「余白で自分らしさを出さなければ」、『王家の紋章』平方元基インタビュー(上)

ミュージカル『王家の紋章』より=写真提供:東宝演劇部

累計発行部数4000万部を超える少女漫画の金字塔『王家の紋章』。2016年に初ミュージカル化され反響を呼びました。その反響に応えて、今年4月8日から5月7日まで帝国劇場で再演。5月13日から梅田芸術劇場で大阪公演が開幕します。『エリザベート』や『モーツァルト!』など数多くのミュージカルを手がけたシルヴェスター・リーヴァイさんの音楽や、繊細で美しい世界観を描き出す荻田浩一さんの演出で、溜め息がこぼれるような世界が息づいています。アイデアニュースでは、『王家の紋章』にイズミル役で出演(Wキャスト)している、平方元基さんにお話を伺いました。(上)(下)2回に分けて掲載します。

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ミュージカル『王家の紋章』より=写真提供:東宝演劇部

ミュージカル『王家の紋章』より=写真提供:東宝演劇部

■キャロルにどこで恋をしたのか、どこがグラッと揺れた瞬間だったのかを明確に

――昨年の初演を経ての再演ですが、イズミル役の進化についてはいかがですか?

初演は、自分の役と出会うところから始まるので、役を深めていくのに必死でした。そして再演はその土台の上に新しくブラッシュアップしていかないといけないので、荻田さんとじっくり話し合いました。荻田さんが見せたいものや原作として見えなくてはいけないものを明確にして、その間の余白で自分らしさを出していかなければいけないと、初演が終わったときに思ったんです。お客様は「すごく原作っぽくて素敵でした」と言ってくださいましたが舞台化されるにあたり、原作らしければいいというだけでもないと思うんです。僕が演じているからこそのイズミルの魅力を、再演ではより明確に出せるようにと思って挑ませて頂きました。

――特に具体的に見せたいところは?

キャロルにどこで恋をしたのかというところですね。元々イズミルは感情が表に出にくいキャラクターですが、どこがグラッと揺れた瞬間だったのかを明確にしたかったんです。台詞が一言増えましたが、果たしてその台詞だけで説得力があるのだろうかと思い、そこを突き詰めました。明暗、陰影をはっきりつけたかったんです。

――なるほど。

基本的に、台詞の言い方は舞台上に出て、その時のその場の感覚で変わってしまうところがあります。そこはお客様に楽しんで頂きたい部分でもあるのですが、イズミルの恋がどこで着火したかが、毎回多少変わってくるんです。キャロルを演じる相手によっても違いますし、僕自身の心情もその時々で変わります。

※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、『王家の紋章』共演者についてのお話など、インタビューの全文をテキストで掲載しています。5月9日に掲載するインタビューの「下」では、『ロミオ&ジュリエット』や『スカーレット・ピンパーネル』について伺った内容などを掲載します。

<有料部分の小見出し>

■恋でドラマが転がる。その坂道を自分がきちんと作れるかが再演の課題

■気持ちの揺れや、その場で起こったことをすごく大切にしながら演じています

■人間関係は、全力で飛び込んで、火傷して…。相手ありきのものだから、恋と一緒

■ファラオだなと思えば思うほど、イズミル役としては「潰れてしまえ」と思います(笑)

<ミュージカル『王家の紋章』>
【東京公演】2017年4月8日(土)~5月7日(日) 帝国劇場 (この公演は終了しています)
公式ページ http://www.tohostage.com/ouke/
【大阪公演】2017年5月13日(土)~5月31日(水) 梅田芸術劇場メインホール
公式ページ http://www.umegei.com/ouke/

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■恋でドラマが転がる。その坂道を自分がきちんと作れるかが再演の課題

――再演で三角関係がより明確になったと思いました。

イズミルは恋をすることで、初めてメンフィスと対峙する訳じゃないですか。国や妹のことが対立のきっかけなので、そこも大切にしなければいけないですが、それはあくまで激しい対立へ向うステップの内のひとつ。恋という予期せぬ出来事が起きてドラマが転がります。その坂道を自分がきちんと作れるかが再演の課題ですし、そこを見てもらえるといいなと思っています。

――再演の稽古で取り組まれて手応えはいかがでしたか?

本番始まってからの方が手応えを感じるんですよね。実際に衣裳を着て、メイクをして、舞台セットと照明のなかで行う、舞台稽古の短いスケジュールの中で完成されていくんです。光やナイルの川の音を聞いたりすると、稽古場でどれだけやって来ていても、全く違うものになったりします。舞台上での感覚が気づかせてくれるものが多いです。

――相手役によっても、そのときのご自分の心情によっても変わるとすると、公演回によってもかなり変わりますか?

この作品は、出演者全員の気合の入り方や芝居の持って行き方で、すごく色が変わるんです。イズミルは物語の最初に出て、ルカに「策を練ってくれ」と言った後、約50分くらい出番がないので、その日のみんなの雰囲気ですごく変わります。例えば、今日はテンポ少し悪いかなと思ったら、ギアをもう1段あげたりしますね。イズミルは出てくる度に、場面場面を変えていかなければいけない、急展開を起こさなければいけない役なので、テンポを動かすのに一役買っているんじゃないかと思います。いい流れが来たときには、そこに乗って流れに身を任せる方が上手くいきます。

■気持ちの揺れや、その場で起こったことをすごく大切にしながら演じています

さらに、「今日は良かった」と自身でも感じます。自分の感覚は正しかったんだとか、相手から受け取ったものを正しく返せたなとか、言葉に伴う気持ちのキャッチボールがしっかり出来たから、あのシーンで自分の気持ちをどうしたらいいか分からない感覚が発生したんだなとか。そういう感情の動きをあらかじめ決め付けて演じてしまうと、どこかズレることが多いんですよ。あまり演出からズレてはいけないと思いますが、気持ちの揺れや、その場で起こったことをすごく大切にしながら演じています。

――そういう公演ごとの変化について相手役の方たちとお話されたりするんですか?

それを言ってしまうと、相手がそれを意識してしまい、上手く化学反応が出来なくなってしまう可能性もあるので、難しいところですよね。でも、あえて言うときもありますね。

――それは「良かった」ということを?

自分が「良かった」と伝えたいって思ったんでしょうね。舞台上に立っていると、常に楽しいんです。苦悩している役でも、苦悩しきった方が楽しいですし、それを分からせてくれる人は自分ではなくて、台詞やモーションをくれる人。相手の俳優さんありきだから、舞台で起きたことに対して「ありがとう」と伝えることはあります。

ミュージカル『王家の紋章』より=写真提供:東宝演劇部

ミュージカル『王家の紋章』より=写真提供:東宝演劇部

■人間関係は、全力で飛び込んで、火傷して…。相手ありきのものだから、恋と一緒

――平方さんのツイッターなど拝見していると、共演者の方と一緒にワイワイしている写真などが多いなと。

自分から積極的に前に行くタイプではなくて、一人で自撮りしてツイッターに写真を載せるのは恥ずかしいので、誰かが一緒にやってくれないと出来ないんです。

――平方さん、人懐っこいですか?

人懐っこい方だとは思います。「大丈夫かな……」と相手をよく見ながらも、全力で飛び込みますね。飛び込んで、火傷して、「やっべぇ、ごめんなさい」みたいな経験もありますが(笑)。

――(笑)。

人間関係って、どちらかがそうじゃないと距離が縮まらないですよね。特に僕達の仕事は3、4ヶ月スパンで新しいカンパニーになり、ひとつのものを作っていきますから。

――火傷覚悟で、とりあえず行ってみるみたいな。

火傷は治りますしね(笑)。

――確かに! 火傷して負った傷は引きずらないんですね。

相手があっての問題だから、恋と一緒ですよ。

――恋と一緒?

相手ありきのものだから、出来た傷をいつまでも引きずっていても仕方がないなと思うんです。ちょっと傷つけてしまったり、自分が逆に傷ついたりすることって、お互いさまなんじゃないかと。僕は基本的に人といることが好きなんです。

■ファラオだなと思えば思うほど、イズミル役としては「潰れてしまえ」と思います(笑)

――なるほど。『王家の紋章』のキャストの皆さんの仲の良さが伝わってきます。

この作品ならではかもしれません。帝国劇場で上演される演目は、必然的に人数が多くなるので、自分が楽な、居心地がいい場所だけにはいられないですよね。自分から先輩の懐に入っていって、先輩に教えて頂いたり、叱られることも一つの成長だと思います。そう考えると、『王家の紋章』では、特に健ちゃん(浦井健治)の居方がカンパニーの仲の良さにすごく影響があるんじゃないかと思います。誰に対しても優しいですし、この初演は帝国劇場初主演できっと色んな重圧があったと思いますが、近くにいてもそれを感じたことがありません。とても仲はいいのですが、僕にはそれを見せていないんだと思います。それが分かるからこそ、ついて行きたいと思いますね。ファラオだなと思えば思うほど、イズミル役としては「潰れてしまえ」と思いますが(笑)。

――(笑)。

仲がいい分、対立する役というのはすごく複雑でした。伸び伸びと歌うのを聞いて「このやろう」と思うんですよ。役を作る間もすごく面白かったです。初演前から仲良しで、いつもご飯に行ってワイワイしているんですが、舞台の上ではふたりともマイクが入っていないのに罵声や怒号を交わしていて、それがすごく新鮮なんです。健ちゃんの方から「今日、元基の新しいところを見れて面白かった」とか言ってくれるんですよ。他にも健ちゃんとマモくん(宮野真守)と矢田(悠祐)くんと僕は、稽古場で席が近かったので、それぞれに感じたことを言い合ったりしていましたね。

――そこは男同士の仲間感がありますね。

そうですね。部活みたいです。

ミュージカル『王家の紋章』より=写真提供:東宝演劇部

ミュージカル『王家の紋章』より=写真提供:東宝演劇部

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“「余白で自分らしさを出さなければ」、『王家の紋章』平方元基インタビュー(上)” への 4 件のフィードバック

  1. ruka より:

    原作ファンで初演を拝見した時に、イズミルそのもので素敵で大好きになりました。再演は、イズミルが恋をしたのが凄くわかったので、このインタビューを読むとその意味がよく分かりました。今回、イズミルに対するインタビューをこんなに読めてよかったのと、キャストの仲の良さも知る事ができよかったです。

  2. ゆみこ より:

    平方くんの心を表してくれたような記事を読むことができて本当に嬉しかったです。

  3. レイン より:

    こんなに長く深くイズミルを語る平方さんのお話が伺えたのは初めてなので、とても良かったです。後半も楽しみにしてます。

  4. よっすぃ〜 より:

    平方元基さんのインタビュー、とても良い記事でした!イズミル役が好きなので役作りなどについて知ることが出来て嬉しかったです。また、素の人間関係も垣間見えて興味深かったです。益々平方さんの事が好きになりました。明日更新の記事も楽しみにしています。

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