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麦ふみクーツェ 観客も音を出すもの持参、舞台と客席がつながった音楽劇

筆者: 松中みどり 更新日: 2015年4月27日

 

つながる音楽劇 麦ふみクーツェ  舞台写真  撮影:阿部章仁

つながる音楽劇 麦ふみクーツェ  舞台写真  撮影:阿部章仁

 

いしいしんじさんの「麦ふみクーツェ」は、”へんてこで、よわいやつ”がたくさん出てきて、そのへんてこさかげんが愛しい、筆者の大好きな物語です。それが音楽劇になったというので、4月24日(金)夜の公演を見るためシアターBRAVA!(大阪市中央区)に行ってきました。

 

つながる音楽劇「麦ふみクーツェ」~everything is symphony!!~は、坪田譲治文学賞を受賞した原作にオリジナルの音楽をつけ、全ての音は生で、ミュージシャンも舞台に立つし、俳優さんも演奏。そのうえ、 「観客はそれぞれ、一人が一個ずつ何か音の発するものを持参すること。ただしサイレンのみ禁止」とポスターに書かれている画期的な舞台。ちゃんとした楽器でなくても、日用品で大丈夫。音が出るものならなんでもOK。どうしてサイレンが禁止なのか、その理由は舞台を見れば、あるいは原作を読めばわかります。

 

公式サイトには、 ~シアターBRAVA! 10周年記念シリーズ の中の特別企画として自主製作するプロデュース公演が、この「麦ふみクーツェ」です。 関西をベースに活躍する才能あふれる人たちが生み出す、かつて見たこともないような楽しい音楽劇をご堪能下さい~ と書かれていました。いしいしんじさんの原作ファンとして、期待がふくらみます。

 

劇場に入ると、高さのある舞台装置に目を奪われます。「わあ、あんなところに象さんがいる」などと思っていると、開演前に舞台でチューニングが始まりました。物語と観客の橋渡し的な存在である郵便局長役の松尾貴史さんが登場、持参した”楽器”で音を出すときのタイミングなどをレクチャー。物語の世界が、客席の私たちの日常に入り込んでくるような面白いスタートでした。

 

つながる音楽劇 麦ふみクーツエの舞台より  撮影:阿部章仁

つながる音楽劇 麦ふみクーツェ  舞台写真  撮影:阿部章仁

 

筆者の隣に座ったふたり連れは吹奏楽部出身だったようで、チューニングの時から「懐かしい!懐かしい」と連発。カスタネットとマラカスで正確なリズムを刻んでいました。ダイソーで買ったおもちゃの楽器があちこちで見られ、さすが大阪、音楽用の「のこぎり」を持ってきた人もいました。面白かったのは、劇中、“みどり色”役の皆本麻帆さんが客席に降りてあるお客さんの「楽器」を手に取ったのですが、それは非常食の乾パンが入った缶詰。振るとカサカサと音がしました。目を閉じて耳を澄まして何の音か当てようとしている主人公の”ねこ”役の渡部豪太さんが「ドロップ?」 皆本麻帆さんの「惜しい・・・」というアドリブのセリフに温かい笑いが広がりました。

 

“ねこ”役の渡部豪太さんと彼が恋する女の子“みどり色”役の皆本麻帆さん  撮影:阿部章仁

“ねこ”役の渡部豪太さんと彼が恋する女の子“みどり色”役の皆本麻帆さん  撮影:阿部章仁

 

公式サイトにある「ものがたり」の説明にはこうあります。

 

~~とある港町のアマチュア吹奏楽団が舞台。物語の主人公である少年“ねこ”(渡部豪太)は、おじいちゃん(尾藤イサオ)に楽団に引っ張り込まれ、「にゃあ」と鳴くことを命じられる。おじいちゃんはとてつもなく頑固者で辛辣だけど、あっという間に皆の心を掴み、バンドマスターとして楽団を劇的に成長させた。楽団を中心に町はひとつにまとまり、順風満帆な日々が続くかに見えたが、やがてさまざまな事件が降りかかる。悲喜こもごもの運命に巻き込まれる“ねこ”の前に、ある時から彼にしか見えない存在“クーツェ”(熊谷和徳<映像出演>)が現われる。クーツェはいつも「とん、たたん、とん」と足踏みをしながら、“ねこ”に啓示めいた言葉を残して消えるのだった。仲間との悲しいお別れ、謎めいた女性“みどり色”(皆本麻帆)との出会い、指揮者になるため港町を離れての進学と、“ねこ”の人生は大きく展開していく。そして指揮者として帰ってきた演奏会で起こった「奇跡」・・・~~

 

舞台の方が原作よりシンプルなストーリーにしてありましたが、原作の中にある印象的なセリフは生かされ、役者さんの声と音楽と映像で立体的に伝わってきます。

 

「ふめよふめふめ 麦ふみクーツェ 麦にいいも悪いもない」

 

「この世におよそ打楽器でないものはない」

 

「へんてこで弱いやつは、けっきょくひとりなんだ ひとりで生きていくためには、へんてこはそれぞれ自分の技をみがかなきゃなんない」 「その技のせいでめだっちゃっていっそうひどいめにあうかもしれないよ、でもそれがへんてこさに誇りをもっていられるたったひとつの方法だから」

 

千夜一夜物語のように、様々なエピソードやストーリーが音楽と映像と演劇で語られ、全体が少しずつ進んで行って、主人公の運命が動き出します。音楽、特に吹奏楽が大事なモチーフですが、『つながること』が大きな主題。いしいさんの物語では、にがくて悲しいことがけっこうたくさんおこります。人もたくさん死んでしまいます。それでも、やっぱり人は手をのばし、誰かとつながっていたいものなんだと、教えてくれる物語。

 

「人はみなばらばらだ。ばらばらだからこそつながっていること、それをたしかめたい、信じたいがために、楽器をみなで鳴らし続けるのだ!」

 

見ず知らずの人たちと、持ってきた”楽器”で合奏し、声を出しているうちに、楽しい気持ちがふくらみます。舞台上の人たちも観客席の人たちも、自分だけの音を聞き取ろうとしているひとりぼっちのへんてこだけど、だからこそ仲間としてつながったらこんなに楽しくて、美しい音楽を作れるのだとワクワクする。そんな舞台でした。

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<筆者プロフィール>松中みどり(まつなか・みどり) フィリピン支援ボランティア/英語講師/ライター 初めて行った外国がフィリピンで、以来かの国の人々の明るさ温かさに魅せられ、様々なNGOや支援活動に関わる。1994年からは山岳先住民アエタの教育支援主宰。コミュニケーションツールとしての英語を各地で教えている。動物好きの自称「ケモノバカ」。飼い猫は黒猫で親バカ度も加速中。 ⇒松中みどりさんの記事一覧はこちら

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