男優だけの劇団「スタジオライフ」が、三原順原作の『はみだしっ子』を初舞台化した公演が、10月20日に開幕しました。東京芸術劇場シアターウエストで、11月5日まで上演されます。大原薫さんによる初日レポートが10月26日に届きましたので、掲載します。
『はみだしっ子』は1975年に少女漫画雑誌「花とゆめ」に連載され、熱狂的なブームを巻き起こした作品。親に見捨てられて、この世の「はみだしっ子」となった4人の少年たち、グレアム、アンジー、サーニン、マックスがいつの間にか身を寄せ合い、旅をする中で愛を探し求める姿を描く。
ステージ上には、街灯がただ一つ。今作の公演ビジュアルに使われている、三原自身が描いた街灯を忠実に再現している。階段状になっているシンプルでモノトーンな舞台(舞台美術:乘峯雅寛)に照明が当たると、4人の少年たちの姿が浮かび上がる。少年たちは「恋人」を待っているという。子猫たちが可愛がって連れていってくれる「恋人」を待っているのと同じように……。孤独な少年たちの内面が浮かび上がる、印象的な幕開きだ。
舞台版『はみだしっ子』ではなぜ少年たちが身を寄せ合っているのか、彼らの過去を丁寧に取り上げた。グレアムは父親から高圧的に扱われ、アンジーは母親に育児放棄される。サーニンは母を亡くし父親により監禁され、マックスは父親に殺されかけた。少年たちの過去を丹念に描くことによって、彼らの心の孤独が浮き彫りになり、だからこそ互いに身を寄せ合う4人の関係性がはっきりと見えてくる。
原作漫画で印象的なのは、少年たちが語る深遠で思索的な言葉だ。彼らは決して自分たちを「可哀想でしょう」と憐れもうとしない。クールに自分たちを突き放して語る言葉が、読者の胸を打つ。通りいっぺんの演技では表し得ない深さのある言葉を血の通ったものとするために、キャストたちが深く役柄と向かい合い、真摯に取り組んだ様子が演技からうかがえた。
また、原作漫画では少年たちの視点が貫かれるが、舞台では大人たちがリアルな息吹で演じられることによって、大人たちの視点からも物語を見つめ直すことができたのも新たな発見だ。4人の少年たちを一時的に受け入れるレディ・ローズを演じる曽世海司の演技にはリアリティがあり、グレアムのいとこのエイダを演じる松本慎也がグレアムに対する複雑な思いをにじませて、ドラマを盛り上げる好演。
今回は原作の最初の部分の舞台化だが、この続きも舞台化して、連作として上演していけば、スタジオライフの新たな財産となるだろう。4人の少年たちの心の旅をこれからも追っていきたい。(文/大原薫)
<スタジオライフ 舞台版『はみだしっ子』>
【東京公演】2017年10月20日(金)~11月5日(日) 東京芸術劇場 シアターウエスト
公式ページ
http://www.studio-life.com/stage/hamidashi2017/
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劇団スタジオライフ
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