ミュージカル『マイ・フェア・レディ』にフレディ役で出演される平方元基さんに、稽古場を訪ねインタビューしました。2013年から5年経って再びフレディ役を演じる思いや、新たなカンパニーのみなさんとの作品づくりなどについて伺いました。
――再び『マイ・フェア・レディ』に取り組んでいる今の心境を聞かせてください。
「出戻り組」と言われているんですが(笑)。もともと素敵な作品だと認知していましたが、いろいろな作品で経験させて頂いて、再び戻ってきたことによって、より深くこの作品の世界観を感じています。さらに、イライザも新キャストに変わりましたし、もっともっといろいろなアプローチの仕方ができるなと思いました。この作品に帰ってきて、G2さんが「おかえり!」と出迎えてくれたのがとても嬉しくて。G2さんとはたまにメールなどでやり取りはするんですが、久しぶりの再会です。すごく温かいカンパニーで、もちろんずっと出演されている方もいらっしゃるので、きちんと伝統が引き継がれて、受け継がれている作品に戻ってきたんだなと、ぴしっと襟元を正す気持ちです。
――5年ぶりにフレディに取り組んでいて、役に向き合ってみてどうですか?
当時はリボーン版になって初めての台本や歌詞でしたし、自分が必死だった部分もありますし、今よりも、もっともっと未熟だったので取りこぼしているところもあったと思います。フレディは歌で見せるところが多いですが、「もっと見せられるところがあったんじゃないかな」と、前回出演した公演が終わったあとに思いました。2016年に(水田)航生がフレディをやったときに、もう僕は出ることはないんだと、封印ではないですが、自分の中で終わった作品だと思っていたんです。
いつもひとつの舞台が終わったあとに、「今日ああいう風にできたな」、「こういう風にもできたな」と思うことがあるんですが、一つずつもう一度丁寧に紐解いて、向き合ってやろうとすると、すごくフレディの厚みが増したんです。出番はそんなに多くはないですが、前とは変わっているところも所々にあります。ちょっとした語尾の変化などもあるんですが、その変化に何があるのか考えたり、とにかく稽古場にいるのがすごく楽しくて。稽古時間よりもかなり前に来て、稽古が終わっても「何してるの?」って言われるくらい残っていますね(笑)。それくらいフレディに対する気持ちが大きいです。物語に起伏があるなかで、フレディが出る瞬間はその起伏の山のてっぺんにいることが多いので、そのハッピーなものをどうやって、より大きくなった劇場で埋められるのかなと思っています。
※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、2013年に『マイ・フェア・レディ』が上演された日生劇場と今回の東急シアターオーブとの違いや、「気持ち悪いって言われるんですよ(笑)。褒め言葉かなと思って頑張っています(笑)」というフレディ役について、自身の年齢が上がってこの作品に同じ役で出ることについて、共演者についてなどインタビュー前半で伺った内容の全文と写真を掲載しています。9月11日掲載予定のインタビュー「下」では、前回の『マイ・フェア・レディ』の頃と現在とで自分自身がどのように変わったかや、『銀河鉄道999』〜GALAXY OPERA〜公演で中川晃教さんと共演した際の思いなどについて話してくださったインタビューの後半の全文と写真を掲載します。
<有料会員限定部分の小見出し>
■『ロミオ&ジュリエット』で3階席に行ってみた。そこも包みこめるように
■6週間たっても「待ってたよ」という言葉だけで、すべて解決しちゃう(笑)
■前のシーンでテンションが下がって、フレディが出てきてもち直すところが多い
■僕自身の年齢がイライザに近くなって響きやすく。以前は「ヒモ」に見えた?
<ミュージカル『マイ・フェア・レディ』>
【東京公演】2018年9月16日(日)~9月30日(日) 東急シアターオーブ
【福岡公演】2018年10月6日(土)~10月7日(日) 久留米シティプラザ ザ・グランドホール
【広島公演】2018年10月10日(水)~10月11日(木) 上野学園ホール
【大阪公演】2018年10月19日(金)~10月21日(日) 梅田芸術劇場メインホール
【愛知公演】2018年10月24日(水)~10月25日(木) 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
【大分公演】2018年10月31日(水)~11月1日(木) iichiko総合文化センター iichikoグランシアタ
<公式サイト>
http://www.tohostage.com/myfairlady/
<関連リンク>
ミュージカル『マイ・フェア・レディ』
http://www.tohostage.com/myfairlady/
平方元基 オフィシャルサイト
http://www.horipro.co.jp/hirakatagenki/
平方元基 Twitter
https://twitter.com/hirakatagenki
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- ミュージカル『FLOWER DRUM SONG』、古屋敬多・桜井玲香がW主演で4月上演 2022年1月21日
- 平方元基ミュージカルデビュー10周年記念ライブ 『PROOF』5/26開催、ゲストも決定 2022年3月17日
- 「バーター出演がきっかけとなって、ミュージカルへ」古屋敬多(下) 2022年2月11日
- 「芝居が曲へ。ミュージカル音楽が好き」『FLOWER DRUM SONG』古屋敬多(上) 2022年2月10日
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- 「笑うと、心が元気になるよ!」、『モダン・ミリー』、実咲凜音(上) 2022年7月1日
- 【動画】「どこを切っても楽しめる金太郎飴」、ミュージカル『モダン・ミリー』会見 2022年5月10日
- 村井良大・安西慎太郎・新納慎也ら出演、AuDeeラジオドラマ『かたらずの華』配信開始 2021年3月6日
- キャスト全員が魂を削って描いた「孤独」、『フランケンシュタイン』4組の公演を観て 2019年8月9日
- 【動画】ミュージカル『マイ・フェア・レディ』ゲネプロより(下) 9月16日分 2018年9月17日
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■『ロミオ&ジュリエット』で3階席に行ってみた。そこも包みこめるように
――東急シアターオーブは確かに大きい劇場ですね。
前回出演した日生劇場は、あの曲線な感じとかすごく好きなんですよ。今回の東急シアターオーブは、以前ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』で立たせて頂きましたが、どちらかというと近代的な世界観。そのなかで、『マイ・フェア・レディ』のクラシカルなものを、どう埋めていくのかなというのはすごく興味があります。
――特に3階席は遠いですからね。
そうなんですよね。『ロミオ&ジュリエット』のときにWキャストだったので、3階席に行って見てみたのですが、やっぱり距離がありましたよね。
――下で行われていることを上から拝見するという感じですね。
あの視覚の感じもあるのかな。どうしても俯瞰になってしまいますが、そこも包みこめるような作品だと思うので、自分の出番ではそういうところに挑戦したいなと思います。
■6週間たっても「待ってたよ」という言葉だけで、すべて解決しちゃう(笑)
――今もおっしゃいましたが、フレディは、いたと思ったら歌って、また消えて……という感じですよね(笑)。
ストーキングというと言葉は悪いですが、イライザが気になって気になってしょうがないんです。台本に「○月の○日ごろ」というのが書いてあるんですよ。イライザに会うのが7月。そこから2幕で僕が出てくるのが、6週間後だから、8月とか9月初め頃。家の前にずっといるのに、何で会えなかったんだとは思いますが(笑)。でも、会えなくて、玄関脇にずっといるわけじゃないですか。
――6週間ってすごいですよね。
G2さんに「6週間って書いてありますが、見られました?」って聞いたんです。そうしたら、「1〜2週間だと思ってた」って(笑)。でも、いや、そうだよねって(笑)。何で会えないんだろうって。1〜2週間ならまだしも、6週間会えないって。よっぽどイライザが出てこなかったのか、僕が着替えに帰ったり、お風呂に入ったりしている瞬間に出ていっちゃったりとか、運が悪かったのか。
――タイミングが合わなかったんですね。
そういうことすらも飛ばせるのは、ミュージカルならではですね。「待ってたよ」という言葉だけで、すべてがその瞬間に解決しちゃうくらい待たされていて、その間にイライザは、ものすごく言葉を叩きこまれ、さらにヒギンズとケンカして。そういう物語の厚みというものをより明確に知ることができるように、台本が読めるようになっていたので、今回ものすごく楽しいです。より気持ち悪さが楽しい。
――気持ち悪さが楽しい(笑)。
だって、「気持ち悪い」って言われるんですよ(笑)。褒め言葉かなと思って頑張っています(笑)。
■前のシーンでテンションが下がって、フレディが出てきてもち直すところが多い
――なるほど、それでもニコニコして待ってる……。
僕、「気持ち悪い」って言われて嬉しいんですよね。
――え!? それはこの役だからってことですよね?
(一同笑)
「普段からストーキングみたいなことしてるの?」って言われますが、いや、しないだろって(笑)。フレディはそれくらい盲目。彼女はこのドアの向こうにしかいないのに、あの歌(「君が住む街」)を歌って一場面もたせる。しかも、舞台上にも1人じゃないですか。よっぽどの感性の持ち主じゃないと出来ないはずだから(笑)。前のシーンでテンションが下がっているところに、フレディが出てきてもち直すところが多いので、なるべく引きずられないように頑張ります。
――私、先日ちょうどロンドンに行ってきたんですよ。今旬な場所とすすめられた場所がショーディッチという下町で、後からそこがイライザが住んでいたような場所だと聞いたんです。
僕もイライザとヒギンズ教授が出会う、コヴェント・ガーデンには行きました。
――メインストリートから外れたところに普通の公園があって、住民がのんびり過ごしているんですね。子供達がサッカーをしていたり。イライザのお父さんが酔っ払って座っている感じで、おじいちゃん、おばあちゃんたちが何をするでもなく家の前に座っていたり。さらに、その日の夜に『王様と私』を観に行くとオープニングナイトで、超セレブな方々がドレスアップして集まる場だったんです。一日でロークラスからハイクラスまでを見る経験をして、「そうだ。イギリスは階級社会だった」と。『マイ・フェア・レディ』ってこういうことかと思ったんです。
『マイ・フェア・レディ』はさらに時代が昔ですからね。ちょうどその階級社会を崩そうとしているときに、作られたのが原作の『ピグマリオン』みたいです。それを考えると、ものすごくセンセーショナルなことをやった作品ですよね。今では歴史の一つになっていますが、センセーショナルなことをやっているという認識をもって、この作品に取り組むと、また違ってくるのかなと思います。たとえば、『RENT』も、セックスやドラッグ、ゲイなど、時代が追いついてしまってますが、楽しい。でも、多分初演当時はものすごくセンセーショナルなことだったから、もっと楽しかっただろうと思うんです。
だから、そういう要素をもう少し入れていけたらいいねという話はしています。作品の中で「階級社会というけれど、中流と上流の差は何なのか」その辺りの片鱗が見えると、よりいいねという話をしています。結局イライザは、上流になったところで、行くところもやることもない。自分の魂は一般市民だというところで、泣き喚いてスリッパを投げちゃったりするんですから、そういうのが見えるといいよねという話はしてますね。
――日本でも長く上演されている作品ですが、生まれたときを考えると、という。
「リボーン」という言葉を使うということは、新しく生まれ変わるということ。最初に生まれたときは、センセーショナルに産声があがったとき。今年は日本の初演から55周年ですね。「プラスまた50年やれるようにしたい」とG2さんもおっしゃっていたので、そういうところに立ち返るという作業もみんなでやれたらいいと思いますね。
■僕自身の年齢がイライザに近くなって響きやすく。以前は「ヒモ」に見えた?
――その新しいカンパニーで、イライザが新しくなりましたが、朝夏まなとさん、神田沙也加さん、おふたりのイライザはいかがですか?
やっぱり周りの方の感想を聞くと、朝夏さんと、さあや(神田沙也加さん)と、僕自身との年齢が近くなったことから、見え方が変わることと、僕自身もより沸き立つものもあります。台詞は同じでも、多分先輩後輩のキャリアの違いや、その役者が生きてきた時代の違いなのか、投げかけてくる言葉のテンションが今までの方と全く違うのはすごく感じます。よりそこが現代っぽくなって、お客様には響きやすくなっているなと思いますね。
――観ている側としても、フレディがイライザに一目惚れして、ずっとイライザを思っているという状態が、年齢が近い方が納得感は増しますよね。
これまではちょっとお姉さんという感じだったじゃないですか。
――お姉さまに憧れる感じなのかしらと。
「え? ヒモなの?」と見えてしまうこともあるじゃないですか(笑)。
――階級の上下で考えると、フレディの方が余裕があってもいいような。
そうなんですよね。やっぱり新イライザのお二人は出しているものが若々しいですね。朝夏さんは宝塚を退団されて、初めての舞台、女優デビューということもあって、ものすごく楽しんでやられています。宝塚の劇場にいらっしゃる2,000人くらいのお客様達を納得させるものをやっていたから、ものすごくはっきりしているし、分かりやすい。上手く巻き込んでくれる主演の肝っ玉の大きさや、器の大きさを感じますね。
――神田さんはいかがですか?
さあやは逆にいうと、すごく繊細。稽古場でも緻密だし、一つずつその場で作りながらやっています。「大地真央さんをリスペクトしている」とみんなの前でも言っていたと思いますが、自分がやりたくて、やっと手にしたイライザというものが多分見えているから、それがどういうことなのかを感じたいなと思ってみています。2人は真逆ですね。Wキャストはだいたい真逆だといいますが、本当に真逆!
――そうなんですか。
スリッパを投げるシーンですが、普通はスリッパが2つあったら、「もうなんでだよ!」って1個ずつ投げるじゃないですか。さあや、すごいです。一気に2つを投げてくるから。たとえば、お皿を割るときに全部抱えても、全部を割らないで、1個ずつ投げていくじゃないですか。それをさあやに聞いたら、「私は全部投げる派」と言っていて、そんなの見たことないよって(笑)。
――(笑)。
何となくこうなるだろうと読んでいると、想像していないものがぶっ飛んでくるので、それがまた、おもしろい。
――2つ一緒に投げるってものすごいエネルギーがいりますよね。
別所さんに向かって、あのリニアモーターカー感のあるスリッパがシューって飛んでいきますよ。1個ずつならば、1個は避けるのに、別所さんが避けられないもん(笑)。本番でどうなるのかお楽しみに(笑)。
――おもしろい。
別所さんがすごくフレキシブルな方だから、ものすごく乗っかり返してきちゃうんですよ。もう積みあがって積みあがって、おもしろいところは、ものすごくおもしろくなっています。「こんな台本だっけ?」と思うくらい、おもしろくなるシーンもある(笑)。
――じゃあ、全然違う2つのパターンが観られそうですね。
全然違いますね。どっちも何かをなぞっているというものを感じないから、すごくおもしろいなと思ってわくわくしていますね。
――寺脇さんとは、この作品に参加されたときからご一緒されていますよね。
尊敬しています。このカンパニーも3度目で慣れていらっしゃいますし、ある意味もう1人演出家がいるのかなと思うくらい冷静です。誰かが稽古しているときも、前に座ってちゃんと見ている。そういう中で自分のシーンになったときに変えてきたりもするので、すごく計算しているのかなぁと。この物語について誰よりも責任をもっているし、ちゃんとやろうと思っているのを言わないけれど感じていて、すごく尊敬しています。
※平方元基さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。この下の応募フォームからご応募ください。応募締め切りは10月10日(水)です。(このプレゼントの募集は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。
素敵な記事をありがとうございます。
元基くんのフレディますます楽しみになりました!
素敵な記事ありがとうございました。マイフェアレディに関して元基さんのお話読ませていただいて、更に観劇が楽しみになりました。
平方元基さんのインタビュー、とても素敵な記事でした。
フレディを再び演じることへの想いが、とてもよく伝わってきます。
5年前は観れていないので、いろいろ想像しながら読ませていただきました。ヒモ(?)のくだり、とてもわかりやすかったです(笑)
観劇の日がますます待ち遠しくなりました。
今回も平方さんの魅力が伝わる素敵なインタビューとお写真をありがとうございます!
今すぐにでも両キャスト拝見したいくらい興味深いお話ばかりでした。初日が待ち遠しいです。
最後までクワクしながら、
拝読させて頂きました。
Wキャストならではの
魅力がちりばめられたコメントで、
チケットを増やしたい衝動に
かられております☆
開演が待ち遠しいです♪
フレディの記事大変楽しく拝読しました。芸能のお仕事ではなくて普通に会社員であっても、同じ仕事に再び遭遇するって稀有な事なので、そんな貴重な機会を大切にされてるんだなと感じました。フレディは6週間も通ってたんですか…(^◇^;) 6週間も通って会えなかったのなら、もう元から縁はなかったのかなぁと妙に納得出来ました。マイフェアレディ 楽しみで仕方ありません。大阪で待っています
今回も素敵なお写真とインタビューをありがとうございます。
前回の元基くんフレディは観ることができなかったので、今からとっても楽しみです!
2人のイライザの違いをぜひ観てみたいと思い、複数回チケットを確保して正解でした。
インタビューの後編も楽しみに待っています。