『Gift of Classics & Musicals〜 Eternal Music 〜』が2025年11月9日(日)に、東京・ヒューリックホールで上演されます。上原理生さん、小野田龍之介さん、木内健人さん、水 夏希さん、LENさんが出演されます。
アイデアニュースでは、小野田さんと木内さんにインタビューしました。インタビューは上下に分けてお届けします。「上」の前半では、小野田さんとLENさんには、韓国ミュージカル『パルレ』のソロンゴ役という共通点があるというお話から、小野田さんにとって『パルレ』はひとつの転換期になったというお話を伺いました。木内さんは、『ファンレター』のイ・ユン役に、『SMOKE』の超・海・紅を想起してたどり着いたというお話をしてくださいました。後半では、韓国で生み出された『メイビー、ハッピーエンディング』がトニー賞を受賞したというお話から、日本と韓国におけるオリジナルミュージカルのあり方、制作の方向性などについて、お二人それぞれの思いをお話ししてくださった内容を紹介します。
「下」の前半では、『レ・ミゼラブル』のアンジョルラスを共に演じられた経験を経て、ジャベールとアンジョルラスとして共演した際のお話、お二人の出会いについてのお話などを紹介します。後半では、今回のコンサートで取り上げる候補作として取材時点で名前が挙がっている『モーツァルト!』『エリザベート』『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』4作品についてのお話と、お客さまへのメッセージを紹介します。

――今回のコンサートにこのキャストの皆さんでご出演されるにあたって、いかがですか?
木内:僕はついこの間までやっていた役の先輩ふたりがいらっしゃるので怖いです……。
小野田:皆さんあまりご存知ないと思うのですが、僕はミュージカル界きってのハートフルな男なので。
木内:ハハハ!
小野田:やっぱりそのハートフルな部分をこのメンバーの中で出していきたいと思っています。この5人の中で、そういうのが出せる存在になれたらいいなと(ニッコリ)。
木内:じゃあ、そういうことにしておこう!
――「ハートフル」は「癒し」みたいな意味ですか?
小野田:「ミュージカル界の癒し」と言われていますから。
木内:そうね、誰が言っているの、それは?(笑)
小野田:巷で(ニッコリ)。
木内:深くは聞かないでおこう。
小野田:真面目に話すと、楽しみです。クラシックをされている俳優さんもいれば、ミュージカルがメインの方もいらっしゃいますよね。ミュージカル、クラシックとひとくくりで言っても、アプローチがまったく違う5人がそろっていると思います。音楽もピアノとパーカッションのみという構成だと聞きましたので、非常にシンプルな空間の中で音楽を聴かせるコンサートで、何度も聴いたことのある楽曲でも、その曲の繊細な部分や、心に寄り添う部分を感じていただけたらいいなと思います。
――シンプルな音楽で歌を聞かせるということについては、木内さんはいかがでしょうか。
木内:あまりそういう機会はないですね。ピアノ1本で歌うと、「歌の上手い人はよく聴こえるけど、そうじゃないとバレるよ」というのはよく聞きますので、そういう意味ではこのキャストで、僕はそれについていけるのかというのもあります。でもせっかく出演するからには、楽しみたいです。(上原)理生さんもそうですが、龍ちゃん(小野田さん)もついこの間まで一緒でしたし、水さんも共演したことがあります。LENさんは初めてですが、映像を見せていただいたら、すごく上手いんですよね。
小野田:僕はLENさんと共演したことはないですが、同じ演目で関わっていたことがあります。『パルレ』という韓国ミュージカルの初演に出演していらっしゃるんです。日本でも何度か上演されていて、僕は再演でソロンゴという同じ役でした。
なので、関わったことはありませんが、彼のことは拝見したこともありますし、面白い形で今回携わることができるのではと思っています。『パルレ』という作品は、ミュージカルの中でも非常に異質な作品ではありますが、とても社会性のある作品というか、なかなかの作品なんです。
ですから、カンパニーの絆が結構強いチームで、一緒には出演していませんが、ひとつのミュージカルの役を通じて、勝手にファミリーな気持ちなんです。向こうからしたら「何だお前」と思われるかもしれませんが(笑)、僕は勝手にそう思っています。
――では、共通言語があるわけですね。
小野田:ありますね。
木内:いいなぁ。
小野田:韓国の大学路(テハンノ)の小劇場でやっているミュージカルで、確か今でもやっているのかな。
――ご出演されたのは結構前ですよね。
小野田:そうですね。
――『パルレ』の日本初演は2011年ですね。
小野田:僕が出演した再演は、2012年ですね。韓国では超ロングランミュージカルです。今、韓国ミュージカルでトップを務める俳優たちで、『パルレ』でデビューした人が結構いらっしゃって、ホン・グァンホさんとかもそうです。いいミュージカルですし、YouTubeでも何かしら観られると思いますので、ぜひ観てみてください。
木内:『パルレ』?
小野田:「洗濯」という意味なんですよ。それこそピアノ1本とか、めちゃくちゃ合う作品なんですよ。『パルレ』の演出家の方は、他にはストレートプレイしか作ってないんですよ。唯一のミュージカルですね。
――そうなんですか?
小野田:はい。心を追い込む稽古スタイルでした。僕もそうなんですけど、みんな曲がかかった瞬間に涙が溢れるくらいのマインドにさせられるんです。だから、千穐楽が終わってからも、しばらく怖くて曲を聴けなかったです。めちゃくちゃ怖くて震えます。
――そこまで言われると、余計に歌ってほしくなりますね。
小野田:雨の中のシーンがあるんですが、僕とLENさんがやっていた役は、モンゴルから出稼ぎ労働者として韓国に来て、不法滞在をしてしまっているけれども、純粋な男の子の役なんですね。不法滞在をしてしまっているということで、工場からも邪険にされていて、お金がもらえなくなったり、差別的なものもちょっとあったり。
雨の中をひとりで歩きながらバスに乗るというシーンがあるんです。そのシーンの稽古があった日は、他のシーンの稽古もしていたのですが、ちょうど雨の日だったんです。稽古中、急に演出家に「今から傘を差さないで、稽古場の周りを歩いてきてください。今からこのシーンをやりますので」と言われて。「はい」と。それで、「もし電話ボックスがあったら、電話をしてきてください。お友達でも恋人でも家族でも、誰でもいいので、いつもありがとう、くらいの話をしてきてください」と。「はい……」と実行しましたが、寒くて。
――電話ボックス、あったんですね。
小野田:時代的にまだありましたね。びちゃびちゃのままで稽古場に帰ったら、そのシーンの曲が流れ出して。そのびちゃびちゃの人を見る共演者の目がリアルなんですよね。みんな傘を差しているのに、ひとりだけびちゃびちゃで。そういういろんな疑似体験をしました。
木内:へぇ! 面白いね。
――たくさんの作品に携わってこられた中でも、思い出の作品なんですね。
小野田:ひとつの転換期でしたね。「声を出さなくていい」という。ミュージカルって「歌わなきゃ」と思っていたマインドそのものが変わったんです。「今、どこで歌っていますか?」と聞かれたので、「家のベランダです」と言ったら、「もし、自分がマンションの下を歩いていて、家のベランダでそんな大きな声で歌っている人がいたら、びっくりしません?」と言われて、「しますね」と。「自分の部屋で寝転がって、鼻歌歌っているくらいの気持ちで」と言われて、本当に鼻歌歌っているくらいの気持ちで歌ったら、「それで」って。
――木内さんは、そのくらい記憶に刻まれている作品はありますか?
木内:去年の8月に出演した『ファンレター』です。僕はイ・ユンという役だったのですが、そのモデルとなったイ・サンという詩人がいて、日本でイ・サンというと『SMOKE』じゃないですか。『SMOKE』は、3人の登場人物がいて、その3人がキム・ヘギョンの頭の中を描いているような構成だと僕は解釈している不条理劇で、イ・サン(本名キム・ヘギョン)は最後しか出てこないんです。『ファンレター』の台本を読んでいると、イ・ユンの発言に合理性がないんですよ。演出の栗山民也さんからも、「見つけて」としか言われなかったんです。
――その合理性を、ご自身で見つけるんですか?
木内:「合理性があるのかないのか。あるんだったら、どういう合理性があるのか」というところから、「健人なりに見つけてごらんよ」と。多分、栗山さんの中には答えがあるんですけど。僕も頑張っていろいろやっていたんですが、そこに対して、栗山さんからのダメ出しは、特になかったんです。最後のほう、海宝直人くんが演じたチョン・セフン役と監獄で対峙する場面で、最後に7行くらいの長い台詞があるんです。
『SMOKE』の物語の中には不条理劇な部分がたくさんあるんです。「ここの整合性を取るとここが整合つかないよね、ここの整合性を取るとここがつじつまが合わないよね」、というのがたくさんあるんですが、そこを集約したみたいな7行だなと。『SMOKE』に登場する3人の、この台詞が海(ヘ)で紅(ホン)で超(チョ)なんだと考えると、僕の中ではすべての整合性が取れたんです。
通し稽古3回目くらいの時に、『ファンレター』の7行をそう思って言った時に、初めて栗山さんからOKが出たんですよ。だから、僕はそれがすごく思い出に残っています。『SMOKE』をやっていなかったらたどり着けなかっただろうと思います。
――作品がつながるのは、面白いですね。
木内:やっぱり同じキャラクターですからね。韓国では、「イ・サン、キム・ヘギョンは、精神のバランスを失っているというか、正気でない天才というようなイメージなんです。史実としても書かれていますし。そこを表現するとなると、3人くらいの人が頭の中にいないと、成り立たないんです。それくらい思考の立つ人でしたし、それぐらい人に対して3人格くらいで接していた人だったんですね。すごく面白かったです。
小野田:ずっと韓国ミュージカルの話しかしていませんね。
※アイデアニュース有料会員限定部分には、韓国で生み出された『メイビー、ハッピーエンディング』がトニー賞を受賞したというお話から、日本と韓国におけるオリジナルミュージカルのあり方、制作の方向性などについて、お二人それぞれの思いをお話ししてくださった内容などインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。インタビュー「下」の前半では、『レ・ミゼラブル』のアンジョルラスを共に演じられた経験を経て、ジャベールとアンジョルラスとして共演した際のお話、お二人の出会いについてのお話などを紹介します。後半では、今回のコンサートで取り上げる候補作として取材時点で名前が挙がっている『モーツァルト!』『エリザベート』『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』4作品についてのお話やお客さまへのメッセージなどインタビューの後半の全文と写真を掲載します。
<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)
■木内:韓国人なら一回でわかる『ファンレター』 小野田:それは文化だよね?
■小野田:ブロードウェイ用に作り直されている『メイビー、ハッピーエンディング』
■木内:日本のペースでやればいいんじゃないかとも思う。元々日本の演劇の発端はアングラ
■小野田:「日本」が魅力的なものではある 木内:すごい話になっちゃった(笑)
<Gift of Classics & Musicals 〜 Eternal Music 〜>
【東京公演】2025年11月9日(日) ヒューリックホール東京
公式サイト
http://www.jpma-jazz.or.jp/concert/2511/251109_1.html
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日本でもメイビー〜が上演されているのはあまり知られていないのでしょうか。そもそも版が違うから別ものってことでしょうか?とても良かったんですよ…