フレンチロックミュージカル『赤と黒』が、2023年12月8日(金)から12月27日(水)まで、東京芸術劇場プレイハウスで、2024年1月3日(水)から1月9日(火)まで梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで上演されます。スタンダールの同名小説を原作とし、フレンチロックで綴られる本作の主人公・ジュリアン・ソレルを演じるのは三浦宏規さん、演出を手がけるのは、世界各国に新風をもたらしたミュージカル『SIX』の共同演出家としてクレジットを持つジェイミー・アーミテージさんです。本作は、ジェイミーさんの日本初演出作品となります。
アイデアニュースでは、ジュリアンと恋に落ちる女性のひとりである、マチルド・ド・ラ・モールを演じる田村芽実さんにインタビューしました。インタビューは、上下に分けて掲載します。「上」では出演が決まった時の思い、ご自身のお芝居のこと、マチルドというキャラクターについて、演出のジェイミーさんとの会話のことなどについてお話ししてくださった内容を紹介します。「下」では、演出のジェイミーさんも共演の三浦さんも同世代だということ、同世代だからこそ思うこと、演じるとはご自身にとってどのような表現ツールなのかということ、演じながら大切にしていること、芝居への探究心のことなどについてお話ししてくださった内容と、お客さまへのメッセージを紹介します。
ーーご出演が決まって、どう思われましたか?
『赤と黒』は、スタンダールのとても有名なお話ですから、小説は読んだことはなかったんですが、名前は知っていて。でも、ミュージカルになっていることすら知らなくて、宝塚バージョンがあることを知って、海外版も拝見しました。でも海外版の映像だと言葉がわからなかったりするので、マチルドの肩書きや令嬢といったお嬢様のイメージに、「これは私が似合う役なのかな」というのが正直な最初の印象でした。
というのも、卑下しているわけではなくいつも思うんですが、かわいい、綺麗なヒロインは、もちろん頂ければ一生懸命やりたいんですが、私がやるよりも、役割として私より綺麗だったり、かわいかったりする人はたくさんいると思っていて。歌声やお芝居も正統派で、誰が観ても守りたくなるようなお芝居をする方、歌われる方、説得力がある方はたくさんいると思うんです。だから、どうして私にマチルドをやってほしいですと、お話をいただいたんだろうと。
そんなふうに、最初は「どこが私とリンクしたんだろう?」と思っていたんですが、少しずつ『赤と黒』の世界を勉強していくうちに、マチルドはよくいるお姫様、お嬢様というわけでないんだと気づきました。お金持ちの暮らしや貴族生活に飽き飽きしているんです。もちろん、「このお城を出たいんだ」みたいなお嬢様像は、おとぎ話やミュージカルにもよくありがちではありますが、またそれとも違っていて。
彼女には、聡明で、知的な部分もあって、父からの愛情をきちんと受けているんです。それは令嬢だから、貴族だからということではなくて、きちんと「ひとりの人間」として自分自身が価値のある人間なんだと教育を受けてきたのがマチルドという人間なので、マチルドは意外と年齢よりも成熟している女性なんです。
だからこそ、彼女は、社会をおままごとのように感じているんだなと思ったときに、私は少し変わった人間というか、お芝居も少しひと捻りして、普通にやるのが嫌いなので…(笑)。そんなふうに何かやりたくなってしまうので、そこを求めてくださっているのかなとすごく感じました。だから、とても嬉しかったですし、ぜひやりたいと心の底から思いました!
ーーそこが、田村さんのお芝居に惹かれるところです。
稽古をやっていくと、少し違うことをやりたくなってしまうんです。どんどんしたくなっちゃって、全然違う方向で演出家の人を笑わせてしまったりだとか。ダメ出しのことをノートと言いますが、いただいたノートをそのまま守るのではなく、違う表現にしてみようと思ったりするので、そこがマチルドにも通ずるんだなと。また、宝塚バージョンのマチルドは、令嬢味が強いイメージがありましたが、せっかく宝塚ではないバージョンを日本初演で上演するので、やりがいがあるなんて言い方をしたら失礼かもしれませんが、私が暴れ回っていい作品ということで、勝手に思っています(笑)。
ーー以前、廣瀬友祐さんと対談していただいたときも、田村さんがおっしゃるひねくれた部分を、廣瀬さんがとても褒めていらっしゃいましたよね。自分と似ていると。
そうでした(笑)。廣瀬さんのおっしゃっていたことはわかります。
ーー田村さんの目線でこの物語を見ると、この『赤と黒』という物語には、どんなおもしろさがありますか?
台本だけ見ると、やはりエゴだったり、皮肉、貧富の差による、ひとりの人間の、ジュリアンの物語としてもとれるんですが、それよりも、貧富の差によって生きる道が決められていく話で、ある種ジュリアンもそうなんだなと。この間、三浦宏規くんと話したときに、ジュリアンを演じるからこそ「ひでぇ男だな」と言っていたんですが、私はまったくそうは思っていなくて。かわいそうな人だなというか。
私は人を見たり、役を紐解くときに、こういった性格の背景をいつも見るんですが、たとえば、幼少期の頃にどんな暮らしだったのかは、すごくその人のパーソナリティを組み立てる大事なものだと思っているんです。特に、ジュリアンが最終的に、私が演じるマチルドではなく、夢咲ねねさんが演じるルイーズの方に心を持っていかれる理由も、紐解くと、すべての人がそうではないと思いますが、ジュリアンがもともとお母さんがいないという育ちだということもあって、そういった母親的な包容力を求めているのかなと思ったりしました。
運命というものがあるかどうかはわからないですが、特に昔の時代は本当に、生まれや育ちで敷かれたレールの上を歩いていくことしかできなかったんだなと。どれだけ優秀でも、個人が長けていても、血筋や、そのレールの上でしか生きていくことができなかったことへの皮肉だったり、訴えという印象をこの本自体には感じました。
※アイデアニュース有料会員限定部分には、マチルドというキャラクターについて、演出のジェイミーさんとの会話のことなどについてお話ししてくださった内容などインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。25日掲載予定のインタビュー「下」では、演出のジェイミーさんも共演の三浦さんも同世代だということ、同世代だからこそ思うこと、演じるとはご自身にとってどのような表現ツールなのかということ、演じながら大切にしていること、芝居への探究心のことなどについてお話ししてくださった内容やお客さまへのメッセージなどインタビューの後半の全文と写真を掲載します。
<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)
■自分が演じなかったとしても、マチルドに惹かれる。聡明で若さのパワーがあっておもしろい
■台本はレトリックな文脈で音楽はロック。そのノッキングを超えて感情がハマるのが楽しみ
■ジェイミーとノッキングについて話した。「今の時代の子がタイムスリップしたような」と
■タイムスリップしてきたからこそ、敢えてその言葉を使うという、少し上手をいくマチルド
<フレンチロックミュージカル『赤と黒』>
【東京公演】2023年12月8日(金)〜12月27日(水) 東京芸術劇場プレイハウス
【大阪公演】2024年1月3日(水)〜1月9日(火) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
公式サイト
https://www.umegei.com/rouge-noir2023/
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