伊礼彼方さんと大阪大学ミュージカルサークル「みーあキャット」の学生の皆さんの座談会、後半です。「みーあキャット」による2020年11月のミュージカル『Les Miserables』(レ・ミゼラブル)上演は、2021年4月に大学4年生(4回生)となる学生たちが中心でした。就職活動が本格化するこの時期、就活や仕事をめぐる伊礼さんと大学生のやりとりのほか、伊礼さんが24歳でミュージカルと出会ってからこれまで、何を心がけてきたのかなどについても伺った内容を紹介します。(司会:アイデアニュース編集長・橋本正人)
伊礼:皆さんは、この道に進むのかな?
学生:私は、演出とかをすごくしたいとは思ってるんですけど、周りにそういう人がいなさすぎて、どうしたらいいのかも分からないし、そういう道に進みたいのか、それとも趣味でいいからやっていくのか、自分の中でまだはっきり分からないんです。もちろんプロになれるもんならなりたいけれど。自分に自信がなくて、できると思えない。ただ、私は性格的に、ひとつのことをこれって決めたらそれしか頑張れないから、これって思えることを仕事にしたい。今は、私の中でミュージカルが一番大切なので、そういう関係の仕事に就きたいなと思っています。でもどうしたらいいのかなって。ちょうど今、就活の時期なんですけど。
伊礼:就活だけにあんまりとらわれない方がいいと思うよ。
学生:個人的には、あと1年伸ばしてもいいかなと思ってるんですけど。
伊礼:大学を卒業したら就活して会社に入りなさいって、世の中が決めてるだけでしょう。自分の道は自分で考えて、自分で決めた方がいいと思いますよ。後悔しない為にも。就活して、会社に入って経験して、それは無駄にはならないと思うけれど、やりたくもないのに、周りに流されていくほど無駄な時間はないかなって思います。
学生:でも、演出をしたいってなった時に、どの道に進めばいいのか、分からなくて。
伊礼:情報がないの?
学生:情報がなくて、あまりにも周りに人がいなくて。勉強を頑張ってきた人達は、周りにいるじゃないですか。環境として。
伊礼:そうだよね。
学生:専門学校とか芸大とかに入ってるわけではないので。
伊礼:芸大に行こうとは思わなかった?
学生:編入は考えたんですけど、芸大に編入するのがいいのかどうか、分からないんです。芸大に入ったからといってプロになれるのかということが、調べても分からない。
伊礼:今、一般社団法人「未来の会議」というものの立ち上げに関わってるんだけど、そこでいろんな活動しようとしている中で、今、あなたがおっしゃったように、若い子たちがどうすればスタッフさんの道に進めるのか、俳優もそうですけど、どうすれば舞台に携われるのかっていう情報が、あまりにも少ないから、そういうものを作ろうとしているんです。ちょうど今。
学生:ぜひ、お願いします!
※アイデアニュース有料会員限定部分では、就職や仕事をめぐる伊礼さんと大学生のやりとりの続きのほか、伊礼さんが24歳でミュージカルと出会ってからこれまで、何を心がけてきたのかなどについても伺った座談会後半の様子を紹介します。
<有料会員限定部分の小見出し>
■学生:「ミュージカル俳優になるには」で検索したら「20歳を超えたらダメ」って
■伊礼:24歳でミュージカルに出会ってプライドを捨てた。わからないことは全部聞いた
■伊礼:アドバイスは必ず試し、腑に落ちなければ「やっぱり変えますね」と伝える
■伊礼:母親が「チャンスはドアをノックしない。自らドアを開けて一歩踏み出せと」と
<浦井健治×伊礼彼方『スタートライン』&『fullmoon』>
【CD】2021年3月8日発売開始 ¥1,500(税込)2曲+カラオケ
https://ireikanata.com/contents/385399
https://uraiirei.theshop.jp/
<舞台『ダム・ウェイター』>
【東京公演】2021年3月16日(火)~3月28日(日) 下北沢・小劇場楽園
https://www.the-dumbwaiter.com/
<みーあキャット2期生公演『The SOUND of MUSIC』>
【大阪公演】2021年3月27日(土) 豊中すてっぷホール
https://twitter.com/handaimusical/status/1371047265792618498
<ミュージカル『レ・ミゼラブル』2021年公演>
【プレビュー公演】2021年5月21日(金)~5月24日(月) 帝国劇場
【東京公演】2021年5月25日(火)~7月26日(月) 帝国劇場
【全国ツアー公演】2021年8月~10月 福岡・大阪・松本
https://www.tohostage.com/lesmiserables
<みーあキャット3期生新人公演『ロックオペラ モーツァルト』>
【大阪公演】2021年5月23日(日) 池田市立アゼリア小ホール
https://handaimusical.miiiacat.work/posts/12784270
<みーあキャット第6回公演『アラジン』>
【兵庫公演】2021年7月10日(土) なるお文化ホール
https://handaimusical.miiiacat.work/posts/12770398
<関連リンク>
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■学生:「ミュージカル俳優になるには」で検索したら「20歳を超えたらダメ」って
伊礼:俺はたまたまこの世界に入れたけれど、いろんなスタッフに支えられている。彼らがどうやってこの業界に入ったか、インタビューしていくと、高校生の時に演劇部だったっていう人もいれば、全然違う業界で例えば大工さんだった人が、自分の師匠の知り合いが舞台監督をやっていて、そっちを手伝いに行ったら魅了されて、俺そっちに行きました、みたいなことで今舞台監督をやってる人がいたり、元々は絵を描いていたけれども最終的には美術家になったり、いろんな人がいる。
音響さんもそうだね。音楽が好きで音響を始めたけれども、舞台に携わって触れてみたら、音楽よりもそっちの方が魅力的になってと。好きだからその仕事やってるという人ばかりではない。俺もそうで、もともとミュージシャンになりたかったけれども、なれなかった。結果、俳優・役者というものに出会って路線変更して、やってみたらこっちの方が自分に合ってたって気づかされて、という人も多いわけですよね。
なので俺もそれを疑問に思っていて、どうすれば若い子たちが、舞台芸術を未来に繋いでくれるんだろうと考えてきたんだけれど、その悩みを解決できるように頑張ります。すぐにできるか分かんないんだけれど、今そうゆうホームページを構築している段階。僕もそのあたりわかってないし、情報をまとめたいっていうのが正直な感想です。学校ってあるのかな? 演劇学校というような学校。
学生:芸術大学だとしても、どこの芸大を出ればいいのかとかいう情報が全然わからない。
学生:Yahoo 知恵袋とかで「ミュージカル俳優になるには」って調べたら、「20歳を超えたらもうダメです」って書いてあったり。
(会場、爆笑)。
学生:いやぁ、出てくるよね。そういうの。
伊礼:じゃあ協力してもらっていいですか? どういう情報があったら、嬉しいというか、役立つのか、ということを知りたいので。これは別途、僕に取材させてください。
学生:はい。
伊礼:学生じゃないので、何が足りないのかの詳細が分からない。感覚でしか分からないから、学生からの情報が欲しい。そしたらもっとシビアな、もっと便利な、情報サイトが作れるかな。そして、それを皆さんに広げてほしい。今日はお会いできてよかったです。一歩これで先に進めそうです。
(ここから「伊礼さんが経験した印象的なハプニングは?」「稽古をしていて壁にぶつかった時にどうしているか」「歌う時のノドのケアは?」「ミュージカルを日本に定着させるには?」「音域と役の関係」「アンサンブルとメインキャストの関係」などの興味深い質疑応答が続きましたが、ここでは割愛させていただき、司会の橋本が質問した内容への伊礼さんの答えを紹介させていただきます)
■伊礼:24歳でミュージカルに出会ってプライドを捨てた。わからないことは全部聞いた
司会:さきほど、伊礼さんが路上ライブなど音楽活動で苦闘を続けた後、24歳でミュージカルと出会ったことが転機になったと話されていましたが、24歳から何をしたから今の伊礼さんがあるとお考えですか? ミュージカル界で生き残るのも大変だと思いますが、ミュージカルに出会ってから何をしたのが一番良かったと思うのかを教えていただけますか?
伊礼:僕は音楽をやってる時、すごくプライドが高くて、そのくせ努力をしなかった。自分の感性で曲や詞を作ってるから練習は必要なくて、練習しないことがカッコいいと思ってたんです。パンクだロックだって思いながら、ちゃんとやれよと言われても、おうって言いながら右から左にながしていて、気づいたら人がどんどん離れていって、僕は一人になっちゃった。それぐらいわがままというか、自己中だった時期があったんです。
でも、24歳でミュージカル『テニスの王子様』に出会った時、これが人生最後のチャンスだと思って、そういうプライドを全部捨てたんです。プライドを捨てられたのは、全く知らない世界に飛び込んだから。周りには、子どものころからミュージカルをやってきたような人たちが同年代にいっぱいいたから、カッコつけてたら彼らに追いつけない。だから過去の自分を捨てて、音楽活動もやめた。音楽活動をやめることで、過去の自分とプライドを捨てた。
そして、彼らに追いつくために、とにかく素直に、言われたことを全部吸収しようと。わからないことを全部聞こうと。わからないって言うのって、恥ずかしいじゃないですか。でも俺、30過ぎまで「わからないので教えてください」ってよく言ってた。「お前、ガキか?」って言われても、「はい。教えてください」って。「上手ってなんですか?」「下手って何ですか?」みたいなところから「暗転?」「明転って?」。全てに対して「何ですか」「何ですか」って。恥ずかしい20代だったと思うけれど、その素直さが今の自分を支えてくれているんだと思います。
■伊礼:アドバイスは必ず試し、腑に落ちなければ「やっぱり変えますね」と伝える
伊礼:そして、教えてくれた人の意見がたとえ間違っていたとしても、自分では納得できなかったとしても、1回はチャレンジしようって決めたんです。今もそうですけど、演出家でもキャストでもスタッフさんでも、「あそこの役や、あそこのセリフ、こうした方がいいんじゃない?」とアドバイスをもらうことがありますよね。余計なお世話と思う人もいるかもしれないけど、俺はチャンスだって思う。自分に無い引き出しが増えるって思う。だから、全部プラスに考えるようになったんですよね。
そして、いただいたものに対しては、報いる。相手に伝える。1回チャレンジして、それで得られたらラッキーだし、やっぱり腑に落ちなければ「せっかくアドバイスいただいたんですけど。なんだか腑に落ちないので、やっぱりちょっとここ、変えますね」と、ちゃんと筋を通す。
これをずっとやり続けたら、自然と人に信頼されるようになったんです。「あいつは真っすぐだよね」とか、「あいつに言えば大丈夫だよね」って、そういう信頼とか信用が作れるようになったんですね。「あいつ、ちょっとめんどくさいけど、絶対、筋を通すよね」「正論言うよね」と。それが今の僕を作ってるんじゃないかなって思ってます。
■伊礼:母親が「チャンスはドアをノックしない。自らドアを開けて一歩踏み出せと」と
(座談会終了後の帰り間際に、伊礼さんが学生たちにチラッと話した中に印象的な言葉がありましたので、あらためて伺ったその言葉を、最後に紹介します)
伊礼:小さい頃から母親に、もしお前がやりたいことがあるなら、そのチャンスはドアをノックしてやっては来ないよ。やりたいことがあるんだったら自らドアを開けて、一歩踏み出さないと、掴めないよって、言われてきました。チャンスは向こうからはやって来ないよということを伝えたかったんだと思います。母親の出身地のチリの表現で、スペイン語でそういうふうに言われました。