ジュディ・ガーランドを描いた濃密な舞台、「エンド・オブ・ザ・レインボー」公演評

「End of the RAINBOW(エンド・オブ・ザ・レインボー)」公演より=撮影・引地信彦

舞台「エンド・オブ・ザ・レインボー」が上演された(東京公演は終了、9月9日にサンケイホールブリーゼで大阪公演上演予定)。先日対談をお届けした小西遼生と伊礼彼方の入れ替わりダブルキャスト両公演を見ることが出来たので、違いなどに注目してお届けする。(記事の後半部分はアイデアニュース有料会員限定です)

ジュディ・ガーランドの最晩年を描いた舞台で、 彩吹真央がジュディ・ガーランド役を、小西と伊礼は、ジュディの5番目の夫になるミッキー・ディーンズと、インタビュアー役を入れ替わりで、鈴木壮麻がジュディの旧友で専属ピアニストのアンソニー役を演じた。出演者は4人のみという、濃密な舞台だった。

「End of the RAINBOW(エンド・オブ・ザ・レインボー)」公演より=撮影・引地信彦

「End of the RAINBOW(エンド・オブ・ザ・レインボー)」公演より=撮影・引地信彦

「End of the RAINBOW(エンド・オブ・ザ・レインボー)」公演より=撮影・引地信彦

「End of the RAINBOW(エンド・オブ・ザ・レインボー)」公演より=撮影・引地信彦

「End of the RAINBOW(エンド・オブ・ザ・レインボー)」公演より=撮影・引地信彦

「End of the RAINBOW(エンド・オブ・ザ・レインボー)」公演より=撮影・引地信彦

「End of the RAINBOW(エンド・オブ・ザ・レインボー)」公演より=撮影・引地信彦

「End of the RAINBOW(エンド・オブ・ザ・レインボー)」公演より=撮影・引地信彦

「End of the RAINBOW(エンド・オブ・ザ・レインボー)」公演より=撮影・引地信彦

「End of the RAINBOW(エンド・オブ・ザ・レインボー)」公演より=撮影・引地信彦

「End of the RAINBOW(エンド・オブ・ザ・レインボー)」公演より=撮影・引地信彦

「End of the RAINBOW(エンド・オブ・ザ・レインボー)」公演より=撮影・引地信彦

1968年のロンドン。ジュディのコンサートのために借りた、ホテルのスイートルームが主な舞台だ。ステージは大きな額縁のような枠で囲まれており、一部が朽ちて鉄骨が見えているのが印象的だった。ジュディの不安定な心を象徴しているのだろうか。そのフレームの内側にグランドピアノとソファー、鏡台などが配置され、スイートルームになっている。コンサートのステージや、楽屋、ラジオ局などの場面では、照明を落として部屋のセットが見えないようにし、シンプルにライトを当てるだけでその場所を表現する。

小西と伊礼のミッキーは全く違っていた。相手役のふたりが違うことによって、特に彩吹が変わっていた。芝居のダブルキャストはあまりないケースだが、こんなに変わるものかと驚いた。たとえばミュージカルではダブルキャストが多い。それぞれの役作りによって違うことは珍しくないが、それによる相手役の違いは感覚的に感じることが多い。そのミュージカルで感じる違いよりも、もっと明確な違いだった。

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ジュディ・ガーランドを描いた濃密な舞台、「エンド・オブ・ザ・レインボー」公演評 →https://ideanews.jp/backup/archives/9047

「エンド・オブ・ザ・レインボー」に出演、小西遼生×伊礼彼方対談(上)→ https://ideanews.jp/backup/archives/7263

「エンド・オブ・ザ・レインボー」に出演、小西遼生×伊礼彼方対談(下)→ https://ideanews.jp/backup/archives/7372

「エンド・オブ・ザ・レインボー」に出演、小西遼生×伊礼彼方対談(読者の声) → https://ideanews.jp/backup/archives/7915

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<ここからはアイデアニュース有料会員限定>(「エンド・オブ・ザ・レインボー」公演評の後半部分です)

小西と彩吹のペアは正面から向き合って、戦っているようだった。小西ミッキーは強めで、圧があり、感情を直接的に表現する。それによって彩吹ジュディも激しく同じ圧で返してくるのだ。つねに緊張感が感じられるふたりだった。

伊礼と彩吹のペアは穏やかさが印象に残っている。伊礼ミッキーは余裕があって、おおらか。怒りの感情も一度飲み込んでから、少しずつ出してきて、ジュディに言い聞かせるように怒る。全体的に彩吹ジュディが可愛らしく見えた。

特に違って感じたジュディのセリフがふたつある。「クスリ」を欲するジュディをミッキーとアンソニーが止める場面。ジュディはふたりに抵抗しながら、怒りをぶつけたあとで「あなたたちは優しい」とつぶやく。小西とのときは、自分に言い聞かせるように絞り出し、伊礼のときは、冷静に客観的に発言しているようだった。

さらに、コンサートの後に街に繰り出し、飲み騒いで帰ってきたジュディと言い争う場面。ミッキーは明日も予定通りにコンサートをやると言い聞かせるが、ジュディは「やなこった」と逆らうのだ。正論を積み重ねてくる小西ミッキーには「やなこった!」と叫び、諭すように言い聞かせる伊礼ミッキーには「やなこった……」と吐き捨てる。この作品のなかで、彩吹の違いを一番感じたセリフだ。

彩吹は宝塚を退団後、ミュージカルやショー的舞台で活躍してきた。今回のような濃密な少人数の芝居はほぼはじめてで、とても新鮮だった。作品中、ジュディのナンバーを歌うが、コンサートの場面で華やかに歌うのとは対称的に、部屋でつぶやくように歌う曲が記憶に残る。ラストの「Over The Rainbow」は特に切なく、虹の向こうに思いを馳せる。

そして、アンソニー役の鈴木が素晴らしかった。ゲイならではの繊細さと優しさで、ジュディを包むように癒す。無償の愛を注ぎ続ける姿は見ていて苦しくなるほどだった。ジュディに一緒に暮らそうと話す場面で流す鈴木の大粒の涙は、いまだ脳裏に焼き付いている。

  • <大阪公演情報>
  • 「End of the RAINBOW(エンド・オブ・ザ・レインボー)」
    作:ピーター・キルター
    演出:上田一豪
    上演台本・訳詞:高橋亜子
    音楽監督・ピアノ:岩崎廉
    ステージング・振付:TETSUHARU
    出演: 彩吹真央 小西遼生 伊礼彼方 鈴木壮麻
    上演期間:2015年9月9日13時30分/18時30分
    会場:サンケイホールブリーゼ
    料金:8800円(全席指定・税込)未就学児入場不可
    お問い合わせ:06-6341-8888(11〜18時 ブリーゼチケットセンター)
    大阪公演HP:http://www.sankeihallbreeze.com/list/drama/2015/04/post-514.html
  • ※東京公演(公式HP:http://www.stagegate.jp/stagegate/performance/2015/end_of_the_rainbow/)は終了しています

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