清く正しくヅカ男子(6)
星組トップ・北翔海莉(ほくしょう・かいり)さんとトップ娘役・妃海風(ひなみ・ふう)さんが、『桜華に舞え/ロマンス!!』をもって宝塚歌劇団を退団されます。本拠地・宝塚大劇場では、10月2日(日)と10月3日(月)に、サヨナラショーが行われました。
合成音声による読み上げ
■実力派!北翔海莉がついにサヨナラ公演
北翔海莉さんといえば、アドリブの上手さが有名で、その点からも人気を博していますが、トップスターへの道のりは平坦ではなく、苦労の末に入団17年目という遅咲きで2015年5月に星組トップに就任。大劇場公演3作(1年半)という短い在任期間ではありましたが、名作のヒットにも恵まれ、充実したなかで惜しまれながら本拠地宝塚でのサヨナラショーとなり、東京公演へと旅立ちました。
※アイデアニュース有料会員向け部分では、一度はトップスターへの道が閉ざされたと思われた北翔海莉さんがトップスターになるまでの軌跡、妃海風さんとの歌ウマトップコンビ公演、サヨナラ公演『桜華に舞え/ロマンス!!』、そして宝塚大劇場公演の前楽(10月2日15時公演)と千秋楽(10月3日13時公演)の公演終了後に行われたサヨナラショーを振り返ります。
<今後の北翔海莉さん出演の公演予定>
【東京公演】東京宝塚劇場:10月21日(金) ~ 11月20 日(日)
グランステージ 『桜華に舞え』 -SAMURAI The FINAL-(作・演出/齋藤吉正)
ロマンチック・レビュー 『ロマンス!!(Romance)』(作・演出/岡田敬二)
http://kageki.hankyu.co.jp/revue/2016/ouka/
【星組 東京宝塚劇場公演千秋楽「北翔海莉ラストデイ」ライブ中継】
2016年11月20日(日)13:30 全国各地の映画館
http://kageki.hankyu.co.jp/news/20161006_009.html
【台湾・香港の映画館でのライブ中継】
2016年11月20日(日)12:30 (香港・台灣時間)
http://liveviewing.jp/screenings/hoshigumi-2016-eng/
<アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分の内容です>
■北翔海莉の軌跡 ~順調な昇進から専科への異動
■星組トップ就任、作品に恵まれた「みちふう」コンビ
■テンポ良い『桜華に舞え』。退団する美城れんは西郷隆盛そのもの
■涙あり、笑いあり、ハプニングありの大劇場サヨナラショー
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■北翔海莉の軌跡 ~順調な昇進から専科への異動
北翔海莉さんは、1998年、84期生として宝塚歌劇団に入団。同期は【音月桂(おとづき・けい)】さん(元雪組トップ)、【白羽(しらはね)ゆり】さん(元雪組トップ娘役)、【遠野(とおの)あすか】さん(元星組トップ娘役)、【未涼亜希(みすず・あき)】さん(元雪組三番手スター)、【千琴(ちこと)ひめか(現・はいだしょうこ)】さんという錚々たる顔ぶれ。
月組に配属後、入団5年目でバウホール(宝塚大劇場併設の小ホール)公演の主演に抜擢され、トップスターの登竜門である大劇場新人公演主演も立て続けに3回務めます。バウホールでも『想夫恋』などの主演をこなしていきます。
宙組に組替えし、入団9年目の2007年には三番手スターに昇進するとともに、加美乃素本舗のイメージキャラクターに就任。宙組時代には、バウホール公演『記者と皇帝』などの主演も務め、順風満帆にスター街道をまい進していました。
ところが、転機が訪れたのが2011年。空席になった二番手に2学年下の凰稀(おうき)かなめさんが就任。2012年に凰稀かなめさんが宙組トップに就任すると、北翔海莉さんは専科に異動。専科は「組に属さないスペシャリストの集団」とされ、ベテランの舞台人が在籍するもの。ここにトップスター就任への道は閉ざされたと思われました。
専科異動後、しばらくは三番手格として特別出演をしていましたが、二番手格となり小劇場の主演も務めるようになります。2013年のシアタードラマシティ・日本青年館公演『THE MERRY WIDOW』では、本格オペラの喜劇を熱演、持ち前のアドリブで観客を大いに沸かせました。2014年の花組公演『エリザベート』では二番手役の皇帝フランツ・ヨーゼフを演じ、重厚感のある演技と歌唱力の素晴らしさで、非常に高い評価を得ました。
そして、2015年に柚希礼音(ゆずき・れおん)さん退団後の星組トップスターに、まさかの抜擢で就任します。入団17年目でのトップ就任は、大空祐飛(おおぞら・ゆうひ)さん(宙組トップ・18年目)、壮一帆(そう・かずほ)さん(雪組トップ・17年目)に次ぐ遅咲きになります。
■星組トップ就任、作品に恵まれた「みちふう」コンビ
北翔海莉さんの星組トップお披露目公演は全国ツアー『大海賊』、大劇場お披露目は『ガイズ&ドールズ』。両作品とも自身が月組若手時代に出演した作品であり、星組にとってはこれまでにない新しい作風への挑戦となりました。トップ娘役には星組で屈指の歌唱力を持つ妃海風さんを迎え、歌ウマトップコンビは「みちふう」と呼ばれて大いに親しまれます。
※タカラジェンヌはファンから愛称で呼ばれ、北翔海莉さんは、「みっちゃん」「みちこさん」と呼ばれています。
明くる年にはタカラヅカとディズニーが初コラボしたショー『Love&Dream』(東京国際フォーラム・梅田芸術劇場公演)で、客席を夢の世界へといざないます。次いで大劇場公演では『こうもり』を上演。『THE MERRY WIDOW』に次ぐ本格喜劇オペラへの挑戦に、大いに盛り上がります。この頂点の中で北翔海莉さんは退団を発表。『こうもり』終演後のタイトな期間に、バウホールコンサート『One Voice』公演を行います。
『One Voice』には、北翔海莉さんのコンサートを一目見たいというファンが殺到。同時期に発売された『ガイズ&ドールズ』のDVDはたちまち売り切れ、二度にわたって再販。実力派スターの人気を見せつけました。このような中で開幕したサヨナラ公演『桜華に舞え/ロマンス!!』となりました。
■テンポ良い『桜華に舞え』。退団する美城れんは西郷隆盛そのもの
『桜華に舞え』は、維新志士で西南戦争に散った【桐野利秋(きりの・としあき)】を主人公にした物語。ストーリーは幕末維新から西南戦争の歳月を描くため、とてもテンポの良い展開です。鹿児島弁が多用され若干聞き取りにくいですが違和感はなく、むしろ薩摩隼人の男らしさを際立たせています。そして実力派の出演者たちが、この作品を魅力的なものにしています。
主演の【北翔海莉】さんとヒロインの【妃海風】さんは、さすが歌ウマ芝居ウマのコンビ。時代に翻弄されながらも、お互いに惹かれあった二人の姿は、清々しささえ感じる真に迫った演技です。
二番手スター【紅(くれない)ゆずる】さんは、北翔海莉さん退団後に星組トップスターに就任。苦手感のあった歌唱力も上達し、堂々たる雰囲気は次期トップに相応しいもの。三番手スターの【礼真琴(れい・まこと)】さんは、敵役に初挑戦。復讐心に燃える熱い演技は、次回の大劇場公演『スカーレット・ピンパーネル』のショーヴラン役とも重なり、今後の更なる飛躍に大いに期待です。
【桐野利秋】が兄事した維新の三傑の1人【西郷隆盛】は、北翔海莉さんの同期で専科の【美城(みしろ)れん】さんが演じています。恰幅といい見栄えといい西郷隆盛そのもの。【美城れん】さんにとってこの公演が退団公演となります。同じく専科からは【夏美(なつみ)よう】さんが【大久保利通】役で出演。西南戦争で盟友西郷と対立し、苦悩する姿を見事に演じています。
テンポのよい舞台が、一挙に【城山】の西南戦争最後のシーンへとなだれ込み、この名場面には客席からすすり泣きが聞こえてきます。トップ退団に相応しい、見事なラストです。
併演のショー『ロマンス!!』は、宝塚ロマンティックレビューの19作目。巨匠・岡田敬二(おかだ・けいじ)さんが、北翔海莉さん退団公演のために久々に書き下ろした作品です。優雅にして気品あふれるショーは懐かしささえ感じさせ、タカラヅカの伝統を見たような気がします。
■涙あり、笑いあり、ハプニングありの大劇場サヨナラショー
サヨナラショーは宝塚大劇場公演の前楽(10月2日15時公演)と千秋楽(10月3日13時公演)の公演終了後に行われました。サヨナラショーでは北翔海莉さんの名場面を凝縮したメモリアルのショーを披露。若手時代の『シトラスの風』『想夫恋』などのメドレーが披露され、感傷に浸ったのもつかの間。銀橋(エプロンステージ)の北翔海莉さんに指揮者から突然マイクが渡されたかと思いきや、『風の次郎吉』の主題歌を演歌調に飄々と歌い、客席は笑いにつつまれます。
そして今回の公演で退団となる専科の【美城れん】さんが登場。『One Voice』で評判となった「My HEART Will Go On」をソロで熱唱します。ロマンティックな雰囲気になったところで再び幕が上がり、なんと『Love&Dream』からシンデレラ「夢はひそかに」で「みちふうコンビ」が登場。ガラスの靴を履かせる感動のシーンが再現されます。著作権に厳しいディズニーがサヨナラショーで歌われ、客席は大いに沸きました。
続いて『THE MERRY WIDOW』『こうもり』と、代表作とも言えるオペレッタの曲が続き、トップ娘役の妃海風さんもソロで登場。ところが前楽では帽子が落ちるのを必死に抑えながらの登場というハプニング。会場は暖かい笑いにつつまれました。こうしたハプニングも生の舞台の醍醐味ではないでしょうか。
ソロが終わると、驚くことに北翔海莉さんが『ガイズ&ドールズ』のメロディーに乗って颯爽と登場、客席は大きな感動につつまれます。そして「みちふうコンビ」の代表曲「初めての恋」がデュエットで歌われ、クライマックスを迎えます。再びディズニーから「Someday」がゴスペル調で星組生のコーラスと共に歌われ、客席からは涙が聞こえてきました。
千秋楽後は大劇場周辺でサヨナラパレードがあり、大勢のファンに見送られながら、本拠地宝塚を後にし、東京へと旅立ちました。
北翔海莉さんの東京での退団公演は、10月21日(金)から東京宝塚劇場で上演され、11月20日(日)に千秋楽を迎えます。千秋楽のラストデイは全国の映画館でライブ中継される予定です。