2016年7月10日に投開票される参議院選挙で、自民、公明、おおさか維新の会などの「改憲勢力」の議席数が、憲法改定の発議に必要な全議席の3分の2(162議席)に達する見通しが強まってきました。2016年7月6日の毎日新聞朝刊や、7月5日の産経ニュースなどが報じています。第二次世界大戦後に制定されて以降、これまで1度も改定されることがなかった憲法の改定が、いよいよ現実的になってきました。憲法改定を主張する自民党の改憲草案とは、どういうものなのか。自民党憲法改正推進本部のページからご紹介します。
自民党の憲法改正草案は、2012年(平成24年)4月27日に決定したもので、自民党憲法改正推進本部のページからダウンロードできるPDFは、上下2段に分かれ、上段に改正草案の条文が、下段に現行憲法の条文が示され、内容を比較できるようになっています。
ここでは、自民党の憲法改正草案から、安全保障(「平和主義」についての9条と「国防軍」についての9条の2)、信教の自由(20条)、表現の自由(21条)、勤労者の団結権(28条)、緊急事態(98条と99条)、改正(100条)について紹介します。以下の画像は、改正草案の条文で、現行憲法に対する修正となる部分は、ゴシック(太字)で表記されています。
「国防軍」と題された9条の2は、新設項目です。
現在の憲法では、20条1項で「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない」とされていますが、自民党の改正草案は以下のようになっています。
表現の自由については現行憲法は21条1項で「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」、21条2項で「検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。」としています。自民党憲法改正草案は以下の通りです。
労働組合活動については、現行憲法は28条で「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。」と定めています。自民党の改正草案は28条2項を新設しています。
緊急事態宣言について定めた98条と99条は、新設項目です。
憲法改正については、現行憲法は96条1項で「この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。」としています。改正草案では「総議員の過半数の賛成」で憲法改正を国民に提案できるとしているので、憲法をさらに修正することが現在より格段にしやすくなります。
報道機関の情勢調査が正しいとは限りませんし、7月10日の参院選までまだ3日あるので、実際に「改憲勢力」の議席数が憲法改定の発議に必要な全議席の3分の2に届くかどうかはわかりません。しかしながら、もし「改憲勢力」が3分の2に届けば、2016年7月10日が、日本が改憲に向けて大きく踏み出した日として記憶されるのは、間違いないと思います。
衆議院は自公だけで全議員の3分の2(317人)以上である325人の議席を確保している(2016年6月22日現在)ので、参議院で改憲勢力が3分の2以上の議席を確保すれば、以下の手順で改憲の発議が可能となります。
国会議員(衆議院100人以上、参議院50人以上)が憲法改正案の原案を発議→衆参の憲法審査会で審査→衆議院と参議院の本会議へ→国会議員の3分の2が賛成→憲法改正を発議→発議日から60日以後180日以内に国民投票を実施→投票総数の2分の1を超えた人が賛成の場合は憲法改正が成立
詳しくは総務省の国民投票のページをご覧ください。