中上健次のロードノベル『日輪の翼』を題材に、移動舞台車(ステージトレーラー)で全国を旅する話題作『日輪の翼』が9月14日~17日、京都で上演される。本作の演出・美術を手がける、演出家で現代美術家のやなぎみわさんに単独インタビューを行った。
舞台装置は、トレーラーの荷台が舞台になるステージカー。やなぎさん自らがデザインし、台湾で製造、輸入した美術作品だ。そんな独創的な舞台トレーラーで繰り広げる野外劇『日輪の翼』は、演劇でありながら、歌、サーカス、ポールダンス、タップダンス、空中パフォーマンスなどを織り交ぜたスペクタクルなステージ。2016年6月に横浜で初演し、新宮(和歌山)、高松(香川)、大阪を巡演し、原作小説さながらに旅を続けている。それは、終わりなき旅だという。
5カ所目となる京都の公演地は、京都駅南東部の東九条エリア(河原町十条)。場所にふさわしい形で上演するために、やなぎさんは土地の歴史について、そこに暮らす人々に話を聞き、リサーチを行った。そして、この地の記憶を物語に取り込んで、京都バージョンとして脚本を書き変えた(脚本・山﨑なし)。京都公演には韓国からプンムルノリ(農楽)奏者を招へいし、またプンムルノリ演奏で地域の祭りを行っている東九条マダンの皆さんとも共演する。
2017年9月、再開発で変わりゆくこの地で、日没とともに野外劇が始まる。今この時に、ここでしか味わえない祝祭感と共に。
■ビジュアル的に格好いい 阪神高速道路「河原町十条」出口
――上演会場は「タイムズ鴨川西ランプ」。どうしてその場所を選ばれたのでしょうか?
そこは阪神高速道路「河原町十条」の出口で、バスの駐車場です。高架が巨大なスロープのように巻いていて、車がぐるっと回りながら降りてくる。それがビジュアル的に格好いいと思ったんです。これは私の演出のこだわりですが、「回る」ことをとても意識しています。ポールダンサーがスピンし、空中パフォーマーも空を旋回し、トレーラーもヘッドの牽引部分がくねる。舞台装置をトラックではなくトレーラーにしたのは、蛇が自分の尾を追いかけるようにぐるぐると蛇行できるからです。
原作小説では、おばあさんたちが「天の道、翔んで来た」と何度も言います。天の道とは高速道路のこと。この「河原町十条」出口は、まさにトレーラーが天の道から降りてきて、ふと泊まったような、そんな理想的なロケーションですね。
※こちらは『日輪の翼』公式サイトに掲載されている動画です。
※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、人や歴史をふまえて土地の物語を紡ぐこと、公演地に路地を出現させること、やなぎさんの中上健次へのまなざしなどについて、インタビュー前半の全文と写真を掲載しています。9月2日掲載予定のインタビュー「下」では、やなぎさんから見た演劇と美術の究極の違いなどインタビューの後半の全文を掲載します。
<有料会員限定部分の小見出し>
■この地で上演する必然
■熊野のオバらと朝鮮半島の放浪芸能
■工芸と芸能。根っこの部分を知るきっかけに
■世界中、どこでも何かが解体された跡
■生きている人間に聞かず、死んだ人に聞けばいい
<日輪の翼>
【京都公演】2017年9月14日(木)~9月17日(日) 河原町十条:タイムズ鴨川西ランプ特設会場
<関連サイト>
『日輪の翼』公式ウェブサイト
http://nichirinnotsubasa.com/
『日輪の翼』野外車両演劇プロジェクトのクラウドファンディング
https://motion-gallery.net/projects/yanagi_nichirin
<関連リンク>
Miwa YANAGI やなぎみわ
http://www.yanagimiwa.net/
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