いろんなところで、「おかん」というバンドのことを耳にしていました。大手事務所やレーベルに所属していない、まだ公式な音源も無い大阪のロックバンド「おかん」が、2013年大阪城ホールで単独公演を成功させたというニュースや、「絶対、聴いて、とにかく聴いて」という友人・知人からの数々のお勧めの言葉。そして、「あなたに引き合わせたいから来て!」というランチのお誘いをいただいて、2016年7月7日七夕の日、こんなにたくさんの人を魅了している人に、私もとうとう出会うことができました。ロックバンド「おかん」のギタリスト、YOUさん、めちゃめちゃ素敵な人でした。
待ち合わせは光あふれるレストラン。YOUさんは終始にこやかで、おだやかに、でもしっかりと思いを伝えてくれる好青年でした。
――「おかん」ってすごく印象的なバンド名だと思うのですけど、やっぱりお母さんを思って付けたのですか?
- 僕らの音楽を聴いて下さる皆さんとの間に壁を作りたくなくて、家のダイニングで自分のお母さんにいろいろ相談するような感覚で音楽を共有してもらったり、ライブを楽しんでもらいたいという想いで親しみを込めて関西で母親を呼ぶ「おかん」という名前をつけました。この名前には僕も思い入れがあって、僕は、生まれつきの障害があったから、お母さんが一番しあわせな日、僕が生まれた日にお母さんをいっぱい泣かせてしまったんです。僕自身も自分の「口唇口蓋裂」という障害のことで悩んで、ひきこもったこともありました。いじめられたり笑われたりしたこともあったけど、いつもどんなときも両親が側にいて、愛してくれました。そんな親への感謝の気持ちをいつも抱いています。
先天的な障害で、上顎が割れて鼻が曲がり、滑舌が悪かったというYOUさんですが、整形手術を経た今は、そう言われなければ外見も、お話しぶりにも、そういう障害があったことは分かりません。でも、YOUさんは同じ障害をもって生まれた子どもたちのことをいつも思っているのです。
- 僕がステージに立つ姿、全力で音楽を楽しみ、笑っている姿を通して、口蓋裂の子どもたちに夢や希望を与えたいのです。僕が親に教えてもらったように、今悩んだり、苦しんだりしている子の心を明るくできたら、それこそが、口蓋裂をもって生まれた僕の役割なんだと思います。障害のある子どもたちの力になりたいし、そういう子どもたちのところで歌いたいと思っています。
「おかん」は、ヴォーカルと三線 のDAI さん、ギター のYOU さん、ベース の本東地隆将 さん、ドラムの成さんの4名からなるロックバンドです。中学の仲間だったDAIさん、YOUさん、本東地さんを中心に結成し、2004年に成さんが加わって現在のメンバーになりました。14歳の時に抱いた夢が「大阪城ホールに立ちたい」というもの。バンド結成から17年の2013年4月8日、その夢を叶えて大阪城ホールでの単独公演を実現させました。それぞれの人生の中で味わった苦しみや悲しみを音楽に昇華させ、生きる喜びに変えてきたメンバーのリアルなメッセージが共感を呼んでいるバンドです。2016年はバンド結成20年の節目の年にあたります。
――ホームページを拝見しました。「おかん」は海外での大きなコンサート出演や、学校や様々なイベントでのライブ、ラジオ出演、ボランティアなどびっくりするくらいに、いろいろ活動されていますよね。その中でも今、一番みなさんに知ってほしいことは何ですか?
- 2016年4月15日、熊本を中心とした大きな地震の翌日に、「おかん」は台湾にいたんです。通算8回目の台湾ツアーでした。そのとき、ボーカルのDAIの呼びかけで、九州が地震で大変な最中、台湾にいる僕たちしか出来ないことがあるのではないかと、急きょ「One Asia One Family for Kyusyu」というプロジェクトが結成されたんです。
2016年4月17日、台中市内のライブハウスで、台湾のロックバンド「The Tonic」、「BIKE」、「Suck The Air」、日本の「おかん」、熊本出身の日本人がふたり参加している北京のバンド、沖縄のシンガーなど、海を越え、国境を越え、様々な地域のミュージシャンが、復興への気持ちを楽曲に込めてレコーディングに参加。台中市内の道行く人々からも応援メッセージをもらい、中国大陸、香港、マカオからも「熊本加油!(熊本がんばって!)」の応援メッセージが届いて、本当にたくさんの人が心を寄せ合って曲が生まれました。
- 今ここからできることを
- 今あなたにできることを
- 今ここからできることを
- 今私に出来る愛を
- (ある日朝起きて)
- (テレビをつけてニュースで知った)
- (国は違ったとしても)
- (その恐ろしさはよく分かるよ)
- (私の心の中にある愛を贈りたい)
- (遠いあの国まで贈りたい)
- (音楽で心が温かくなる)
タイトルは、「No Fear -今ここから- No fear – 佇遮做會得e代誌- No fear – 就從現在開始- / One Asia One Family for Kyushu」。台日中韓のミュージシャンが集まって、日本語、台湾語、北京語の3言語で歌われる8分13秒という堂々たる大作は、九州熊本への応援のメッセージがつまった曲です。例えるならアジア版「We are the World」、たくさんの被災地の方々に聴いてもらいたいとYOUさんは言います。そして、この曲がアジアの架け橋になることを信じていると。
関連サイト:ロックバンド「おかん」公式ホームページ→http://www.rockband-okan.com/
小さいお子さんから、年配の方、障害のあるなしに関わらず、みんなで、家族で聴いてほしい。そう願っているロックバンド「おかん」は、ライブのときにも字幕を出したり、誘導を工夫したりしているのだそうです。ボランティア活動にも熱心な彼らのこれからの活動について、アイデアニュースでも引き続きお伝えする予定です。どうぞお楽しみに。
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