ミュージカル『ジェイミー』が、2025年7月9日(水)から7月27日(日)まで東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)で、8月1日(金)から8月3日(日)まで大阪・新歌舞伎座で、8月9日(土)から8月11日(月・祝)まで愛知県芸術劇場 大ホールで上演されます。ヒューゴ/ロコ・シャネルを演じる石川禅さんのインタビュー後編です。「下」では、石川さんにとっての穏やかな生活、役に応じて実際にパン作りをされたお話や、編み物をされたお話、先日開催されたコンサートタイトル『ライフ・イズ・ミュージカル』に込められた思いなどについて伺ったお話と、お客さまへのメッセージを紹介します。

(※4月に取材しました)
――『ジェイミー』は、ご自身を触発してくれる作品なんですね。
怠け癖がひどいですから(笑)。
――そうなんですか?
ばんと背中を押してもらったり、どこかで起爆剤をもらわないと、安穏に過ごしたくなるんですよ。穏やかに。
――穏やかに過ごすには、どのような生活が一番お好みですか?
コロナになって、半年くらい仕事がなくなって、そういう時間を過ごさざるを得なかったところはありますが…つまり、朝起きて、朝寝坊して、ゆっくりご飯を食べて、テレビを観て、本を読んで、ぼーっと一日を過ごすことを、1週間、10日とやっていくうちに、だんだんそっちのリズムになってしまいました。そこから、この半年間で染みついてしまった怠け癖を、なんとかしないと、と思いながら。自炊もしなければいけなくなり、料理のレパートリーも増えました。
――お得意なお料理は何ですか?
いろいろありますよ。ありとあらゆるものを作りました(笑)。茶碗蒸しやパンも作りました。セーグルフリュイというライ麦のパンにドライフルーツやくるみを入れたり、そこまでいっちゃいましたね。これまでの役どころで「パン屋の親父」とかありましたから。
――役どころによって、いろいろ挑戦されるんですか?
ト書きに「パン生地をこねる」とあると、まずパン生地と戯れなきゃいけないなと思って(笑)。一応小麦粉を使って、何かを作ろうと思ってやってみながら、役づくりをしたりします。『シラノ・ド・ベルジュラック』でラグノーの役をいただいたときも、そうでしたね。この間、ミュージカル『ハウ・トゥー・サクシード』でビグリー社長の役をやったときは、あんな強面なのに編み物が趣味だったので、マフラーを2、3本編みました。
――わぁ! 石川さんが編んだマフラー、見てみたいです! 使ったりされていますか?
使っていますよ。今日は持ってきていないですが。
――お手製のものを持っていらっしゃるんですね。すごい!
だんだん編む腕が上がってきちゃうんです。そうなってくると、こだわりが出てくるじゃないですか。1本のものが、ひとつの布になっていくなど、そういうことが好きなんですよ。
――パンを成形されていくところとかも、クリエイティブですよね。
そう! 日本工芸みたいなものも好きですし、ろくろも回してみたんですが、これは難しくて手に負えないなと思って辞めました。でも、ああいうのが好きなんです。何もないところから、本当にシンプルな素材できれいなものを作っていく職人技は、見ていて飽きないので。
――石川さんが実際に作られたものを、拝見してみたいです。
本当ですか? そのうち、機会があったら(笑)。だから、当時はそういう時間に使っていたかな。ただ、苦しまれている方もたくさんいらっしゃいましたから。
――楽しいとは言いづらい環境が、もちろんありましたよね。
でも、時代というのは本当に流れていきますからね。私たちは、誰ひとりとして例外なく、時代の生き証人になってしまったじゃないですか。
――きっと、後世に語られる時代を生きていますよね。
「おじいちゃん、おばあちゃんが若かった頃は、こんなことがあって、計画停電って知ってるか?」と。そんな時代があって今になっていくんですが、「人としての存在を忘れちゃいけない」ことは、ずっと普遍的にある気がするんですよね。傷つけちゃいけないとか。とても基本的なことですし、この『ジェイミー』も小さな物語かもしれませんが、ひとりの少年がどんな葛藤をして、お父さんに何をいわれて、どんなふうに傷ついて、どうやって自分を律して生きていくようになったかという物語ですから。大事に大事に演じたいなと思います。
*
――先日のコンサートのタイトルは『ライフ・イズ・ミュージカル』でした。ミュージカルにずっとご出演されている石川さんに、ご自身にとってのミュージカルの存在についてお伺いできればと思います。
『ライフ・イズ・ミュージカル』というタイトルにさせていただいたのは、ひとつは「ミュージカルは人生」という、いわゆる気障ったらしいところもあるんですが、もうひとつは「私の人生はミュージカルがないと成り立ちませんでした」という思いでもあるんです。
役者の道を目指してこの道に入って、もともとは新劇の劇団にいたわけですが、結局のところ僕を拾ってくれたのはミュージカルだったんです。おもしろいことに、帝国劇場で『回転木馬』という作品で主演をさせていただいて、「ひとりごと」という長いソロを歌い、やっと慣れてきたなと思った頃、「なぜ俺は、ここで歌っているんだろう?」と思っていたりしていたときに、ソニーピクチャーズのプロデューサーさんが僕の舞台をご覧になって、「その声、声優で使わない?」と言ってくださって。
もともと声優をやりたかった人間ですから、「へぇ~!こういう形で道が開けるんだ」とも思いましたし、とにかく自分の人生の中にミュージカルがなかったら、私はここまで来られませんでしたという思いもあります。どちらかというと、そちらの思いの方が強いですね。
※アイデアニュース有料会員限定部分には、先日開催されたコンサートタイトル『ライフ・イズ・ミュージカル』に込められた思いなどについて伺ったお話やお客さまへのメッセージなどインタビューの後半の全文と写真を掲載します。
<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)
■前世を占ってもらったら、奈良時代の木こりだった。山のふもとで、木に囲まれて暮らしていたと
■『ライフ・イズ・ミュージカル』とは、一生の仕事として、現世で「人と交わる仕事をする」こと
■新しい作品ごとに、自分の集大成だと思っている。積み重ねてきたもの、全集中力をぶつけていく
■イギリスの片田舎シェフィールド出身の少年・ジェイミーの物語。彼の人生は今も続いている
<ミュージカル『ジェイミー』>
【東京公演】2025年7月9日(水)〜7月27日(日) 東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)
【大阪公演】2025年8月1日(金)〜8月3日(日) 新歌舞伎座
【愛知公演】2025年8月9日(土)〜8月11日(月・祝) 愛知県芸術劇場 大ホール
公式サイト
https://horipro-stage.jp/stage/jamie2025/
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禅さんは何でもてきぱきしているイメージなので「怠け癖がひどい」の言葉に驚きました。
『ライフ・イズ・ミュージカル』というタイトルでのアニバーサリーソロコンサート開催はとても嬉しく、また内容も禅さんのこれまでも新しいものもたっぷりでとても素晴らしかったので、改めて禅さんにとってのミュージカルという話を聞けてよかったです。初演から4年の時を経た禅さんの全力のヒューゴ/ロコ様を観られるのがとても楽しみです。