石丸さち子さんが主催するTheatre Polyphonic 第7回公演ミュージカル『翼の創世記 -Genesis of Wings-』が、2024年11月29日(金)から12月25日(水)まで、東京・BLUE SQUARE YOTSUYAで上演されます。本作は、石丸さんの新作オリジナルミュージカルで、企画・脚本・作詞・演出を石丸さんご自身が、作曲・音楽監督・演奏は森大輔さんが手がけられています。30曲を超える色彩豊かなミュージカルナンバーに乗せて、兄のウィルバー・ライト、弟のオーヴィル・ライト、そして妹のキャサリン・ライトの3人の物語が上演されます。俳優のささやかな表現、息づかいさえ届く100人規模の空間で、毎回3人の俳優が物語を届けます。9人の俳優による、5チームそれぞれの表現を楽しめるスタイルの初演は、今後の海外上演を目指しての、ファーストフライトでもあります。
兄のウィルバー・ライト役を演じるのは、上川一哉さん、上口耕平さん、鈴木勝吾さん、百名ヒロキさん、弟のオーヴィル・ライト役は、鈴木勝吾さん、工藤広夢さん、DIONさん、妹のキャサリン・ライト役は、門田奈菜さん、福室莉音さん、山崎玲奈さんです。
アイデアニュースでは、上口さん、鈴木さん、百名さんの鼎談インタビューをお届けします。インタビューは上下に分けてお届けします。「上」では、稽古で感じていること、「聴く」「歌う」それぞれの観点から森さんの音楽の魅力についてお話ししてくださった内容などを紹介します。「下」では、役や物語の魅力、ライト兄弟の人生を演じながら感じていることなどについてお話ししてくださった内容、稽古場のエネルギーについてのお話を紹介します。「下」の後半では、取材に一部参加してくださった石丸さんが、今回の舞台演出についてお話しされている内容も紹介しています。
――稽古の様子はいかがでしょうか?
百名:すごい密度が……
上口:うん、すごい密度だと思いますけどね。
鈴木:そうですね。
――スピード感はいかがですか?
上口:途中まで、全チームで通すところまで進んでいます。
鈴木:そうですね、つけただけではなく。
百名:4チームで4回分、昨日やりましたね。
上口:動きや細かい段取りが散りばめられていることを考えると、ハイスピードだと思うけど。
百名:しかも自分たちで作って、アイデアを出しながらです。
上口:別のチームがやっていても、それがよかったら「それよかったね」とか「それやってみようよ」とか、「ここはどうしようか」とか、「何かありますか?」とか、常に全員で相談しながらみんなで作っています。
――動きは全チームで統一されているんですか?
上口:統一した部分と、自由な部分があります。「ここは共通の振りにしよう」みたいな感じで、みんなで振りを出し合って、ダンスシーンを作ったりもしました。
百名:耕平さんの振りもあります。
鈴木:そう! 大活躍してくれて。
――振付もされたんですか?
上口:いえ、そういうところもありつつというくらいです。
百名:休憩もなく、密度高くノンストップで進んできた感じです。
上口:13時から21時くらいまでの8時間、全員頭が働きっぱなしだったりします。
――稽古で実際に動いている人は変わるけれど……ということですよね?
3人:(口々に)そう!
上口:ずっと見ています。これいいなとか、こういうことか、とか。
百名:見ながら、次はどうしようかって。
鈴木:恥ずかしながら、稽古場で人の芝居をこんなに見ているのは、いつ以来だろうと思います。
上口:俺も思う!
鈴木:いつも見るタイプですけど、こんなに注視して見ることは、なかなかないかも。
上口:他の現場だったら大体、このシーンをやった後、自分が出ていなかったら、ちょっと休憩みたいになるでしょ。少し外に出たりとか。
百名:自分の練習をしたりね。
鈴木:今回はどのシーンでも、ずっと稽古場にいるからね。
――そもそもこのミュージカルは、兄弟2人がほぼ出ずっぱりですものね。
百名:(音楽の)森さんはもっと出ずっぱりですけどね……。
3人:そうだ!!!
百名:すごいことだと思います。全公演演奏されますしね。
上口:森さん、肩回り大丈夫かな?本当に物理的にきつそう。お芝居の流れとかいろんなものを汲み取りながら一緒に呼吸していくと思うので、その分役者と同じようにエネルギーを使うと思うんですよ。ただ弾くというわけじゃないから。
――チームによって違うところも出てくるでしょうが、森さんはお一人で演奏されるんですね。
百名:キーも変わるんですが、「このキーだったら黒鍵が少ないからラッキー」とか言ってました。
鈴木:言ってたな、確かに。
上口:すごいことですよね。
――作品の内容について伺わせてください。11月はオリジナルミュージカルが集まったなという印象です。 その中で、『翼の創世記』ならではの個性を伺いたいです。
上口:いい動きですよね。僕はめちゃめちゃシンプルなんですが、森さんの音楽です。ミュージカルなので、やはり音楽が大事じゃないですか。個人的に、こういう雰囲気でミュージカル作品にするのは見たことがないなという楽曲なんです。
まず、いろいろなニュアンスがあります。すごくクラシカルな要素があったり、どこかずっと聴きなじみのあるというか、ポップスの要素があったり、ちょっとブラックだったり、ファンクだったり、いろいろなノリがあって、それが僕は大好きなんです。シティポップのような匂いがします。そういう風に作られているわけではないんですが。
部分部分で森さん独特のエッセンスがあって、それが昔からたまらなく好きですし、今回、そこがものすごく見どころというか、新しいことだと思っているんです。聴いていただいたり観ていただいたら分かると思います。そこも、すごく楽しみにしていただきたいなと思います。やっぱり楽曲って大事じゃないですか。
――音楽は、ミュージカルの醍醐味ですよね。
上口:日本に生まれたということがすごくよく分かるというか、日本人の耳にぐっとくるラインだと思うんです。そういうメロディラインは、今、世界的にも受けていますよね。しかも独特の音楽になっていますし、今回の作品ならではの何の真似もしていない感じがいいんですよね。本当に森さんの音楽という感じがします。
さち子さんの言葉に、ゼロから音楽を付けていくからこそ、すんなり歌詞が入ってきますし、無理に訳して、無理にはめてとかではなく、伝えたいままが音楽に乗っています。それはもちろんオリジナルならではだと思うんですが、それが今回まさにハマっている感じがします。そして、決して「はい、歌います」という感覚が自分の中では全くないんですよね。楽曲はすごく音楽なんだけれども、お芝居とシーンも別に全然いけるのは、言葉と音楽の嚙み合わせが絶妙だからかなとは思っています。こういう楽曲でこういう時代のものをミュージカルとして観られるんだというところが、新しい発見です。
――音楽の話について、おふたりが思っていることはありますか?
鈴木:多分、役者人生のこの前にも後にもない物量だと思うんですが…。
――鈴木さんは、2役演じられますね。
鈴木:片方だとしてもですね。やることというか、本来目指すべき到達点ということで考えれば、曲数もそうですし、オーヴィルもウィルバーも、どちらを演じるのに必要なものになってくるものだったり、さち子さんが求める本来のことをやると考えると、僕はたかだか役者人生16年くらいですが、この物量は後にも先にもないなと思います。その中で音楽についてということであれば、僕らがお客さまより先に聴かせてもらっていますけれど、この音楽でなければこんなに前のめりに取り組めないんじゃないかぐらいの求心力が、すでに僕らがお客さまの前に感じているというか。耕平くんが魅力を語ってくださいましたが、音楽が僕らの心を動かしてくれているところがたくさんあるんです。
役として歌って、伝えたいものももちろんありますが、こうやって毎日聴いたり歌ったりしているこの音楽たちを、お客さまにも早く届けたいと本当に思う日々です。もちろん、お芝居が入ると、それぞれまた違うニュアンスになるかとは思いますが、いい曲の連続です。もちろんそれはさち子さんの言葉が生んだものでもあり、逆に音楽から生まれた歌もあるかもしれません。稽古による物理的な疲弊を心地よくさせてくれているのは、音楽の力がすごくあるなというくらい感動しています。お客さまにより魅力的な形で伝えなければという希望と、「頑張るぞ」という思いを音楽からもらっていますね。
※アイデアニュース有料会員限定部分には、聴く」「歌う」それぞれの観点から森さんの音楽の魅力についてお話ししてくださった内容などインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。インタビュー「下」では、役や物語の魅力、ライト兄弟の人生を演じながら感じていることなどについてお話ししてくださった内容、稽古場のエネルギーについてのお話、そして取材に一部参加してくださった石丸さんが、今回の舞台演出についてお話しされている内容などインタビューの後半の全文と写真を掲載します。
<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)
■上口:「好きなプレイリストを聴く」くらいの気持ちで、移動中にも聴きたくなる楽曲
■百名:森さんと石丸さんのタッグが炸裂 鈴木:硬質で華も。羽ばたく可能性がある作品
■百名:ライト兄弟の絆を出せたら 上口:コーラスというより、アーティスト的なハモり
■鈴木:森さんの音楽のおかげで人生で初めて「ハモりっていいな」と 上口:気づいた?
<ミュージカル『翼の創世記 -Genesis of Wings-』>
【東京公演】2024年11月29日(金)〜12月25日(水) BLUE SQUARE YOTSUYA
公式サイト
https://s-ishimaru.com/wings/
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期待通りの素晴らしいインタビューをありがとうございます。応援の意味をこめて、ずっと有料会員を継続しているのですが、他の媒体とまた切り口が違う取材が多く、とても面白いです。これからもよろしくお願いします。
楽しみに読んだ「翼の創世記」クリエイター達の熱と圧と汗を紙面から感じました。とても楽しみです。