「フック船長を演じながら、トランチブルに」『ピーター・パン』小野田龍之介(上) | アイデアニュース

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「フック船長を演じながら、トランチブルに」『ピーター・パン』小野田龍之介(上)

筆者: 岩村美佳 更新日: 2023年7月19日

2023年7月25日(火)から8月2日(水)まで東京国際フォーラム ホールCで上演され、その後名古屋・大阪・埼玉・長野(上田)・新潟・高松で、ブロードウェイミュージカル『ピーター・パン』が上演されます。本作は、1981年に榊原郁恵さんが日本の初代ピーター・パンを演じて以来、多くの大人と子どもに親しまれてきました。43年目となる今年の公演で、11代目となるピーターパンを演じるのは山﨑玲奈さん、宿敵のフック船長役は、小野田龍之介さん、今回の公演から演出・振付を担当するのは長谷川 寧さんです。アイデアニュースでは、小野田さんにインタビューしました。インタビューは上下に分けてお届けします。

「上」では、『ピーター・パン』という作品には、幼少期から映画などを通してずっと親しんできたということ、フック船長を演じているとふとトランチブル校長の要素が出てくるというお話、フック船長がワニに食べられる意味、長谷川さんの演出のことなどについて伺った内容を紹介します。「下」では、ダーリング氏を演じながら感じていること、2023年の『ファインディング・ネバーランド』からの『ピーター・パン』という上演の流れは貴重だというお話、ピーター・パンについて思うこと、ホリプロに所属してからの1年間の変化、お互いの表情を見ながら稽古や仕事ができることへの喜びなどについて伺った内容とお客様へのメッセージを紹介します。

小野田龍之介さん=撮影・岩村美佳
小野田龍之介さん=撮影・岩村美佳

(※このインタビューは6月に実施しました)

――稽古はいま、どの程度まで進んでいますか?

まもなく全幕が立ち上がりそうという感じです。長谷川(寧)さんは、フィジカルな要素がベースにある演出家なので、結構ダンサー陣が普通のミュージカルでは出会わなそうなキャストなんです。僕自身、結構舞台に立たせていただいていますが、メインキャストの方以外は、初めましての方ばかりで、演出家のイマジネーションに合うように揃えた座組だと聞いています。

僕が『マチルダ』が終わって稽古に合流した時には、フック船長のナンバーも付け終わっていて、「これから3時間くらいでフックの振り全部入れます!」と。そんな稽古をしています。なかなかハードな日々です。

――そもそもミュージカルとしての『ピーター・パン』を最初にご覧になったのはいつか、覚えていますか?

覚えていないです……。かなり昔でしたし、いろいろなバージョンで観ているので、どれを劇場で観劇したのか、映像で観たのかが分からなくなってきて。「(高畑)充希のさ……」と話していたら、(唯月)ふうかの話をしていたり。充希、ふうか、宮地真緒ちゃん辺が出ていた頃のものは記憶にありますが、その前になるとさすがに覚えていません。でも、僕はディズニー英才教育を家庭で受けていたので、『ピーター・パン』は凄く身近な存在なんです。

――そうなんですね!

絵本や原作本が家にはあったので、ちっちゃい時からずっと、常に触れ合っている世界でした。この物語には、ネバーランドの世界、みんなが子供の時に思い浮かべる海賊、人魚とか、全てのイマジネーションが詰まっているから、今でも、ずっとそばにいるなという感じはします。

だからこそなのか、ミュージカルファンや演劇ファンからすると、普段は舞台を観ない家族連れやお子さまが観に来る作品なのかなと思っていて、観に行こうかなと思っても気付いたら終わっていて、なんかちょっと疎遠になる、ということもありがちな舞台ですよね。

――「行った気がしている」という方も結構多い作品なのではと思います。小野田さんは子どもの頃、フック船長にどんな印象をもっていましたか?

フック船長は、好きなキャラクターでした。『ピーター・パン』の中ではヴィランの代表格みたいな印象ですね。ヴィラン好きなので、格好よさを感じていました。でも、僕が最初に好きになったキャラクターは、犬のナナだったんです。ディズニー映画の『ピーター・パン』に描かれているナナが、今回僕が演じるダーリング氏を見る時の「馬鹿な大人だなぁ……」みたいな目がとても好きでした。

――ヴィラン好きは、いつ頃からですか?

お母さんのお腹の中にいる時からです。物心ついた時からフック船長とか、『ライオンキング』だとスカー、『アラジン』だとジャファーとかが好きです。そういうキャラクターのほうが、人間っぽくてすごく好きです。この間出演していた『マチルダ』にも、同じイギリスの物語でちょっと通じていると思ったのが、悪と呼ばれて存在している人間のほうが、非常に子供の脳を持っていますよね。

だから自分の支配欲を満たしたくて、ネバーランドを牛耳ろうとしたり、自分より下の子供たちに馬鹿にされて、腕を切り落とされてと、子供相手にすごくむきになるフックのことは、憎めないんです。自分では大人と思っているけれど、全然大人になりきれていなかったりしていて。

逆に、ピーター・パンを好きだと思ったことはないですね。本当は、ピーター・パンのほうが、一番現実を拒否しているじゃないですか。大人にならないとか、夢ばっかり見ているとか。それは子供としての生き方ですよね。それもいいんですけれど。

――では、今回のフック船長役は、ご自身としては「ぜひ!」という思いでしょうか?

そうです。ただ、さっきの『マチルダ』の話じゃないんですけど、トランチブルにテイストはすごく似ているんですよ。ちょっと鼻にかかったような喋り方で、ちょっと貴族的な。あとは、いやらしかったり、言葉遊びをしてみたり。気づくと無意識のうちに、芝居がトランチブルになってるんです。別に女っぽくやっているつもりはないんですけど、俳優って難しいなと思います。

――トランチブルが、染みついてしまいましたか?

染みつくのもそうですし、元々、そういうものを僕自身が持っているんだと思います。

――そういうものが、役を通して出てくるということですか?

元々自分が持っているものを、きちんと体現したのがトランチブルだったというだけであって、皆さん「小野田のトランチブルは作ってないよね」とおっしゃっていましたけど、本当に作っていなかったんだなと、今自分でも思います。すごく作っていると思っていましたけど、結局、フックでも出てきてしまっていますから。

この間(高橋)亜子さんにたまたまお会いした時に、「どうしよう、トランチブルになっちゃうんだけど」と言ったら大爆笑されました。でも、「大丈夫、毛色は一緒だから」って。イギリスで、ちょっと鼻にかかって、子供を馬鹿にして、でも自分が子供で……って。「そうだよね、そうなってもいいよね」という話をしました。今回、そういう感じでやっています。

――フック船長は、トランチブルよりは怖くないですよね?

トランチブルは如実に子供で、大人げなく「ぎゃ~!」ってヒステリックになったりしますけど、フックはまだどこか恰好をつけているので、俺様という感じです。「僕は大人ですけど? あなたたちは子供ですよね? みっともない」みたいな感じです。トランチブルより、怖さはないかもしれないですね。

――これまでにも、いろんなフック船長がいらっしゃいました。今回はどんなフック船長になりそうですか?

僕は若いほうのフックになると思うんですが、本当におっしゃる通り、この間だと(小西)遼生くんが白塗りでひょうきんに間抜けな感じでやっていたり。でもやっぱり古くをたどれば金田龍之介さんや宝田明さんみたいな「ザ・ダンディ」みたいな方が演じられています。

多分僕が生まれる前ですけど、宝田さんの印象がすごく強くて、すごくダンディで大人なイメージなんです。そういう歴史の中で、僕が今この年齢でこの『ピーター・パン』という想像の世界の大人というセクションを演じる時に、何が武器になるのかなと考えると、もしかしたらまだ大人になりきれていない大人であるところなのかなと。

実際の年齢的なものもですが、大人にはなりたいんですが、どちらかというと僕はまだピーター・パン寄りのところにいます。「大人入門編を生きているフック船長」かもしれません。

※アイデアニュース有料会員限定部分には、フック船長がワニに食べられる意味、長谷川さんの演出のことなどについて伺った内容などインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。20日掲載予定のインタビュー「下」では、ダーリング氏を演じながら感じていること、2023年の『ファインディング・ネバーランド』からの『ピーター・パン』という上演の流れは貴重だというお話、ピーター・パンについて思うこと、ホリプロに所属してからの1年間の変化、お互いの表情を見ながら稽古や仕事ができることへの喜びなどについて伺った内容やお客様へのメッセージなどインタビューの後半の全文と写真を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)

■フック船長は最後、ワニに食べられてしまう。それは彼が大人になった証だと思う

■内面的なものや生きるということを、ピーター・パンという人物を通して描く今作

■長谷川さんは、心技を通し、身体を使って想像させる。こだわりが強く信頼できる

■キャストも演出家も脚本家も、初めて携わる人ばかり。まっさらな新作みたいに

<青山メインランドファンタジースペシャル ブロードウェイミュージカル『ピーター・パン』>
【東京公演】2023年7月25日(火)~8月2日(水) 東京国際フォーラム ホールC
【名古屋公演】2023年8月5日(土)~8月6日(日) 御園座
【大阪公演】2023年8月12日(土) 梅田芸術劇場メインホール
【埼玉公演】2023年8月16日(水) ウェスタ川越 大ホール
【長野公演(上田)】2023年8月19日(土)・20日(日) サントミューゼ(上田市交流文化芸術センター)大ホール
【新潟公演】2023年8月26日(土)・8月27日(日) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場
【高松公演】2023年9月2日(土)・9月3日(日) レクザムホール(香川県県民ホール)大ホール
公式サイト
https://horipro-stage.jp/stage/peterpan2023/

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小野田龍之介さん=撮影・岩村美佳
小野田龍之介さん=撮影・岩村美佳

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<筆者プロフィール>岩村美佳(いわむら・みか)  フォトグラファー/ライター ウェディング小物のディレクターをしていたときに、多くのデザイナーや職人たちの仕事に触れ、「自分も手に職をつけたい」と以前から好きだったカメラの勉強をはじめたことがきっかけで、フォトグラファーに。「書いてみないか」という誘いを受け、未経験からライターもはじめた。現在、演劇分野をメインに活動している。世界で一番好きなのは「猫」。猫歴約25年。 ⇒岩村美佳さんの記事一覧はこちら

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最近のコメント

  1. RIHO より:

    素敵なお写真とインタビューありがとうございました!チクタクワニから逃げることの意味や、フックの内面について新たな視点を得ることができ、このインタビューを観劇前に読むことができてよかったです。これまで抱いていた「ピーターパン」という作品の印象が覆されました。フックの正義、ピーターパンの正義、生きることの本質について考えながら観劇したいと思います。インタビュー後半も楽しみにしています。

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