東京芸術大学絵画科3年の芸大生、葛西茉耶(かさい・まや)さんが、世界のアーティストがパリで交流するプロジェクト「国境なき美術空間」の参加者に選ばれ、8月9日から9月26日までフランスに滞在することになりました。青森県出身の葛西さんは、「ねぷた絵」に使われるロウケツ染め技法を使った作品などを発表する予定にしていますが、フランスへの渡航費や滞在費などには約54万円がかかる見通しで、クラウドファンディングで協力してくれる人を探しています。https://a-port.asahi.com/projects/maya_art
「国境なき美術空間」に参加できる35歳以下のアジアのアーティスト10人の1人に選ばれた葛西さんは、フランスのアートスペースに滞在しながら取材・制作を行い、パリ中心地のアートギャラリー「Atelier d’été」で開催される美術作品展で作品を発表する予定にしています。
葛西さんは、これまで病院でのプロジェクトやアート療法にも取り組んできましたが、その中で眼が見えない方が「ねぷた絵」を触って感じてくださった時のことを以下のようにクラウドファンディングのページに書いてます。
東日本大震災で作り手の無力さを実感して以後、少しずつですが岩手県花巻市の精神病院でのプロジェクトや、東京都台東区での高次脳機能障害の方々のアート療法、そのほか岩手、茨城、東京で数々のワークショップの活動を行い、その中で、人にとってアートは心や生活に寄り添える力がある、と強く感じるようになりました。
先月、千葉県柏市で展示会をした折に、目の見えない方がご来場くださいました。絵が好きな方のようで、大きさを手で確かめながら、一点一点回ってくださっていました。
しかし、芸術作品は繊細なものも多く、ほとんどの作品は触ることはできません。
私は胸が熱くなり、展示していたねぷたアートの作品を額からだし、お渡ししました。和紙を染め上げている作品ならば、痛む心配もなく、和紙の柔らかさとロウの感触を楽しんでいただけるかもしれないと思ったのです。
「ねぷた絵ですか。実は、ろうけつ染めを、若いころやったことがあるんです。まだ見えていたころに」
そう言って、とてもうれしそうに、ゆっくりと和紙の感触を確かめ、何度もお礼をおっしゃってくださりました。
青森県のねぶたまつりでは、立体の「ねぶた」に対し、扇形の平面絵画が「ねぷた」と呼ばれます。絵画技法は「ろうけつ染め」の一種で、光を通す和紙に蝋燭(ろうそく)で絵を描くことで、さらに光を透過させ、温かみのある表情が生まれます。
葛西さんは、フランスでの展覧会で集まった世界のアーティストにねぷた絵を体験してもらい、それを共同作品にして展示し、一般の人にもワークショップで灯籠絵体験をしていただこうと考えているそうです。
アーティストネーム「MAYA」さんの葛西さんが、「ねぷた技法でドローイング」と題して作成した動画はこちらです。
葛西さんは、普段の制作では、「社会問題×風景絵画」の油彩を描いてきました。たとえば、ゲーム依存などで平面と立体(現実)の区別があいまいな子供が出てきている問題を、遠景の木と、実際に見て触って描いた近景の木を通して表現した作品「樹木のある風景」や、3.11で失われ戻らないものを近代的ビルで比喩しつつ、記憶の中には確かに存在した理想(故郷)が残ってゆくことを表現した「広がる草原のある風景」などがあります。
これまで、葛西さんは、2つ以上のかけもちのアルバイトをしながら、家賃と生活費、学費と画材費、ワークショップ、障害者支援、被災地支援活動などを続けてきました。
今回、「国境なき美術空間」の参加者に選ばれた時点では、助成・奨学金募集はどの団体も終了しており、葛西さんは一度は参加を断念しましたが、「なんとしてもこの機会を生かしてやり遂げたい」と思い、ローンを借りてでも挑むことにしたそうです。
クラウドファンディングは6月15日から7月15日までで、目標金額542,400円に対して、7月4日現在で178,000円が集まっています。クラウドファンディングでの支援は500円から可能で、支援者には500円で作品画像とお礼・展覧会DM、2,500円でオリジナル作品プリント、5,000円で似顔絵作成、50,000円でオーダー絵画作成などのリターンがあります。
クラウドファンディングへの協力や詳しい情報は、こちらのページをご覧ください。
https://a-port.asahi.com/projects/maya_art
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今回の記事を書くにあたって葛西茉耶さんからお送りいただいた作品「もくろく」の中で、橋本が一番気に入った絵画の1枚を紹介します。
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