「エンド・オブ・ザ・レインボー」に出演、小西遼生×伊礼彼方対談(上)

小西さん&伊礼さん対談アイキャッチ

ジュディ・ガーランドの最晩年を描く、「End of the RAINBOW(エンド・オブ・ザ・レインボー)」に出演する、小西遼生と伊礼彼方の対談を、2回に渡ってお届けする。

小西遼生さん×伊礼彼方さん=撮影・岩村美佳

小西遼生さん×伊礼彼方さん=撮影・岩村美佳

ともに1982年2月生まれ。ミュージカルやストレートプレイを中心に主要キャストとして活躍しているが、同じ舞台に出演しても、ダブルキャストやすれ違う役など、がっつり組んで芝居をした経験はない。お互いをリスペクトし、本当は一緒に芝居がしたいというふたりだが、今回もダブルキャストだ。ただし、2役の入れ替わりだから楽しみと話す。主に(上)では作品について、(下)ではお互いについて語ってもらった。

映画「オズの魔法使」や「スタア誕生」で全世界を魅了したジュディ・ガーランド(彩吹真央)。天才歌手として喝采を浴び続け、愛と歌に生き、燃え尽きた、壮絶な生涯を送った。彼女の5番目の夫になるミッキー・ディーンズ(小西/伊礼)と、旧友で専属ピアニストのアンソニー(鈴木壮麻)の3人を描いた作品だ。劇中では、「虹の彼方に」や「ゲット・ハッピー」をはじめとするジュディの十八番が歌われる。上演されるDDD青山クロスシアターは座席200人程の小さな劇場。出演は4人とはいえ、大きな劇場でメインキャストとして活躍するキャストばかり。とても贅沢な公演だというと、「贅沢と言ってもらえるんだ」とふたりとも驚いた様子だった。「泥臭くやってきたつもりだから、自覚がないし嬉しいね」と顔を見合わせた。

作品の印象について聞くと、「なぜ今、ジュディ・ガーランドの物語が作られたのだろうと思った」と口を揃える。小西は「最初は誰のことだろうと思ったが、オズの魔法使はもちろん見ているし、聞いたことがある曲も多く、逆になぜ今まで知らなかっただろうと思った。ひとりの物語を作るうえで先入観がない方が好きだし、演じる側としてもそこに面白い要素がたくさん眠っている感じがするので、作りがいがある。そういう意味ではジュディ・ガーランドという題材が面白いと思った」と話した。

小西遼生さん×伊礼彼方さん=撮影・岩村美佳

小西遼生さん×伊礼彼方さん=撮影・岩村美佳

ゴシップにしやすく、トラブルメーカーのジュディの夫役ということで、伊礼は「また新しい自分に出会える作品だなと思った。誰かの相手役は多いけれど、じゃじゃ馬を手なずけるというのが結構楽しい」と笑う。「あ! それは伊礼さんの個人的な話ですか?」と小西が突っ込むと、「個人的に(笑)。振り舞わされるのが好きだから面白そう」と伊礼。二人のかけあいも面白い。

私が脚本を読んだ印象だと、むしろミッキーよりもアンソニーに気持ちがいく。ジュディを大事に思う気持ちは同じながら、ジュディのためだと思う方向が違うようだ。そのポイントとなる分岐点が、物語の後半に訪れる。小西と伊礼は、ミッキーを悪いヤツだとは思わないといい、それぞれの思いを語った。

伊礼は「少し前ならば、彼を愚かだと思ったけれど、自分の環境がいろいろと変わって心が柔らかくなったのか、可哀想に感じる。器の小さい彼が唯一彼女に出来た愛情で、それしかなかったと思うと悪者ではないなと。観客がどういう印象を抱くかは自由だけれど、いい人を演じて悪役になる方がせつないし、悲しいよね」という。小西は「今より、酒、クスリの距離感も近いだろうし、その中でどう生きてきたかを想像すると、いくつかある分岐点で、自分の決断でジュディがどうなるかを全く考えずに行動した人ではない。自分の中に選択肢が常に生まれて、結果その決断をしてしまっている状況があるんだと思う」とミッキーの心情を想像する。演じ方によって観客の印象が変わるであろうミッキー役を、ふたりは「だからこそ面白い」と言い切った。

小西遼生さん×伊礼彼方さん=撮影・岩村美佳

小西遼生さん×伊礼彼方さん=撮影・岩村美佳

ダブルキャストについて聞くと、そこにはあまり興味がないようで……小西は「まず役と向き合うわけだから、あまり考えない。違うことはあたりまえ」、伊礼は「どちらのミッキーもありだから」とばっさり。互いの役作りが気になることはなさそうだ。しかし、「ふたりのミッキーが違えば、今後一緒に演じることもありとなるかも」と期待を寄せる。また、入れ替わりダブルキャストだから、一緒の舞台にいられる。お互いがどういうミッキーを作るかがわからないから、それを見ながらインタビュアー役としてどう動くか楽しみだそう。(インタビュアー役のときは、その他の複数の役でも登場するそうなので、お楽しみに。)

ふたりの共演者についても聞いてみた。彩吹との共演は、小西が2回目で、伊礼は初めて。「僕たちふたりを相手にする彩吹さんが一番大変だろう」と予想する。「アンナ・カレーニナ」で相手役がダブルキャストの経験をした伊礼は、「ふたり分を受け止めきれなくて大変だった。小劇場でのダブルキャストはいろいろなズレが生じるからそれを埋めるのに稽古時間が大事になってくる」という。

鈴木との共演は、小西は「ドラキュラ」以来、伊礼は「エリザベート」以来だそう。「役の雰囲気はぴったり」と口を揃える。しかも鈴木がピアノを弾けると知って、どのくらい弾けるんだろうかと興味津々だった。この時代の曲が好きだという小西は、「ちょっと狂気もあるような時代に生まれているメロディや言葉たちには、現代ではなかなか生まれ難い色気がある」と絶賛。ところが伊礼は「僕は全然そう思わない。細胞が反応しないジャンルの曲だから」と反対意見だ(この続きのやりとりはおまけコーナーで紹介)。ロック系が好きな伊礼は、「綜馬さんがピアノなら、フィナーレで皆で演奏しちゃおうよ」と言い出す。小西は「どうしてもジャズではないようにしたいんでしょ?」と突っ込み、「この作品が終わったら、絶対にジャズが好きになっていると思うよ」と太鼓判を押した。

小西遼生さん×伊礼彼方さん=撮影・岩村美佳

小西遼生さん×伊礼彼方さん=撮影・岩村美佳

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  • <公演情報>
    「End of the RAINBOW(エンド・オブ・ザ・レインボー)」
    作:ピーター・キルター
    演出:上田一豪
    上演台本・訳詞:高橋亜子
    音楽監督・ピアノ:岩崎廉
    ステージング・振付:TETSUHARU
    出演: 彩吹真央 小西遼生 伊礼彼方 鈴木壮麻
    上演期間:2015年8月21日〜9月3日
    会場:DDD青山クロスシアター
    料金:8800円(全席指定・税込)
    お問い合わせ:03-5485-5999(CATチケットBOX)
    ホームページ:
    http://www.stagegate.jp/stagegate/performance/2015/end_of_the_rainbow/index.html

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<アイデアニュース有料会員向け「おまけ」>

曲に関する押し問答が面白かったので、会話形式でお届けします(岩村美佳)

小西遼生さん×伊礼彼方さん=撮影・岩村美佳

小西遼生さん×伊礼彼方さん=撮影・岩村美佳

小西「まず、何が嫌なの?」

伊礼「ジャズっぽい、シャンソンっぽいDNAが僕には流れていないから。」

(ズンズンチャーンとやってみる……)

小西「今の全然ジャズに聞こえなかった(笑)。」

伊礼「ジャズ出来なかった(笑)。」

小西「そんなジャズないでしょ。」

伊礼「エイトビートが鳴っていないのがダメなの。現時点で感性が違うから。」

小西「公演が終わった後、好きになっていると思うよ。」

伊礼「そう。いつも思うのは、僕は一番最初の観客なんですよ。まっさらな状態で作品に取り組んで……」

小西「いや、まっさらじゃない。ちょっと批判から入るの(笑)。この役ムカつくんだよ〜! って。だから振り幅がもっとすごいよ」

伊礼「そうか。役はイケテナイし、曲もあまり好きじゃないなという人間が、最終的には、お客さんに『いいんですよ』と歌っているから僕の意見は説得力があると思うんだ。大丈夫! 自分が関わった作品は好きになれるから。」

小西「劇中、好きじゃない曲たちを歌わないしね。」

伊礼「聞く側だからね!」

(最後にフィナーレ的に歌うナンバーがあるそうですが……)

伊礼「必要ないと思ったら抗議しよう!」

小西「批判から入るから(笑)」

小西遼生さん×伊礼彼方さん=撮影・岩村美佳

小西遼生さん×伊礼彼方さん=撮影・岩村美佳

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