笑社会保険労務士事務所の清水恵美子です。兵庫県川西市で介護事業所支援専門に活動している社会保険労務士です。前回、在宅介護の場合の、介護保険ってどんな仕組みでどんな風に使えるのかについてとその際に必要となるサービスを場面ごとに挙げ、「1、退院後、自宅へ帰る場面」の福祉用具の基本的な利用までをお話ししました。(⇒前回記事)今回は、引き続き福祉用具の購入、住宅改修についてと「2、自宅に帰って生活する場面」を見ていきましょう。
■福祉用具の購入と住宅改修
母が怪我をした後、これが介護保険の対象ならいいのにと思ったものがいくつかありました。一つは杖、もう一つはシルバーカー、それと痛みを和らげるためのクッションの購入です。今までは必要でなかったが、体の機能が損なわれたために必要となったものです。しかし、残念ながらこれらの購入は介護保険の適用対象にはなりませんでした。杖に関しては、松葉づえ等の一定の機能を持ったものはレンタルの対象品目となっていますがそれ以外は介護保険を使えません。
福祉用具の購入で介護保険の対象となるものは、以下のようになっています。
給付要件
• 介護保険福祉用具販売事業所として指定された事業所から購入した場合
• 要支援者・要介護者の日常生活の自立を助けるために必要な福祉用具であること
• 給付対象である購入種目であること
対象である購入種目
• 腰掛便座・自動排泄処理装置交換可能部品・入浴補助用具・簡易浴槽・移動用リフトのつり具部分
利用限度額
• 1人あたり1年度間で10万円
• 10万円を超えた額については全額自己負担となります。
(1割(※)は自己負担となるため給付額は最高9万円まで。)
※一定以上所得がある方は利用者負担額が2割となるため、2割となる方の給付額は最高8万円まで。
我が家では浴槽内に沈めて浴槽の高さを調整する浴槽台と、立ち上げりやすくするために便座の高さを調整する補高便座の購入を利用しよう思いましたが、二つ合わせると10万円を超えてしまうので、浴槽台は見送ることにして、手すりの取り付け工事で対応しました。福祉用具の購入と住宅改修工事は併給が可能です。また、この上限は年度ごとになりますので、翌年度まで待てる物は購入を待つという選択肢もあります。
■住宅改修費
給付要件
• 要支援・要介護認定を受けている方が居住する住宅(=住民票のある住所地)であること
• 改修内容が支給対象となる内容であること
対象となる改修
• 手すりの取り付け、段差の解消、滑り防止等の床材変更、扉の取替え、便器の取替え
利用限度額
• 居住する住宅に対して1人あたり20万円
• 20万円を超えた額については全額自己負担。
(1割(※)は自己負担となるため給付額は最高18万円まで。)
※一定以上所得がある方は利用者負担額が2割となるため、2割となる方の給付額は最高16万円まで。
※改修前に申請が必ず必要です。申請の承認前に行った工事は支給対象になりませんのでご注意ください。
住宅改修については年度ごとの上限ではなく、一人一つの住居について定められていますので、転居の際は新しい住居で改めて20万円までが支給対象となります。また、「介護の必要な程度」が6段階に分けられており、その段階が3段階以上上がった場合にも利用額がリセットされます。
この二つを活用することにより、最大3万円(1割負担の場合)で居住の環境を整えることができます。
2、自宅に帰って生活する場面
■訪問介護の利用
福祉用具などを使っても、自分でできないことがある場合、訪問介護を利用することができます。
訪問介護では、国が指定する研修を修了した訪問介護員の方が家を訪問し、食事や排せつ、入浴の介助、また、調理や掃除などを利用される方と一緒に行い、自分でできることが増えるように支援してくれます。要支援でも訪問介護は利用できますが、料金は1カ月単位で、週に利用する回数によって金額が変わります。
要介護になると、サービスの種類が2つに分かれます。
・入浴や着替え、排泄の援助など体に触れるサービス(身体の介護)
・洗濯や掃除などの家事の援助のサービス(生活の援助)
利用の料金は、時間単位になり、最小20分から利用することができます。
(参考)
■デイサービスの利用
身体の機能に制限ができると活動範囲が狭まり、家族以外の方との交流がなくなってしまったりします。そんな時はデイサービスの利用をお勧めします。最初は行くことを嫌がられる方も多いですが、家族にとっては自分を取り戻す時間ができ、ご本人も社会性を保つことができるので、嫌がるからやめておくということではなく、事業所の方やケアマネさんと相談しながら根気よく勧めてみてください。さすがにプロなので、上手に対応してくださって、そのうち行くことが楽しみになるケースも多いです。
(参考)
※料金については、地域による単位単価の違いや、事業所の体制による違いなどで変わります。
■ショートステイについて
ここまでは、比較的介護度が軽い方の在宅介護を念頭にお話ししてきました。
次にお話しする「ショートステイ」はこれまで出てきた介護サービスとは少し性質を異にします。前述の介護サービスは基本的に利用者本人の自立を促すために利用されるものにですが、ショートステイは介護者の負担軽減を図り、長引く介護を支える仕組みです。在宅介護が長引き、介護度も増していくと家族の負担が深刻になってきます。いつぞやのスーパーサラリーマンのように、24時間戦えますかという状態が、365日続くようになります。それでも、家で最期を迎えさせてあげたい、受け入れてくれる施設がないなどの理由で在宅介護を続けるケースも多くあります。
そんな時に活用できるのが「ショートステイ」です。短期的に施設に入所することで、家族が自分の時間を持つことができ、家族の疲弊を防ぎます。介護者が倒れてしまっては元も子もありません。
ショートステイは人員の配置や施設設備の基準が決められている一方、一時利用に対応するものであるため経営的に安定収入が見込みにくく、他の特養や老健の人員や設備と兼用することでリスクの軽減を図っており、入所設備を持った施設がショートステイ用の部屋を用意し対応していることが一般的です。ショートステイは、介護保険の分類でいうと大きく2種類に分けられます。
1、短期入所生活介護(特別養護老人ホームが行うもの)
2、短期入所療養介護(老人保健施設が行うもの)
元々、特別養護老人ホーム(特養)は終の棲家を目的とし、老人保健施設(老健)は病院からうちへ戻るための機能回復訓練をすることを目的としていますので、特養では基本的に医療的サービスは提供されません。ご家族の状態によって、どちらが適切なのかを考えて利用しましょう。ショートステイを連続して利用できるのは30日間です。それを超えた部分は自己負担になりますので注意が必要です。
特養や老健が行っていることが一般的であると書きましたが、最近ではショートステイのニーズの高まりを受けて、ショートステイ専門の施設が登場しているようです。施設利用のサービスでは、宿泊費、食費等は自費になるため、介護保険制度の規制を受けず自由に金額設定することができます。ショートステイ専門の施設では、高級な設備や食事を提供することで宿泊費、食費の値段を上げて収支の安定を図っているようで、総合的に値段は高い傾向にあります。それでも一時的な利用であれば選択肢に入る場合もあると思いますので、今後の動向を注目しましょう。
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