エドガーたちは、確かにそこに存在した。ミュージカル・ゴシック『ポーの一族』 | アイデアニュース

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エドガーたちは、確かにそこに存在した。ミュージカル・ゴシック『ポーの一族』

筆者: 村岡侑紀 更新日: 2021年2月6日

2021年2月3日に東京国際フォーラムCで東京公演初日を迎えたミュージカル・ゴシック『ポーの一族』(萩尾望都さん原作、小池修一郎さん脚本・演出)のゲネプロ観覧が、2月2日に行われました。宝塚出身の女優たちを中心にした美の競演の空気感が「バンパネラらしさ」にリアリティを持たせ、その一方で宝塚出身ではない男優らの「人間らしさ」が同じ舞台に見事に存在し、それがより一層、バンパネラの存在感を際立たせるというキャスティングの効果を感じました。迫力のあるダンスシーンや、上下左右に空間を余すところなく使うダイナミックな演出による臨場感にも息を呑みました。この作品は、2021年2月7日(日)12:30の公演と、2月13日(土)の12:00公演と17:00公演、そして2月28日(日)12:00からの大千秋楽の公演がライブ配信され、大千秋楽公演は映画館でライブ・ビューイング上映も実施されます。大千秋楽公演は台湾の映画館でもライブ・ビューイング上映されるほか、台湾と香港でライブ配信も実施されます。

ミュージカル・ゴシック『ポーの一族』より=撮影・岸隆子(Studio Elenish)
ミュージカル・ゴシック『ポーの一族』より=撮影・岸隆子(Studio Elenish)

開幕前の「The Poe Clan」と書かれた緞帳は、さながら赤い薔薇の園。一幕冒頭に登場する、シカ狩りをしながら薔薇咲くポーの森に迷い込むグレン・スミスのような気持ちになり、妖しいざわめきが心に湧き上がってくるのでした。

オーケストラが鳴り、赤い薔薇の園の奥に開けた視界に映し出される光景は、1964年のフランクフルトです。伝説とされているバンパネラ(吸血鬼)である「ポーの一族」が実在するのではと考えているマルグリット・ヘッセン、ルイス・バード、ドン・マーシャル、バイク・ブラウン4世の会話から始まります。ルイスは、5年前にエドガーという少年にギムナジウムで会ったと語ります。時は20世紀。果たして彼が会ったエドガーは、19世紀にグレン・スミスが書き残した日記に登場する「エドガー」と同一人物なのでしょうか。

物語は、彼らの会話にリードされながら進んでいきます。伝承として伝えられてきた「バンパネラ」。観客の私たちもさながら、彼らの語りに耳を傾けるような気持ちになります。でも、これは昔話ではありません。今なお、エドガーは、そして他のポーの一族たちはどこかに…いや、少なくとも「ここ」にいるのです。この記事もまた、私がエドガーたちに会った記録です。

■体温がない存在ながらも脈打つような錯覚を覚えるのは、明日海りおの魅力そのもの

エドガー・ポーツネルは、宝塚版の初演に引き続き、明日海りおさんが演じられています。メイクも変わり、彼女そのものの美しさがひときわ際立っている印象でした。人間としての、素直かつ無邪気で利発な少年エドガーからの、苦悩しつつも精神的に成熟を得た妖艶なバンパネラ・エドガーへと演じ分けも見事です。体温がない存在でありながらも、どこか脈打つような錯覚を覚えるのは、明日海りおさんの魅力そのものなのだと感じました。彼女のエドガーだからこそ、リアリティがあり、観客は「エドガーの目撃者」のような気持ちになるのではないでしょうか。

■初々しさが印象的な千葉。実年齢を重ねているピュアさや脆さを的確に表現

今回がミュージカル初挑戦であったというアラン・トワイライト役の千葉雄大さんは、その初々しい少年らしさがとても印象的でした。少年の形をして数世紀も生きてきたエドガーと、実年齢のみを重ねているピュアさや脆さのあるアランとの対比が的確に表現されており、エドガーとメリーベルがその心に惹かれるにふさわしい説得力があると感じました。孤独を抱え、不機嫌で不遜な美しい少年アランが、エドガーに心を開くからこそ見せる無邪気な笑顔、そして人間に絶望し、ある選択をするラストシーンへ。繊細な心境の変化が現れる、彼の表情も見事です。

■ポーツネル一家の絵のような美しさを完璧なものに仕上げるノーブルな小西遼生

元宝塚トップスターたちの雰囲気に調和し、ポーツネル一家の「絵のような美しさ」を完璧なものに仕上げているノーブルな佇まいが印象的だったフランク・ポーツネル男爵役の小西遼生さん。シーラと「共に塵となるまで」と永遠の愛を誓った男爵は、人間に戻れないことに苦悩し続けるエドガーとぶつかりますが、そこにも強い愛を感じました。彼もまた、エドガーの孤独に寄り添おうとしていたのではと感じられました。

■色恋沙汰を含めて、極めて人間臭いキャラクターを好演した中村橋之助

ジャン・クリフォード役の中村橋之助さんも、ミュージカルは本作が初出演。恩師の娘ジェインと婚約中ではありますが、ブラックプール中の女性たちが彼の虜になっており、隙あらばお近づきになろうとする始末。本人も満更ではないというキャラクターです。シーラを見た瞬間、たちまち彼女の虜に。婚約者そっちのけで彼女ばかり目で追ってしまうのでした。色恋沙汰を含めて、極めて人間臭いキャラクターを好演。バンパネラの透明感とは対照的に、体温のある人間感が見事でした。

■血を求める恍惚とした表情に、冷たくアンビバレントな色気が漂う夢咲ねね

シーラ・ポーツネル男爵夫人役の夢咲ねねさんは、ポーツネル男爵との「永遠の愛」を夢見る可憐な乙女から、魔性のバンパネラ・レディへの変化が圧巻でした。悩めるエドガーと体が弱いメリーベルを気にかける優しさや温かさと同時に、クリフォード医師の血を求める際の恍惚とした表情に漂う冷たさ。そのアンビバレントな危うさに宿る色気は特筆すべきでしょう。歌も素晴らしく、美しく透明感のある声が印象的でした。スコッティ村を逃れ、旅に出る馬車の中でのナンバー、必聴です。

■可憐さに妖しさが加わる綺咲愛里。エドガーを想って歌う新曲は必聴

幼い日々には、老ハンナたちに愛され、養子先ではオズワルドとユーシスという美貌の兄弟に愛され、アランをも魅了するメリーベル役は綺咲愛里さん。彼女を愛さない者など存在しないであろうと思わせる可憐さを感じました。そしてもちろん、エドガーほど彼女を愛した存在はいなかったでしょう。二幕、エドガーと共にアランを誘惑するシーンでは、そんな可憐さに妖しさも加わります。宝塚のデュエットダンスを彷彿とさせる場面は、少年少女の形をした数世紀も生きた二人と、純粋に実年齢のみを生きてきた少年との対比がくっきりと際立つ、息を飲む瞬間でした。宝塚版にはなかった、エドガーを想って歌われる新曲は必聴です。

■この世ならぬ存在感に満ち溢れ、耳を塞いでも響いてきそうな福井晶一の声

大老ポーとオルコット大佐の2役は福井晶一さん。天地から響くような、400年の眠りから目覚めた者の重厚な声。福井さん演じられるキング・ポーの迫力は、この世ならぬ存在感に満ち溢れ、耳を塞いでも心に響いてきそうな、畏怖の念を呼び覚ます響きでした。後半、バンパネラが消滅後に行き着く場所は「天国の隣か、地獄の向いか」と、説得力のある歌声で問うように歌うシーンでは、人間の時間軸から見れば永遠にも見えるバンパネラの儚さが一層胸に迫ってくるのでした。

■涼風真世の力強くドラマティックな歌声だからこその説得力ある2役

老ハンナと霊媒師ブラヴァツキーの2役を演じるのは、涼風真世さん。どちらも「他者を動かすほどの説得力のある言葉を発する」という点が共通しているように思います。涼風真世さんの力強くドラマティックな「聞かせる」歌声だからこその説得力だと感じました。老ハンナは、エドガーを一族にと目論みつつ育てるのですが、バンパネラが一族に入れたいと思うのは、極めて優れた者や愛した者に限ります。「この子をバンパネラに」という思いは、彼を認めた上での愛情だったのではないでしょうか。

ミュージカル・ゴシック『ポーの一族』より=撮影・岸隆子(Studio Elenish)
ミュージカル・ゴシック『ポーの一族』より=撮影・岸隆子(Studio Elenish)

※アイデアニュース有料会員限定部分には、印象に残ったシーンを「存在」「時間」を切り口にミュージカル・ゴシック『ポーの一族』を紹介したルポの全文と写真3枚を掲載しています。写真はライブ配信とライブ・ビューイングについて紹介した記事(https://ideanews.jp/archives/103306)に掲載したものと同じです。

<有料会員限定部分の小見出し>

■自らの一番古い記憶をたどるエドガー。それは、メリーベルの泣き声

■「私たちは存在する」。シーラやエドガーに見る、バンパネラの誇りと苦悩

■「時」が絶対的に君臨する物語。何も語らず、そこにいつも「時」は静かにある

■終幕後、時の旅へ出てしまったエドガー。舞台上にいたのは、確かに彼だった

<ミュージカル・ゴシック『ポーの一族』>
【大阪公演】2021年1月11日(月祝)~1月26日(火) 梅田芸術劇場メインホール(終了)
【東京公演】2021年2月3日(水)~2月17日(水) 東京国際フォーラム ホール C
【名古屋公演】2021年2月23日(火祝)~2月28日(日) 御園座
公式サイト
https://www.umegei.com/poenoichizoku/
視聴チケット購入ページ
https://w.pia.jp/t/poenoichizoku/

<キャスト>
明日海りお
千葉雄大
小西遼生、中村橋之助
夢咲ねね、綺咲愛里
福井晶一、涼風真世
能條愛未、純矢ちとせ
(以下、男女五十音順)
石川新太、大井新生、加賀谷真聡、鍛治直人、鯨井未呼斗、酒井航、高橋慈生、新原泰佑、西村清孝、松之木天辺、丸山泰右、武藤寛、吉田倭大、米澤賢人
伊宮理恵、桂川結衣、木村晶子、多岐川装子、田中なずな、笘篠ひとみ、七瀬りりこ、花岡麻里名、濵平奈津美、蛭薙ありさ、美麗

ミュージカル・ゴシック『ポーの一族』舞台映像=YouTubeの梅田芸術劇場チャンネルより


【日本国内ライブ配信】※アーカイブ配信はありません
①2021年2月 7日(日)12:30公演
②2021年2月13日(土)12:00公演(エドガーアングルバージョン)
③2021年2月13日(土)17:00公演(アランアングルバージョン)
④2021年2月28日(日)12:00公演
https://www.umegei.com/poenoichizoku/special.html#live
料金(各回の開演 30 分後まで購入可能):
4,500円(税込)⇒「Go To」適用で3,600 円
パンフレット郵送付6,500 円(税込、数量限定)⇒「Go To」適用で5,200円

【日本国内ライブ・ビューイング】
2021年2月28日(日)12:00公演
会場:全国各地の映画館
https://liveviewing.jp/contents/poenoichizoku
料金:5,500円(全席指定・税込)

【台湾ライブ・ビューイング】
2021年2月28日(日)12:00公演(日本時間)
会場:台湾内の映画館
料金:NT$1450
https://www.umegei.com/poenoichizoku/special.html#live

【台湾・香港ライブ配信】
2021年2月28日(日)12:00公演(日本時間)
料金:NT$1200 HK$335
https://www.umegei.com/poenoichizoku/special.html#live

<関連リンク>
ミュージカル・ゴシック『ポーの一族』 Twitter
https://twitter.com/poe_musical

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ミュージカル・ゴシック『ポーの一族』より=撮影・岸隆子(Studio Elenish)
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<筆者プロフィール>村岡侑紀(むらおか・ゆき) ライター 広告制作会社に入社し、コピーライターとしてキャリアをスタート。その後、化粧品メーカーのマーケティング担当として多くのブランドを育成。現在は、ベンチャー企業で広報を担当している。さまざまなフィールドに立ってきたが、共通するのは「誰かや何かの魅力を伝える」こと。趣味は、舞台鑑賞や美術館巡り。作品はもちろん、そこに携わる方々の魅力を伝えたいという思いで、ライターに。 ⇒村岡侑紀さんの記事一覧はこちら

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