていっている状態なんです。そのなかで、白井さんがここの演出をどうしたいか、イメージなどのお話をしてくれるんですが、まだ枠組みを決めている段階で、そのなかの芝居をどう見せたいとか、もっとここの感情を際立たせたいということは、これからの作業になってきます。舞台美術に関しても白井さんがどうこねくり回したいのか、僕が今までやってきたものに比べると、描く世界も全然違うので、どれだけ白井さんが壊していけるか、壊してくれるんだろうというのは、まだまだこれからの楽しみです。

加藤和樹さん=撮影・岩村美佳

加藤和樹さん=撮影・岩村美佳

■中川:雪之丞さんの言葉がいい当てている、白井さんを演劇界の怪人と言ってもいい

ーーなるほど。中川さんは白井さんの演出が初めてですよね。いかがですか?

中川:和樹マンは白井先生の先輩ですから(笑)。

加藤:いえいえ(笑)。

中川:稽古中も「ねぇねぇ! 白井さんってこんな感じなの?」って聞くと、「こういうところもあるけれど、今回はまだ試しながらやってますね」って。

加藤:まだ全然本気出してないです。

中川:これで本気出してないの? 俺、結構ツライけど(笑)。

(全員笑)

中川:「白井ワールドをまだよくわかってないけれど、地雷踏んでない?」「大丈夫です」なんて言いながら(笑)。櫻子ちゃんも以前に白井さんとやっているので、「俺、大丈夫?」「いいと思います」「良かった……」なんて確認して様子を伺いながらやっています(笑)。まさに雪之丞さんの言葉がいい当てていると思うんですが、白井さんを演劇界の怪人と言ってもいいんじゃないかと。

ーー確かに。

中川:雪之丞さんがこの物語を作ろうと思ったとき、白井さんなくしてはじまらなかったとおっしゃっていました。2013年に雪之丞さんが思いを込めて作ったミュージカル『SONG WRITERS』という作品がありますが、当時に『怪人と探偵』はもうはじまっていて、2014年に一幕を書いたそうなんです。その瞬間にスカパラ(東京スカパラダイスオーケストラ)の音楽がパッと頭に浮かび、そして、僕たちがお声がけいただいた。こういう経緯を聞いて始まったので、稽古場の悩み、葛藤、そして試行錯誤しながら進めていく作業も、ひとつひとつすべてが、この作品の血となり、肉となるんだと信じられます。この暑さで身にこたえますし、長時間労働なので集中力がもたなかったりするんですけれどね。普通だったら俳優として演出家から求められたことに答えていくことに、どこか理屈を持ち込みたくなるんです。例えば役としてそれが通るのか。芝居としてさっき言っていたことと、今言っていることは違うんじゃないか。昨日やったことと、今日やったことはどうやって成立させようと考えているのか。頭でそこを考えはじめるんですが、あまりそういうことをやっていると、今は頭がおかしくなりそうになるので、その瞬間ごとに求められたことに対して、俳優としてアウトプットしてパッと答える。前後関係はあとで白井さんが何とかするんだろうと。

中川晃教さん(右)と加藤和樹さん=撮影・岩村美佳

中川晃教さん(右)と加藤和樹さん=撮影・岩村美佳

■加藤:白井さんは、一緒に芝居を作っていくなかで、求めてくるものも貪欲に増えていく

中川:ある部分割り切ったところでの俳優としての役割と、この作品をオリジナルミュージカルとして仕立てていくうえで、和樹マンも僕もミュージカルの世界でいろいろな経験をさせてもらっていると思うから、その経験が大きいですね。この新作オリジナルミュージカルが、ここからミュージカルがはじまったと、お客様に思ってもらえる、今がそのための時間だと思うんです。いい意味でも愛を持って白井さんに向き合っていますが、僕は和樹マンのおかげなんですよ。白井組の先輩だから(笑)。

ーー安心感もある?

中川:そう! これでいいんだなと思える。もうすでに、白井さんに対しての関係性が、僕らのこの関係のなかで出来上がっているのもいいなと思いますし、白井さんはすごいなと思っています。

ーーここから白井ワールドが出来上がっていくなかで、中川さんがどうなっていくのかも楽しみですよね?

加藤:白井さんの場合は、初めましての方だと、どういう役者さんなのか、どういうアプローチをするのかわからない部分もあるので、それは役者同士でも同じことですが、どんどん一緒に芝居を作っていくなかで、求めてくるものも貪欲に増えていくと思いますし、もっと本気を出して、もっと僕に当たりが強くなってくるんじゃないかと思います(笑)。

中川:(笑)。わかんないよ! 俺に当たりが強くなるかもよ!

中川晃教さん(右)と加藤和樹さん=撮影・岩村美佳

中川晃教さん(右)と加藤和樹さん=撮影・岩村美佳

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“「自分たちの次に向かう課題が明瞭に」、『怪人と探偵』中川晃教&加藤和樹対談(上)” への 15 件のフィードバック

  1. Weeber より:

    「怪人と探偵」の舞台を拝見してから改めてこの記事を読ませていただきました。
    なるほどと感じることも多くて面白かったです。
    「ミュージカルは文学的な理数系」という言葉が印象的でした。
    興味深いインタビュー記事、素敵な写真を有難うございます。

  2. まめちゃ より:

    オリジナルミュージカル、とても楽しみです。
    スカパラもすきだし、お二人も大好きなので、観劇するのが楽しいでなりません!

  3. かず より:

    アイデアニュースさんの記事は他では読めないような役者さんのコメントが引き出されていて、毎回本当に興味深く読ませていただいています。
    面白いと評判の脚本に白井さんの演出。素敵なキャストで観られることに期待が高まります。
    記事同様に写真も、他では見られない素敵な表情が見られて嬉しいです。
    いつもありがとうございます。

  4. ぶらん より:

    中川さんと加藤さんお二人映りの写真が男同士の熱さと艶っぽさを感じる不思議な空気があってとても素敵です!ありがとうございます!
    白井作品を観るのは今回が初めてなのでどんな世界観なのか楽しみで待ち遠しいです!

  5. ちま より:

    いつも素敵なインタビュー、楽しませてもらっています。
    中川さん、加藤さんお二人の和気藹々とした雰囲気に加え、良い作品にしたいという思いが伝わってきました。
    約5年前からあたためていた企画ということで、作品への熱意は並々ならぬものだと思います。来月の観劇を心待ちにしています。

  6. ちゃんこちゃん より:

    怪人と探偵、観劇をとても楽しみにしています!

  7. at より:

    怪人と探偵より楽しみになりました♩
    スカパラの音楽!豪華な俳優陣!想像できないストーリー!初日が待ち遠しくてワクワクします^ ^
    特に中川晃教さんの演技や歌声は惹きつけられるものがあり、毎公演楽しみにしてるので、今回どんな演出で拝見できるのか楽しみです!
    コンサートで披露された楽曲も素敵でした♩
    またアイデアニュースで様々なミュージカルの話を見れるのを楽しみにしてます^ ^

  8. ハバネロ より:

    お二人の魅力が溢れている記事と写真ありがとうございます!舞台が楽しみでしょうがありません。

  9. めいたま より:

    まだ「上」しか読んでいない段階ですが、大変な中でも「楽しい」「面白い」と思って稽古に臨んでいることが伝わって、わくわくしています。
    日本発の日本を舞台にしたオリジナルミュージカル。全く無かった訳ではないですが、ここまで大掛かりなのは無いと思います。
    今週末まで迫って来ましたが、楽しみで仕方ありません。

  10. のこ より:

    岩村さんのお写真と記事、いつも素敵で何度も読み返してしまいます。
    お二人の作品への取り組み方や、お互いに対するお気持ちなどもたっぷり知ることができて、楽しく拝読いたしました。
    公演がさらに楽しみになりました!

  11. kyoko より:

    写真のお二人の雰囲気…とても色っぽくて素敵です。
    中川晃教さん、加藤和樹さんのこの作品への熱い想いを知れば知るほど、劇場で観られる日が待ち遠しくなります。
    いつも素敵なインタビューを記事にしてくださってありがとうございます。後半も楽しみにしております。

  12. ユウ より:

    いつも幕が上がるのが更に待ち遠しくなるインタビューと素敵な写真をありがとうございます!
    毎回後半のインタビューで思いや状況を更に深いところまで掘り下げて下さるので後半の公開も楽しみにしています。

  13. りい より:

    いつも素敵な記事をありがとうございます。今回も興味深い話がたくさんあって、熟読させていただきました。「怪人と探偵」がさらに楽しみになっております。後半も楽しみにしています。

  14. taro より:

    いつも深い所までのインタビューをありがとうございます。
    今回もじっくり読ませていただきました。
    開幕まで1週間を切り、このお話を読んでワクワク感が増しました。

  15. リナ より:

    加藤和樹さんと中川晃教さんの強い信頼関係と「怪人と探偵」への並々ならぬ意気込みが伝わってきて、ワクワクしながら読ませていただきました。
    開幕前に濃密なインタビュー記事が読めること、毎度のことながら本当に感謝しております!
    お話の時点ではまだ「本気」ではなかった白井晃さんの演出がその後どうなったのか、結果をこの目で確かめることがとても楽しみです。
    個人的にミステリーが大好きですし、既に公開されている楽曲も素敵で、大原櫻子さん、高橋由美子さん、六角精児さんなど豪華な出演者の方々がどんな風に絡み合うのか、、とにかく初日が待ち遠しくて仕方ありません!

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