1人複数役で子供と大人を演じる、スタジオライフ『THE SMALL POPPIES』開幕 | アイデアニュース

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1人複数役で子供と大人を演じる、スタジオライフ『THE SMALL POPPIES』開幕

筆者: アイデアニュース編集部 更新日: 2017年6月21日

5月上旬に掲載した劇団スタジオライフの曽世海司さんインタビューの際に少し紹介したスタジオライフの『THE SMALL POPPIES』公演開幕レポートが、スタジオライフから編集部に届きましたので掲載します(アイデアニュース編集部)。

男優劇団スタジオライフがイギリスの劇作家DAVID HOLMANの戯曲『THE SMALL POPPIES』を上演。6月15日、シアターサンモールにて開幕した。これまでに『トーマの心臓』でドイツのギムナジウムの少年たち、『DAISY PULLS IT OFF』でイギリスの名門女学院の生徒を演じてきたスタジオライフの劇団員が今回演じるのは、なんと5歳児! しかも、一人複数役で、子供と大人を兼ねて演じるのだ。様々な国からの移民が集まるオーストラリアのアデレードを舞台に、人と人とが関わり合う大切さを感じさせる作品だ。(文/大原 薫)

5歳児達(船戸・岩﨑・松本)、『THE SMALL POPPIES』公演より=写真提供・劇団スタジオライフ

5歳児達(船戸・岩﨑・松本)、『THE SMALL POPPIES』公演より=写真提供・劇団スタジオライフ

劇場に入るとすぐに目に入るのは、白いステージの中央にあるカラフルな回り舞台。オーストラリアのアーティスト、ケン・ドーンをイメージさせるような鮮やかな色合いに早くも気分が浮き立ってくる。回り舞台を出演者が手動で回しながら、物語は進んでいく。回り舞台を取り囲むのは数脚の、こちらもカラフルな椅子。役者は自分が演じていない場面でも、舞台上の椅子に座って待機。常に物語に寄り添って存在し続けることになる。

舞台セット、『THE SMALL POPPIES』公演より=写真提供・劇団スタジオライフ

舞台セット、『THE SMALL POPPIES』公演より=写真提供・劇団スタジオライフ

開幕し、舞台には「5歳児たち」が飛び出してきた。彼らが明るく歌い踊るところから物語は始まる。笑顔の少年少女、でも演じているのは大人の男性。初めはちょっとびっくりするけれども、不思議と次第に違和感を覚えなくなり、ストーリーに集中できるようになる。

1980年代、小学校に入る前の準備学級に入学する5歳児たち。新しい世界の入り口に立った彼らは、5歳児なりの葛藤を感じながら、友情を培っていく。内気なクリントは離婚したママとの母子家庭。テオはギリシャからの移民家族。レップはカンボジアからの難民少女でアデレードに到着したばかり。様々な出自を持つ子供たちがおっかなびっくり、少しずつコミュニケーションを重ねていく様子が、数々のスケッチから描かれる。

子供笠原、『THE SMALL POPPIES』公演より=写真提供・劇団スタジオライフ

子供笠原、『THE SMALL POPPIES』公演より=写真提供・劇団スタジオライフ

スタジオライフの脚本・演出を務める倉田淳がこの作品と初めて出会ったのは1987年のロンドン。今回のスタジオライフ版は男優だけで演じられるが、海外ではこの作品は大人の男女が演じることが通例となっているそうだ。観劇して前向きなパワーを感じた倉田は上演を希望。HOLMANの許諾を得たものの上演が実現せず、30年後の今、上演される運びとなった。倉田は作品の持つメッセージを丁寧に紐解いて、子供たち同士、さらには大人たちとも関わり合う様を細やかに描く。だからこそ、大人が演じる子供の姿が実にリアルに、「今、ここにある物語」として響いてくるのだろう。

大人笠原と5歳児山本、『THE SMALL POPPIES』公演より=写真提供・劇団スタジオライフ

大人笠原と5歳児山本、『THE SMALL POPPIES』公演より=写真提供・劇団スタジオライフ

特に印象的なのはレップのエピソード。カンボジア内戦を逃れてアデレードにたどりついたレップは英語が喋れない。異なる文化を持つレップは周りの子たちと自分が違うことに、小さな胸を痛める。子供特有のストレートさで同級生たちから違いを言い立てられることもあるが、そんなレップにクリントは手を差し伸べる。「学校、行きたくない」と泣いていたクリントが勇気を持てたのも、他の同級生たちとの関わり合いで少しずつ変わっていったから。たとえ言葉が通じなくてもお互いに関わりを持つことで、少しずつ影響を与え合い、心を重ねることができる。そんな優しさがこの作品には満ちている。

移民拒否問題や国境に壁を作るなど、息苦しさが増す今の世界情勢。人種の違いも文化の違いも乗り越えて素朴なコミュニケーションを重ねる5歳児たちから、感じ取ることも多い。

唄いおどる、『THE SMALL POPPIES』公演より=写真提供・劇団スタジオライフ

唄いおどる、『THE SMALL POPPIES』公演より=写真提供・劇団スタジオライフ

ダブルキャストでの上演で、koalaチームはクリント役の山本芳樹が細かくキャラクターを作り込み、5歳児の葛藤を時にユーモラスに、時にナイーブに表現する。『DAISY PULLS IT OFF』でのデイジー役の好演が記憶に新しい宇佐見輝は少女レップを健気に演じた。笠原浩夫のテオの明るさが、劇場をあたたかく包み込む。対するkangarooチームは岩﨑大が弱気なクリントを演じる様が、実に少年らしい。松本慎也は心の揺れ動く様を丁寧に演じて、レップのドラマを鮮やかに色づかせる。船戸慎士は大柄な体躯を生かして、多動気味の少年テオをパワフルに演じて印象に残る。各チームの色合いの違いも見どころの一つとなるだろう。(文/大原 薫)

<スタジオライフ『THE SMALL POPPIES』>
【東京公演】2017年6月15日(木)~7月2日(日) シアターサンモール
公式サイト http://www.studio-life.com/stage/the_small_poppies2017/

<スタジオライフ次回公演>
2017年8月17日(木)~9月3日(日) 新宿シアターモリエール
『卒塔婆小町』 【作】三島由紀夫 【演出】倉田淳
(同時上演『深草少将の恋』【作・演出】倉田淳)

<関連リンク>
劇団スタジオライフ http://www.studio-life.com/

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※アイデアニュース有料会員限定部分には、劇団スタジオライフが、アイデアニュース有料会員のために特別に提供してくださった公演写真の中からピックアップした40カットの写真(koalaチームとkangarooチームとそれぞれ20カット)を掲載しました。

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