「湖に山と雲は映り続ける。鉤十字よりも長く」、舞台『キオスク』ルポ | アイデアニュース

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「湖に山と雲は映り続ける。鉤十字よりも長く」、舞台『キオスク』ルポ

筆者: 村岡侑紀 更新日: 2021年2月17日

ナチスドイツが台頭するオーストリアで、激動の時代に翻弄される青年フランツと彼を取り巻く人々を描いた舞台『キオスク』が、2021年1月22日(金)に兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールで開幕しました(東京・静岡・愛知・広島公演あり)。オーストリアの人気作家ローベルト・ゼーターラーによるベストセラー小説『キオスク』の舞台化で、2019年12月から2020年1月にリーディング版(朗読劇)が上演され、今回はゼーターラー自身が手掛けた戯曲での日本初上演となります。出演は、(敬称略)林翔太、橋本さとし、大空ゆうひ、上西星来(東京パフォーマンスドール)、吉田メタル、堀文明、一路真輝、山路和弘のみなさん。東京公演初日を観劇したレポートです。

舞台『キオスク』より=撮影・岸隆子
舞台『キオスク』より=撮影・岸隆子

1937年の秋、17歳の青年フランツ・フーヘル(林翔太さん)は故郷のザルツカンマーグートを離れ、母マルガレーテ(一路真輝さん)の旧友であるオットー・トゥルスニエク(橋本さとしさん)が営むウィーンのキオスク(新聞やタバコを商う小店舗)で働くことになります。アッター湖が美しい田舎から都会のウィーンに出てきたフランツは、キオスクで働きながら、かの精神分析学者ジークムント・フロイト(山路和弘さん)に出会います。「先生の著書を全部読みます」と目を輝かせる青年にフロイトは、「人生を楽しむためには、そんなことより恋をせよ」とアドバイスします。なるほど!と即行動に移したフランツは、プラーター遊園地で出会ったミステリアスなボヘミア生まれのアネシュカ(上西星来さん)に心奪われますが…。

『キオスク』を一言で表現すると、田舎育ちの無邪気なフランツが都会のウィーンへ行き、さまざまな人との出会いの中で成長する姿を描いた物語です。フランツが働く場所がキオスクであるからこそ、彼は短期間で多くの刺激を吸収することができたのでしょう。この物語が成立する上で、舞台がキオスクであることは必然であるかもしれません。ウィーンの通りに面し、行き交う人々を眺められ、お客が来るからこそ、フランツはキオスクのスツールに座っているだけで時代の空気を自然と吸収できる、いや吸収せざるを得なかったのです。

「新聞を読まない奴にはキオスクの店主など務まらない」と、真面目な「新聞読み」であることを伺わせるオットーの教えに素直に従い、フランツは店頭に並ぶ様々な新聞を読むようになります。生まれてこの方、大自然の中でのびのびと育ったフランツは、偏ることなく多様な政治思想を吸収していきます。そして、年齢の割にピュアとはいえ、頭の中は女の子のことでいっぱいのフランツ。アネシュカに振り回されるフランツは、キオスクの常連客の1人であるフロイトに、自分の恋の悩みを相談するのでした。

ここまでであれば、瑞々しい青春小説です。しかし、この物語の舞台は1937年のウィーン。ナチスの台頭に、オーストリアも無縁ではいられなかった時代でした。ユダヤ人の排斥が始まり、フランツを取り巻く環境は大きく変化します。信念を貫くオットー。ユダヤ人のフロイト。不法滞在者という立場で生き抜くための選択をするアネシュカ。フランツの周りから、次々に彼らは姿を消していきます。

ザルツカンマーグートという地方に住む母マルガレーテとは、文通でやり取りが続きます。最初は「ママ、こんな事があった」と素直に事実を伝えるフランツですが、オットーの運命を機に変わります。彼の死の真相について心配をかけまいと「愛ある嘘」を書き送るフランツ。地方にもナチスの影は忍び寄りますが、ウィーンはより深刻な状況に。母は次第に、フランツの状況を把握できなくなっているのでした。

舞台『キオスク』より=撮影・岸隆子
舞台『キオスク』より=撮影・岸隆子

こうした状況で、彼らの代わりにフランツの中に入ってくるものがあります。「時代の空気感」です。ウィーンに降り立ってすぐに下水の臭いに辟易したフランツへ「時代が腐っているのよ」と語る女性。赤のエーゴンと呼ばれる、強烈な反体制思想を持つキオスクの客。母からの手紙を届けてくれつつも、いつしか「ハイル・ヒットラー」と挨拶してくるようになった郵便屋。オットーを連行したゲシュタポ。アネシュカと姿を消した、鉤十字(ナチスの紋章)をつけた男…。少しずつ、フランツにしのび寄ります。

舞台『キオスク』より=撮影・岸隆子
舞台『キオスク』より=撮影・岸隆子

※アイデアニュース有料会員限定部分には、大空ゆうひさん、吉田メタルさん、堀文明さんが中心に表現された「時代の空気感」と林翔太さんの演技との連動感、パンフレットに書かれていた内容に沿ってGoogleストリートビューで舞台に登場する場所を訪ねてみた感想、舞台を観終えて感じたことなどについて書かれた舞台『キオスク』ルポの全文を掲載しています(写真は掲載していません)。

<有料会員限定部分の小見出し>

■多くの役を演じる大空ゆうひ・吉田メタル・堀文明が、時代の空気感を担う

■視覚面のリアリティより人物の心理を表現するセット。印象が一変する瞬間も

■Googleストリートビューでウィーンを巡ると『キオスク』がより近くに

■来ては去っていった帰らぬ人々の影、もしかするとこれから来る人の影も

■ただの旅人でいられることが当たり前ではないことを噛み締めながら

<舞台『キオスク』>
【兵庫公演】2021年1月22日(金)~1月24 日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール (この公演は終了しています)
【東京公演】2021年2月11日(木・祝)~2月21 日(日) 東京芸術劇場 プレイハウス
【静岡公演】2021年2月23日(火・祝) 静岡市清水文化会館 マリナート 大ホール
【愛知公演】2021年2月25日(木) 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
【広島公演】2021年2月27日(土) JMSアステールプラザ 大ホール
公式サイト
https://www.kiosk-stage.com/
作:ローベルト・ゼーターラー
翻訳:酒寄進一
演出:石丸さち子
出演:林翔太、橋本さとし、大空ゆうひ、上西星来(東京パフォーマンスドール)、吉田メタル、堀文明、一路真輝、山路和弘
企画:兵庫県立芸術文化センター
共同制作:兵庫県立芸術文化センター、キューブ

<関連リンク>
キオスク 公式 Twitter
https://twitter.com/kiosk1937

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<筆者プロフィール>村岡侑紀(むらおか・ゆき) ライター 広告制作会社に入社し、コピーライターとしてキャリアをスタート。その後、化粧品メーカーのマーケティング担当として多くのブランドを育成。現在は、ベンチャー企業で広報を担当している。さまざまなフィールドに立ってきたが、共通するのは「誰かや何かの魅力を伝える」こと。趣味は、舞台鑑賞や美術館巡り。作品はもちろん、そこに携わる方々の魅力を伝えたいという思いで、ライターに。 ⇒村岡侑紀さんの記事一覧はこちら

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