石丸さち子さんが主催するTheatre Polyphonic 第7回公演ミュージカル『翼の創世記 -Genesis of Wings-』が、2024年11月29日(金)から12月25日(水)まで、東京・BLUE SQUARE YOTSUYAで上演されます。兄のウィルバー・ライト役を演じる上口耕平さん、鈴木勝吾さん(弟のオーヴィル・ライト役の2役)、百名ヒロキさんのインタビュー後編です。
「下」では、役や物語の魅力、ライト兄弟の人生を演じながら感じていることなどについてお話ししてくださった内容、稽古場のエネルギーについてのお話を紹介します。「下」の後半では、取材に一部参加してくださった石丸さんが、今回の舞台演出についてお話しされている内容も紹介しています。
――音楽についてたくさん語っていただいたので、次は役や物語についてもお聞かせください。台本を読ませていただいて、ライト兄弟の知らない面にたくさん出会いました。演じる側としてこの戯曲、それぞれの役の魅力などを伺えますか?
鈴木:さち子さんが「どう書こうかな」と考えていらっしゃった時期の話も聞いているのですが、「人生である」ということですよね。この本を通して人生をどう歩んでいくべきなのかということを、すごくシンプルに思うというか。歌詞も美しいですし、なおかつ、話の組み立てとしては実は結構シンプルにライト兄弟3人の人生を描いてくれている作品です。
たまたまふたりが飛行機を飛ばしたかもしれませんが、苦節の人生というのは、角度や濃度、重さ、いろいろ違えど、自分の目の前にある人生に立ち向かって何かを掴みにいくという点において、誰しも重ねられるところだと思うんです。人から見たら壮大ですが、多分彼らにとっては目の前にあることに挑み続けただけなので、そういうことを皆さんの人生においても思っていただけるような本だとすごく思いましたね。もちろん、ライト兄弟は偉大なんですけど。
百名:シンプルに考えると、ライト兄弟は自分たちで実験をして失敗を何千回と繰り返して、ただ進んでいったんです。それをやめなかったというのがすごいです。空を飛ぶということについて、人にどれだけ馬鹿だと言われて、反対されて、ありえないことかと、神への冒涜みたいに言われている中で続けるというのは、この時代においてすごいことだったと思いますし、彼らがしていることは自分を信じて、やりたいことに向かっているということでもあるので、すごいパワーをもらえる作品だと思いますね。
上口:僕、台本の中に、好きな言葉があるんです。ライト兄弟は、「鳥のように飛びたいという思いを、願いに留めてはならない」という、彼らが敬愛してきた方の言葉から自分たちに火をつけて、燃えて、本当に始めてみない? というところから本格的に飛行機を作っていくんです。「願いに留めてはいけない」ということは、みんなどこかで分かっているんですけど、それを本当に実現したということは歴史的に確定していることですし、彼らがあり得ないことを実現したんだということですよね。
生きていると、僕らもどこかで何となく諦める部分って増えてくると思うんです。信じればいけるさ、みたいなことを思っていても、実はどこかで諦めていたりしますけど、そうじゃなくて、本当にやったということがすごく大きなことなんです。「できた」ということが。そこに至るまでに何が起こったかということが、なぜそこまでいけたかという中身がすごく詰まっている作品なので、本当に何かを叶えたい人の勇気になるのではと思います。そういうものが伝わるといいですね。
鈴木:そうですね…。
――噛みしめるように「そうですね……」とおっしゃいましたね。
鈴木:今、耕平さんの言葉もありましたけど、端的に言ってしまうと、人は怠惰だし、普遍化バイアスの中でしか生きられないし、大きく変わる大変さを避けて行ってしまうんです。耕平くんがいまお話しした歌詞もそうですし、ウィルバーのセリフにも「恐れや怠惰で、人が見ようとしないものを見たい。常識を越えてその向こうにあるものが見たい。」という言葉があるんですが、思っても動けない人間が8割9割で、ぶっちゃけ動き出した時点で1、2割の価値や勝率はあって、結果をさらに残せるかどうかは別ですけど、もう動き出した時点で素晴らしいことなんですよ。
上口:そうなんだよね。
鈴木:だからそれが、この2人の兄弟そして3人の兄弟を通して思うことですね。「結果として飛ばせています」ということよりも、「始めてみないか」までは、みんなやるんですよ。でも、始めないんですよ、人は。
上口:今結構、その辺に近いことは始めていますけどね。この作品を作るという。
鈴木:さち子さん、森さんがされていることもそうですし、ここに集っている9人の俳優、それに寄り添ってくれるスタッフさんたちもみんな、「疑似ライト兄弟」というか。
百名:この稽古場自体が。
鈴木:何度も地面を見ようと思うことはあると思うんです、みんな。台本が届いた日からきっと。
百名:本当にそうですよ。
鈴木:希望と絶望とを裏腹に、ページをめくる度に、輝きと絶望の香りをどちらも見ながら日々を過ごしてはいるんですが、ただそれが希望になるのは、さち子さんが書いてくれた彼らの人生があまりにも力強いことと、メンバーとこの音楽と本が全部すごくいいこと、それがすごく支えです。
――そういう作品を演じるということは、すごい熱量で大変なんだろうなと感じました。今おっしゃっていた音楽と物語を演じる皆さんですので、もちろんたくさんの役を演じてこられた中で、今向き合っているこの役についてなど、見所など伝えておきたいことはありますか?
鈴木:僕は超シンプルです。恐らく全俳優、さち子さんにとっても森さんにとってもそうですし、かつてないことにみんな取り組んでいるなと思っています。僕がダブルだからということではなく、他にない挑戦だなとは思うんですよ。「創世記」と綴られているように、この作品が爆誕する瞬間を劇場でみんなで味わってほしいなとシンプルに思っています。今まで僕個人的にも経験がなく、おそらく群を抜いているものがたくさん含まれている作品です。人によって、何が引っかかるかは分かりませんが、「まじで!?」 となるのではと思っています。
上口:空間の作り方も、初めて見る感じなんです。お客さまに楽しみにしてほしいので、具体的には言えませんが、ひとつ言うと、舞台セットが凄いんです。
鈴木:客席まで続く壁にも絵が続いていたりとか。
上口:こんな劇場の使い方をしたことありませんよ。
石丸:(模型を持ってきてくださって)お見せしたほうがいいと思って。まだ発表できない部分がありますが、ここに翼の絵が描いてあって、壁に全部絵を描くんですね。今見えているそこは、ファーストフライトの時には、ここがこう開いて……。
――ええー!!!
上口:こんな舞台ないですよね!?
石丸:本当は、この奥は楽屋なので、皆さんここまでしか使わないんです。私が全部舞台にしてしまったんです。
鈴木:だから、僕らは居場所がないんです(笑)。
上口:劇場内部を全部塗るんですよ。だから、塗り直して返すんですよね。
石丸:そうです。とんでもないことをやっているんです。
百名:専用劇場です。
石丸:仕掛けについては、初日のお楽しみにと思っています。
上口:こんな劇場空間もなかなか体験できないじゃないですか。本当にオフブロードウェイとか、そういう世界観じゃないですか。本当にシアターまるまるその場所で、100人キャパで。
鈴木:すごい……
百名:豪華……
石丸:素敵でしょ?
ーーびっくりしました……
鈴木:耕平くんが「みんながオリジナルミュージカルを作っているのはいいですね」という話をさっき言っていましたが、今「これやってんだよ」と友達に話した時にも、「そういうの、いいよな」と言われます。ミュージカルに出ていない人も出ている人もいますが、「好きな演出家の作品に出るんだろ?」と言われて「そうそう、俳優もよくて」と答えると「100キャパで1か月だろ……そういうのいいよな」って、何かに疲弊した俳優たちが言うんです。
上口:そういうエネルギーが、この稽古場で爆発しているんですよ。みんなが今やりたいことをやっているんだと。
※アイデアニュース有料会員限定部分には、稽古場のエネルギーについてのお話、取材に一部参加してくださった石丸さんが、今回の舞台演出についてお話しされている内容などインタビューの後半の全文と写真を掲載します。
<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)
■上口:役者全員が、目をばちばち、肩をぶるぶるさせて、ああでもないこうでもないと
■百名:超本気。全力を出して、これまでの経験を総動員しないと表現できない作品
■鈴木:ヒロキとDIONのチームは、見ている時間にもネタ合わせ。本当の兄弟みたい
■上口:DIONやヒロキのアイデアをあっさりもらう(笑) 百名:こっちも全力でもらう
<ミュージカル『翼の創世記 -Genesis of Wings-』>
【東京公演】2024年11月29日(金)〜12月25日(水) BLUE SQUARE YOTSUYA
公式サイト
https://s-ishimaru.com/wings/
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