東宝ミュージカルや劇団四季などで活躍してきた中井智彦さんが、「表現者」として挑戦する新たな活動を開始した。その第一歩ともいえる「中井智彦 Premium Show vol.1」が、7月2日に品川プリンスホテルClub eXで開催された。中原中也の世界を表現する第1部「詩人・中原中也の世界〜在りし日の歌〜」と、今なお歌い継がれるスタンダードナンバーを歌う第2部「ゴールデンヒットセレクション〜愛のかたち〜」の構成。新たな出発を喜ぶ中井さんと、共に祝う観客の温かさが印象的なライブだった。
第1部は、中井さんが惚れ込んだ中原中也の詩に自ら曲をつけ、自ら創作し表現するという独り舞台。開演前に中原中也についての紹介とともに、「曲間で拍手を頂くことなく最後まで見て頂けたら」と中井さん自身によるアナウンスがあった。中原中也の物語として、途切れることなく入り込んで欲しいという思いが込められているのだろう。音楽はピアノと中井さんの声のみの究極にシンプルな構成だが、繊細な音からドラマティックな音まで、情感豊かに届いてきた。
この作品の企画から作曲・構成・演出も自身で行った中井さんは、「今回演じる作品は『連作歌曲劇』という新たな形で、ピアノと声による響き、そしてリアルな人間中原中也の生きざまを表現したいと考えます。中原中也の詩集『山羊の歌』『在りし日の歌』からも抜粋しています。『在りし日の歌』が息子・文也の在りし日に献上して書かれた題に対し、僕が感銘を受けた中也に寄せる題として『〜在りし日の歌〜』というタイトルをつけました」と説明している。
黒いマントに身を包み、黒いハットを被った中井さんが登場し、中原中也自身を演じていた。ステージは円形で、机が置かれており、引き出しから原稿用紙を取り出して詩を書いたりもする。子供が生まれてからの後半の物語は、着物に着替え、時が過ぎていったことが視覚からも感じられた。照明もさまざまに変化し、季節感や、感情の表現に効果的な役割を果たしていた。音楽劇と朗読劇が融合したような印象の一人舞台。詩の平面的な世界が、立体的に膨らんで、多角的に感じることができる。どこか抽象的な余白が観客に委ねられているように感じる舞台だった。
<中井智彦 Premium Show vol.1>
【東京公演】2016年7月2日(土) 品川プリンスホテル Club eX (この公演は終了しています)
<関連ページ>
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⇒中井智彦1stアルバム「私の歌を聴いてくれ」
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アイデアニュース有料会員向け部分では、「中井智彦 Premium Show vol.1」第2部の様子をご紹介します。
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