「ダンスの魅力はジャンルじゃない」、『ヘアスプレー』三浦宏規インタビュー(上)

三浦宏規さん=撮影・岩村美佳

ブロードウェイ・ミュージカル『ヘアスプレー』で、主人公のトレイシーが憧れるスターダンサー、リンク役を務める三浦宏規さんにインタビューしました。5歳から始めたクラシックバレエを武器に、10代にして数々のステージに出演。ミュージカル『テニスの王子様』の跡部景吾役や、ミュージカル『刀剣乱舞』の髭切役で一躍人気を集めた三浦さん。2019年にはミュージカル『レ・ミゼラブル』で初めて帝国劇場の板の上に。弱冠20歳という“史上最年少マリウス”で大きな話題を呼びました。多くの人から将来を期待されるミュージカル界の超新星。アイデアニュースでは、その素顔を上下に渡ってお届けします。(このインタビューは、『ヘアスプレー』全公演の中止が決まる前の2020年4月上旬に実施したものです)

※編集部注:ブロードウェイ・ミュージカル『ヘアスプレー』は、新型コロナウイルス感染症拡大にかかわる政府及び各地方自治体の方針等を踏まえて、各地ツアー公演を含めて全公演を中止とすることが、2020年4月24日に発表されました。

三浦宏規さん=撮影・岩村美佳

三浦宏規さん=撮影・岩村美佳

――『ヘアスプレー』、大好きな作品なので、とても楽しみです!

僕も大好きです! 本当によくできたお話ですよね。楽しいし、元気が出るし。

――初めて『ヘアスプレー』を観たのはいつ頃ですか?

たぶん6年前ぐらいだったと思います。ミュージカルの仕事をやりはじめて、歌うようになってから、いろんな作品を観るようになって。その中のひとつがこの『ヘアスプレー』だったんですけど、初めて観たときから大好きだった作品なので、こうやって自分が参加させてもらえるのが本当にうれしいんです。

――ぜひ『ヘアスプレー』のどんなところが好きか教えてください。

いっぱいありますけど、観ているだけで笑顔になれるところですね。トレイシーも可愛いし、楽曲も素晴らしいですし。それでいて、単に楽しいだけじゃなくて、観終わったあとに60年代初めのアメリカが抱える人種差別やその他の社会問題について考えさせてくれるところが素敵だなと思います。ちゃんとテーマがあるからこそ、たくさんの人が心惹かれるんだろうなって。全世界でこの『ヘアスプレー』が上演されている理由はそこにある気がしました。

――じゃあ今挙げていただいたポイントをここからどんどん深掘っていきますね。まずはトレイシーについて。どんなときも明るく前向きに夢に向かって突き進むトレイシーの姿に、三浦さんはどんなことを感じましたか?

すごく可愛いし、大好きです。だからトレイシーに惹かれるリンクの気持ちはよくわかる。周りの人たちはトレイシーが太っていることをバカにするけど、人間は外見だけじゃなく、中身が大事。トレイシーから、そのことを改めて教えてもらった気がします。

――今回はそんなトレイシーを渡辺直美さんが演じます。

実は昨日も直美さんのインスタライブを観ていました(笑)。去年、FNS歌謡祭でご一緒させていただいたとき、ムードメーカーみたいな感じで明るく現場を引っ張ってくださる姿がすごく印象的で。みんなを引き込むパワーや行動力は、トレイシーにも通じる魅力。僕が言うのもなんですけど、トレイシーにぴったりだなと思いましたし、直美さんと一緒に作品をつくり上げるのが、とても楽しみです。

<取材協力>
ヘアメイク:山下由花
スタイリング:小田優士

※アイデアニュース有料会員限定部分には、これまでやってきたダンスと『ヘアスプレー』のダンスの違い、ダンスの魅力についてのほか、この作品のテーマについて三浦さんが思っていることなどについて伺ったインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。5月8日(金)掲載予定のインタビュー「下」では、『ヘアスプレー』のついてのお話のほか、2019年にマリウス役(海宝直人さんと内藤大希さんとトリプルキャスト)で出演した『レ・ミゼラブル』、2020年にシーモア役(鈴木拡樹さんとWキャスト)で出演した『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』についても伺ったインタビュー後半の全文と写真を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>

■これまでやってきたダンスと60年代のダンスはテイストが違う。どう表現するかが課題

■ダンスで大事なのは自分が楽しむこと。自分が心の底から楽しんで表現するのがダンス

■生まれつきのことで人をジャンル分けするのは、正直、浅はかだなと思う

■クラシックバレエの世界で、アジアのダンサーも受け入れられるようになってきた

<ミュージカル『ヘアスプレー』>
【東京公演】2020年6月14日(日)~6月28日(日) 東京建物Brillia HALL (中止)
【大阪公演】2020年7月5日(日)~7月13日(月) 梅田芸術劇場メインホール (中止)
公式サイト
https://www.tohostage.com/hairspray/

<関連リンク>
ミュージカル『ヘアスプレー』公式twitter
https://twitter.com/hairspray_toho
ミュージカル『ヘアスプレー』公式instagram
https://www.instagram.com/hairspray_toho/
三浦宏規オフィシャルサイト
https://www.miurahiroki.com
Will-B-三浦宏規 MIURA,HIROKI-ウィルビー・インターナショナル
http://www.will-b.asia/staff/entry/-hiroki-miura/
三浦宏規 twitter
https://twitter.com/hirokimiura0324

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三浦宏規さん=撮影・岩村美佳

三浦宏規さん=撮影・岩村美佳

※ここから有料会員限定部分です。

■これまでやってきたダンスと60年代のダンスはテイストが違う。どう表現するかが課題

――三浦さんはリンクを演じます。

リンクはスターダンサーなんで、ここはカッコよく決めなきゃと思っているんですけど(笑)。

――カッコいいところ見たいです(笑)。ダンスシーンもたくさん盛り込まれるのかなと思いますが、『ヘアスプレー』に登場するツイストは経験ありますか?

やったことないです。ずっとダンスはやってきましたけど、60年代のアメリカのダンスはまた全然テイストが違いますし、ヨーロッパ系の人のダンサーと、アフリカ系の人のダンサーでも、踊りのスタイルは変わってくる。その中で、どうやってリンクのダンスを表現していくかは、これからの課題です。

――昨年末にオンエアされたFNS歌謡祭では、『You Can’t Stop The Beat』を披露されましたよね。お稽古をしてみていかがでした?

実は稽古は2回だけだったんですよ。

――え、それだけだったんですか。

僕もビックリしちゃいました(笑)。みなさん忙しい方ばかりなので、なかなか稽古のスケジュールが合わないのは仕方ないんですけど。ただ、稽古の期間が短かった分、不思議な団結力みたいなものが生まれて、1回1回の稽古がすごく楽しかったし、濃密な稽古ができました。

――日頃の劇場でのパフォーマンスと、スタジオでの収録。やっぱり感触は違いましたか?

全然違いましたね。いちばんの違いは、カメラを意識しなきゃいけないことです。あくまで気持ちの面では、舞台でいつもやっていることをそのままカメラの前でやるだけだと。だから、あまり何か変えようとはせず、今の自分ができることをやろうと思ったし、あそこで一度経験させてもらったことで、振り付けの(原田)薫さんのニュアンスをなんとなくですけど掴めたのは大きかった気がします。

三浦宏規さん=撮影・岩村美佳

三浦宏規さん=撮影・岩村美佳

■ダンスで大事なのは自分が楽しむこと。自分が心の底から楽しんで表現するのがダンス

――本番でどんなダンスを見せてくれるのか楽しみです。

ただ、これは僕自身の考えですけど、ダンスはジャンルじゃないと思っているんです。

――どういう意味ですか?

きっと『ヘアスプレー』を観てくださったらわかってもらえると思うんですけど、ダンスの魅力ってジャンルじゃないんです。もちろんクラシックであったりジャズであったりヒップホップであったり区分けはあります。でもダンスで表現したいことは、そこじゃないから。大切なのは、振り付けに今までの自分がやってきたことを込めること。リンクだけにこれまでの僕の経験をリンクできたらと思っています。……って、全然うまくねえな(笑)。

――(笑)。人間は肌の色じゃないんだということはこの『ヘアスプレー』を観ていると伝わってきますが、ダンスも同じように捉えるのは、やはりずっとダンスをやってきた三浦さんならではの目線だと思いました。

僕はずっとそう思っているんですよ。あんまり区分けしなくてもいいんじゃない?って。もちろん区分けしなきゃいけないことはあるかもしれないけど、本質はそこじゃないんじゃないかなって。

――では、三浦さんが思う本質とは?

やっぱりまず大事なのは、自分が楽しむこと。お客さんがダンスに求めているものは、ジャンルじゃなくて、何を伝えているかだから。自分が心の底から楽しんで何かを表現するのがダンス。もちろんジャンルはあるし、今の僕はバレエダンサーではないので、バレエしか踊れませんじゃダメ。そのうえで、僕が音楽に乗せて楽しく踊ることで、見ている人に何か感じてもらえたら、きっとそれはいいダンスなんじゃないかと思います。

三浦宏規さん=撮影・岩村美佳

三浦宏規さん=撮影・岩村美佳

■生まれつきのことで人をジャンル分けするのは、正直、浅はかだなと思う

――ぜひもう少し作品のテーマについて三浦さんが思っていることを聞かせてください。僕は2007年に公開された映画版のクライマックスで司会者のコーニー・コリンズが「これが未来だ」と告げるところがすごく好きで。旧態依然とした価値観を若い世代が塗り替えていくパワーに、爽快な感動を覚えました。三浦さんはどう感じました?

すごくいいですよね。僕が爽快だなと思ったのは、ペニーとシーウィードのカップルです。ペニーのお母さんはアフリカ系の人が大嫌いだから、娘がアフリカ系の人と付き合うことに反対するんだけど、ペニーたちからしたらそんなの知らないわけじゃないですか。歴史とか人種とかそんなの一切関係なく、ただ目の前の人が好きだから一緒にいたい。そのピュアな想いが素敵だなって。

ただ、決してお母さんに対して「ざまあみろ」とも思わないんですよ。お母さんはお母さんで差別が当たり前の時代を過ごしてきて、それが当然だと思って生きてきたわけだから、その価値観をいきなり変えるのは難しい。でもどっちがハッピーかって言ったら、僕は絶対差別のない世界の方がハッピーだし、爽快だなって思います。

――すごくわかります。

これって現代の日本にも置き換えられることで。たとえば戦争のことにしたって、実際に戦争を経験したおじいちゃん世代は今もずっと抱えているし、それが差別や憎しみの理由にもなっている。日本だけじゃなく、中国も、アメリカも、どこも同じで。

ただ、やっぱり僕の感覚からすると、正直、その当時のことは関係なく、みんな仲良くすればいいと思うんです。僕らだって別に日本人になりたくて日本人になったわけじゃなく、ただ生まれた国が日本だったから、日本人なだけ。そういう生まれつきのことで人を差別したって相手に罪はないし、そこでジャンル分けするのは正直、浅はかだなとも思う。だから、この作品が言ってることはすごくわかるし、共感できます。

三浦宏規さん=撮影・岩村美佳

三浦宏規さん=撮影・岩村美佳

■クラシックバレエの世界で、アジアのダンサーも受け入れられるようになってきた

――理不尽な差別がなくなるだけで、きっと世界はもっと優しくなると思います。

少しデリケートな話になりますけど、クラシックバレエの世界にもずっと人種差別はありました。もともとは貴族の宮廷舞踊がバレエの発祥。だからずっとヨーロッパ系の人が優位だったんですけど、最近はアフリカ系のプリンシパルも出てきたし、日本や韓国といったアジアのダンサーも受け入れられるようになってきた。僕はそこに時代の変化を感じるし、いい方向に世の中が変わっていってると思うから、この流れで進んでくれたらいいなと思っています。

――令和ですからね。いい時代にしたいですよね。

本当ですね。令和ですよ!

――三浦さんのようなフラットな価値観を持った若い世代が、より良い社会をこれからつくってくれることを期待しています。

そうですね。そう簡単にいかないのかもしれませんが、みんな仲良くすればいいじゃんと思います。

――日本にいると人種差別ってテーマとして少し遠く感じる人もいるかもしれませんが、ジェンダーの問題だったり、いろんな差別がまだまだ日本にも残っていますしね。

置き換えてみれば通じるものはたくさんあると思います。日本もまだまだ男女差別が強いですし。ただ、差別について考えるというのは別に強制するものではなくて。僕としては、この作品を観てただただ楽しんでほしいというのがいちばん。こんな素晴らしい作品を、日本人キャストで、オリジナル演出でやれるなんて、滅多にないチャンス。だから、お客さんにはただただ楽しんでいただいて。その上で、何かこの作品を観て感じるものがあって、自分の生活や周りを見つめ直してくれる人がいたら、ありがたいなという気持ちです。

三浦宏規さん=撮影・岩村美佳

三浦宏規さん=撮影・岩村美佳

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“「ダンスの魅力はジャンルじゃない」、『ヘアスプレー』三浦宏規インタビュー(上)” への 8 件のフィードバック

  1. ももか より:

    三浦宏規くんを取材して下さりありがとうございます。宏規くんのヘアスプレー、またバレエや物事にに対する思いや考えをこの記事でより詳しく知ることが出来、とても嬉しかったです。
    またこのような機会があったら読みたいと思います。

  2. 優里香 より:

    ヘアスプレー公演中止になってしまい、とても残念でしたが、この記事を読んで少し元気をもらえました!
    三浦さんは私が一番好きなダンサーさんなので、ぜひ三浦さんのリンクをいつか観たいです。観れる日が来ると信じて私も頑張ろうと思います。素敵な記事、ありがとうございました!

  3. ゆーか より:

    素直な心情が語られているとても素敵な記事ですね…!私も最近「表現すること」について考えていたのですが、それは何かを観てる人に伝えたいっていう強い想いが大切で、何よりも表現する人自身が楽しんでいるかどうか、それは観ていてもやっぱり伝わってくるものだから…読んでいてものすごく共感しました!
    この作品はまだ観たことがありませんが、この記事を読んでいて気になる作品の1つになりました。
    いつか、またの機会が訪れることを心から願っています。

  4. まりこ より:

    公演は中止になってしまい残念ですが、インタビュー記事を読んで三浦さんのダンスや役に向き合う姿勢を知ることが出来て嬉しかったです。横川さん素敵な記事をありがとうございます。インタビューの続きも楽しみにしております。

  5. mauuuuuuuuuu より:

    三浦さんの考えていることが聞けてとてもよかったです。インタビュー(下)も楽しみにしています。

  6. かなえ より:

    Les Misérablesの記者会見動画をきっかけにアイディアニュースさんを知りました。三浦さんのインタビュー、安心と信頼の横川さんと知って楽しみに戻って参りました。これからも素敵な企画をお願い致します。

  7. こっこ より:

    公演の発表があってからずっと楽しみにしていた作品だったので、中止になってしまったのはとても残念ですが、インタビューが残ることにより少しでも三浦さんがどう感じ、どう演じようとしてくれていたかに触れることができて良かったです。この時期を乗り越えてパワーアップしてくれるであろう三浦さんを観るのが今から楽しみです。
    ライターの方がTwitterをフォローさせて頂いている方で驚きました。素敵な記事をありがとうございました。

  8. やまみ より:

    素敵なインタビューをありがとうございます。ヘアスプレーは本当に大好きな作品でチケットも取っていたので、中止になってしまったのは本当に残念です。ですが、今回のインタビューで、公演に向かう三浦さんの意気込みや、作品に対する考え方などを知ることが出来て、ファンとしてとても興味深く感じました。ありがとうございます。

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