歌手の城田佐和子さんが出演する「ジョイント コンサート『音楽の宝石箱』」と題するクラシックのコンサートが、2016年8月28日に東京目白の同仁キリスト教会で催される。城田佐和子さんは、武蔵野音楽大学声楽家を卒業後、東京二期会のソプラノ正会員として、オペラ、ミュージカル、オペレッタを始め、ジャズ、ゴスペル、ポップス等幅広い音楽活動をしているプロのソプラノ歌手である。その傍ら、音楽企画・音楽教室 Chaa Music の代表として、コンサートの企画・運営や後進の指導にも精力を傾けている。今回は城田佐和子さんご本人にコンサートにかける意気込みや、プログラムに対する思い入れを聞いてみた。
■「声」の芸術をストレートにお届けしようと、クラシック歌手にしかできない名曲を集めました
――“音楽の宝石箱”とはとてもワクワクする題名ですが、どのような内容なのでしょうか?
はい、最近は、クラシックの作品を歌うにとどまらず、ジャズや、映画音楽など名曲のコンサートなどにも力を注いできました。おかげさまでガーシュインの生涯や映画音楽を歌と映像とプロットで綴ったライヴや、プッチーニの生涯をオペラアリアと俳優による台詞で創作した音楽劇はとても好評で、今後も続けたい私の活動の柱に育ってきました。今回は、演出や映像は使わずに「声」の芸術をストレートにお届けしようとクラシック歌手にしかできない珠玉の名曲を集め、タイトルを“音楽の宝石箱”と名付けました。
――目白の同仁キリスト教会でのコンサートですね。教会をコンサート会場の舞台に選ばれたのにはどういう何か理由があるのでしょうか?
このコンサートでご紹介するのは、是非皆様に教会の礼拝堂で聴いていただきたい曲です。プッチーニのオペラ『トスカ』からはこれから始まる悲劇の幕開け部分は教会の礼拝堂がシーンです。歌姫トスカは異常な嫉妬心の持ち主であり、“愛すればこそ”が招く“死”。神に祈りを捧げていたトスカが神を呪って歌うアリア「歌に生き恋に生き」、そしてテノールの名曲「星は光りぬ」、教会の中でスカルピアが歌う「Te Deum」と続きます。
■五十嵐先生の「星は光りぬ」を聴いて、“こんな熱く情熱的な歌を歌う人に弟子入りしたい!”と
――昨年に続き、城田さんの師匠の五十嵐修先生との共演ですが。
五十嵐先生には、私が企画するコンサートの音楽監修・監督をお願いしています。私は五十嵐先生の「星は光りぬ」を聴いて、“こんな熱く情熱的な歌を歌う人に弟子入りしたい!”と、この曲が五十嵐先生に習うきっかけとなった作品でもあります。このコンサートで披露する曲は、五十嵐先生の歌のファンでもある私が聴きたい師匠の作品集とでもいいましょうか。ですから、共演させていただく私自身がとても楽しみにしています。
――なるほど、プロの歌手の師匠とお弟子さんが奏でるオペラのアリア。聴いただけでもレベルが高そうですね。プッチーニの曲以外にはどのような作品を取り上げられますか?
教会といえば随分ポピュラーになりましたカッチーニの「Ave Maria」、フランクの「天使のパン」、教会には関係ありませんがテノールといえばポピュラーなカンツォーネから「O sole mio」、「Mattinata」また、前回、お客様から「面白い曲」も喜んでいただけたので、ロッシーニのオペラ『オテロ』の中の、ロドリーゴのアリアのが使われている「猫の二重唱」を歌います。このロッシーニのオペラ「オテロ」ですが、日本初演はオテロを五十嵐先生が歌い、私は合唱で舞台に立たせていただいた作品でもあります。この曲は、なんと猫の鳴き声、“ミャァウ”だけで歌います。猫ですし、歌う人が猫の物語を音楽に乗せて自由に設定できるので、女性二人や男女、時々、男性同士が歌ったりしますが、今回はどのような二重唱になるか、楽しみにしていてください。
■河野紘子さんは“のだめ”のピアノの手・演奏の姿を担当した「美しすぎるピアニスト」
――また、ピアノの伴奏には、城田さんのコンサートではお馴染みの河野紘子さんが登場しますね。
はい。河野紘子さんとは10年のお付き合いで、彼女の深みのある音楽性と、透明感あふれる繊細な音作りは素晴らしく、私の音楽や歌にもピアノで細かい気配りをしてくださり、とても信頼でき、そして尊敬するピアニストです。彼女はテレビと映画『のだめカンタービレ』で、“のだめ”のピアノの手・演奏の姿、音の吹き替えや演奏の演技指導もするなど、幅広く活動されている方です。また「美しすぎるピアニスト」としても有名です。ヴィジュアルも楽しみにしていてください。
■声が描く絵が見えてくる、「聴いた端から消えていく音」を体感できる贅沢な時間を
――こう見ると本当に贅沢なコンサートですが、城田さんご自身が最もこだわっていることや、これを通じて届けたいメッセージは何でしょうか?
生の声でお届けするコンサートは、その空間に声が響いたり広がっていったりと声が描く絵が見えてくる楽しみを、直接体感できる贅沢な時間です。そしてDVDやCDでは決して味わえない「聴いた端から消えていく音」です。ですから、お時間を合わせて会場に来てくださった方には「記憶に残る音楽、空間、時間」をどのようにお届けするか、「今しかない音」「空間、世界」作りに、これからもこだわって、丁寧に関わっていきたいと思います。
■六本木サテンドールでのライヴなどをもとに、徳島で「3スタイル」コンサート開催へ
――さて、“音楽の宝石箱”が終わると、次はいよいよ地元徳島での“魅惑の3スタイル コンサート WITH LOVE”が待っていますね。
はい。先日も徳島新聞で広告があったように、第一弾として“Jazz映画音楽”をやります。これは、2014年12月6日と2015年6月23日に行った六本木のサテンドールでのライヴ“~ガーシュイン ストーリー~”と“映画&ミュージカル”の東京での公演を基に、更にヴァージョン・アップして、懐かしいふるさとの皆様や、同級生との絆を感じていただけるような選りすぐりのプログラムを組んだ自信作です。徳島でのコンサートなので、いい緊張感で望めそうです。これもどうぞご期待ください。
■徳島出身の文楽の人形遣い「勘緑」氏とコラボ、声の芸術と日本の伝統芸能が巡り会う
――そして、11月26日と27日の連続コンサート。27日の“プッチーニの愛”は、2015年12月25日クリスマスに代々木上原のけやきホールでの音楽劇オペラコンサートの徳島凱旋公演ですが、26日の“AWA no Art”は初めての舞台ですね。見どころ・聴きどころなどを教えていただけますか?
クラシックの演奏もありますが、徳島県出身の文楽の人形遣い「勘緑」氏と、初めてコラボさせていただきます。この「音楽の宝石箱」の出演者と勘緑さんとの豪華な共演です。まだ、細かいプログラムは秘密ですが、候補として、クラシック歌手による「浄瑠璃・阿波の十郎兵衛」そしてエディット・ピアフを予定しています。「声の芸術と日本の伝統芸能」が、ふるさと阿波の徳島で巡り会います。
――最後に、これから実現したい企画や、ご自身の目標についてお聞かせください。
そうですね、きっといるであろう音楽の神様&舞台の神様が「やっていいよ。歌っていいよ。」って言ってくれているうちは、「ありえない」ことを「あるね」に変えて、そして「ジャンル」にこだわらず、でも、「声」と「共演者」「スタッフ」にはこだわって、「命である声がある限り」は「品良く」(※ここは大事)暴れたいと思います。(笑)ただ、私はどうも宣伝が下手なので、たくさんの新しい出会いやメディアの皆様の応援もよろしくお願いいたします。
――これからの城田さんのご活躍にますます目が離せませんね。どうもありがとうございました。
インタビュー 賀川浩一 2016/7
<ジョイント コンサート『音楽の宝石箱』>
【東京公演】 2016年8月28日(日) 同仁キリスト教会 礼拝堂
(東京・有楽町線護国寺駅 JR目白駅)
出演:ソプラノ・城田佐和子、テノール・五十嵐修、ピアノ・河野紘子
開演:16時(開場15時45分) チケット:4500円(全席自由)
演奏曲目:プッチーニ オペラ「トスカ」より 愛の二重唱 Te Deum 歌に生き 恋に生き 星は光りぬ/カッチーニ Ave Maria/フランク 天使のパン/O sole mio ・Mattinata/他
お問い合わせ・チケット予約:Chaa Music
chaamusic☆yahoo.co.jp(☆を@にしてお送りください) FAX:03-6760-5300
<魅惑の3スタイル コンサート 『城田佐和子 with Love』>(徳島公演)
【ジャズ 城田佐和子コンサート with Love】 2016年9月24日(土)
阿波観光ホテル 6,000円
【コンサート ART AWA no Art】 2016年11月26日(土)
鳴門教育大学講堂 27日とセットで一般6,000円、学生4,000円
【オペラ 音楽劇「プッチーニの愛」】 2016年11月27日(日)
大塚ヴェガホール 一般4,500円 学生3,000円
(9月24日と11月26日と11月27日の3日間のセット券は、一般12,000円、学生10,000円)
チケット取扱い:阿波観光ホテル with Love 城田佐和子徳島公演係(088-622-5161)
<関連サイト>
Shirota Sawako オフィシャルHP
城田佐和子プロフィール
城田佐和子 ふわふわブログ
Chaa Music(城田佐和子さんの音楽教室)
五十嵐修 HP
河野紘子 オフィシャルウェブサイト
同仁キリスト教会
阿波観光ホテル
ここからアイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分です。kagawaさんの「インタビューを終えて」を掲載しています。
■歌舞伎言葉で言う“でっけぇ”が増すように、毎回歌のスケールが大きくなる
■作曲家の魂が憑依したかのようなガーシュインの生涯をモチーフにした音楽劇
■“音楽の宝石箱”と、“徳島三部作”(と私が呼ぶ)でさらにスケール・アップを
- 「感情のない人形に思いを込める、深い境地がある」、豊竹英太夫インタビュー(下) 2017年3月14日
- 4月に六代「豊竹呂太夫」を襲名へ、文楽・豊竹英太夫インタビュー(上) 2017年3月13日
- 音楽さむねいる:(19)人形と音楽 (1)人形浄瑠璃の世界 2017年3月11日
- 音楽さむねいる:(11)オペラ、ジャズ、文楽とコラボ… ソプラノ・城田佐和子さんに聞く 2016年8月17日
- 音楽さむねいる:(23)不思議な番号“8” (2)ドボルザークの交響曲第8番 2017年6月8日
- 音楽さむねいる:(22)不思議な番号“8” (1)ベートーヴェンの交響曲第8番 2017年5月30日
- 音楽さむねいる:(21)人形と音楽 (3)ストラヴィンスキーのバレエ『ペトルーシュカ』 2017年3月12日
- 音楽さむねいる:(20)人形と音楽 (2)チャイコフスキーのバレエ『くるみ割り人形』 2017年3月11日
- 音楽さむねいる:(19)人形と音楽 (1)人形浄瑠璃の世界 2017年3月11日
< インタビューを終えて >
とにかくパワフルな人である。二期会会員であり、プロのソプラノ歌手であるにとどまらず、最近はジャズや映画音楽、ポピュラー音楽などにも活躍の場を広げ、今度は地元徳島では文楽人形と共演するという。その名の通り八面六臂の活躍がめざましい。
■歌舞伎言葉で言う“でっけぇ”が増すように、毎回歌のスケールが大きくなる
私は何度も彼女の舞台に足を運んでいるが、毎回歌のスケールが大きくなるのを感じる。オペラやコンサートは勿論そうであるが、六本木のサテンドールや代々木上原のケヤキホールといった、比較的小さなライブハウスやホールの舞台に立つ時も、また、“音楽の宝石箱”のように教会で歌う時も、歌舞伎言葉で言う“でっけぇ”が増しているのである。そのスケール感は、まさに彼女が独自に音楽の地平を切り開いていく軌跡に沿って増していくようだ。
■作曲家の魂が憑依したかのようなガーシュインの生涯をモチーフにした音楽劇
城田さんは、ただ歌を歌っているだけではない。自ずから企画し、スクリプトを書き、共演者を選び、衣装を選び、舞台装置を組み立て、そして語り、歌う。これは、まさに総合芸術の創造者であり、かつプロモーターである。それだけに、一回一回の舞台にかける思い入れがたいそう深く、それは、単に“熱演”という言葉だけでは表すことができない。あたかも、彼女が歌う歌に作曲家の魂が憑依して、聴衆の皮膚の奥にまで沁み込んでくるような、そんな錯覚を覚えるのだ。その良い例が、2014年12月、満席のサテンドールで初めて演じた音楽劇であろう。ガーシュインの生涯をモチーフにしたこのライヴは、名門サテンドール史上3本の指に入る演奏だと、支配人をして言わしめたほどの名演であった。
彼女の演奏会には、聴衆を楽しませ、かつ驚かせる“仕掛けが”毎回盛り込まれており、芸術としてのみならず、エンターテインメントとしての楽しさが満載である。音楽学校の主宰者でもあり、後進の指導にも全霊を傾けている彼女の、一体どこから、そのようなアイデアとパワーが湧いてくるのであろうか、毎回感心してしまうことしきりなのだ。
■“音楽の宝石箱”と、“徳島三部作”(と私が呼ぶ)でさらにスケール・アップを
“音楽の宝石箱”では、城田さんは師匠の五十嵐修氏と共に、クラシックを中心とした名曲を歌い上げるという。まさに、これぞ正当な歌というものを聞かせてもらえる、実に楽しみな企画である。その後の、“徳島三部作”(と私が呼ぶ)も、これまた実に意欲的なコンサートである。今から既に、ますますスケール・アップした彼女の歌が聞こえてくるようだ。これからも、城田佐和子さんの活動に注目し、成長を見守ってていきたい。