昨年上演されて大好評を博し、今年11月に梅田芸術劇場と赤坂ACTシアターで再演される、ミュージカル『スカーレット・ピンパーネル』で、マルグリット・サン・ジュスト役を演じる安蘭けいさんにインタビューしました。(上)(下)に分けてお届けします。
――昨年の舞台が大好評でチケットが取れない程でしたが、再演が決まって今のお気持ちはいかがですか?
こんなに早く再演がかなってとても嬉しいです。再演はするんじゃないかと思っていましたが、まさか翌年に出来るなんて! 本当に冗談で、(石丸)幹二さんに「早くしないと我々の体力もね……」と話していたら、こんなに早く実現して(笑)。良かったです。
――前回、お客様の反応も聞こえていたんじゃないかと思いますが、いかがでしたか?
やはり宝塚でやっていた者としては、どうなるだろうと思ってはいました。宝塚版をご覧のお客様は宝塚で小池(修一郎)先生が作った物語を良くご存知なので、受け入れられなかったらどうしようと思っていました。結果、それぞれにどちらの良さもある仕上がりになったと思います。私たち日本版(梅田芸術劇場版)としては大人な部分や、宝塚版では芝居で描かれなかった所が気に入ってもらえたので良かったなと思います。
――大人の『スカーレット・ピンパーネル』になるだろうと思っていましたが、期待通りに大人な感じが素敵でした。実際、やってみて大人な感じというのはどう違ったとか、想定通りに出来たということはありますか?
(石丸)幹二さん、カズ(石井一孝)さん、私と、年齢をみてもキャリアのある人達と、ピンパーネル団の若者たちと、芝居のバランスがどういったものになるのか想像のつかないところもありましたが、彼らもとても頑張ってついてきくれたので、思った通りの部分の方が多いですね。
――前回の演出はガブリエル・バリーさんでしたが、ガブリエルさんの演出、3人の大人組キャスト、ピンパーネル団の若者達など色々な要素のなかで、宝塚と比べてどこが一番上手く作用したと思いますか?
やはり3人の三角関係をより深く描いていた所ですね。さらにマルグリットの話がよく出てきますよね。弟とのことも宝塚版と比べるともっと関係深く描かれています。本当に原作に出てくる人しか出ていない中のドラマなので、やはり密に深い芝居というか、人間模様があったと思います。
<取材協力>
スタイリスト:弓桁いずみ
ヘアメイク:吉野麻衣子
※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、宝塚版と日本版の違いなどについて詳しく伺ったインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。29日掲載予定のインタビュー「下」では、再演『スカーレット・ピンパーネル』で新たに共演する方々の印象や、ピンパーネル団の若者達などについて語ってくださったインタビュー後半の全文と写真を掲載します。
<有料会員限定部分の小見出し>
■マルグリット、あのぐらい強さがあれば革命家だったことがよく分かりますよね
■「ひとかけらの勇気」(悲惨な世界のために)を歌う場面、最初はなかったんです
■(遠野あすかさんは)こちらの方がマルグリットが描かれているから、羨ましがって
■元の作品を男役のために宝塚版に作り直した小池先生の偉大さがよくわかりました
<ミュージカル『スカーレット・ピンパーネル』>
【大阪公演】2017年11月13日(月)~11月15日(水) 梅田芸術劇場メインホール
【東京公演】2017年11月20日(月)~12月5日(火) TBS赤坂ACTシアター
<公式サイト>
梅田芸術劇場 ミュージカル『スカーレット・ピンパーネル』
http://www.umegei.com/the-scarlet-pimpernel/index.html
「スカーレット・ピンパーネル」公式ツイッター
https://twitter.com/pimpernel_2017
<関連リンク>
安蘭けいホリプロオフィシャルサイト http://www.horipro.co.jp/arankei/
安蘭けい公式ファンクラブ「Aran」 http://www.kei-aran.com/
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■マルグリット、あのぐらい強さがあれば革命家だったことがよく分かりますよね
――先日、星組公演を観て、宝塚版を否定するという意味ではないんですが、マルグリットが日本版の方が素敵に見えるなと思いました。
しっかり描かれていますからね。
――姉弟の歌や、直接弟を助けにいく場面もありますし、弟への愛情もとても伝わってきました。そういう意味でも、パーシー(・ブレイクニー)がマルグリットをすごく好きになってイギリスに連れていったことに納得がいく感じがしたんですよね。
さらに、マルグリットが革命家だったことがよく分かりますよね。宝塚は娘役がやっているから、か弱い雰囲気があって、革命活動しているような人に見えないですが、私ぐらいの強さがあれば、「この人革命家をやっていたな」と感じるでしょうね(笑)。
――(笑)。フェンシングの見せ場は度肝を抜かれましたが、いかがでしたか? 元々、台本上にあったんですか?
実はなかったんですよ。場面を作っているときに戦うことになったのですが、当初はもっと強かったんですよ。
――もっと!?
もっと1人で戦っていたんだけど、あまりにも強すぎるからカットしてもらったんです。
――そうなんですか! そのシーンが作られる過程で、安蘭さんにはどう思われたんですか?
戦う場面を振付する時に、戦って欲しいと言われたんです。少しサーベルを当てるくらいかなと思っていたら、「瞳子、2本持って。これ出来る?」と言われて。「出来ますけど…」と言ったら二刀流になったんです。「え!? 私、二刀流?」と驚きました。その方が面白いだろうと、おそらく私の見せ場にしてくれているんだと思いましたが、やってもいいけど、それは私のファンの方々が喜ぶだけになって、作品的にどうなんだろうかという不安はありました。そんなにマルグリットが強い必要あるのかなと。
――確かにとても強かったですね。
私を知らない人が観たら、「宝塚でやってきたかもしれないけど、それはこの作品に必要ないんじゃないか」と思われるかもしれないと思ったんです。そういう怖さもありましたし、物語的にマルグリットが強すぎるのはおかしくないだろうかと思ったので、「ちょっと強すぎませんか?」と相談して減らした結果、あの仕上がりになったんです。それでも強いでしょう?
――最初に観た時の衝撃は忘れられないくらい強かったですね(笑)。
でも、本当に半分ファンサービス的な所もあるかなと思うんです。ガブリエルさんも、私の経歴というか、パーシー役をやっていたことも知っていますし、優しさでつけてくださったんですよね。
■「ひとかけらの勇気」(悲惨な世界のために)を歌う場面、最初はなかったんです
――戦いの場面出来上がって、芝居を通してみて、マルグリットという人物を作り上げる難しさはありましたか?
戦う場面を入れたことで、マルグリット像が難しくなったことはなかったです。そもそもそんなに弱い女だとも思っていないので。二刀流かどうかは分からないですが、きっと男と互角に戦っていたくらいの強さがあると思いますし、あってもいい役だと思います。強さが行き過ぎていたら嫌だなとは思いましたが、ない事はないんじゃないかと。
――マルグリットは、女っぽい所も、弱い所も、最後には強さも見せる。色々な面があってすごく美味しいというか、観ていて楽しい、すごくいい役だなと思いました。
そうですよね。だから、本当にふんだんに私をよくみせてくれていたなと思います。すごく有難いことですよね。
――安蘭さんが出演された今年の作品でいえば、『白蟻の巣』や『リトル・ヴォイス』とは全く違う、他の作品にない面白さがあるのかなと思います。「ひとかけらの勇気」(悲惨な世界のために)を橋の所で歌う場面もいいですよね。
あれも最初はなかったんですよ。
――初めてみたときにゾクゾクしました。
ガブリエルさんが「歌うのはどうだろうか」と言ってくださって、「いいんですか?」と。「やはり君が宝塚でやっていた歌だから、僕はここに入れてもいいと思うけれど、歌いたくなかったら」と聞いてくださって、私のジャッジもあったんですよ。「きっと歌えばファンの人は喜んでくれると思う。この作品は君が作ってきたものだから」と言ってくださって、私のことも立ててくださったのが本当に有り難かったです。
――じゃあ、本当に日本版というより、石丸さん&安蘭さん&石井さんの3人版ですね(笑)。
そうですね(笑)。
――安蘭さんがいなかったら、全く違う演出になっていたんですね。
あそこまで戦うマルグリットはなかったと思います。
――(笑)。なるほど。でも、あの橋のシーンは本当に感激しました。
歌詞は違うんですけどね。
――あのメロディーだけで。前奏で「!!!」って。
メロディと私の声が入ってね。「ああ!」と思ってくださったかなと思います。
■(遠野あすかさんは)こちらの方がマルグリットが描かれているから、羨ましがって
――歌に関しては、曲によって音域がとても広いですよね。最初のコメディ・フランセーズでのショーの場面の歌は高音がありますし、低めの曲もありますよね。色々な曲が楽しめましたが、大変な部分はありましたか?
やはり男役をやっていたので、男役時代に自分が培ってきた男役の声というか、地声の声はやはり女優になったら必要なくなって、そうじゃない女優の声を出すことをずっとやってきました。このマルグリットの歌も結構高いんです。私のキーに合わせて少し低くしてくれたりもしましたが、それでも歌いこなすには本当に難しい曲ばかりなので、とても苦労しましたね。自分に合うキーがなかなか見つからないんですよ。1曲のなかでの音の幅が広いので。片方に寄せたら、反対側が出ない。
――(フランク・)ワイルドホーンさんの曲は音域が広いですね。
本当に。どれだけ歌上手い人のために作ってるのって(笑)。
――(笑)。
でも、それくらいスキルがないと歌えないですね。やはりこちらもプロとして試されていると思うので、ちゃんとやらなければいけないなと。だから、(遠野)あすかが歌いこんでいたあの歌を、私もあすかに負けないようにちゃんと歌いたいと思いました。でも、当時のあすかを思うと、「すごく難しい歌を歌っていたんだな」とひたすら感心する日々です。
――昨年の大阪公演ではアフタートークに遠野さんが来ていましたね。ご覧になってどうおっしゃっていましたか?
やはりこちらの方がマルグリットが描かれているから、羨ましがっていましたね。マルグリットの歌に入る場所も、とてもスムーズですし、やはり元々の作品なんだなと。
■元の作品を男役のために宝塚版に作り直した小池先生の偉大さがよくわかりました
――観ていてもマルグリットに感情移入がしやすいです。
そうですよね。宝塚版は小池先生が男役のために、パーシーを主役にするために書き換えているので、宝塚版ならではの面白さと見どころがありますよね。今回、日本版をやったことで元の作品を知り、これを宝塚版の物語に作り直した小池先生の偉大さがよくわかりました。
――宝塚初演のゲネで、1幕が終わったときの劇場の高揚感が今も忘れられないです。「この作品すごくない?」という空気が1幕終わった後の客席にあったんです。
そうだったんですね。
――あの生まれる瞬間のみんなのキラキラした感じは、ちょっと忘れられないですね。
同期のエンディ(高央りお)がTCAの編集にいて、見ていたんですよ。ゲネが終わって楽屋に来たときに、「これやばいよ」と言ってくれて。ゲネって私たちは何の手応えもないんですよね。「これすごく面白いよ」と初めて言ってくれたのがエンディでした。それを聞いて、「これ面白いんだ」とその時に自覚したんです。稽古中は大丈夫だろうかとすごく不安でした。エンディの言葉や、初日のお客様の反応で「すごいんだな」と実感することが出来ました。
――あの作品が宝塚で3回の上演と、さらに日本版上演までになるのはすごいことですね。
感慨深いですね。
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(上)(下)共に読まていただきました。とても素敵なインタビューで興味深いかったです。宝塚時代を知らないのですが、その頃の事まで書いてくださっていたので、スカーレットピンパーネルに対する心構えが分かりました。初演のマルグリットにこんなに秘密があったという事も知れてよかったです。確かにマルグリットが強いですね。演出が石丸さんになり、再演は、初演とはまた違った作品になるんだろうし、マルグリットも素敵になるんだろうなと思えました。楽しみにしています!
再演あると信じてましたが、こんなに早く。
弟アルマン・洸平くんとの絡みも新鮮、そして演出も変わり更に深い作品になるでしょうから、楽しみです。