2020年2月11日(火・祝)から東京芸術劇場プレイハウスで上演される、舞台『ねじまき鳥クロニクル』に出演する成河さんのインタビュー後半です。共演者の印象などについて伺いました。『ねじまき鳥クロニクル』は、村上春樹さんの代表的長編小説で、初の舞台化となります。演出・振付・美術を担当するのは、ミュージカル『100万回生きたねこ』や百鬼オペラ『羅生門』を手がけたイスラエルのインバル・ピントさん。共同演出と脚本は、演劇団体「マームとジプシー」を主宰する藤田貴大さん。そして音楽は、NHK『あまちゃん』『いだてん』など映像作品の音楽でも広く活躍する大友良英さんが担当します。有料会員限定部分では、演劇と繋がった“マーケティング”などについて話してくださった内容を紹介します。
――共演者の皆さんもバラエティに富んでいますね。
(渡辺)大知君は初めてご一緒しますが、以前ご一緒した方も何人もいらっしゃいますし、たくさん面白い方が出てきます。このキャスティング思いつきもしないですよね。
――今日は撮影をご一緒されていたんですか?
しましたよ。大知君は、4月の『BLUE/ ORANGE』も観に来てくれました。ものすごく好奇心が強そうで、真面目に接してくれようとするので、これから楽しみです。さすがにまだ人となりまではわかりませんが、僕が『100万回生きたねこ』の時にいろいろ仕込んでもらったような、コンテンポラリーダンスの基礎のようなものを、彼も始めているそうなので、もう少ししたら本番に向けて、一緒にやりたいと思っています。
――おふたりの組み合わせが面白そうですね。
音楽の素養のある人ですよね。いわゆる日本の商業のミュージカルではなくて、彼の持つ音楽の素養にはすごく興味があります。7月にライブに行ってみようかなって。これから知り合っていく過程で、何かいろいろなもので出会えたらと思います。
――門脇(麦)さんとは、『わたしは真悟』で共演されていましたね。
麦ちゃんは本当に物を考えるのが好きな人で、それこそ安心安全みたいな選択肢を取らないところが、僕はすごく良いなと思っていました。とにかく一緒に稽古していて楽しい人が僕は好きなので。麦ちゃんもそんな人です。あとは、僕が楽しみな人は吹越(満)さんです。作品は初めてご一緒しますが、サイモン・マクバーニー組としていろいろお話する機会は多かったんです。吹越さんとの稽古は、もう楽しいに決まっているから(笑)。
――稽古への思いだけでワクワクが止まらない感じですね。
お客さんがこういう事を聞いたらどう思うのかわかりませんが、演劇って、本番よりも稽古のほうが大事ですから。
――皆さんそうおっしゃいますね。
実は稽古のほうが面白い、作る過程のほうが面白い。そこを飛ばしちゃうと何にもなりませんし。そういう意味では、本当にワクワクしていますよ。
――松岡(広大)さんにお話をお伺いしましたら、成河さんをものすごくリスペクトされていました。
先ほど初めてご挨拶したんです。21歳でしょう? 話してみたいな。
※アイデアニュース有料会員限定部分には、演劇やショー・ビジネスに関わるマーケティングが電子チケットがメジャーになってくる時代にどうなっていくか、都心部から離れた所にこそ演劇として健全な環境があるということと、それでも都市のなか多様な物があってほしいと思うことなどについて話してくださったインタビュー後半の全文と写真を掲載しています。
<有料会員限定部分の小見出し>
■インバルはとにかく身体表現の方、僕たちはそこに日本語を提供する
■(今、演劇以外に興味がある事はありますか?)マーケティングに興味あります
■誰に観てもらうか、誰と一緒に作るか、考えるのをやめるか、考え続けるか
■自分のなかにある身体表現の可能性みたいな物と出会いたいなと思っています
<『ねじまき鳥クロニクル』>
【東京公演】2020年2月11日(火・祝)~3月1日(日) 東京芸術劇場プレイハウス
公式サイト
https://horipro-stage.jp/stage/nejimaki2020/
<関連リンク>
成河-Jugem
http://web-dorama.jugem.jp
成河スタッフオフィシャルTwitter
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※ここから有料会員限定部分です。
■インバルはとにかく身体表現の方、僕たちはそこに日本語を提供する
――共演をすごく楽しみにされていました。踊りがとても堪能な方ですが、それよりも芝居、言葉、演劇に今すごくのめりこんでいるそうです。
頼もしいですね。インバルはとにかく身体表現の方なので。そして、僕たちはそこに日本語を提供するわけです。音声表現、言語表現という意味でいうと、本当にこの現場は、僕たちが持ち込む物如何によってくる。身体表現も、盗めるだけ盗みたくなるような宝の山ですが、言語表現に関して言うと、僕たちが実はものすごく能動的に責任を持っていかなければなりません。日本側の僕たちが、本当に頭を使って、知恵熱が出るぐらい、ああでもないこうでもないと喧嘩しながら。どれもこれもまたインバルは楽しんでくれるので、インバルに見せながらやったらいいなと思います。日本語を使った表現は、とても迷走してきていると思います。戦後ずっと、日本語を使った劇で何かを表現するのは、混じり合わずに、それぞれのシマで行われてきたようなものがあると思うんです。どれも良いところがあるし、そういうのをインバルの身体表現のなかにボーンとぶち込んでみて、全部オッケー!という精神の稽古場を作りたいですね。
■(今、演劇以外に興味がある事はありますか?)マーケティングに興味あります
――今、演劇以外に興味がある事はありますか?
演劇以外ですか?
――もしくは、演劇に繋げてでも。
合気道はもちろん今も興味ありますが……興味ある事か……(しばし考えて)あっ! マーケティングに興味ありますよ。
――マーケティング!?
ずっと言っている事と一緒なんです。つまり、演劇をやってきて思う事ですが、演劇は結局、自立した芸術にはならない。例えば絵のように誰が観るのかわからないけれど画家が描きたいものを描く、という物ではないので、誰に観せるかがすべてなんです。いや、観せるかじゃなく、お客さんを含めて誰と“作るか”なんですね。ちょっと尖った事を言うと、お客さんは僕たちを選べますが、僕たちはお客さんを選べないので。
――そうですよね。
誰と一緒に作るかは、すごく大事なんです。僕が最近、再三言っている事ですが、本当に、演劇なんて屁とも思っていない人たちが、実はとても頼りになる。そういう人たちと演劇を作ると、とても面白いですし、あるいはそういう人たちが混じっているととても面白いんですね。実は。僕たちにとってだけじゃなくて、それは作品にとっても、お客さんにとってもそうです。演劇やショー・ビジネスに関わるマーケティングって、なかなか進んでいないような気がするんですよ。チケットの事など、結局、個人情報保護法みたいな事にもなってくるので、簡単に触れられない話ではありますが、でも、そろそろ、もう5年ぐらいしたら電子チケットがすごくメジャーになってくると思うんですよ。
――スマホでしか入れない貸切公演も行われていますね。
そうでしょう。携帯端末で電子チケットが買えるようになるとどうなるかというと、その端末でしか使用できないチケットになるので、つまり、その人がその公演に対してどのぐらいの頻度で来ているか全部わかるじゃないですか。たとえばケータリングにカレーがあって、おかわり自由です、いっぱいあるからどんどんおかわりしてくださいとあったら、みんなもうお腹ペコペコでカレーに並ぶじゃないですか。おかわり自由だから、何回もおかわりしに並びますよね。カレーが減ってきた時、隣にまだ1杯も食べていない人がいたら、自分がもし何回も食べているんだとしたら、普通ならそこで譲ると思うんです。それが人間の喜びだし、誰だってそうしたいと思うんです。その状況が、ちょっとまかり通らなくなってきているのが、今のチケット争奪戦の公演の難しいところだなと。
■誰に観てもらうか、誰と一緒に作るか、考えるのをやめるか、考え続けるか
ケータリングのカレーを、まだ1杯も食べてない人に譲らずに何度もおかわりする…それをお客さんに言うと、別にお客さんもそんな事をしているつもりはないんです。悪気があってそんな事をしていない。問題はただ、まだ1杯も食べていない人の顔が見えないことです。お客さんにだって、僕たちにだって見えない。でも見えない見えないばかり言っていても仕方がないから、本当はマーケティングすべきなんです。
――そこをマーケティングしたいと。
しっかりマーケティングしている人、いらっしゃると思うんですよ。だからすごく興味があります。誰に観てもらうか、誰と一緒に作るか。誰が良くて誰が嫌だ、ではなく多様性の話なんです。多様性はゴールがないので、考えるのをやめるか、考え続けるか、どちらかしかない。多様性について考え続け“ない”のだとしたら、ちょっと演劇はやれないかなと思うので、マーケティングに興味があります。
――なるほど。
だから僕は自分のお客さんたち、ひとりひとりに、情報をたくさん教えていただくのが好きですし、演劇をやるって、そういう欲求のような気がします。相手の事を知りたい。僕たちだってお客さんの事を知りたいですから。
――昨年『ジャージー・ボーイズ』を観に岩手に行ったんです。満席で、おじいちゃん、おばあちゃん、中年のカップル、若い男女の団体など様々なんですが、2階席で遠いんですが、オペラグラスなんて誰も持っていなくて、ものすごく集中して観ているんです。
それは素晴らしいですね。
――その時に、成河さんを思い出しました。以前伺った、成河さんがおっしゃっているのはこういう事だろうなと。
(※編集部注:2017年9月26日に掲載した舞台『人間風車』関連のインタビューで、成河さんは「どうしても状況的に日本で演劇を作る環境はとても難しいですね。正直なところ、即日完売ほど空しいものはないんですよ。もう観る人が決まってしまっていますから。もちろん観て頂いたり、お客さんに入って頂かないと続けられない仕事ではありますが、だからこそ理想をきちんと持っておくことは大事だとずっと思っています。誰に見せるのか、誰のためにやるのか。誰か特定層のためにあっては、演劇はあまりにももったいないんですよね。もちろんそういうエンターテイメントがあっていいと思いますが」と話されています)
https://ideanews.jp/backup/archives/48665
基本的に、どの時代もそうだったでしょうし、日本に限らずという意味でいうと、都市の問題なんです。都市に祝祭は要らないと言われてはおしまいですが、本当にそうで、都心部から離れた所では、努力さえすれば、実現は可能だし、今どんどん実現されていますよね。どういう言葉を使うのが一番良いのか、そういう、演劇として健全な環境が、どんどん進んでいっていますが、都市でそれをやるのはやはり難しい。
――それでも、その難しいことを考えたいですか?
そう、これは都市論にもなるので。でも都市のなかにこそ、そういう物はあってほしいし、多様な物があってほしいなと思うので、そこでやれる事がやりたいなと今は思っています。
■自分のなかにある身体表現の可能性みたいな物と出会いたいなと思っています
――最後に、作品に向けてメッセージをお願いします。
インバル・ピントさんと作品を作るのは久しぶりになります。個人的には、『わたしは真悟』でフィリップ(・ドゥクフレ)と作った物の続きというような、身体表現としては、煮詰めていきたい、進めていきたいと思っているので、もう1回身体じゅうをほぐして、自分のなかにある身体表現の可能性みたいな物と出会いたいなと思っています。ぜひお楽しみください。
※成河さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。この下の応募フォームからご応募ください。応募締め切りは10月26日(土)です。(このプレゼントの募集は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。
成河さんの記事が読みたくて有料会員になりました。お写真も素敵で嬉しいです。
カレーは譲ってあげてます。食べれない人はカレーのもらい方を知らないのです。
成河さんのインタビュー記事、本当に読み応えがあります。
成河さんの演劇への考え方がじっくりと伺える、素敵な記事をありがとうございます。
渡辺大地さん、黒猫チェルシーの人ですよねっ
成河さんマーケティングに興味あるとか面白いです。
色んな人に演劇を見て欲しいという気持ち、確かに私の周りに舞台を見に行く人あまりいません。
誰か誘って見に行こうかな。
成河さんはもちろんなのですが、大貫勇輔さんもとっても気になります。今回のお話の中にはお名前がなかったので(ちよっと残念)
どのような作品になるのでしょうか?お稽古始まったらその様子も知りたいかなぁ。
お写真がとても素敵です。ありがとうございます。
成河さんの考え、凄いです。
私もカレー満腹で食べられるときと、全然食べれなかった時があります。
「ジャージー・ボーイズ」「モーツアルト!」が観れなかったので、リベンジしたいです!