来年1~2月に上演されるミュージカル「フランケンシュタイン」に出演する柿澤勇人さんのインタビュー後半です。ミュージカル「フランケンシュタイン」で演じる役についての印象の他、「ミュージカルは芝居」というその真意や、今年の舞台「ラディアント・ベイビー ~キース・ヘリングの生涯~」について複雑な思いを話してくれました。
■特に(鈴木)壮麻さん! すごいビジュアル……どうしたの!?って。
――今は製作発表とビジュアル撮影を終えたぐらいだと思いますが、今の段階で役についてどんなことを感じていますか?
まず、ひとり二役というのが初めての経験です。ジャックについては何をする人なのかよくわかっていない状況なんですが、この扮装と感覚的なことで今言えるのであれば、二役が全然違うんだろうなと思います。
――皆さんなかなか強烈なビジュアルですよね。
特に(鈴木)壮麻さん! すごいビジュアル……どうしたの!?って。
――誰!? って思いました(笑)。
■表面的なことでやるのが一番怖い。ビジュアルに惑わされず、役に取り組みたい
怖いのは、完成台本を見る前に扮装を撮っているので、雰囲気や表面的なことでやるのが一番怖いと思うんですね。繰り返しますがミュージカルは芝居だと思っているので、扮装がこうだからといってエキセントリックにやらなければいけないのかといえばそうではありません。表面的にやりたくないと思っていますので、ふたつの役もアプローチを変えなければいけないではなく、単純にひとつの役に対して何を思っているのかを考えて、向き合って作っていきたいです。結果、エキセントリックになったり、狂人になったりするのは、動機があればいいと思います。ビジュアルに惑わされず、普通に芝居の稽古だと思って、丁寧に両方の役に取り組みたいと思っています。
■原作の力を大事にしたい
――板垣さんも製作発表で陰と陽の役を、もしかしたら根っこが繋がっているのかもしれないという考え方もあるかもなど、全く違うというところから入りたくはないというようなお話をおっしゃっていましたね。
そうだろうと思います。真逆というところに焦点を合わせすぎないように。物語の色々な普遍的なテーマが存在するからこそ、フランケンシュタインがこれまでに色々な形で上演され、今でもお客さんに面白いと思われているんだと思います。原作の力を大事にしたいと思っています。
■自分を俯瞰して冷静な部分がなければ。本当に壊れたら自己満足で終わる
――柿澤さんは「ライオンキング」をご覧になってミュージカルをやりたいと思ったと伺っています。今日、何度か「ミュージカルは芝居だ」とおっしゃっいましたが、どのあたりからそう思うようになったんでしょうか?
劇団四季に入ってからですね。「ライオンキング」を見た最初はエネルギーに圧倒されたんですよ。パワーやダンスをやっているときの生のエネルギーやパッションにすごく心を動かされました。こんなに一生懸命にやって感動を伝えられるんだと思ったのですが、見るのとやるのとでは違いました。浅利(慶太)先生にずっと言われていたのですが、感情的に自分のやりたいように雰囲気でやるのは一番寒いんだと。もっと丁寧に、丁寧に、感情を爆発させるとか、狂うとか、暴れるというシーンがあるとしたら、どこかで自分を俯瞰して冷静な部分がなければいけない。本当に壊れてしまったら自己満足で終わってしまいます。
<アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分の内容です>
■芝居が上手い人は歌が残る。吉田鋼太郎さんは、芝居で歌って成立する
■蜷川さんに「きどったように『いらっしゃいませ』と言うのが一番嫌い。なぜ声を作るんだ」と言われた
■声にノイズが入っているから、その人の人生が見える
■危険なところではないところでアキレス腱が切れて、舞台の怖さを思い知りました
■正直なところ、「フランケンシュタイン」を千秋楽までやれるのかと、すごく怖いです
■「ラディアント・ベイビー」の、あの経験があって良かったと思えるような復帰1作にしたい
<柿澤勇人さんのサイン色紙と写真を有料会員3名さまにプレゼント>
柿澤勇人さんに書いていただいたサイン色紙と写真1カットを、アイデアニュース有料会員(月額300円)3名さまに抽選でプレゼントします。当選者の発表は発送をもってかえさせていただきます。応募は有料会員の方はログインし、この記事の文末にある応募フォームからご応募願いします。有料会員の方はコメント欄にメッセージを書き込むことができますので、ぜひ記入をお願いいたします。応募締め切りは11月4日(金)です。(この応募は締め切りました)
<ミュージカル『フランケンシュタイン』>
【東京公演】2017/1/8(日) ~ 2017/1/29(日) 日生劇場
【大阪公演】2017/2/2(木) ~ 2017/2/5(日) 梅田芸術劇場メインホール
【福岡公演】2017/2/10(金) ~ 2017/2/12(日) キャナルシティ劇場
【愛知公演】2017/2/17(金) ~ 2017/2/18(土) 愛知県芸術劇場大ホール
<『フランケンシュタイン』関係サイト>
日生劇場 http://www.tohostage.com/frankenstein/index.html
梅田芸術劇場 http://www.umegei.com/schedule/565/index.html
キャナルシティ劇場 http://canalcity.co.jp/news/event/1249
愛知県芸術劇場大ホール http://search-event.aac.pref.aichi.jp/p/event_month_kouen.php
柿澤勇人
- キャスト全員が魂を削って描いた「孤独」、『フランケンシュタイン』4組の公演を観て 2019年8月9日
- メインキャスト全員が2役、真逆を堪能できるオイシサ ミュージカル『フランケンシュタイン』 2017年1月11日
- 「ラディアント…の経験があって良かったと思える復帰1作に」 柿澤勇人(下) 2016年10月21日
- 「フランケンシュタインは、芝居で見せたい」 柿澤勇人インタビュー(上) 2016年10月19日
フランケンシュタイン
- キャスト全員が魂を削って描いた「孤独」、『フランケンシュタイン』4組の公演を観て 2019年8月9日
- 「ブリッジを積み重ねて…」 ミュージカル『フランケンシュタイン』出演、相島一之インタビュー 2017年1月18日
- メインキャスト全員が2役、真逆を堪能できるオイシサ ミュージカル『フランケンシュタイン』 2017年1月11日
- 「作品ごとに変化が続き、心の動きが大きくなっています」 小西遼生インタビュー(下) 2017年1月3日
- 「フランケンシュタイン」出演、小西遼生インタビュー(上) 「丁寧に作っていかなきゃ」 2017年1月2日
- 「ラディアント…の経験があって良かったと思える復帰1作に」 柿澤勇人(下) 2016年10月21日
- 「フランケンシュタインは、芝居で見せたい」 柿澤勇人インタビュー(上) 2016年10月19日
- 生命創造と愛と友情をテーマに、ミュージカル「フランケンシュタイン」製作発表 2016年8月28日
<ここからアイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分です>
■芝居が上手い人は歌が残る。吉田鋼太郎さんは、芝居で歌って成立する
先日テレビ番組の「情熱大陸」に大竹しのぶさんが取り上げられていました。「蜷川(幸雄)さんも他の演出家の方も、大竹さんを怪物などと形容しますが、実際にどうなんですか?」とインタビューされていたときに、やはりどこか自分自身が何割かいて、冷静でいるところがないと単なる暴れ馬になってしまうというようなお話をされていました。芝居は皆で作るものですしひとりだけ暴走しても何も生まれないとすごく考えましたね。日々、やはり芝居だと思っています。
ミュージカルに出ていても芝居が上手い人は歌が残るんですよ。そのいい例だとするなら、(吉田)鋼太郎さんと「デスノート」でご一緒したときに、「俺、歌えねぇんだよ。何で俺がミュージカルをやらなきゃいけないんだよ」とずっとおっしゃっていたのですが、芝居はもちろん素晴らしくて、声も持っているから、テクニックで見せるのではなくても芝居で歌って成立するんですよね。やっぱり芝居なんだなと思いました。僕が尊敬するしのぶさん、鋼太郎さん、おふたりともそうですよね。
■蜷川さんに「きどったように『いらっしゃいませ』と言うのが一番嫌い。なぜ声を作るんだ」と言われた
僕も表面的に、形で演じることは排除していきたいです。蜷川さんに「敷居が高い、格式が高い喫茶店に行ったときに、店員がきどったように『いらっしゃいませ。何になさいますか』と言うのが一番嫌いなんだ」と。なぜいちいち声を作るんだと、それがお前なんだよ」と言われたときに気付かされました。
■声にノイズが入っているから、その人の人生が見える
――「海辺のカフカ」のときですね。
作っていたつもりはなかったですが、声を前に飛ばすとか、今までやってきた劇団四季での方法論しかなかったので、蜷川さんに言われてそうだなと思いました。60年代の歌手や俳優って声にノイズが入っているから、その人の人生が見える。幸運なことにそういう方々と一緒に仕事させて頂いて日々感じてきたので、ミュージカルも芝居で伝えたいと思っています。この作品に限らず、今後すべての作品に同じように取り組んでいくと思います。
――私もそういうミュージカルが拝見したいです。芝居畑の方がミュージカルをやってくださるのはとても嬉しくて。
今多くなってきていますし、もっと来てほしいと思いますね。一緒にやっていてビビりますから。いい声で歌って上手いだけでなく、違うやり方でやってくる人を見たりすると、「うわぁ、かっこいいな」と目が離せなくて、喰われると思いましたね。
■危険なところではないところでアキレス腱が切れて、舞台の怖さを思い知りました
――「ラディアント・ベイビー ~キース・ヘリングの生涯~」のお話を少し伺えたらと思います。私もとても好きな作品でした。お話づらいことがあれば申し訳ないのですが。
いえ、大丈夫ですよ。
――私は今までに柿澤さんの作品をすべて見てきたというのではないのですが、あのキースは今までに見たことがなかったというか。柿澤さんだけでなく、皆さん素晴らしくて、魂を削ってお芝居をしていると感じました。どんな公演だったか、少し振り返って頂けますか?
いろんなことがあったので……。僕が決められることではないですが、もう一度やらないと終われないとは思います。すごく楽しかった作品です。でもアクシデントがあって、それも例えば喉が壊れるとか、体の不調ならまだありそうなアクシデントだと思いますが、まさかアキレス腱を怪我するなんて。毎回きちんと1~2時間程アップをして体を温めて、ケアを万全にしていたのですが、それでも、しかも危険なところではないところでアキレス腱が切れてしまったので、舞台の怖さも改めて思い知りました。
■正直なところ、「フランケンシュタイン」を千秋楽までやれるのかと、すごく怖いです
だから、正直なところ、その次の作品である「フランケンシュタイン」を千秋楽までやれるのかとすごく怖いです。今、より自分の心と体と向き合って、自分はまだまだなんだなと思いますね。もし、キースが上で見ているならば、いたずらにしてはちょっとひどいけど(笑)。キースは31歳で亡くなっているので、それまでにもう一度やりたいと思いますね。
――私ももう一度見たい作品です。
それまでにいろんな経験ができると思いますので、また違うキースをやれると思います。あの作品は、台本だけですべてを伝えられるような作品ではないと思うんです。
――私も台本訳の段階で拝見しましたが、よくわからなくて。これをどうやるんだろうかと思いました。
僕も最初台本訳を読んで、一度閉じて横に置きました。「ん!? ちょっと待って……」と。年代が行ったり来たりするし、みんな戸惑ってましたね。これは出来ないと、家で泣いたんですよ。アイデアが浮かばないと思いました。でも、やっていくうちに、周りのキャストにもすごく恵まれていて、皆のエネルギーがまず凄かったですし、そのエネルギーで押し通したというのが作品のいいところだったと思います。次にやるときには、そのエネルギーはそのまま出し続けて、さらにもっと台本の部分で深いところを演じられたらいいなと思います。演劇人生の本当に大きいターニングポイントのひとつになると思います。
――柿澤さん、平間(壮一)さん、知念(里奈)さん、松下(洸平)さんを中心に、皆さんが想像を超える舞台を見せてくださっていて、相乗効果だったのかなと思いました。命が作品のテーマもあったと思うのですが。
あの作品はぜひもう一度やりたいですね。
■「ラディアント・ベイビー」の、あの経験があって良かったと思えるような復帰1作にしたい
――ぜひ拝見したいです。再演を期待して待ちたいと思います。まずは「フランケンシュタイン」へ向けて、意気込みをお聞かせください。
個人的には今年は舞台が1本でしたから、幸運なことにというのも変ですが、リハビリの期間がとれ、なんとかギリギリ出来るというタイミングで稽古に入れると思います。まずは完走したいですし、作品に貢献したいと思っています。稽古までに、万全な状態で稽古に行くためのトレーニングをして、まずは舞台への復帰を果たしたいです。来年は舞台がいくつかありますので、「ラディアント・ベイビー ~キース・ヘリングの生涯~」でいい思いもしましたし、どん底まで突き落とされました。あの経験があって良かったと思えるような復帰1作にしたいと思っていますし、そうでなければやる意味がないので頑張ります!
<柿澤勇人さんのサイン色紙と写真を有料会員3名さまにプレゼント>
柿澤勇人さんに書いていただいたサイン色紙と写真1カットを、アイデアニュース有料会員(月額300円)3名さまに抽選でプレゼントします。当選者の発表は発送をもってかえさせていただきます。有料会員の方は記事下のコメント欄にメッセージを書き込むことができますので、ぜひ記入をお願いいたします。応募締め切りは11月4日(金)です。(この応募は締め切りました)
柿澤さんの記事が読みたく、有料会員になりました。内容も濃く、素敵な記事が読めてよかったです。柿澤さんの中で、中川さんの才能も理解し、それに負けないように芝居で見せようと意気込むのが良かったです。他の俳優さんについて、柿澤さんが思っている事も知れて興味深かったです。しっかりと今まで出会った方を尊敬していて、その話も記事として読めて嬉しかったです。動きを決めてしまわず、芝居をするのは難しいことだと思います。それが発揮できれば、本当に素敵な俳優になられると思います。お酒の話や人見知りの話は面白かったです。「ラディアント・ベイビー」は本当に魅力的な作品でした。その作品のアクシデントや作品への思いも読めてよかったです。ぜひ、私も再演してほしいと思っています。「フランケンシュタイン」で復帰1作として、元気な姿でやり遂げてくれることを祈って応援しています。そして、その時に、良い芝居をして、舞台上で印象に残る素敵な姿を見せてほしいです。今回、どの写真も素敵で雑誌にしてほしいくらいです。読みどころ満載の記事をありがとうございました!
柿澤さんの役者として、譲れない熱い思いを、記事から感じ取ることができました。天国にいるキースもさらなる進化をとげるであろう柿澤さんの演技に期待していることと思います。
フランケンシュタインもきっとやりきってくれると信じています。きっとキースも天国から見守ってくれているはず。微力ながら全身全霊で応援していきたいと思います。
ラディアントベイビー涙涙の千秋楽から4ヶ月経過しましたが今でも本当に忘れることの出来ない作品なのでこのような形で柿澤さんのお気持ちを知れたのが只々嬉しかったです。
きっともう一度、あのNYに生きるキース達と出逢えるのだと信じて…今は待ち続けたいと思います。
また復帰第1作目となるフランケンシュタインへの意気込みもお伺い出来、一層期待が高まりました!!まだリハビリで大変な時期かと思いますが、初日は笑顔と拍手で迎えたいと思います。
聞いてみたいことが満載のインタビューでした!
ありがとうございました。
また、心を開いたカッキーのお話を聞く機会をぜひ!
よろしくお願いしますm(__)m
今は、無事にフランケンシュタインを務めることが出来るように祈りたいと思います。
後半も興味深く読ませて頂きました。
柿澤さんの舞台を愛する気持ち、最後までやり遂げる事が出来なかった無念さ、そして覚悟、十分に伝わってきました。
復帰作となる「フランケンシュタイン」を観るのが益々楽しみになりました。
無事の帰還をお待ちしています。