「俳優はしんどいけれど浄化される。バルジャンは自分」、福井晶一インタビュー(下)

福井晶一さん=撮影・岩村美佳

2019年1月30日にセカンドアルバム『Voce』を発売し、2月には全国3都市でコンサートを開く福井晶一さんのインタビュー、後半です。ジャン・バルジャン役で4回目の出演となる『レ・ミゼラブル』について、今年の公演に向ける思いについてなど伺いました。有料部分では、昨年の『ジャージー・ボーイズ』についても伺っています。

福井晶一さん=撮影・岩村美佳

福井晶一さん=撮影・岩村美佳

ーー今年は『レ・ミゼラブル』にジャン・バルジャン役で4回目のご出演ですが、今どういう心境ですか?

難しいなと思っています。再演を繰り返してきて、次に自分がどこを目指せばいいのかと考えているんですが、2017年を超えていかなければいけない。やはり自分が持っている以外のものって出ないと思うので、積み上げてきたもののなかで、どれだけ表現できるのか、より多面的にジャン・バルジャンという人物を掘り下げて深めていきたいと思っています。それをどう表現に繋げていけるかだと思っていますが、稽古していくなかで見つけていきたいと思っています。

ーーこれまで4回演じた役ってありますか?

劇団四季のときは、何回か演じることはあったんですが、やっぱりレミゼって特別じゃないですか。1年おきに演じることで、間の1年でどれだけ俳優として成長できたかが試される場所でもありますし。バルジャンを演じたことがある人にしかわからない重圧もあるので。でも、自分自身と向き合わなければいけないものもありますが、新しいキャストの方々、これまでやってきた方々など、周りからもらえるものもあります。これまでひとりでストイックにやってきたところがあるんですが、もう少し視野を広げていろんな人との共演のなかで感じるものをもらえたらいいなと思っています。

ーーバルジャン役はこれまでもトリプルキャストですが、みなさんで役について話されることはありましたか?

稽古中はありますね。(吉原)光夫は演出もやっているので、客観的に見てくれるから、自分が気づかないところを「福井さん、もうちょっとこうやった方がいいですよ」とアドバイスをくれます。彼は年下ですが、そういう風に言ってくれる人は貴重ですね。

ーー確かに(笑)。

演出家はもちろんいますが、海外の演出家の目と、日本人の目は違うところがあるじゃないですか。だから、光夫が客観的に見てアドバイスしてくれるのはすごくありがたいなと思っています。

ーー2013年に初めて演じたときと、2019年に6年経って演じるのとでは、ご自身の人生観なども変化されるでしょうし、バルジャンという男の人生の見え方が変わってきましたか?

2013年は今振り返ると、やることに必死で、深いところにまでは全く届いていなかったなという思いもあります。

※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、2013年の『レ・ミゼラブル』から、1年仕事を休んだ2014年、そして2015年の『レ・ミゼラブル』、2016年の『ジャージー・ボーイズ』、2017年の『レ・ミゼラブル』、2018年の『ジャージー・ボーイズ』までの自分自身の変化や、共演してきた吉原光夫さんや中川晃教さんについて語ってくださったインタビューの後半の全文と写真を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>

■父親が亡くなったり自分の人生もいろいろと変化し、バルジャンへの共感が増えてきた

■(吉原)光夫は全くタイプが違う。光夫は「福井さんは感覚の人間だからそれを大事に」と

■(最後が故郷の北海道)ちょうど地震の一年後のタイミングの公演。愛や祈りを心して

■あの一日でアッキーの扱いがわかるように。そこがジャージーを経てレミゼに挑む鍵かな

<福井晶一2ndアルバム『Voce』>
発売日:2019年1月30日(水)
品番:KICC-1476
定価:2,037円+税
【収録楽曲】
1. スターズ~『レ・ミゼラブル』より
2. One Song Glory~『レント』より
3. 恋のさだめは~『アスペクツオブラブ』より
4. 見果てぬ夢~『ラ・マンチャの男』より
5. My Eyes Adored You~『ジャージー・ボーイズ』より
6. ユー・レイズ・ミー・アップ
歌:福井晶一 編曲:美野春樹 美野春樹(Pf.)、加瀬 達(W.B.)、ミルトン冨田(Dr.)、堀沢真己(Vc.)
Voce 福井晶一 KING RECORDS OFFICIAL SITE
http://www.kingrecords.co.jp/cs/g/gKICC-1476/

<福井晶一『VOCE』発売記念コンサート>
【大阪公演】2019年2月1日(金)19:00 フラミンゴ・ジ・アルーシャ
【愛知公演】2019年2月2日(土)1st 17:00/2nd 20:00 名古屋[ブルーノート]
【東京公演】2019年2月14日(木)18:30 ハクジュホール
チケット販売:ローチケ(ローソンチケット)
https://l-tike.com/order/?gLcode=51411
お問い合わせ先:プランニング・クレア
voce☆pcrea.co.jp(☆を@に変更してお送りください)
03-3449-5866

<ミュージカル『レ・ミゼラブル』>
【プレビュー公演】2019年4月15日(月)~4月18日(木) 帝国劇場
【東京公演】2019年4月19日(金)~5月28日(火) 帝国劇場
【愛知公演】2019年6月7日(金)~6月25日(火) 御園座
【大阪公演】2019年7月3日(水)~7月20日(土) 梅田芸術劇場メインホール
【福岡公演】2019年7月29日(月)~8月26日(月) 博多座
【北海道公演】2019年9月10日(火)~9月17日(火) 札幌文化芸術劇場hitaru
公式サイト
https://www.tohostage.com/lesmiserables/

<関連リンク>
福井晶一 オフィシャルウェブサイト
http://shouichifukui.com/official.html
福井晶一 オフィシャルブログ
https://ameblo.jp/shouichi-fukui/
福井晶一 オフィシャル instagram
https://www.instagram.com/shoichi.fukui/
福井晶一 Twitter
https://twitter.com/shouichifukui

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※福井晶一さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。有料会員の方がログインするとこの記事の末尾に応募フォームが出てきますので、そちらからご応募ください。応募締め切りは2月23日(土)です。(このプレゼントの募集は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。

福井晶一さん=撮影・岩村美佳

福井晶一さん=撮影・岩村美佳

※ここから有料会員限定部分です。

■父親が亡くなったり自分の人生もいろいろと変化し、バルジャンへの共感が増えてきた

2014年は体調不良で1年仕事を休んだんです。2015年はそこからの復活だったので、舞台を全うするだけで精一杯だったような気もします。2017年までの間にいろんなことがあって、父親が亡くなったり、自分自身の人生もいろいろと変化したので、本当にバルジャンとともに成長してきているなという思いと、やはり共感できるところがすごく増えてきたと思います。6年も経つと、今まで見えていなかった歌詞がぐっと腑に落ちたり。

ーー私も2年前に父を亡くして、親がいなくなるってすごい経験だなと実感しました。

経験しなければわからないことってありますよね。いくら自分が想像して演じていても、そこに届かないものってあるから、そういう意味で俳優ってしんどい仕事だなと思うこともあります。

ーーそれは身を削るようなことですか?

はい! でも、それですごく浄化されるというか。逆に父親の存在を感じられるようになったというか。この舞台を経験して、バルジャンだけれど自分自身だと感じるところもあるんです。

福井晶一さん=撮影・岩村美佳

福井晶一さん=撮影・岩村美佳

■(吉原)光夫は全くタイプが違う。光夫は「福井さんは感覚の人間だからそれを大事に」と

ーー2013年、2015年は、どこか違う人を演じている感覚?

そうですね。だから、2017年はより自分と繋がったかなと思います。

ーー2017年で手応えを感じられたんですね。

自分のなかで腑に落ちたというか、やっとひとつバルジャンという人物を演じきれたなと思いました。満足はしていないですが、さて、次はどうしようかというところです。

ーーそういうことについて、これまでに吉原さんとお話をされたことはありますか?

ないですね。僕と光夫は全くタイプが違うんですよね。光夫に「福井さんは感覚の人間だからそれを絶対に大事にした方がいい」と言われて、「ああ、はい」って(笑)。

ーー(笑)。ご自身でも感覚の人間だということは自覚されているんですか?

していますね(笑)。

ーーそれは役を演じる時だけなのか、日常からそうなのか?

日常からあまりきっちり考えて行動する方ではないですね。自分自身では、そこが足りないところだと思っているんですが。

ーー逆に理論立ててきっちり考えている人に、理詰めでこられるとつらくないですか?

そう!(笑)。

(全員爆笑)

ーー役についてみんなで論じたり、演出家と意見を交わすときに、真逆のタイプがひとつのことを詰めていく作業って大変だと思うんですよね。そういうときはどうされるんですか?

すごく質問しますね。わからないことがあったら演出家に聞く。

ーー何か覚えている質問ありますか?

具体的にはないですね(笑)。

ーーその場で落とし込んだけれど、抜けていってしまったとか?

そうかもしれません。ひとつの役が終わると忘れちゃうんですよ。

ーー蓋をしてきっちり閉まっておくのではなく、次に気持ちが行くんでしょうか。

だから、再演はものすごく頑張って探さないといけないですね。

福井晶一さん=撮影・岩村美佳

福井晶一さん=撮影・岩村美佳

■(最後が故郷の北海道)ちょうど地震の一年後のタイミングの公演。愛や祈りを心して

ーーそうすると『レ・ミゼラブル』のときは掘り出す作業からはじめる?

そうですね。もう一回ちゃんと台本を読んでからスタートですね。

ーー新しいキャストのみなさんもいらっしゃいますし、そこから気づくことなどもあるでしょうね。

逆にその方が新鮮に入って行けるんじゃないかなと思います。でも、どうしても感覚の人間だからこそ染み付いてしまっているところもあるじゃないですか。それが邪魔することもありますし、難しいですね。

ーー先程2017年にバルジャンを演じきれたと思ったと話されていましたが、特に記憶に残っている回などあったりしますか?

特にこの回というのはないですが、全公演終わった時に、今回はすごく、一番自分のなかで役を生きれたなという思いがあったんです。

ーー今回は最後が北海道ですね。故郷への凱旋ですが、その大千秋楽に向けてどうなるかは、やってみないとわからない?

そうなんですよ! やりながら見つけていく感じになりますね。でも、2018年に北海道で大きな地震がありましたよね。やっぱりいろんな思いがあって、ちょうどその1年後なんですよ(※編集部注。2018年の北海道胆振東部地震は、9月6日に発生。経済産業省は9月10日、道内企業および道民に対して20%の節電を呼びかけました。『レ・ミゼラブル』北海道公演は、2019年9月10日~9月17日に札幌文化芸術劇場hitaruで開催されます)。そのタイミングでレミゼをやる意味というか、そういうことも考えていて、何を感じるかは見る人それぞれですが、何か感じ取ってもらえたらなと思っています。愛や祈りが詰まっている作品なので、きっと北海道のみなさんの心にも届く作品だと思いますので、心して演じていきたいと思っています。

ーー北海道で劇団四季以外の作品が行くことってなかなかないですもんね。

そうなんですよね。『ジャージー・ボーイズ』も行って欲しかったですね。

福井晶一さん=撮影・岩村美佳

福井晶一さん=撮影・岩村美佳

■あの一日でアッキーの扱いがわかるように。そこがジャージーを経てレミゼに挑む鍵かな

ーー『ジャージー・ボーイズ』は私も大好きな作品ですが、今回のチームWHITEの仲間感は独特でしたね。

秋田と盛岡の間に、チームWHITEとガールズみんなで平泉に旅行したんですが、あれが良かったんですよ。その後のチームWHITEにとって。あの一日で、みんながアッキー(中川晃教)の扱いがわかるようになったんです(笑)。こういう人だったんだって。「アッキーさんって、ああいう人だったんだ! あんなに可愛いと思わなかった!」って言ってましたね。それでまたひとつ、チームがぐっと深まったんですよ。自分自身もそうだけれど、みんなあの時間を経て変わりましたね。

ーーSNSに流れてきた旅行の写真にも、いい空気感が流れていましたよね。ああいう時間も経て、チームWHITEの団結が生まれて行ったんですね。チームWHITEがいつか何かの形でまた集まることがあればと期待していますが、『ジャージー・ボーイズ』のことはどんな風に残っていますか?

僕自身も、あんな風に密に人と関わったことがあったかなと思うぐらい、すごく貴重なツアーだったので、本当に45歳にして青春したなという感覚でした。チームWHITEを含めて、ガールズも、他の仲間もそうですが、本当に感謝していますね。あの仲間に入れて頂いて、一緒に共に過ごした時間は最高の時間でした。これは忘れないようにしないと(笑)。

(全員爆笑)

ーー忘れちゃダメですね(笑)。

そういうのもあって、今回のレミゼでも、自分自身だけでなく、周りとディスカッションしたり、プライベートも含めていろいろと関わって一緒に作っていきたいなという思いがあります。そこが、ジャージーを経て、次のレミゼに挑むうえで、トライしていける鍵なのかなと、感覚で喋っています(笑)。

ーーレミゼもツアーがありますしね。最後の北海道では、半年経った変化など、今は知らない感情や感覚が残るかもしれないですね。

どうしてもバルジャンという人物を演じていると、どんどん自分というか、ひとりになって閉じていくことが多いので、そうならないように出来たらと思っています。

ーー2019年はバルジャンの愛がもっと溢れるかもしれないですね。

バルジャンは、ストイックに自分を追い込んでいくところもなければいけないし、そうでない部分も持っていなければいけないですし、バランスよく出来たらと思います。2019年はコンサートからはじまって、レミゼ一色の年になると思いますが、みなさんの期待に応えられるように、2017年を超えられるように、頑張りたいと思います。

※福井晶一さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。この下の応募フォームからご応募ください。応募締め切りは2月23日(土)です。(このプレゼントの応募は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。

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“「俳優はしんどいけれど浄化される。バルジャンは自分」、福井晶一インタビュー(下)” への 3 件のフィードバック

  1. pea より:

    ボリュームのあるインタビューで読み応えがありました
    CDへの思い入れも踏み込んだ形で知ることが出来ました。原曲と違う『My Eyes Adored You』のアレンジがとても好きで、美野さんとの即興に近い形での同録と知って感激しています

    あっきーさんや光夫さんとのやり取りの話も興味深く拝読しました
    「あっきーの扱いが分かった」には笑いました。良い旅公演だった事がじんわり深く心に残りました

    岩村美佳さんが取材して下さる福井さんは、よりリラックスして発言なさっているように感じます
    舞台『船に乗れ』の取材記事(別媒体ですが)は今でも大切に何度も拝見しています
    同じ理由でしょうが岩村さんのお撮りになる福井さんはいつもと違う魅力が引き出されていて素敵です

  2. ひろ より:

    ジャージー・ボーイズ、チームWHITEとガールズ達とのご旅行でのエピソードを知ることができて、嬉しかったです。
    あのご旅行で、みなさんの気持ちが より深まったのですね。。
    そして、
    今年のレ・ミゼラブルの深化されてるバルジャンを楽しみにしています。
    いつもステキな記事 お写真を、ありがとうございます。

  3. ももんが より:

    福井さんは、いつも故郷北海道のことを想ってくださっているのが伝わります。
    同郷の者として、北海道に演劇を!という気持ちが本当にありがたいです。
    9月のレミゼ、心から楽しみにしています!!

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