清く正しくヅカ男子:(2) るろうに剣心 -観劇感激浪漫譚- | アイデアニュース

新着 予定 プレゼント 動画

清く正しくヅカ男子:(2) るろうに剣心 -観劇感激浪漫譚-

筆者: 濱恵介 更新日: 2016年3月1日

宝塚大劇場で大好評公演中の『るろうに剣心』。原作は1994年から1999年にかけて『週刊少年ジャンプ』で連載された超人気マンガ『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』。主人公【緋村剣心】は、幕末に「人斬り抜刀斎」として恐れられた維新志士。明治維新後は野に下り、「不殺」(ころさず)の誓いを立て、「流浪人」として全国を旅していた。ヒロイン【神谷薫】や仲間たちと出会い、明治揺籃期の日本に巣食う悪と立ち向かう物語である。1996年にテレビアニメ化され、元月組トップ【涼風真世】が剣心役の声優を務め、ブームとなった。2012年には佐藤健主演で実写映画化され、若い男性ファンも多い。【るろうに剣心】は、タカラヅカで何度か舞台化の話が持ち上がり、巨匠【小池修一郎】の脚本・演出によって、ようやく実現した。

イラスト・濱恵介さん

イラスト・濱恵介さん

この作品の難しさは、主人公【緋村剣心】が持つ独特のキャラクター。「人斬り抜刀斎」のクールさと「流浪人」としての軽妙さという極めて深い二面性を持つ。この剣心役を演じるのは、雪組トップスター【早霧せいな】。早霧はトップ就任以来、アニメ原作の『伯爵令嬢』『ルパン三世』を好演し、演技力には定評がある。今回の【緋村剣心】もさながらアニメの世界から飛び出したかの如く、見事に熱演している。

アニメの世界から飛び出したといえば、話題となっているのが【ポスター】。タカラヅカのポスターのほとんどが、トップとヒロインのツーショット。これに男役二番手が加わるシンプルなもの。ところが【るろうに剣心】のポスターは何と【8人写り】という賑やかさだ。ポスターの中心はもちろん主要三役。この3人を囲むのが、剣心の仲間【斎藤一】【相楽左之助】【高荷恵】。そして剣心と対峙する【武田観柳】と【四乃森蒼紫】。この8人のコスチュームの再現度の高さは、映画版をしのぐとの評価さえ聞く。

この作品の舞台化で大きな問題となったのは【殺陣】。例えば、三番手スター【彩風咲奈】が演じる【斎藤一】は、【牙突】という【突き】の技を持つ。牙突の構えは、アニメのポーズを相当研究して初めて絵になるもの。彩風の剣の先に添えられた手袋の指先に、ハラリと垂れる前髪。まさに【斉藤一】そのものに仕上がっている。そして、剣心をライバル視する元お庭番衆【四乃森蒼紫】は何と【二刀流】。蒼紫を演じる【月城かなと】は、二刀流で剣心と大立ち回り。さらに端正な顔立ちは蒼紫そのものと、人気を博している。

折しも2月の真冬の真っ只中。2月5日に公演が始まって、2週間足らず。雪組でまさかのインフルエンザが大流行をしたのは衝撃だった。三番手格スター【彩凪翔】など6人以上が次々とダウン。総勢約70名余りのうち、1割が休演する状態となり、スポーツ紙など各種メディアにも取り上げられた。特に彩凪演じる【武田観柳】は、剣心と対峙する悪のボス。観柳がいなければ、舞台は成り立たない。この非常事態に急きょ代役を務めたのが、別格スターの【真那春人】であった。わずか1日の練習で見事に観柳役を務め、客席から盛大な拍手が寄せられた。真那は常々、熱のこもった迫真の演技が評価されており、今後の活躍を大いに期待したい。

さてインフルから復帰した本役の【彩凪翔】も負けてはいない。【武田観柳】は悪のボスでありながら、非常にコミカルな役柄。観柳のテーマ曲をアドリブ調で歌って客席を沸かせ、劇場の笑いのツボを全部持っていった感すらある。観柳は悪役といっても、卑怯で小心者な小悪党。この癖の強い役を見事に演じ、客席を沸かせる【彩凪翔】。殺陣こそないが、全力でこの役にぶつかっている。

そして【観柳】の上をいく【裏の悪ボス】が、二番手【望海風斗】。望海演じるオリジナルキャラクター【加納惣三郎】は、美学を持つ華麗にして堂々たる大悪党。この役柄に望海の絶大な歌唱力も加わり、大きな存在感がある。フランス帰りの武器商人。そして決戦の場は、舞踏会が行われる加納の洋館。この設定は【るろうに剣心】に、タカラヅカテイストを増し加えた。時代劇に夢の世界がブレンドされ、この作品を芳醇なものにしている。大劇場の壮大な舞台機構と映像技術を駆使しつつ、アクロバティックな客席降りをする舞台構成。さすがは巨匠【小池修一郎】、圧巻の一語に尽きる。

さて、最近のタカラヅカは、『銀河英雄伝説@TAKARAZUKA』(2012年)、『ルパン三世』(2015年)と、原作に男性ファンが多い作品を上演している。宝塚歌劇団は新たな客層として、【ヅカ男子】(男性ファン)の開拓を模索しているのかもしれない。『るろうに剣心』も男性ファンの多い作品であるが、『銀河英雄伝説』や『ルパン三世』と違って、私が見た回は男性グループの観客があまり見受けられなかった。【るろうにファン】は年齢層が若いのであろうか。

※濱恵介さんの連載「清く正しくヅカ男子」は、毎月1回、アイデアニュースに掲載する予定です。

<関連記事>
清く正しくヅカ男子(1)男心も奪うタカラヅカ

<筆者プロフィール>
濱恵介(はま・けいすけ) 1976年、広島県生まれ。福島大学大学院修了。本来の専攻は日本現代史。公民館活動全国1位となった玖波公民館(広島県大竹市)でタカラヅカ講座の講師を務め、執筆でも活動中。

<関連サイト>
宝塚歌劇団公式ホームページ

<公演情報>
宝塚雪組公演 『るろうに剣心』
宝塚大劇場公演 2016年2月5日(金)~ 3月14日(月)
東京宝塚劇場公演 2016年4月1日(金)~ 5月8日(日)

————————

<ここからは有料会員向け部分です>
■職場の20代男子たちを引き連れて観劇、彼らの感想は?

有料会員(月額300円)になると、すべてのコンテンツの全文をお読みいただけます。会員登録は ⇒ここをクリック

全文が読める有料会員登録にご協力を

アイデアニュースは、有料会員のみなさんの支援に支えられ、さまざまな現場で頑張っておられる方々の「思いや理想」(ギリシャ語のイデア、英語のアイデア)を伝える独自インタビューを実施して掲載しています。ほとんどの記事には有料会員向け部分があり、有料会員(月額450円、税込)になると、過去の記事を含めて、すべてのコンテンツの全文を読めるようになるほか、有料会員限定プレゼントに応募したり、コメントを書き込めるようになります。有料会費は取材をしてくださっているフリーランスの記者のみなさんの原稿料と編集経費になります。良質な取材活動を続けるため、どうか有料会員登録にご協力をお願いいたします。

    
<筆者プロフィール>濱恵介(はま・けいすけ) 1976年、広島県生まれ。福島大学大学院修了。本来の専攻は日本現代史。公民館活動全国1位となった玖波公民館(広島県大竹市)でタカラヅカ講座の講師を務め、執筆でも活動中。 ⇒濱恵介さんの記事一覧はこちら

コメント欄

有料会員登録してログインすると、コメントを書き込めます(コメントを送信すると、すべての人が読める形で公開されます)。

最近の記事

■ 2024年4月掲載分
■ 2024年3月掲載分
■ 2024年2月掲載分
■ 2024年1月掲載分
■ 2023年12月掲載分
■ 2023年11月掲載分
 過去記事一覧は⇒こちら 有料会員登録は⇒こちら
お勧め商品
新着商品
Sorry, no posts matched your criteria.