「壊れてもいい、という責任感」、『狂人なおもて往生をとぐ~昔、僕たちは愛した~』木村達成(上) | アイデアニュース

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「壊れてもいい、という責任感」、『狂人なおもて往生をとぐ~昔、僕たちは愛した~』木村達成(上)

筆者: 達花和月 更新日: 2025年8月28日

日本演劇界を代表する劇作家、清水邦夫さんの伝説的戯曲『狂人なおもて往生をとぐ~昔、僕たちは愛した~』が、2025年10月11日(土)から10月18日(土)まで、東京・IMM THEATERで上演されます。演出を務めるのは、2022年に上演された『加担者』と、安部公房作の『幽霊はここにいる』の演出で第30回読売演劇大賞優秀演出家賞を受賞するなど、注目を集める演出家・稲葉賀恵さんです。出演は、娼家の女主人のヒモで、逃れたくてもその優しさから逃れられずにいる主人公「出」には木村達成さん、娼婦で家族ごっこでは“長女”を演じる若い女「愛子」に岡本玲さん、愛子の客で“次男”を演じる若い男「敬二」に酒井大成さん、隠された秘密を暴くきっかけになる敬二の婚約者「めぐみ」に橘花梨さん、娼家の女主人で“母”を演じる「はな」に伊勢志摩さん、大学教授と名乗り“父”を演じる初老の男「善一郎」には堀部圭亮さんです。

アイデアニュースでは、「出」役の木村達成さんにインタビューしました。インタビューは上下に分けてお届けします。無料部分では合同取材の内容を、有料部分ではアイデアニュース独自取材の内容を紹介します。「上」の無料部分では、本作への出演の決め手となった思いや公式コメントの言葉、主人公「出」の魅力などについてお話ししてくださった内容を紹介します。有料部分では、「出」のバックボーンや、役を演じる上での木村さんご自身の覚悟などについてお話ししてくださった内容を紹介します。

「下」の無料部分では、「上」の続きとして、「出」と家族の関係についてお話ししてくださった内容など、合同取材の後半の内容を紹介します。有料部分では、木村さんが台本を読まれるときの「黙読と音読」についてのお話とお客さまへのメッセージなど、独自取材後半の内容を紹介します。

木村達成さん=撮影・伊藤華織
木村達成さん=撮影・伊藤華織

(※7月に取材しました。合同取材:前編)

――この作品に出演しようと思われた決め手はどのようなところでしょうか?

約1年ぶりの舞台作品となり、どのような作品で今年を彩ろうと考えていたときに、本作を読ませていただきました。やはり素晴らしく面白くて、僕がこれから「人生」という名のパズルを埋めつつ、人間・役者「木村達成」を形成していく中で「絶対に必要な1ピース」だと感じました。これから挑戦していくこと全てにおいて、「負けない何か」を得られる作品だと思ったんです。

――近年、じっくり向き合う作品にご出演されている印象があります。演劇、舞台に対する思いに変化があったのでしょうか?

もちろん変わっています。歳を追うごと、いろいろな作品に取り組むたびに、自分の価値観というものは、また一から変わっていくものだと思うんです。20代の頃は、がむしゃらに、捨て身の姿勢で舞台作品に取り組んでいました。今は様々なことに挑戦させていただく機会も増え、いろいろなことを自分自身の中に蓄えている最中です。そうやって蓄えたものが「舞台」や「映像」の作品で、切り札として使える瞬間があります。身につけなければいけないもの、出会う必要がある作品、キャラクター、役柄、人…もちろんご縁もありますが、そういうものは自分で選べるし、その場所に自分で向かうことができる。そういうことを大切にしていきたいと思っています。

――脚本を最初に読まれたときの、率直な感想を教えてください。

あまり難しいことは考えずに「面白い」と思いました。何回も読むにつれて、印象がすごく変わっていく作品だと思いますが、普通にフラットに見たときに面白くて。演出家の稲葉賀恵さんを含めて、7人それぞれの読み方ができて、いろいろな考え方をぶつけられる作品だと感じました。家族の話であるがゆえに、1人だけで突っ走るわけにもいかないので、共同作業というか、皆さんと作っていける作品だと思っています。

――公式ページのコメントに「今回は自分が何度ぶっ壊れるか、楽しみです」とありました。演じ甲斐のある役柄ということでしょうか?

いつも「舞台」に取り組むと、やはりとんでもなく高い壁がバーンと立ちはだかる感じがあります。「自分ではない人間」を演じるので、ある程度自分をその役に洗脳していくと、普段自分だったらこうするという「いつも通りのこと」ができなくなる瞬間があるんです。例えば、「食事が面倒くさくなる」「全然寝られなくなる」「人と話すのも嫌で車の中で1人でいたい」などと、いろいろな感情に襲われることがありますが、僕の「ぶっ壊れる」という表現は、「舞台に立ちたくない」ということではなく、それすらも楽しみたいという意味で使っています。

――今回、演じられる主人公「出(いずる)」の役どころと人間的な魅力を教えてください。

今から作り上げようとしているので、まだあまり深くは言えませんが、一家の長男であり、学生運動に夢をみていたけれど、志敗れて自分の気持ちとかけ離れた瞬間に、意識が乖離して精神的にちょっと病んでしまう。それを家族のみんなが支え合うような形で、家族ゲームが行われます。

「出」は、すごくお洒落な言葉の使い方をしていますが、頭のいい人の言葉の使い方なんです。彼にしっかりとしたバックボーンがあってこそだと思うので、そういうところは意識しながら演じたいと思います。

僕が人間的に惹かれるポイントは「完璧ではない」ところなんです。(「出」の場合は)疾患があるとか、精神を侵されて「精神的に病んでいる」という表現になるんですが、そこを「完璧ではない」と言ってしまうと、ちょっと語弊があるのかもしれないですけど、全てが充実している人より、何か一つが枯渇していたり、足りない部分がある人の方が、僕は魅力的に感じてしまうので、そういう点で「出」は、かなり僕の中では、高級食材です(笑)。「美味しくいただけるように、頑張らなきゃ」という感じです。

――公式ページのコメントで「自分と向き合う素晴らしいチャンスをいただきました」とありました。「出」のどういう部分が、ご自分と向き合うきっかけになったのでしょうか?

「出」は多分、周りには見せないだけで、すごく頑張って自分と向き合っていると思うんです。脚本に「泡を吹いて倒れる。黄色い泡が頭の中に溢れて」という表現があるんですけど、それは、そうなるまでに、彼の中で「葛藤」があるからなんです。

「出」のそういう部分が重なったというわけではないですが、僕自身が最近「自分」からちょっと、目を背けていたなと。「こうであったらいい」という、自分の理想像みたいなものを、すごく頭に植えつけすぎてしまっていて、やりたくないこととか、嫌なことからかなり目を背けて逃げていたというか…。久しぶりに舞台に立つと言っても1年ぶりなのですが、「ここからどうやって、舞台の気持ちにしていこう」とか、「まだ大丈夫、まだ台本読まなくていい、まだ覚えなくていい」と、先延ばしにして逃げたりとか。たぶん、皆さんそれぞれに、近しいことはあると思いますが、それらを真っ向から受け入れるために、自分に発破をかけようと思って出た言葉です(笑)。

――普段の役作りと「出」の役作りに違うところはありますか?

普段と同じです。役作りのときは、なんとなく頭の中に役の色というか、役のポイントになる部分があって、とりあえず「役」と「木村達成」の一番近いところから、紐を結び合わせていくような作業をしているんです。だから今回「出」という役に関しては、もちろん精神疾患などの、いろいろな要素がありますから、自分がその役に取り組むにあたって、それを知らない僕の周りのみんなが「すごく変わってるね」とか、「達成大丈夫?」って不安になってしまうくらい、マジでやりたいと思っています。周りの友達や一緒にいる人たちに「達成ちょっと変だよね、どうした?」と思われるような感じを、わざと自分から作っていくことで、自分を洗脳していくというか…。作品が開幕した後に「実は、こういう役をやっていたんだよね」と話すと「そうだったんだ!」と納得されることが多いので、今回もそうなるかな?と。「出」のように、面白いキーワード、面白いセンテンスを話せるような人間になれたら、今回は合格点かなと思っています。

※アイデアニュース有料会員限定部分には、「出」のバックボーンや、役を演じる上での木村さんご自身の覚悟などについてお話ししてくださったインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。29日掲載予定のインタビュー「下」の無料部分では、「上」の続きとして、「出」と家族の関係についてお話ししてくださった内容など、合同取材の後半の内容を紹介します。有料部分では、木村さんが台本を読まれるときの「黙読と音読」についてのお話とお客さまへのメッセージなど、独自取材後半の全文と写真を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)

■「出」が淡々と話す言葉を、稲葉さんは「インテリジェンス」と。そこにハッとした

■「出」は、だいぶ両親に愛されていて、父も母も愛情深い人なんだろうと思った

■プライド的に、「全然、役に染まっていないし」と思いたかった。でも気づいたら…

■作品に取り組むということは、「パンドラの箱」を開けねばならないことでもある

<『狂人なおもて往生をとぐ~昔、僕達は愛した~』>
【東京公演】2025年10月11日(土)〜10月18日(土) IMM THEATER
公式サイト
https://www.kyoujin2025.com

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木村達成さん=撮影・伊藤華織
木村達成さん=撮影・伊藤華織

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<筆者プロフィール>達花和月(たちばな・かずき) 遠方の友人を誘って観たお芝居との出会いをきっかけとして演劇沼の住人に。ミュージカルからストレートプレイ、狂言ほか、さまざまな作品を観劇するうち、不思議なご縁でライターに。自らの仕事を語る舞台関係者の“熱”に、ワクワクドキドキを感じる日々。 ⇒達花和月さんの記事一覧はこちら

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