世界初演のミュージカル『ある男』が、2025年8月4日(月)から17日(日)まで東京建物_Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)で、8月23日(土)と24日(日)に広島文化学園HBGホールで、8月30日(土)と31日(日)に東海市芸術劇場 大ホールで、9月6日(土)と7日(日)に福岡市民ホール 大ホールで、9月12日(金)から15日(月・祝)までSkyシアターMBSで上演されます。原作は、2018年に読売文学賞を受賞し、世界中で翻訳された、平野啓一郎さんの同名長編小説です。音楽はジェイソン・ハウランドさん、脚本・演出は瀬戸山美咲さん、歌詞は高橋知伽江さんが手がけます。浦井健治さん、小池徹平さんを中心に集まった実力派キャストが、壮大で繊細な人間ドラマを描き出します。
<公式HPより>
「死んだ男の正体を追う先に見えてくる真実とは。肩書も国籍も剥ぎ取った先に残る“自分”とは何か。社会的評価、戸籍、血筋、内面──何が人を「その人」とするのか。“普通”の幸せを装いながら、もがき続ける一人の男の姿が、観る者の心を深くえぐり、共鳴を呼ぶ。これはただの謎解きではない。人間の本質と、現代を生きる私たち自身を見つめ直す物語。静けさと激しさがせめぎ合う。新たな劇場体験の幕が開く。
アイデアニュースでは、城戸章良を演じる浦井健治さんと、ある男・Xを演じる小池徹平さんと、小見浦憲男/小菅を演じる鹿賀丈史さんにインタビューしました。インタビューは上下に分けてお届けします。「上」では、稽古の中で感じていらっしゃること、原作では一堂に会さない城戸・X・小見浦/小菅のシーンがミュージカルではどう描かれるのか、それぞれのシーンへの想いなどについてお話ししてくださった内容を紹介します。「下」では、鹿賀さんがデビュー53年であるというお話や、御三方それぞれに伺った「自分とは」というお話とお客さまへのメッセージを紹介します。

(※7月中旬に取材しました)
ーー稽古が本格始動しているということですが、稽古場の印象を伺えますでしょうか。
浦井:『ある男』は映画化もされていますし、作品のイメージがある中で、どうやってミュージカル化するんだろうというこの感覚は、『デスノート THE MUSICAL』(※以下『デスノート』)初演の時にもありました。原作は文学賞を受賞している作品で、作者である平野啓一郎さんからたくさんのメッセージが込められています。そういう作品をミュージカルにするとこうなっていくんだという感覚もありつつ、自分たちの中で落とし込んでいくことを限られた時間の中でやっています。
実は数日前まで別作品の方にいっていたので、こちらの稽古へ本格的に参加出来てから日が浅いのですが、すでに通し稽古になっているという(苦笑)。でも、なんとか皆さんに助けられながら無事に進んでいます。役者の皆さんの存在感、そして、クリエイティブチームの方々が試行錯誤をしている最中ですが、みんなで作っていっています。
そして、オリジナル作品を一社で作ることのすごさ。先日のトニー賞で、韓国発の作品(『メイビー、ハッピーエンディング』)が受賞されたのを見ていると、今の日本のシステムの中でオリジナルで立ち上げるのは大変なことですし、そんな中に自分がいれることを幸せに感じながら頑張りたいと思っています。
ーー小池さんはいかがですか?
小池:一から作っていく新作ミュージカルという壁の高さというか、大変さというか。もちろん原作の作品の大きさもあると思いますが、まだここに来ても、もっと高みを目指しているというか、どこまで高い山なんだろうなというか、頂上がまだ自分の中で見えていない感じがあります。そこにみんなで頑張って登っているような印象で、健ちゃん(浦井さん)もずっと忙しかったのですが、ようやく合流して、あっという間に通し稽古なんです。それに対応できていることがすごすぎるし、怪物だなと改めて思って。
浦井:いやいやいや!
小池:本当に頼もしいカンパニーであり、だからこそいい意味で、甘えることなく、みんなで頑張ろうよと、今まさに上を目指して登っているような感じです。ここ数日で、ようやく外枠が固まってきたかなという段階ですが、芯の部分を頑張っていかなければなと。楽しみにしてくださっている方がたくさんいらっしゃると思いますので、応えられるように頑張りたいです。
ーー鹿賀さんはいかがでしょうか?
鹿賀:ちょうどみんな年齢的に、発するものがいい時期というか。僕はちょっと上ですけども、そういう俳優さんたちが集まっています。いままでいろいろと経験してきた役者たちが、ちょうどいい時期に、いい作品に巡り合っているなと。見ていて、とてもそういう気がするんですよね。演出も初めての方ですし、非常に新しい感覚もあります。外枠が固まりつつあるという話もありましたけども、難しいことはやっぱり難しいんですよね。新作ですから、手探り状態から始まって、なんとなくここまで来たかなと。ただ、そういうところに、柔軟に対応できる年代の人がやっぱり多い。その辺は、非常にスピーディーな展開で…(浦井さんに)ね?
浦井:おおお…(苦笑)。
小池:主に浦井さんですけどね。本当にスピーディーすぎてびっくりしますよね。
鹿賀:本当に!
小池:尋常じゃないよ、あなた。
浦井:いやいやいや、プレッシャーでしかないです。そう言って頂けるそのお言葉がすごく嬉しいですが、自分の中では、「ヤバいぞ」の連続で、ギリギリかアウトかぐらいの感じでやっているというのが、今週ですね。
ーー顔ぶれを拝見しても、百戦錬磨の皆様かなと思います。鹿賀さんが「いい時期」とおっしゃいましたが、おふたりは、そう言われる身としてはいかがでしょうか?
浦井:(噛み締めながら)今の言葉が泣きそうなぐらい嬉しいですし、何かの折にはその言葉を思い出そうって。
鹿賀:ふふふ。
浦井:今、稽古場で過ごしている毎日が、自分にとって宝物になりました。日本にマチネ・ソワレが根付いた頃から、ミュージカル界を作ってこられた憧れの人が今も第一線にいらっしゃって。そういう方が、ただ存在して、そこで表現されることの価値ですね。
例えば、鹿賀さんが演じる小菅と、徹平が演じるXとのシーンがあるんですが、父親の面影だとか、その過去だとかいうその流れを鹿賀さんが発することで説得力が生まれ、その流れが衝撃的で、「これは何なんだろう」と、いつも思うんですよね。そういう方がいてくださる。自分のお手本であり、全然到達できない場所ですけれど、そんな方がこんなに嬉しい言葉をくださることが、僕自身の芯になりますし、頑張ろうという気持ちになります。
ーー鹿賀さんと浦井さんが並んだ様子を拝見しながら、今のお話を伺っていて、ふと、『シラノ』を思い出しました。
浦井:僕も、たまに思い出します。
鹿賀:もう何年前だろうね。
ーー初演は2009年だそうです。
浦井:3人では、『デスノート』でご一緒して。
小池:僕は『デスノート』ぶりですけど、こんな大先輩でありながらも、本当に気さくに話しかけてくださったりするんです。「ちょっとこれ、関西弁で言ってみて。関西弁教えてくれる?」って。
鹿賀:ふふふふふ。
小池:僕としては「僕でいいんですか!?」みたいな感じなんですよ。そういうちょっとしたコミュニケーションを取ってくださったり、話しかけてくださるのもめちゃくちゃ嬉しいです。「いい時期」とおっしゃってくださるのも、嬉しい反面、引き締まる思いがあります。鹿賀さんだからこそ、すごく重みがあり、感じるものがあって。
ずっと活躍されている大先輩が(稽古場に)いてくださるだけでも、作品の締りがやっぱり全然違うじゃないですか。そういう偉大な方と、改めて『デスノート』ぶりにお会いして、さらに「いい時期になったね」と言って頂けることに、とても感慨深いものがあります。そういう時期に鹿賀さんとご一緒できることもですね。
いい時期と言っていただけたことを、僕も健ちゃんみたいに思い出せるように噛み締めて、また、もっと良くなったねって言っていただけるように、頑張らなきゃなという気持ちがすごくあります。
ーー改めて、今日の鼎談をさせていただけたことが私も嬉しいです。今回御三方で鼎談をお願いできたらと考えたのは、10年前に漫画原作の『デスノート』からオリジナルミュージカルを立ち上げられた皆さんなので、今回は小説ですが、同じ原作からオリジナルミュージカルを作っていらっしゃって、どんなことを考えていらっしゃるか伺えたらと思いました。
鹿賀:こういうものを一から作り上げるということには、どこかやはり不安といいますかね。そういうものが付きまとうわけで。
ーー鹿賀さんにも不安が付きまとうんですね。
鹿賀:そうです。台本も何回も修正を重ね、まだ今も直していますからね。そういう意味では、時間いっぱいのところもあるのでしょうが、実際に稽古している時間が短くても、精神的に関わっている時間が随分長いなと思うんですよね。ふたりとも、僕のことを先輩だ何だと言ってくれますけれども、僕は全然そんなことを思っていなくて。
小池:いやいやいや!
浦井:カッコいい……
ーー仲間みたいな感じですか?
鹿賀:そうです。ふたりとも対応が早いですよ。やっぱり自分で勉強しているなというのが分かりますしね。他のメンバーもそうですけれども。プリンシパル8人8様の、男性5人、女性3人のそれぞれの持ち味というものを、うまく引き出してくれている作品でもあるなと思いますので、その辺も観ていただき、楽しみにしていただきたいですし、それに応えられるように、それぞれのキャラクターを全面に押し出していければいいかな、という風には思っています。
ーー今のお言葉でおふたりは何か……
鹿賀:「お言葉」はやめてください(笑)。
浦井:言葉がキラキラしてて。語彙力もそうですよね。みんなのことを俯瞰で見てくださっているのもそうだし。
小池:そうだよね。
浦井:その言葉が導きや気づきを与えてもくださいますし「そういうことなんだ」と、改めて思います。我々が今感じていることを、鹿賀さんは、もっと前に感じていらっしゃるからこその言葉があると思いますし、「耕し」の時期からのミュージカル界とか、これまでに、いろいろなことをされていると思うんですよね。今は亡き演出家の方からいただいた言葉もそうですけど、いろいろな方々の言葉で自分が作られていくのだなと改めて思いました。こういう機会が、すごくありがたいです。
小池:この新作で、このメンバーだからこそという、全員のいろいろな個性というものを、みんながすごいからこそ詰め込む大変さがあるなとすごく感じています。みんなの、なんて言うんだろうな……味が濃すぎてもダメだし、薄すぎてもダメだしという感じですね。足し算と引き算が非常に難しいだろうなという思いです。言語化するのが、まだちょっと難しい状況ではあるんですけど。
浦井:「濃い」代表の(上原)理生くんは、昨日の2幕の稽古が一瞬で終わってて。そこでどう爪痕を残すかみたいな、役者のいろいろな思いがある。
小池:そうなんだよね。いい意味で、観に来られるお客様を驚かせる、「こんな感じなんだ!」という衝撃がすごくあると思います。
鹿賀:そうだね。
ーー作品の具体的なことを伺えたらと思います。みなさまの役は、原作では一堂に会さないですよね。ミュージカルだとどうなるのでしょうか?
浦井:原作ありきの作品ですから、気になりますよね。
鹿賀:僕は4シーン出るんですけど、このふたりとしか会わないんですよ。
浦井・小池:ああ、確かに!
鹿賀:他の誰とも会わないんですよ。今は稽古場だから顔を会わせているけれど、本番に入ったら、「久しぶり!」みたいなことになるだろうなと(笑)。そして、このふたりがそれぞれ違いますね。向き合い方も違うし、やっていて、とても面白いです。僕は、稽古が今一番遅れているんですよ。関西弁にしたのが、ちょっとまずかったですね(笑)。
一同:アハハハハ!
小池:いやいや、めちゃくちゃいい味じゃないですか!
鹿賀:時間かかっちゃってね(笑)。
浦井:もう仕上がってますよ。
鹿賀:ここからもうちょっと、あと3、4日でね、なんとかまとめて追いつかないと、「ちょっと置いてきぼりになるぞ」なんて。みんな速いですもん。
浦井・小池:確かに速いですね。
浦井:それを飄々とやっちゃう方が多くて、僕も「ちょっと待ってよ〜」って思う。
小池:どこがよ! 健ちゃんはいつ稽古してるんだろうなって思うよ。
浦井:いやいやいや。鹿賀さんは仕上がってますよ!
<取材協力>
スタイリスト:飯田恵理子
ヘアメイク:山崎順子(浦井健治さん)、関谷美世(小池徹平さん)
※アイデアニュース有料会員限定部分には、浦井さん、小池さん、鹿賀さんのそれぞれのシーンへの想いについてのお話などインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。インタビュー「下」では、鹿賀さんがデビュー53年であるというお話や、御三方それぞれに伺った「自分とは」というお話、お客さまへのメッセージなどインタビューの後半の全文と写真を掲載します。
<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)
■鹿賀:表面的には、小見浦は「悪」で小菅は「善」。その裏があるところに面白さが
■浦井:言葉の表裏を、一瞬の声色や表情で体現され、役に真実味を帯びさせる鹿賀さん
■小池:緊張感や満を持してという、作品の軸にもなっている小見浦と城戸のシーン
■鹿賀:芝居の作りごとではなく、本物のボクサーみたい 小池:ありがとうございます
<ミュージカル『ある男』>
【東京公演】2025年8月4日(月)~8月17日(日) 東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)
【広島公演】2025年8月23日(土)~8月24日(日) 広島文化学園HBGホール
【愛知公演】2025年8月30日(土)~8月31日(日) 東海市芸術劇場 大ホール
【福岡公演】2025年9月6日(土)~9月7日(日) 福岡市民ホール 大ホール
【大阪公演】2025年9月12日(金)~9月15日(月・祝) SkyシアターMBS
公式サイト
https://horipro-stage.jp/stage/aman2025/
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※浦井健治さん・小池徹平さん・鹿賀丈史さんのサイン入りチェキを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。有料会員の方がログインするとこの記事の末尾に応募フォームが出てきますので、そちらからご応募ください。応募締め切りは9月4日(木)です。有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。

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