2023年9月7日(木)に開幕し、10月3日(火)まで東京芸術劇場シアターウエストで、10月7日(土)から9日(月・祝)までサンケイホールブリーゼで、10月11日(水)と12日(木)にキャナルシティ劇場で、10月14日(土)と15日(日)にウインクあいち大ホールで、10月21日(土)と22日(日)に高崎芸術劇場スタジオシアターで上演されるミュージカル『スリル・ミー』に出演する、木村達成さん(私)と前田公輝(彼)さんペアのインタビュー後編です。「下」では、おふたりそれぞれが本作への出演において楽しみにしていること、「私」と「彼」の関係性などについて伺った内容と、お客さまへのメッセージを紹介します。
――『スリル・ミー』に出演するにあたって、何を一番楽しみに取り組まれますか?
前田:僕は完全に達成さんのお芝居です。どういう「私」になるのか。
――「私」の人物像に興味がありますか? もしくは「木村さんが演じる」というところに面白さを感じていますか?
前田:まだそれこそ今日お会いして間もないので、何とも……なんですが、見えないからこそ興味があります。でも今日で、印象的なものがゼロではなくなりましたので、「多分こうなのかな」とか、本当に憶測みたいな感じですけど。
――こうなのかなと、今感じている木村さんはどんな方ですか?
前田:いや、まだ分かりません(笑)。
木村:ハハハハハ!
前田:もちろん分かりませんけど、ご本人は「僕はこのままなので、これ以上もこれ以下もないんですよ。壁なんてないんです」とおっしゃっていて。先程の別のインタビューで、今後稽古が進む中で、僕が知らない達成さんの目を見たら、「うわ、まだ扉を開けていなかったんだ」と思ってしまうかもしれないから、今は聞きながら聞き流しますと言っています。だから、今も結局ゼロに近いんですけど、0.数パーセントは進んでいますかね。
――それは「彼」を演じる上で、木村さんが表現する「私」が楽しみということですか? それとも木村さんご自身ですか?
前田:どっちもですが、でもやっぱり今向き合っているのは作品ですので、「私」ですかね。
――なるほど。木村さんは、前田さんの「彼」で楽しみにしていることや興味を引かれていることはありますか?
木村:そうだな……やっぱり、引っ張っていく人がいると、僕も安心して乗っていけるんです。僕がわざと引っ張られたいようにはする必要がなくなるから。多分、普通に台本を読んで、「私」というのはこういうイメージだなと思いながらやっていると、結局「ここ引っ張ってください」ぐらいな感じのムーブメントをしないと、とかいろいろ考えるんですけど、今日インタビューを受けている感じでいくと、それすらも手のうちで転がしてくれているような、引っ張っていってくれそうな感じがありますね。
結局それが最終的に、僕が手の中で転がしていたという風に見えればいいので、僕からわざとしにいくことは一切ないでしょうね。今日インタビューを受けていても、話を持って行ってくれる導線みたいなものが上手いから、僕も簡単に乗っかっていけているんです。だから、正直なところ今日ここまで思うとは思っていませんでしたが、今はとても信頼しています。
前田:おお〜。
木村:なかなかないですね、インタビューでここまで思えるということは。あんまり人を信用しすぎて過剰に思い込みすぎると、崩れた時に代償が大きいですから。でもこの作品はそんな薄っぺらいことを言っていられませんし、僕は前田さんを信じ続けるしかないわけで。そして、演出の栗山さんを信じ続けるしかないわけです。
それが作品に対する愛に変わっていけばいいし、「私」と「彼」という関係性の中に作られていけばいいと思いますから、上っ面な手前でやるのはよくないと思います。そんな風に、いろんなものが転がっていけばいいなと思う方向へ行くためには、常に自分が馬鹿でい続ける必要があるのかなと思います。頭がいいヤツって、つまんないじゃないですか。
――そうですか!?
木村:結果的に頭がよかったら、それはいいんです。でもそうじゃなかったら、自分より頭がいいヤツに会った時に、「これは全部計算されているんだな」とか「お前の芝居は計算高いよな。つまんないよな」と思われちゃうから、そんなのも全部考えないでやれたら、一番いいなとは思います。前田さんは、それを作ってくださりそうです。僕よりも全然頭がいいから。
前田:僕も同じことを考えていて。カメラの前に立って、本番中にカットがかかった後、何をしたか覚えていない時が僕の中のゾーンみないな、無意識下のところであって、大御所の役者さんも結構そうおっしゃるんですよ。若い頃はそれが全然分からなくて、「(映像の)つながりとかもあるから、絶対に覚えていたほうがいいですよね、ある程度自分というものを客観的に見たほうがよくないですか」と思っていました。でも最近は、その感覚みたいなものが心地よい時が多いんです。
『スリル・ミー』は特に、役柄的に役と距離が離れていないといけないと今は思っています。そこを詰めてずっと作業をする中で、本番中に本当に無意識の中でもしゃべっていたり動いていたり、歌っていたり。そういうところまで持っていけると、僕は思っていました。
――感情が動いていった結果の物語ということですか?
前田:そうですね。あと栗山さんがト書きとあんまり関係ない演出をされると思うんですよ。映像資料を見て、台本と照らし合わせた時に、全然違うところで動いているので、台本のト書きはあってないようなものというのが、ペアによって変わり、目視できる違いのひとつだと思います。それは果たして栗山さんが言っているのか、ふたりのアイデアなのか、今は全然分からない状態なんですけど。本当に自由度が高いですね。
木村:どのペアの映像資料を見ました?
前田:松下洸平くんと柿澤勇人くんのペア。
木村:僕も同じペアを見ました。
前田:でも他のペアもそうだと思うよ。そのペアが割とオーソドックスというか。結構ど真ん中というか、役としての『スリル・ミー』の作品の一番最初に見た時に「こうだろうな」というイメージに近いというので、観させていただいたんです。それが台本と違うということは、およそ想像はできるというか。他のペアの方々の資料もいただいているんですけど、敢えてまだ観ていないんです。
今の、まだ自分で整っていない状態だと引っ張られそうなので、自分がある程度固まったら観ようかなと思っています。稽古では自分で動くこともしてみたいですが、何となく栗山さんが作られているイメージが想像できるので、結局はフラットにとは思うんですが。
――木村さんは、『スリル・ミー』に出演するにあたって、楽しみにしていることはありますか?
木村:稽古が夏ですよね。がっつり暑い時期に始まって……となると、もちろんお仕事に対しては前のめりですけど、どこまで前のめりにならずに飄々とできるかなと考えています。それは僕自身の仕事の向き合い方でもあるので。
考えすぎても頭でっかちになってしまいますし、ナメてかかった時のほうが突拍子もないアイデアが浮かぶときもあるんです。もちろん怠けはしないですよ。やるべきことをやった上で、何歩も下がったような状態から見たり、一歩も二歩前に進んでみるという歩み寄り方をこの作品にしながら、自分の動き方ができるようになりたいという思いですね。
ーーなるほど。
木村:切羽詰まると、切羽詰まったなりの動きになりますし、限界を超えるとめちゃめちゃ面白いものが出てたりとか。そう考えると、人って面白いじゃないですか。「今決まってんなー!」と思っている時って、面白いことを考える時でもありますし、逆に下がってみたほうが見えてくる時もあります。
自分の芝居を観ることはできないかもしれませんが、僕が与えた影響が前田さんの「彼」を通して現れた時に、達成感とかいろんなものを感じるかもしれません。そういう駆け引きみたいなものが、早すぎず遅すぎずのタイミングで垣間見えてきたら、本番がめちゃめちゃ楽しくなってくるのかなとも思います。
逆にふたりともエンジンのかかるスピードが遅いほうが、お互いにスリルを感じながら「この後どうする!? どこでプッシュする!?」みたいなことが生まれたりして、そんな瞬間が面白くなることもあるかもしれません。
前田:マジ!? それヤバすぎでしょ(笑)。
木村:この『スリル・ミー』を演じるふたりは、本番に入って、「やばいな、今日はふたりともエンジンがかかっていないな、どうする?」みたいな時も面白いと思いますし、日々見せる顔が違っていていいと思うんですよ。毎回安心安全の安定なものを出す必要はないと思いますから。その辺はすごく儚く、それでいて危険がピリピリ伝わっているような、何かしでかしそうなふたり、というものがお客さまの中でスリルと感じてもらえればいいかなと思いながら、楽しんで稽古したいですね。
※アイデアニュース有料会員限定部分には、「私」と「彼」の関係性について伺った内容やお客さまへのメッセージなどインタビューの後半の全文と写真を掲載します。
<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)
■前田:「彼」から見ると二人の関係は“依存”。「私」から見たら“生きること”みたいな
■木村:「私」から見たらこのふたりの関係は“当たり前”。「欲しいから買いたい」と同じ
■前田:最終的に「私」可愛い、みたいな感じになる 木村:ナチュラルムーブで行きたい
■木村:めっちゃ面白いから、 絶対観に来んなよ(笑) 前田:じゃあ……絶対観に来いよ!
<ミュージカル『スリル・ミー』>
【東京公演】2023年9月7日(木)~10月3日(火) 東京芸術劇場シアターウエスト
【大阪公演】2023年10月7日(土)~10月9日(月・祝) サンケイホールブリーゼ
【福岡公演】2023年10月11日(水)・10月12日(木) キャナルシティ劇場
【名古屋公演】2023年10月14日(土)・10月15日(日) ウインクあいち 大ホール
【群馬公演】2023年10月21日(土)・10月22日(日) 高崎芸術劇場 スタジオシアター
公式サイト
https://horipro-stage.jp/stage/thrillme2023/
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素敵なインタビューと最高のお写真、ありがとうございます!
観劇前と後でインタビューを読ませていただいたので、とても味わい深かったです。この時からもう彼と私が始まってたんですね。
こちらの媒体でぜひ、スリルミー開催途中の゛今”のお二人のインタビューがあったら、またすごく良いんだろうなとおもいました。